14.16 行の途中から始まる — 『テンペスト』の消え方 — Epoché
この篇でできるようになること ★ 一文が七行にまたがる のをたどれる。 ★ 行の途中から始まる句 を見つけられる。 ★ 名詞句を並べて消す 組み立てが読める。 ★ 半行で場面へ戻る のが分かる。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ 特別編は 順番に読む必要がありません 。★ 1 篇が 1 作品 で、★ どの篇から始めてもかまいません。 ★ シェイクスピアは 英語の教養の二本柱の一つ です( 12.17 知編 )。★ We are such stuff as dreams are made on は、 英語でいちばん引かれる一行の一つ です。 読む前に確かめること どこで置いたか ★ シェイクスピアが英語に残したもの ★ 12.17 知編 ★ 長い文の解剖(主語と動詞だけ探す) ★ 3.34 型編 比喩は死んだものと生きているもの 3.61 型編 ★ 場面を一行で。 ★ 魔術師が 精霊たちに祝いの舞を見せていた のを、★ 途中で急にやめ ます。★ 見ていた若い二人が 驚いている ので、★ この十一行で 取りなして います 。 ★ 読編にも 同じ作者の芝居 があります ——★ 8.195 読編 ・ 8.196 読編 (『ハムレット』の独白と墓掘り) 。★ そちらは 韻文と散文が入れ替わるところ を見る篇 で、★ この篇は 別の芝居 です——★ 同じ見方がそのまま使えます 。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 85 語、★ 11 行 しかありません。★ 1 行が 1 段落 なのは、★ 行が 音の単位 だからです。 ★ 数えられたのは 9 行 、★ 音節は 10 から 13 です。★ ここで大事なのは 行の数ではなく文の数 です——★ 文は 4 本 しかありません。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 われらの宴はこれで終わった。ここにいた役者たちは、 前にも言ったとおり、みな精霊であって、 空へ、薄い空へと溶けてしまった。 そして、この幻の土台のない造りと同じように、 雲をかぶった塔も、目をみはる宮殿も、 おごそかな神殿も、この大きな地球そのものも、 まことに、そこに住むものすべてが、溶けて消え、 この実体のない見せ物が消えたように、 あとに雲のひとひらも残さない。われらは、 夢と同じ材料でできている。そして、われらのささやかな人生は 眠りで丸く囲まれている。君、私は心が乱れている。 語釈 帯の外の語は 13 語だけです。★ 半分が 消される建物の名 ( towers ・ palaces ・ temples )で、★ あとは 詰めた綴り ( capp'd ・ vex'd )です。★ この十一行も、やさしい語だけでできて います。 語(品詞) 意味 注 Yea en 副 まことに(古い肯定の語) Yea, the harvest this year has been most bountiful indeed. まことに、今年の収穫は実に豊かなものでした。 baseless en 形 土台のない Their baseless accusations were quickly dismissed by the judge. 彼らの土台のない非難は、裁判官によって速やかに退けられました。 capp'd en 形 覆われた。 capped を詰めた形。 cloud-capp’d で雲をかぶった foretold en 動 先を言い当てた The old sailor foretold a storm long before the clouds appeared. その老いた船乗りは、雲が現れるずっと前に嵐を言い当てました。 gorgeous en 形 目をみはるほど美しい She wore a gorgeous gown to the wedding reception last spring. 彼女は去年の春の披露宴に、目をみはるほど美しいドレスを着ていきました。 insubstantial en 形 実体の無い His argument seemed insubstantial once we checked the facts. 事実を確かめてみると、彼の主張は実体の無いものに思えました。 melted en 動 溶けた The morning sun quickly melted the frost on every window. 朝日はすぐに、どの窓の霜も溶かしてしまいました。 pageant en 名 行列の見せ物。飾り立てた芝居 The town organized a colorful pageant for the harvest festival. その町は、収穫祭のために色とりどりの行列の見せ物を催しました。 palaces en 名 宮殿(複数) Tourists often visit the old palaces along the quiet river. 観光客は、静かな川沿いの古い宮殿をよく訪れます。 revels en 名 宴、祝いの催し The king's revels lasted three full days and nights. 王の宴は、まる三日と三晩続きました。 solemn en 形 おごそかな。厳しい The judge wore a solemn expression throughout the long trial. その裁判官は、長い裁判のあいだずっとおごそかな表情をしていました。 temples en 名 神殿(複数) Ancient temples still stand along the quiet mountain path. 古い神殿は、いまも静かな山道に沿って立っています。 vex'd en 形 心を乱された。 vexed を詰めた形 一文が七行にまたがる ★ 11 行に対して文は 4 本 です。★ いちばん長い一文は 7 行 を使い ます。 ★ その一文の 主語と動詞 だけ抜くと、こうなります ( 3.34 型編 )。 どこか 原文 働き ★ 主語 These our actors ★ だれが ★ 動詞 were all spirits ★ どうだった 並ぶ主語 The cloud-capp’d towers, the gorgeous palaces, もう一つの主語の群れ ★ その動詞 shall dissolve ★ これから消える ★ あいだの五行は ぜんぶ飾り です。★ だから 途中で切ると分からなくなり ます ——★ 行の終わりで 止めずに息だけ置く 読み方が★ ここでいちばん要り ます( 14.11 英語の名文 )。 ★ 一文めと四文めは とても短い ことにも気づいてください—— Our revels now are ended. と Sir, I am vex’d: 。★ 長い一文を 短い文で挟んで います 。 行の途中から始まる ★ いちばん有名な句は、 行の頭にありません 。 Leave not a rack behind. We are such stuff As dreams are made on, and our little life Is rounded with a sleep. Sir, I am vex’d: ★ We are such stuff は 一行めの後半 、★ As dreams are made on は 二行めの前半 です。★ つまり 句が行の境をまたいで います 。 どこで切るか 何が起きるか ★ 行の終わりで止める ★ such stuff で終わり、何の材料か分からない ★ 句の頭から読み直す ★ 行の形が消える ★ 行の終わりに息だけ置く ★ stuff のあとの間が、答えを待つ間になる ★ 三つめが この句の効き方 です。★ stuff (材料)と言ってから 一拍おいて ★ As dreams (夢の)と続き ます——★ その一拍が 驚きの間 です。 ★ もし一行に収めたら、 この間は作れません 。★ 行の切れ目が 意味の道具になって いる ——★ これが 詩を行で書く理由 です。 名詞句を四つ並べて消す ★ 消えるものが 四つ並び ます 。 何が消えるか 何を指すか ★ The cloud-capp’d towers ★ 雲をかぶった塔。高いもの ★ the gorgeous palaces ★ 豪華な宮殿。富のあるもの The solemn temples おごそかな神殿。聖なるもの ★ the great globe itself ★ この大きな地球そのもの ★ 順に注意してください ——★ 塔 → 宮殿 → 神殿 → 地球 。★ だんだん 大きく、そして重く なり ます。★ 最後に 全部を含むもの を置いて 、★ 一つの動詞で消し ます—— shall dissolve 。 ★ the great globe には 二重の意味 があります 。★ 地球 と、★ この芝居を上演していた 劇場の名 です。★ 客席で聞いている人は、 いま自分がいる建物の名を言われて います 。 ★ air が 2 回続く のも見てください—— Are melted into air, into thin air: 。★ 同じ語を重ねて 薄くしていく 手です( 14.12 英語の名文 の Tomorrow と同じ)。 訳 ★ 十一行を通して訳します。 原文の要 日本語 Our revels now are ended. ★ われらの宴はこれで終わった Are melted into air, into thin air: ★ 空へ、薄い空へと溶けてしまった And, like this insubstantial pageant faded, ★ そして、この実体のない見せ物が消えたように We are such stuff ★ われらはそういう材料でできている Is rounded with a sleep. ★ 眠りで丸く囲まれている ★ rounded with a sleep が 訳しにくいところ です。★ rounded は 「丸で囲む」 ——★ 前も後も眠りで、 あいだの短いところが人生 だ、という形です。 ★ such stuff の stuff は いまの「もの」より固い語 です——★ 「材料・生地」 。★ だから 「夢でできている」ではなく「夢と同じ材料でできている」 です。 音読 三周します 。★ 一周めは 行の終わりで軽く息を置いて 、★ 二周めは 四つの名詞句を同じ強さで 、★ 三周めは 通して 読みます。判定は次の 2 行でします。 Leave not a rack behind. We are such stuff Is rounded with a sleep. Sir, I am vex’d: 一行めは、★ stuff で 行が終わる のを守って ください。★ 次の行へ 続けて言ってしまう と、 間が消え ます 。 二行めは、★ sleep のあとで 声の調子を変えて ください。★ ここで 詩から場面へ戻り ます——★ Sir, I am vex’d は 目の前の相手への言葉 です。 この篇で使う型 型の名 この篇での出方 戻る課 長文の解剖 These our actors 3.34 型編 並列構造 The solemn temples, the great globe itself, 3.44 型編 比喩 And, like this insubstantial pageant faded, 3.61 型編 受動 Is rounded with a sleep. 3.35 型編 予定と約束 Yea, all which it inherit, shall dissolve, 3.52 型編 圧縮した名詞句 the baseless fabric of this vision 3.46 型編 考える ★ この十一行は 取りなしの言葉 です。★ 若い二人を 安心させるために 話して います。 Sir, I am vex’d: ★ 考えてほしいのは、 これは安心する言葉か です。★ 言っているのは 「すべて消える」 ——★ 手がかりは、 最後の半行で自分の乱れを認めている こと です。★ 取りなしながら、 自分のほうが動じて います。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Our revels now are ended | The Tempest (2022) | Act 4 Scene 1 | Summer 2022 | Shakespeare's Globe Shakespeare's Globe (1:10, 2022) グローブ座の上演(2022)第 4 幕第 1 場。行の後半から始まって次の行へまたぐところが、息の切り方で見える。 練習 原文を 通して音読 する。3 周する。1 周目は行の終わりで軽く息を置いて、2 周目は四つの名詞句を同じ強さで、3 周目は通して読む。 ★ 七行の一文をたたむ 。いちばん長い一文から 主語と動詞だけ を抜き、 一行の文 に書き直す(日本語でよい)。 ★ 四つの名詞句を入れ替える 。塔・宮殿・神殿・地球の順を 変えて 読み、 効きが弱くなるか を書く。 この篇のまとめ ★ 11 行に対して文は 4 本 ——いちばん長い一文が 7 行を使う。 ★ 長い一文を短い文で挟む —— Our revels now are ended. と Sir, I am vex’d: 。 ★ いちばん有名な句は行の頭にない —— We are such stuff は行の後半、 As dreams are made on は次の行の前半。 ★ 行の切れ目が意味の道具になる —— stuff のあとの一拍が、答えを待つ間になる。 ★ 消えるものを四つ並べる ——塔・宮