3.21 分詞の修飾と分詞構文 I、否定・完了の準動詞 — Epoché
この課でできるようになること 分詞で名詞を前からも後ろからも修飾できる。 ★ -ing と過去分詞を する側・される側 で選べる。 節を畳んで文の頭や末尾に置ける(分詞構文)。 打ち消しの not と、 having + 過去分詞の位置が分かる。 前提 : 3.20 まで。 分詞という名前は「分かち持つ」という意味です。動詞の力と形容詞の力を 両方持っている からそう呼びます。動詞の力とは、目的語を取ったり、副詞を付けたりできることです。形容詞の力とは、名詞を修飾できることです。この二つを同時に持っているので、 節ひとつぶんの中身を、語ひとつの位置に置けます 。 そしてもう一つ、畳むと 時の印が落ちます 。落ちても困らないのは、主役の文のほうに時が書いてあるからです。 3.16 型編 で「一つの文に時の印は一つあれば足りる」と言いました。分詞はその考え方を、もう一歩進めた形です。読むときは、 主役の文の時に合わせて読む と決めてください。 例文で見る まず 10 文を見ます。1 番めから 4 番めは名詞を修飾している分詞、5 番めから 9 番めは文全体にかかる分詞(分詞構文)、10 番めは打ち消した形です。語はどれも第 3 期の範囲(上位 1,980 語)の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ A growing child requires more food. [1] 育ち盛りの子供にはもっと多くの食物が必要だ。 1 語なので名詞の 前 に立つ The broken window was boarded up. [2] 壊れた窓は板でふさがれた。 過去分詞も 1 語なら前。壊 された 窓 Who is the woman standing there? [3] あそこに立ってる女の人はだれですか。 2 語以上になったので名詞の 後ろ へ回った It concerns all the people living there. [4] 多くの人々は自分の意見をもつのにテレビに頼っている。 同じく後ろから。 living there が people を絞る Looking up, I saw him come in. [5] 見上げると彼が入って来た。 ★分詞構文。 When I looked up を畳んだ形 Being young, he can work all day long. [6] 若いから彼は一日中働ける。 Because he is young を畳んだ形 Going home last night, I saw her again. [7] 昨夜帰宅途中に、彼女に再び会った。 時を言う分詞構文。文の頭に置く Having done his work, he went out. [8] 仕事をしたあとで外出した。 ★ having + 過去分詞。主役の文より 前 のこと Having seen him before, I knew him at once. [9] 以前会った事があったので、すぐに彼がわかった。 同じ形。理由と「前のこと」を同時に言っている Not having seen her before, I did not know her. [10] 以前会ったことがなかったので、私は彼女がわからなかった。 ★打ち消しは not を いちばん前 に置く 骨組み この課の規則は一つです。 分詞は節を畳んだ形。主語と時の印を落として置き直す。 置く場所は二つ—— 名詞の横 か、 文の横 かです。 -ing か過去分詞か — する側か、される側か 分詞には二つの形があります。選び方は一つだけです。 その名詞がする側なら -ing 、される側なら過去分詞 。時の前後ではありません。ここを取り違えると、意味が裏返ります。 どちらの側か 使う形 この課の例 する側(能動) -ing A growing child requires more food. [1] される側(受動) 過去分詞 The broken window was boarded up. [2] A growing child requires more food. [1] の子どもは 自分で育って います。 The broken window was boarded up. [2] の窓は 誰かに壊された のであって、自分で壊れたのではありません。 3.17 型編 の受動態と根は同じで、 過去分詞は「される側」の印 です。日本語の「〜している/〜された」とほぼ重なるので、ここで迷うことはあまりありません。 前に置くか、後ろに置くか 名詞を修飾するとき、置く場所には規則があります。 分詞 1 語なら名詞の前、2 語以上なら名詞の後ろ です。 長さ どこに置くか この課の例 1 語 名詞の前 A growing child requires more food. [1] 2 語以上 名詞の後ろ Who is the woman standing there? [3] これは 3.13 型編 の関係代名詞と同じ考え方です。 Who is the woman standing there? [3] は the woman who is standing there を縮めた形で、 who is を落とすと分詞だけが残ります。 It concerns all the people living there. [4] も同じです。 後ろから修飾する形は、みな関係代名詞の縮んだ形 だと思ってかまいません。 日本語は修飾がいつも 前 から来ます。「あそこに立っている女の人」——長くなっても前のままです。英語は長くなると後ろへ回ります。この違いがあるので、日本語の順で組み立てると 主語がいつまでも終わらない 文になります。英語で書くときは、 名詞を先に置いてから説明を足す 。 ★分詞構文 — 節ごと畳んで文の横に置く 名詞ではなく、 文全体 にかかる置き方があります。これを分詞構文と呼びます。作り方は三手です。 つなぎ目の語( when ・ because など)を 落とす 。 主語が主役の文と同じなら、それも 落とす 。 動詞を -ing にする。 Looking up, I saw him come in. [5] は、 When I looked up からつなぎ目と主語を落とした形です。 Being young, he can work all day long. [6] は Because he is young から、 Going home last night, I saw her again. [7] は When I was going home last night からできています。 ここで 厄介なこと が起きます。つなぎ目の語を落としたので、 理由なのか時なのか、文に書いていません 。読み手が前後から決めます。だから分詞構文は、規則を覚えても読めるようになりません。 実文で数をこなすしかない ——下の「実文で通す」に、読 C から 5 通りを引いてあります。 書くときは、 迷ったらつなぎ目の語を残してください 。 Seeing that it is late, we should go home. [11] のように Seeing that と書けば、理由だと分かります。分詞構文は 読むための形 で、書くほうは第 5 期まで急がなくてかまいません。 打ち消しと、前のこと 分詞を打ち消すときは、 not をいちばん前 に置きます。 Not having seen her before, I did not know her. [10] がその形です。 to + 動詞のときも同じで、 It'd be better not to go out. [12] のように not が to の前に来ます。 打ち消す印は、打ち消したい塊の前 ——位置だけ覚えれば足ります。 主役の文より 前 のことを言いたいときは、 having + 過去分詞にします。 Having done his work, he went out. [8] は、仕事を終えたのが先、出かけたのが後です。 Having seen him before, I knew him at once. [9] も、会ったのが先、分かったのが後。ふつうの -ing なら 同時 、 having + 過去分詞なら その前 ——この二段だけです。 打ち消しと「前のこと」を重ねると not having + 過去分詞になります。 Not having seen her before, I did not know her. [10] がまさにその形で、 打ち消しが先、時の印が後 という順に並んでいます。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも動詞で名詞を修飾する形があります。 「走っている犬」「壊れた窓」——しかも英語より簡単で、 動詞をそのまま名詞の前に置けます 。ずれるのは 長くなったときの置き場所 と、 文全体にかける形があるかどうか です。 長くなったときに、どちらへ伸びるか 修飾の長さ 日本語では 英語では 短い 走っている犬(前) a running dog (前) 長い 公園を走っている犬( 前のまま ) a dog running in the park ( 後ろ ) 日本語は どれだけ長くなっても前 です。英語は 2 語を超えると後ろへ回ります。この差があるので、日本語の頭のまま英語を作ると、 動詞がいつまでも出てこない 文になります。読むときも同じで、日本語話者は 名詞の後ろに続く分詞を見落としがち です。 名詞のあとに -ing か過去分詞が来たら、まだ主語は終わっていない ——そう身構えてください。 ★日本語に無い区別 — つなぎ目の語を落とすということ 日本語の「〜して」「〜ながら」「〜ので」は、 意味の種類まで書いてあります 。「遅いので帰ろう」の「ので」は理由だとはっきり言っています。分詞構文はそこを言いません。 関係の種類を読み手に預ける 形です。 これは日本語には無い書き方で、だから日本語話者には落ち着きが悪く感じられます。けれども英語の書き手にとっては、 関係を決めつけずに並べられる のが利点です。第 8 編「論」で文章を書くときは、 決めつけたいところにはつなぎ目の語を置き、並べるだけでよいところは分詞に畳む ——この使い分けが効いてきます。 日本語の「〜ながら」に近いもの 分詞構文のうち、いちばん日本語に近いのが 同時に起きていること を言う形です。下の「実文で通す」に置いた carrying peas and beans to her family in the wood [13] は、「豆を運びながら」と訳せます。この用法だけは日本語の「〜ながら」「〜して」と重なるので、 ここから入る と分詞構文に慣れやすくなります。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。この課の道具のうち、 not to + 動詞 が角を取るのに効きます。「するな」と言わずに「しないほうがよい」と言えるからです。下の四つは、どれも「そこへ行かないほうがいい」を伝えています。 英文 日本語訳 どんな相手に Don't go there. [14] そこへ行ってはいけません。 命令で止める。親しい相手か、危ないとき You shouldn't go there. [15] そこには行かない方がいいよ。 助言の形にする It'd be better not to go there. [16] そこには行かない方がいいよ。 ★主語を it に逃がし、 not to で包む I think it's better not to do it. [17] やらない方がいいと思うよ。 「私はそう思う」を足して、自分の意見として出す 一行めは命令です。相手の行動を直に止めています。二行めは助言の形になりました。三行めで主語が it に移ります。誰がそう言っているのかが文から消え、 行かないほうがよいという事実だけ が残ります。四行めは逆に「私はそう思う」を足して、 自分の意見にすぎない と示しています。 三行めと四行めは、向きが逆なのに どちらも柔らかい のが面白いところです。事実として言えば自分を消せますし、意見として言えば押しつけになりません。日本語でも「行かないほうがいいですよ」と「私だったら行かないと思います」の二通りがあります。 どちらを選ぶかは相手との距離で決めてください 。 よくある誤り 三つ挙げます。どれも日本語の仕組みを英語にそのまま持ち込んだ形で、下の誤文は Epoché の作例です。書いた英文ではなく、 話した英文 で自分を確かめてください。 する側とされる側を取り違える。 a broken window を a breaking window と言う。窓は自分で壊れたのではありません。 -ing は する側 、過去分詞は される側 。気持ちを言う語( interested と interesting など)で特によく起きます。 人は -ed 、物事は -ing と覚えると外しません。 長い修飾を名詞の前に置く。 the standing there woman → the woman standing there 日本語はどれだけ長くても前から修飾するので、そのまま写すと出ます。 2 語以上なら名詞の後ろ 。関係代名詞の縮んだ形だと思えば、位置は自然に決まります。 分詞構文の主語を取り違える。 Walking in the park, the dog barked. ——これだと 犬が公園を歩いている ことになります。分詞構文の主語は、落としたぶん 主役の文の主語 と同じだと読まれます。違うなら畳めません。書くときは 主語が同じかどうかを先に確かめて ください。 実文で通す 分詞構文は、規則を覚えても読めるようになりません。 つなぎ目の語が無い ので、理由なのか時なのか付帯なのかを、読み手が前後から決めるからです。読 C から 5 文引きました。 五つとも読み方が違います 。 どの篇から 原文 どう読むか 8.45 読編 knowi