11.35 孟子 公孫丑上 — 苗を揠きて長ずるを助く — Epoché
この篇でできるようになること 小話の前後にある言葉を分け、議論の中の役割を示せます。 主語と述語をまとめる之と、人をまとめる者を訳せます。 役に立たないだけでなく害になるという結びを、現代語で言えます。 前提 :11.34「淮南子 人間訓 — 塞翁が馬」。起きたことをどう評価するかに注意し、本人の言い分と結果を比べます。 話の前にも、後にも結論がある 孟子の公孫丑上から、浩然の気を養う方法を論じる中の一段を読みます。苗を育てる方法だけを説明する文章ではなく、自分を養う議論にたとえを置いた形です。 初めには、努めることを持ちながら無理に伸ばそうとしてはならないという前置きがあります。続いて宋の人の小話が入り、最後に放置する人と無理に引く人を比べる評が来ます。 部分 本文の手がかり 読む役割 前置き 無若宋人然 これから語る人を悪い例として先に示す 小話 宋人有閔其苗之不長而揠之者 本人の意図と実際の結果を見せる 評 非徒無益,而又害之 役に立たないだけでなく害になると結ぶ 特別編 12篇 では小話の後で何のたとえかが示されました。ここでは先に悪い例だと告げるため、読み手は初めから、自分にも同じことがないかと考えて読めます。笑い話として距離を置くだけでは終わりません。 禁止を並べる前置き 勿助長也 の 勿 は禁止です。 無若宋人然 の 無 も、ここでは 毋 に当たり、宋の人のようであってはならないという意味です。 前置きは 而勿正,心勿忘,勿助長也。 と切ります。 勿正 は結果をあてにするな、 心勿忘 は心に忘れるな、という禁止です。 禁止を続けて置き、無理に結果を求めないことと、忘れて放置しないことを並べます。三つ目の 勿助長也 で、無理に伸ばそうとするなと結びます。 何を気に病んだのか 其苗之不長 は、その苗が伸びないことです。苗という主語と伸びないという述語の間に 之 があります。全体を 閔 という気に病む動詞の対象にします。 その人は、苗の成長が遅いのを気にして、苗を引っ張り上げます。 揠之 の 揠 は、高くするために引く動作です。苗を抜き取って捨てる話にすると、本人が成長を助けたと言う筋が分からなくなります。 人を紹介する 有 から、最後の 者 までが長くても、誰が何をした人なのかを一つに捉えます。途中の苗が伸びないことを、別の人物の説明にしてしまわないでください。 引っ張り上げることと、苗を抜き取ることを分けてください。本人は育てるつもりで、背を高く見せる動作をしています。 疲れたと言い、助けたと喜ぶ 今日病矣 は、今日はくたびれた、という言葉です。 病 を病気になったと読むのでなく、疲れて帰った前の様子とつなぎます。現代語へ直すときは、疲れたという内容を残します。 予助苗長矣 の 予 は私です。本人は苗が伸びるのを助けたと思っています。しかし、息子が見に行くと 苗則槁矣 と、苗は枯れていました。本人の成果の報告と、実際の結果を別々に読んでください。 疲れたという字だけを見て、病気で帰宅した話に替えないでください。苗に手を加えた労力と、助けたつもりの言葉がつながっています。 二種類の人を比べる 評は 天下之不助苗長者寡矣 で始まります。世の中に苗の伸びるのを助けない人は少ない、という一文で、そのあとに二種類の人が来ます。続く句では、役に立たないと思って放置する人と、無理に育てようとする人を並べます。前者が 不耘苗者 、後者が 揠苗者 です。評に並ぶ種類は二つです。 どちらも動作のまとまりを 者 で受け、人を示しています。現代語の 的人 と比べ、何をする人、何をしない人かを読みます。 草を取らずに放っておくことも、無理に引くことも、育てるための適切な関わりではありません。小話の人だけを笑うのでなく、何もしない側の例も並ぶ所まで読みます。 役に立たない、その上に害になる 非徒無益,而又害之 は、役に立たないだけでなく、その上に害する、という形です。 非徒 で前の内容だけにはとどまらないとし、 而又 でさらに次を加えます。現代語の 不但 ・ 而且 に当たります。 この文は、二つの良い点を付け足すのではありません。役に立たないという悪さの上に、対象を損なうというさらに悪い結果を置いています。何もしないより、無理に助けようとするほうが悪いという評価です。 前の禁止が、最後に結果から理由付けられます。前置きで聞いた、無理に伸ばすなという言葉を、小話を通った後でもう一度受け取ります。すると、何を避けるべきかが具体的になります。 語釈 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 助長 動詞 無理に伸ばそうとする 日本語の「物事を後押しする」意味で読まない 勿助長也 無理に伸ばそうとしてはならない 閔 動詞 気に病む 成長しないことへの思い 閔其苗之不長 苗が伸びないのを気に病む 揠 動詞 引っ張り上げる 抜き取るのとは分ける 揠之 それを引っ張り上げる 芒芒然 形容の語 疲れた様子 帰る時の様子 芒芒然歸 疲れきって帰る 病 動詞 くたびれる ここでは病気ではない 今日病矣 今日はくたびれた 予 代詞 私 宋の人が自分を指す 予助苗長矣 私は苗が伸びるのを助けた 槁 動詞 枯れる 実際に生じた結果 苗則槁矣 苗は枯れていた 耘 動詞 草を取る 世話をする動作 不耘苗者 苗の草を取らない人 非徒 接続の形 だけでなく 後のさらに悪い結果へ進む 非徒無益 役に立たないだけでなく 害 動詞 損なう 対象は苗 而又害之 その上にそれを損なう 練習 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 _助長也 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 閔其苗_不長 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 揠苗_也 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 __無益 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 __害之 非徒無益,而又害之 を、現代語の 不但 ・ 而且 を使って言い換えてください。同じ形の文をもう一つ、自分で作ります。 今日病矣!予助苗長矣! を、宋の人の現代語の言葉にしてください。 病 ・ 揠 ・ 予 ・ 無 ・ 助長 のこの本文での意味を書いてください。 評の二種類の人と、より悪いとされる側を説明してください。 戻す語の 植物 ・ 着急 ・ 专心 ・ 放松 を使い、苗を育てる人のようすを現代語で二文書いてください。 本文を前置き・小話・評の三つに区切り、それぞれの始めの句を本文から書いてください。 宋人有閔其苗之不長而揠之者 を日本語に訳し、 之 と 者 の働きを書いてください。 音読:次の原文の句を ▶ で聞き、声に出して読んでください。 必有事焉,而勿正,心勿忘,勿助長也。 宋人有閔其苗之不長而揠之者,芒芒然歸,謂其人曰:『今日病矣!予助苗長矣!』其子趨而往視之,苗則槁矣。 以為無益而舍之者,不耘苗者也;助之長者,揠苗者也,非徒無益,而又害之。 ▶ の手本を聞き、前置きの禁止は同じ調子で、小話は軽く速く、最後の評はゆっくり音読します。役に立たないだけでなく害になるという結びを、はっきり読んでください。 この篇のまとめ 苗の成長を助けたという本人の言葉と、枯れた結果を分けました。前の禁止から小話、二種類の人への評まで読み、害が加わる結びを受け取ります。 次の篇へ 次の11.36では五十歩百歩の問答を読みます。戦のたとえで王に答えさせ、その答えを王自身の政治へ返す流れを確かめます。 答え 勿助長也 閔其苗之不長 揠苗者也 非徒無益 而又害之 不但没用,而且伤害了它。 他不但浇水,而且除草。 我累坏了。 [1] 苗长高了!我帮了它! くたびれる、引っ張り上げる、私、するな、無理に伸ばそうとする、です。 草を取らず放置する人と、苗を引っ張り上げる人です。後者は役に立たないだけでなく苗を損なうため、より悪いとされています。 他着急了,去地里看植物。 他没放松,专心拔苗。 前置きは 必有事焉 から、小話は 宋人有閔其苗之不長而揠之者 から、評は 天下之不助苗長者寡矣 からです。 宋の人に、その苗が伸びないのを気に病んで、それを引っ張り上げた者がいた。 之 は 其苗 と 不長 の間に入り、「その苗が伸びないこと」というまとまりを作ります。 者 は 閔其苗之不長而揠之 を受けて、そうした人を表します。 参考文献 Tatoeba 文 #13855610( 我累坏了。 )。簡体字に改めた。Tatoeba Project, CC BY 2.0 FR. https://tatoeba.org/en/sentences/show/13855610 孟子『孟子 公孫丑上』。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。本文は抄。 出所: 当館所蔵の文書