6.2 家族と仕事 — 自分のことを 3 文続ける — Epoché
この課で言えるようになること 家族について、人数・誰と住んでいるか・親の仕事の 3 つを、自分から続けて言える。 仕事について、何をしているか・どこで働いているか・どのくらい勤めているかを言える。 家族を名指す語が足りないところを、人数とまとめの語で埋められる。 立ち入った問いを、命令の形ではなく断りを入れる形で切り出せる。 前提 : 6.1 まで。 6.1 では初対面の 4 手——声をかける・名乗り合う・相手のことを聞く・別れる——を通しました。この課はその 3 手目、 相手のことを聞く 手だけを取り出して広げます。広げる先は家族と仕事です。この 2 つは、挨拶が済んだあとにほぼ必ず来ます。しかも、どちらも 自分の側から先に出せる 話題です。相手に何を聞けばよいか思いつかないときは、自分のことを 3 文続けて言ってしまえばよい。たいていの相手は同じ形で返してくれるので、そこから先は答えを聞いていればすみます。 この課には、語の数から来るまっすぐな制約が 1 つあります。第 1 期で使う 600 語には、家族の一人ひとりを名指す語が 4 つしか入っていません。この制約は不便に見えて、じつは日本語話者に都合がよい面があります。名詞を 1 つずつ覚えるより、 数え方と言い回しを先に決める ほうが、話す力としては先に効くからです。名前が足りない分は、数で言うか、まとめて言うか、場所で言うかの 3 手で埋まります。この 3 手はこの先ずっと使えます。 場面と話し手 対話 A は職場の昼休みで、同じ部署の 2 人が家族の話をする場面です。毎日顔を合わせる相手なので丁寧さは低めで足ります。 対話 B は取引先の人と初めて会って、名刺を交わしたあとの場面です。初対面で、しかも仕事の相手なので、A より一段上の形を使います。 先に語の話を片づけます。親族を名指す語のうち、この期の 600 語に入っているのは father ・ mother ・ parent ・ child の 4 つだけです。 brother ・ sister ・ son ・ daughter ・ wife ・ husband ・ uncle ・ aunt ・ cousin の 9 つは、どれも 600 番より外にあります。くだけた場では child の代わりに kid も使えますが、指すものは同じです。これは教材の都合ではなく、英語で実際によく使われる順に並べたときの順位です。使う場面が限られる語は、どうしても後ろに来ます。 そこでこの課では、足りない分を次の 3 手で埋めます。1 つ目は 人数で言う 。何人家族かを言えば、内訳を言わなくても話は進みます。2 つ目は まとめて言う 。両親は parents 、子どもたちは children で、一人ずつ数えずにすみます。3 つ目は 場所で言う 。職種の名前も同じで、この帯に入っているのは teacher と student の 2 つだけなので、それ以外は「どういう所で働いているか」で答えます。 対話 A 話者 英文 日本語訳 A How many people are in your family? [1] 何人家族ですか。 B We are a family of four. [2] うちは4人家族です。 A Are you an only child? [3] あなたは一人っ子ですか? B I'm the youngest in the family. [4] 私は末っ子です。 A Do you live with your parents? [5] ご両親と一緒に住んでいますか? B I live with my parents. [6] 私は両親と暮らしています。 A What does your father do? [7] あなたのお父さんの仕事は何ですか。 B My father works for a power company. [8] 父は電力会社に勤めています。 B How about your family? [9] そちらのご家族は? A I have two children. [10] 私には子供が2人いるんですよ。 10 行のうち 8 行目までが、問いと答えの対を 4 つ重ねた形です。順番に意味があります。1 行目と 2 行目で 全体の大きさ 、3 行目と 4 行目で その中での自分の位置 、5 行目と 6 行目で 誰と住んでいるか 、7 行目と 8 行目で 一人を取り出して仕事を言う 。外側から内側へ、大きいほうから小さいほうへ降りていきます。この順は日本語で家族の話をするときとまったく同じなので、覚え直す必要はありません。 3 行目と 4 行目に注意してください。問いは「一人っ子ですか」で、答えは「一人っ子ではない」ことを言っていますが、「いいえ」とも「兄がいます」とも言っていません。自分がどこにいるかを言うことで、一人っ子ではないと分かる形になっています。これが上で言った 2 つ目の手です。名指す語が無くても、位置を言えば内訳は伝わります。「上から 2 番目」「真ん中」も、この 4 行目の形をまねれば作れます。 9 行目は B の 2 度目の台詞で、ここだけ話者が続いています。答えたあとに そのまま聞き返す 形です。初対面の会話が続くかどうかは、この聞き返しがあるかどうかでほぼ決まります。自分が答えたら、同じ問いを短く返す。9 行目は 4 語しかないので、答えるたびに口をついて出るまで馴らしておくと、会話が途切れて気まずくなる時間が消えます。 対話 B 話者 英文 日本語訳 A What do you do for a living? [11] 何の仕事をしているんですか。 B I work for a trading company. [12] 私は商社で働いています。 A How big is the company? [13] どれくらいの規模の会社ですか。 B Our company isn't that big. [14] うちの会社はそれほど大きくありません。 A How long have you been with this company? [15] この会社に入社して、何年になりますか? B I've worked here for ten years. [16] ここで10年働いています。 A Do you go by train or by car? [17] 通勤は電車ですか、車ですか。 B I go to work by car every day. [18] 毎日、車で通勤しています。 A May I ask about your family? [19] 家族について聞いてもいいですか。 B There are four members in my family. [20] 私の家族は4人います。 B We'd love to work with you. [21] ぜひ取引させていただきたいと思います。 A Give my regards to your family. [22] ご家族の皆さんによろしく。 12 行あり、対話 A より 2 行長くなっています。1 行目の問いは、仕事を尋ねる言い方のうち いちばん広く通る形 です。6.1 の対話 A の 7 行目にも仕事を尋ねる問いがありましたが、あちらは短いぶんくだけています。こちらは後ろに 3 語足すことで、初対面でも改まった場でも使える形になります。答えの 2 行目は会社の種類で答えていて、職種の名前を出していません。上で決めた 3 つ目の手です。 3 行目から 6 行目が、仕事の話に数字が入るところです。3 行目は会社の規模、5 行目は勤めた年数を聞いています。4 行目の答えに注意してください。規模を数で言わず、 大きくない とだけ言っています。日本語でも「そんなに大きくありません」と答えるのと同じで、初対面で自社の人数をいきなり言う必要はありません。6 行目は逆に数を出しています。勤続年数は隠す理由が無く、しかも数を出したほうが相手が次の問いを作りやすいからです。6 行目の形は、下の丁寧さの節でもう一度出てきます。 9 行目と 10 行目で、話が仕事から家族へ移ります。9 行目の問いは、この課でいちばん覚えてほしい 1 文です。家族のことは相手によっては立ち入った話題なので、いきなり聞かずに 断りを入れてから聞く 。この形は家族以外にも使えます。年齢でも住まいでも、聞きにくいと思ったらこの頭を付ければよい。10 行目の答えは対話 A の 2 行目と同じ内容ですが、言い方が違います。同じことを 2 通りで言えるようにしておくと、相手の言い方に合わせられます。 11 行目と 12 行目が別れの手です。11 行目は仕事の場で使う締めで、これから付き合いたいという意思を表します。12 行目は A が返した言葉で、家族の話が出たあとの別れぎわには必ずと言ってよいほど使われます。日本語の「ご家族によろしく」がそのまま当たります。家族の話をしたら、別れぎわにこの 1 文を返す——この対で覚えておいてください。 言い回し 対話に出なかった言い方を足しておきます。家族と仕事は、初対面の 1 回だけでなく、2 度目・3 度目に会ったときにも必ず出る話題です。下の 6 つは、そのときに要るものを選びました。 英文 日本語訳 使いどころ How is your family? [23] ご家族はお元気ですか? 2 度目以降に会ったとき。初対面では使わない How old is your child? [24] お子さんはおいくつですか? 子どもがいると分かってから。歳は数で答える My father is a teacher. [25] 私の父は教師です。 職種の名前で答える形。この帯の職種名は 2 つだけ How are things at work? [26] 仕事はどうですか? 仕事の様子を聞く。改まった場でも使える I'm looking for a job. [27] 仕事を探してるんだ。 いま職に就いていないときの答え方 I left the company last month. [28] 先月わたしは会社をやめました。 職を変えたとき。前の勤め先の話に入る手前で 1 番目に印を付けておきます。この形は、相手の家族を すでに知っている ことを前提にしています。初対面で使うと、会ったこともない家族の様子を聞いたことになって不自然です。初対面では対話 B の 9 行目、2 度目以降は 1 番目——この使い分けだけ決めておけば、あとは同じ話題です。4 番目と 5 番目は、仕事の話が必ずしも順調な話ではないときの受け皿です。 言い換えと丁寧さ 丁寧さを上げる型は 6.1 話編 で決めた 3 つと同じです。命令の形を頼む形へ、 can を could へ、単純過去を現在完了へ。この課では、その 3 つを家族と仕事の話題で組み直します。 1 つ目の 命令の形を頼む形へ は、この課ではとくに大事です。家族や仕事は、相手によっては立ち入った話題だからです。同じ内容を聞くのでも、動詞から始めると「話せ」に近く届き、断りを入れる形にすると「話してもらえますか」になります。下の表は、同じ用を足す 3 文を左から右へ段を上げて並べたものです。左は身内、真ん中は同僚、右は客や初対面——その見当で選んでください。 命令の形 頼む形 もっと丁寧な形 Tell me something about your family. [29] Please tell us about your family. [30] May I ask about your family? [19] Tell me your phone number. [31] Please tell me your phone number. [32] May I have your phone number? [33] Write your address here. [34] Please tell me your address. [35] Might I ask your address? [36] 右の列の 3 文には共通の形があります。どれも 聞いてよいかを先に聞く 形になっていて、中身の問いはそのあとに置かれています。日本語の「お聞きしてもよろしいですか」とまったく同じ組み立てです。ここは日本語と英語がきれいに重なるところなので、覚えるのに苦労しません。苦労するのはむしろ、 この頭を付け忘れる ことのほうです。頭を付けずに中身だけ言うと、左の列の形になってしまいます。 2 つ目は can を could へ 。問いの形のまま助動詞を 1 語替えるだけです。住所を聞く 2 文を並べると、 Can you tell me your address? [37] が中くらい、 Could you tell me your address? [38] が一段上になります。替わっているのは 1 語だけで、あとはまったく同じです。6.1 では名前を聞く 2 文で同じ替え方を見ました。替える語は毎回同じなので、話題が変わっても迷いません。 3 つ目は 単純過去を現在完了へ 。これだけは形の替え方ではなく、選ぶ形そのものを間違えているという話です。「ここで働いてどれくらいですか」「ここに住んでどれくらいですか」は、日本語では過去のことのように聞こえないのに、英語にしようとすると過去形が出てきます。出てきた過去形は、英語では「以前はそうだったが今は違う」と伝わります。真ん中の列は Epoché の作例で、日本語につられて出てしまう形です。 言いたいこと つい出てしまう形 英語で言う形 ここで働いてどれくらいになりますか Did you work here? How long have you been working here? [39] ここに住んでどれくらいになりますか Did you live here? How long have you lived here? [40] 真ん中の列の 2 文は、文法としては壊れていません。壊れていないので相手は間違いだと思わず、「以前ここで働いていたのですか」「以前ここに住んで