5.1 自己紹介 — 弱形と上がる問い — Epoché
この課で聞き取れるようになること 初対面の自己紹介の対話を、台本を見ずに要点(学生か働いている人か/出身/いま住んでいる所)だけ聞き取れる。 弱形になって消えたように聞こえる機能語を、前後から補って聞ける。 終わりが上がる問いと下がる問いを、語が全部取れなくても調子だけで見分けられる。 シャドーイングの 4 手順を自分で回し、最後の 1 回を音読判定にかけて確かめられる。 前提 : 4.2 まで。 ここから聞編 聞が始まります。音編 音でカタカナを脱ぎ、橋編 橋で持っている語を数え、型編 型で文の組み立てを見て、語編 語で基本の語を並べてきました。この編は、そこまでに作ったものを全部 耳の側へ回す ための編です。読めば分かる文が、聞くと分からない——この落差は多くの場合、語彙でも文法でもありません。文字で並べれば 1 語ずつ切れている文が、声ではいくつかのかたまりにしか聞こえない。その差が埋まっていないだけです。 だから、この課で追うものを 2 つに絞ります。1.7 の 弱形 と、1.8 の 終わりの上がり下がり です。それ以外は追いません。連結や脱落は第 2 期の音の課で扱うので、いまは「機能語は弱く短くなる」ところまでで足ります。場面は自己紹介にしました。相手の名前と素性を聞き取る場面は、英語を使う人が最初に置かれる場面であり、しかも 聞き返しにくい 場面でもあります。 聞く前に 学校の入り口で、初めて顔を合わせた 2 人の対話です。話し手を A と B と呼びます。A は前からこの学校に通っている人で、昼は働いています。都会の出身で、いまはこの町に住んでいます。B は今日から通う新入生で、この辺りの出身です。8 段落あり、A から始まって交互に話します。1 段落が 1 人の話す番で、短い文が 1 つから 3 つ入っています。 この課の台本に名前は出てきません。固有名詞の聞き取りは同じ期の後の課に置きました。名前が無くても自己紹介は成り立ちます——というより、初対面のやりとりで実際に情報が動くのは、名前より後の部分です。聞き取る中身は 3 つだけにしておきます。 相手は学生か働いている人か・出身はどこか・いまどこに住んでいるか。 この 3 つが取れれば、その対話は聞けたと数えて構いません。 知っておく語 先に 5 語だけ音の形を確かめます。「山の位置」の列は 1.6 音編 で使った黒丸と白丸の印です。黒丸が強く長く言う音節、白丸が弱く短い音節を表します。山の位置を先に知っておくと、その語が流れの中で出てきたときに引っかかりやすくなります。5 語とも台本に出てきます。意味はどれも既に知っているはずなので、確かめるのは音のほうだけです。 知っておく語 意味 山の位置と聞きどころ student 学生 ●○ 前が強い。後ろの音節は弱く短い around このあたり ○● 後ろが強い。始まりが弱いので語の頭が聞こえにくい actually 実は ●○○○ 最初だけ強く、残りの 3 つは一息に流れる talking 話すこと ●○ 前が強い。語尾は弱く、鼻に抜けて終わる city 都会 ●○ 前が強い。後ろは軽く落ちる この課で追う 2 つ — 弱形と終わりの調子 1 つ目は弱形です。 1.7 音編 で見たとおり、冠詞・前置詞・代名詞・接続詞と be 動詞・助動詞は、文の中で母音が力の抜けた音に潰れ、短く軽く流れます。言う側にとってこれは「できればよい」程度のものでしたが、 聞く側にとっては必須 です。聞き取れないと感じる文の多くは、知らない語が入っているのではなく、知っている機能語が弱形になっていて「無い音」に聞こえているだけだからです。 この台本で弱くなるのは are ・ is ・ you ・ a ・ the ・ to ・ from ・ with です。たとえば are you a のように 3 語続くところは、3 つの弱い音がひとかたまりに流れ、はっきり聞こえるのはその後ろの内容語だけになります。そこを「聞き逃した」と思わないでください。 もともとはっきり鳴っていません。 英語の話し手はそこを速く軽く通り過ぎ、聞き手もそれを当てにして聞いています。こちらも当てにして構わない——弱い所は形から補えばよい、と決めてしまうと、耳がずいぶん楽になります。 2 つ目は終わりの調子です。 1.8 音編 で決めたとおり、はい・いいえで答える疑問は上がって終わり、疑問詞で始まる疑問と言い切りの文は下がって終わります。動くのは最後の 1 音ではなく、いちばん強く言う 1 語(核)から後ろの全体です。台本には問いが 4 つあり、上がるものと下がるものが 2 つずつ入っています。 初対面の場面でこれが効くのは、 語が全部取れなくても「いま自分が答える番か」が分かる からです。終わりが上がったなら、相手は答えを自分の手にゆだねている。下がったなら、言い切ったか、疑問詞で聞いている——どちらにせよ、返す言葉の形が変わります。日本語なら文末の「か」がその印を運ぶので、調子はあってもなくてもよい飾りでした。英語にはその助詞がないので、調子が助詞の仕事を丸ごと負っています。ここを取り違えると、初対面の場でいちばん起きてほしくない沈黙が起きます。聞編の最初の課をこの 2 つに絞ったのは、そういう理由です。 聞き方 この編の課は 音が本体 で、画面の文字はその確かめです。だから台本はこの課の終わり、答えより後ろに置いてあります。先に読んでしまうと、文字を追いながら音を聞くことになり、聞き取りの練習になりません。手順は全課同じにしておきます。回すのは 4 段です。どの段も短いので、通しても長くはかかりません。 台本を見ずに 2 回聞く。 1 回目は調子だけを追います。どこで上がり、どこで下がったか。意味は取らなくて構いません。2 回目に意味を取りにいきます。分からない語は飛ばして、上の 3 点だけを拾ってください。 読み上げに声を重ねる(シャドーイング)を 3 回。 台本は見ません。語を正しく言おうとしないでください。強い所と上がり下がりだけを真似て、弱い所は潰れたまま流します。半分が音にならなくても、この段では正解です。 台本を見て確かめる。 消えて聞こえた所がどの語だったかを、上の弱くなる語の一覧と突き合わせます。「知らない語ではなかった」ことを毎回確かめるのが、この段の目的です。 台本を見ずに、もう 1 回通して声を出す。 この 4 段目だけを 音読判定 にかけます。8 段落を続けて読み、綴りどおりに返らなかった段落を書き出してください。 判定が返すのは綴りだけなので、調子の良し悪しは測れません。上げるべき所を下げて言っても、同じ綴りが返ってきます。それでも 4 段目を判定にかける値打ちはあります。返らなかった段落は、たいてい 弱い所をきちんと弱くできていない段落 だからです。機能語に日本語の 1 拍ぶんの時間を与えると、山と山の間隔が広がり、判定の側も人の耳も、そこで語の切れ目を見失います。調子そのものを確かめたいときは録音してください。自分の声を聞き返すと、文末を持ち上げる癖と、平らな読みは、どちらもはっきり分かります。 問い 聞き方の 1 段目と 2 段目を終えてから答えてください。3 段目より先に答えるのがこつです。台本を見てから答えると、聞けたのか読めたのかが自分でも分からなくなります。1 から 4 が内容の問い、5 と 6 が書き取り、7 がシャドーイングの仕上げです。 B は学生か、働いている人か。何段落目で分かったかも書く。 この辺りの出身なのは A と B のどちらか。もう一方はどこの出身だと言っているか。 A は週に何日、何時から何時まで働いていると言っているか。 台本には問いが 4 つある。終わりが 上がる のはどれとどれか。何段落目かで答える。 書き取り。 1 段落目の 2 つ目の文を書き取る。弱くなる語が 3 つ続き、はっきり聞こえるのは後ろの 2 語だけになる。 書き取り。 7 段落目の 2 つ目の文を書き取る。数が 2 つ出てくる。その 2 つの数の前後にある小さな語も落とさずに書く。 シャドーイング。 聞き方の 4 段目を 8 段落すべてで行い、 音読判定 にかける。綴りどおりに返らなかった段落を書き出す。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Let's Learn English Lesson 2: Hello, I'm Anna! VOA Learning English (4:00, 2016) 初対面の名乗り この課のまとめ 聞き取れない原因の多くは、知らない語ではなく、知っている機能語が弱形になって消えて聞こえること。弱い所は形から補ってよい。 自己紹介で追うのは 3 点だけ——相手は学生か働いている人か・出身はどこか・いまどこに住んでいるか。全部の語を取ろうとしない。 はい・いいえで答える問いは上がって終わり、疑問詞の問いと言い切りは下がって終わる。調子だけで「いま自分が答える番か」が分かる。 聞き方は 4 段(見ずに 2 回 → 重ねて 3 回 → 台本で確かめる → 見ずにもう 1 回)。音読判定にかけるのは最後の 1 回だけ。 次の課へ 次は 5.2 買い物です。店で値段を聞き、数を聞き取る場面に移ります。自己紹介と違って、聞き落とすと実際に困るもの—— 数 が出てきます。この課で作った 3 つの習慣、つまり「調子を先に追う」「機能語は消えるものと当てにする」「4 段の手順で回す」は、そのまま持っていってください。弱形の一覧も同じものを使います。足すのは数の聞き取りだけです。 答え 学生。しかも新入生。2 段落目で自分から I'm a new student. [1] と名乗っている。1 段落目で A が問いかけているので、答えは 2 段落目に来ると見当を付けて聞けるとよい。 B。4 段落目で I'm from around here, actually. [2] と答えている。A は 5 段落目で I'm from the city. [3] と言い、続けて Now I live here. [4] と足している。都会の出身で、いまはここに住んでいる。 週に 3 日、9 時から 6 時まで。7 段落目の I work three days a week. [5] と I work from nine to six. [6] から。どちらの文も、はっきり鳴るのは動詞と数のところで、間をつなぐ小さな語は弱く流れる。数だけ拾えていれば、この段では通ったと数えてよい。 上がるのは 1 段落目の 2 つ目 Are you a new student? [7] と、3 段落目の Are you from around here? [8] 。どちらもはい・いいえで答える問いである。下がるのは 4 段落目の 2 つ目 Where are you from? [9] と、6 段落目の What do you do? [10] 。どちらも疑問詞で始まる問いである。 Are you a new student? [7] 弱くなるのは初めの 3 語で、はっきり聞こえるのは後ろの 2 語だけ。書き取れなかった人は、聞こえた 2 語から形を組み立て直すとよい。問いの形で、相手のことを聞いているのだから、初めに来る語は限られている。 I work from nine to six. [6] 前置詞の 2 語が弱い。数と数の間に何か鳴っている、という程度にしか聞こえなくても、「どこからどこまで」を言う形だと分かれば埋まる。 返らなかった段落は、弱い所を弱くできていないか、文末を持ち上げていることが多い。問いの段落が返りにくいときは、上げようとして最後の語まで力を残しているのが原因になりやすい。強い所を強く、その後ろを落とす——この 2 つを分けて練習し直すと返るようになる。8 段落のうち 6 段落が返れば、この課は通ったと数えてよい。 台本 答えを出してから読んでください。A から始まり、段落ごとに話し手が入れ替わります。読んだあとに、もう一度だけ聞いてみることを勧めます。消えていた語が消えたまま、しかし今度は「そこに在る」と分かって聞こえるはずです。 Nice to meet you. [11] Are you a new student? [7] Nice to meet you, too. [12] I'm a new student. [1] This is my first time to be here. [13] Are you from around here? [8] I'm from around here, actually. [2] Where are you from? [9] I'm from the city. [3] Now I live here. [4] What do you do? [10] I work three days a week. [5] I work from nine to six. [6] Nice talking with you. [14] I have to go now. [15] 参考文献 Tatoeba 文 #424866(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/424866 Tatoeba 文 #4999760(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/4999760 Tatoeba 文 #1743480(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/1743480 Tatoeba 文 #9806480(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/9806480 Tatoeba 文 #10113815(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/10113815 Tatoeba 文 #