11.37 孟子 離婁下 — 齊人に一妻一妾有り — Epoché
この篇でできるようになること の、と行くという之を分け、五つの動詞を指せます。 一緒に食事をする相手をまとめる形を訳せます。 妻が探したことと実際に見たことを、本文に沿って説明できます。 前提 :11.36「孟子 梁惠王上 — 五十步、百步を笑ふ」。動作を示して読み手に判断させる文章を、物語の中で読みます。 食事の相手を尋ねる 孟子の離婁下の最後に置かれた物語です。齊の男は、出かけるたびに酒肉を十分に食べて帰り、食事の相手は身分の高い人々だと妻に言います。ところが、そのような人が家へ来たことはありません。 良人 は夫です。良い性格の人、という評価ではありません。 饜 は、飽きるほど食べる意味で yàn と読みます。妻は、夫が食べて帰る習慣と、語られる相手が実際には来ないことを結び付けます。そこから疑いを持ちます。 この抄の後には、妻と妾が中庭で泣き、何も知らない男が威張って帰る場面と、孟子の評が続きます。ここでは妻が実際の食事の仕方を見つける所までを追います。 行く場所を、之で読む 良人之所之 の前の 之 は、夫の、という関係を作ります。後ろの字は行く動詞です。夫の行く所、というまとまりになります。所の後ろに、何をするかという動作を見つけると読めます。 特別編 33篇 の市場へ行く形と同じく、場所へ進む動詞として使われています。本文には、この行く働きが五か所あります。一つずつ読むと、妻が夫の動きを追い、夫が食べ物を求めて移る流れが見えてきます。 本文の句 行く字の位置 訳の手がかり 瞷良人之所之 所の後 夫が行く所をうかがう 施從良人之所之 所の後 夫が行く所へこっそりついて行く 卒之東郭墦間 東郭の前 ついに町の東の墓場へ行く 之祭者 祭者の前 祭る人の所へ行く 又顧而之他 他の前 また見回してほかへ行く 五つの動詞のうち、夫が行く所という形は二回出ます。妻の決心の言葉と、実際について行く文です。どちらも数えて五つです。 夫の所の、と全てを、の、でつながないでください。所の後ろや、行き先の前にある字は、行く動作を担っています。 誰と一緒なのかをまとめる 所與飲食者 は、ともに飲み食いする相手です。 與 が、一緒にする相手を結び、その相手を 所 の形で取り出し、 者 で人としてまとめています。 食べられる物を指す形ではありません。一緒に食べる相手を問うています。現代語で、夫と一緒に食事をする人、と言い換えると、長いまとまりが何を表すかを確かめられます。 與立談者 も、ともに立ち話をする相手です。食べる人、話す人とだけ訳さず、誰と一緒にするのかという関係を残してください。妻が確かめたいのは、夫の人付き合いだからです。 来たことがない、だから見てみる 未嘗有顯者來 は、これまで身分の高い人が来たことがないという意味です。 未嘗 は、これまで一度もないという否定で、現代語の経験を否定する 从来没 と 过 の形とも比べられます。 今日だけ来なかったという話ではありません。夫は毎回そのような人と食べたと言うのに、一度も来ないという食い違いが、妻の疑いの根拠です。 吾將瞷良人之所之也 で、妻は夫の行く所をうかがおうと決めます。 將 は、これからしようとすることです。ここで語られた決心が、次の段の実際の動きへつながります。 町に、立ち話をする相手がいない 蚤起 の 蚤 は、早いという 早 に当たります。早く起きるという副詞の働きです。 施從 の 施 は yí と読み、斜めに、こっそり、という様子を表します。 徧國中無與立談者 では、町じゅうで夫と立ち話をする人がいません。 國 はここでは都城、町です。広い国土全体を歩き回ったという意味に広げないでください。 探していたのは華やかな食事の相手なのに、まず見えてくるのは、話す相手さえ現れないことです。これだけで夫に知り合いが一人もいないと断定するのではありません。この日に町で見たことが、夫の話を疑わせると読みます。 良人は夫、國中は町の中です。人物の性格や全国の広さを、見慣れた漢字から付け足さないようにします。 残り物を求める動きで終える 夫はついに墓場へ行き、墓前で供え物をして祭る人から残り物をもらいます。 乞其餘 、 不足 、 又顧而之他 と、もらう、足りない、さらにほかへ行く、という順です。恥ずかしい、悲しいという気持ちの説明は、この場面に書かれていません。 此其為饜足之道也 は、これが食べて満ち足りるやり方だったという語り手の評です。立派な交際を思わせた夫の言葉と、この道、やり方、との間に皮肉が生まれます。 言ったことと見えたことを比べるには、妻の疑いだけで終えず、何をどこで手に入れたかまで追います。移動を表す字が繰り返されることも、隠されていた行動を一つずつ確かめる読みの足場になります。 語釈 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 良人 名詞 夫 良い人という評価ではない 其良人出 その夫が出かける 饜 動詞 飽きるまで食べる 十分に食べて帰る習慣を述べる 饜酒肉 酒肉を十分に食べる 反 動詞 帰る 返に当たる 而後反 その後に帰る 顯者 名詞 身分の高い人 来たことがない相手 未嘗有顯者來 身分の高い人が来たことはない 瞷 動詞 うかがう 妻がこっそり確かめる 瞷良人之所之 夫の行き先をうかがう 蚤 副詞 早く 早に当たる 蚤起 早く起きる 施 副詞 斜めに・こっそり ついて行く様子 施從 こっそりついて行く 墦 名詞 墓 町の東の行き先 東郭墦間 町の東の墓場のあいだ 乞 動詞 乞う・もらい求める 残り物を得る動作 乞其餘 その残り物をもらう 練習 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 其良人出,則必饜酒肉而後_ 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 而_嘗有顯者來 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 吾_瞷良人之所之也 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 卒_東郭墦間 本文の之を、の、と行くに分け、行くに当たる五か所を句ごとに書いてください。 「未だ嘗て顯者の來る有らず」と「吾將に良人の之く所を瞷はんとす」を、本文の字の順に書き戻してください。 所與飲食者 と 與立談者 を、夫と一緒にする相手だと分かる現代語へ直してください。 妻が確かめたかったことと、実際に見たことを、本文の句を引いて二文で説明してください。 戻す語の 丈夫 ・ 妻子 ・ 独自 ・ 步行 ・ 逛 ・ 失望 を使い、妻から見た場面として、夫の外出、妻の歩き、失望を、現代語の三文で書いてください。 音読:次の原文の句を ▶ で聞き、声に出して読んでください。 蚤起,施從良人之所之,徧國中無與立談者。 卒之東郭墦間,之祭者,乞其餘;不足,又顧而之他,此其為饜足之道也。 書き下し:蚤(つと)に起き、施(なな)めに良人の之く所に從ふ。國中を徧(あまね)くするも、與に立ちて談ずる者無し。卒(つひ)に東郭の墦間に之き、祭る者に之きて、其の餘を乞ふ。足らざれば、又顧みて他に之く。此れ其の饜足を為すの道なり。 ▶ の手本を聞き、妻が早く起きる所から第三段を続けて音読します。町で立ち話をする者がいない一句で一度止め、その後の行動は淡々と読みます。続けて上の書き下し文も、同じ所で区切って読んでください。 この篇のまとめ 五つの行く動詞を追い、食事や立ち話の相手をまとめる形を読みました。夫の説明、妻の疑い、実際の行動を区別し、見つからない相手と墓場の動作から事実を捉えます。 次の篇へ 次の11.38では李白の黃鶴樓送孟浩然之廣陵を読みます。題にも行くという之があり、七字の句を区切りながら見送る視線を追います。 答え 其良人出,則必饜酒肉而後反 而未嘗有顯者來 吾將瞷良人之所之也 卒之東郭墦間 瞷良人之所之 と 施從良人之所之 の最後の字、 卒之東郭墦間 、 之祭者 、 又顧而之他 の動詞です。二つの 良人之所之 の前の字と、 饜足之道 の字は、の、です。 未嘗有顯者來 吾將瞷良人之所之也 和他一起吃喝的人 和他在街上说话的人 妻は 所與飲食者 という、一緒に食べる相手を確かめようとしました。実際には 徧國中無與立談者 で、さらに墓場で 乞其餘 と残り物をもらう姿を見ました。 丈夫独自去城里逛。 我步行去他去的地方。 我没这样失望过。 参考文献 孟子『孟子 離婁下』。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。本文は抄。 出所: 当館所蔵の文書