8.32 三つの寓話 — 鼬・小魚・けちん坊(イソップ) — Epoché
この篇でできるようになること is worth more than の形で言われた教訓を読める。 more than と no more than の違いが分かる。 However + 形容詞 の譲歩が分かる。 呼び名と中身の食い違い から皮肉に気づける。 前提 : 8.31 まで。 読む前に 三つの話が入っています。順に、 かごに入りこんで出られなくなった鼠 、 逃がしてくれと頼む小魚 、 穴に金を埋めたけちん坊 です。 三つとも 教訓が最後の一文 に置かれています。 8.31 読編 で置いたとおり、 短くて言い切りの一文が教訓 です。ただし一つめの話には教訓がありません。 鼬のせりふがそのまま教訓になって います。 気をつけるところを三つ置きます。 一つめ、 教訓が比べる形 だということです。どちらも is worth (値打ちがある)という語を使い、 than で何かと比べます。下の「構文の骨」で扱います。 二つめ、 呼びかけの語 です。 My friend 、 Mr. Fisherman ——相手をどう呼ぶかが、 その場の関係を示して います。そして一つめの話では、 呼び名と中身が食い違います 。 三つめ、 どの話も途中から始まる ことです。一つめは「ついに満腹した」から始まります。何をして満腹したのかは書かれていません。 あとの文から逆に分かる ので、気にせず進んでください。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 326 語、十六段落です。書き出しはこうです。 At last he felt satisfied and dragged himself to the opening to get out again. 先に原文だけを、 辞書も語釈も見ずに 最後まで読んでください。読み終わったら、 二つの教訓を声に出して 言ってみてください。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 ネズミとイタチ ついに満腹したので、ネズミはまた外へ出ようと、入り口まで身を引きずっていきました。けれども、やっとのことで頭を出すのが精いっぱいでした。そこでネズミは、おなかの中の苦しさと、かごから逃げ出したい焦りとで、うめいたり、うなったりしながら、そこにすわりこんでいました。 ちょうどそのとき、イタチが通りかかりました。イタチはすぐに事情をのみこみました。 「わが友よ」とイタチは言いました。「おまえが何をしていたかは分かっているよ。詰め込んでいたんだろう。それが報いというものさ。入ったときとそっくり同じ具合になるまで、おまえはそこにいるしかないね。おやすみ、いい気味だ。」 漁師と小さな魚 獲った魚で暮らしを立てている貧しい漁師が、ある日運が悪く、ごく小さな稚魚一匹のほかは何も獲れませんでした。漁師がそれをかごに入れようとすると、小さな魚が言いました。 「どうか見のがしてください、漁師さん! わたしはこんなに小さいので、家まで運ぶ値打ちもありません。大きくなったら、ずっとよいごちそうになりますから。」 けれども漁師は、さっさとその魚をかごに入れてしまいました。 「おまえを水に戻すなんて、どれほどおろかなことだろう」と漁師は言いました。「どんなに小さくても、おまえは何も無いよりはましだ。」 小さな儲けのほうが、大きな約束より値打ちがある。 けちん坊 「あなたの金ですって! あの穴の中に? どうしてそんなところに入れたんです? なぜ、物を買わなければならないときにすぐ取り出せる家の中に置いておかなかったんです?」 「買う、だと!」とけちん坊は怒って金切り声を上げました。「なにを言う、わしはあの金に一度も手を触れたことがない。少しでも使うなんて、考えられもしなかった。」 見知らぬ人は大きな石を拾い上げ、それを穴の中へ投げ込みました。 「そういうことなら」と見知らぬ人は言いました。「その石を埋めておきなさい。あなたにとっては、失くした宝とちょうど同じだけの値打ちがありますよ!」 持ち物は、それを使うぶんしか値打ちがない。 語釈 帯の外の語は 26 語です。下に 全部 出します。五つは登場人物の名なので、覚えるのは残りです。 語(品詞) 意味 注 Fisherman en 名 漁師。登場人物なので大文字 Miser en 名 けちん坊。登場人物なので大文字 Mouse en 名 鼠。登場人物なので大文字 Mr en 名 〜さん( Mister の略) Mr. Johnson teaches mathematics at the local high school. ジョンソンさんは地元の高校で数学を教えています。 Weasel en 名 いたち。登場人物なので大文字 angrily en 副 怒って He slammed the door angrily and stormed outside. 彼は怒ってドアを乱暴に閉め、外へ飛び出しました。 anxiety en 名 気がかり、焦り She felt a deep anxiety before the important exam. 彼女は大事な試験の前に深い不安を感じました。 basket en 名 かご She filled the basket with fresh red apples. 彼女はかごに新鮮な赤いリンゴを詰めました。 discomfort en 名 苦しさ He tried to hide his discomfort during the long meeting. 彼は長い会議の間、苦しさを隠そうとしました。 dragged en 動 引きずった( drag の過去形) The boy dragged his heavy bag up the stairs. 男の子は重いかばんを引きずって階段を上りました。 escape en 動 逃げ出す The bird managed to escape from its small cage. その鳥は小さな鳥かごから逃げ出すことができました。 fisherman en 名 漁師( Fisherman と同じ語) The old fisherman mended his net by the shore. 年老いた漁師は岸辺で網を繕っていました。 foolish en 形 おろかな It was foolish of him to ignore the warning. 警告を無視するとは彼はおろかでした。 fry en 名 稚魚。 small fry で小さな魚 The pond was full of tiny fry swimming together. その池は一緒に泳ぐ小さな稚魚でいっぱいでした。 gold en 名 金(きん) The old chest was filled with shining gold. 古い箱は輝く金でいっぱいでした。 groaning en 動 うめいている The injured man lay groaning on the cold ground. 負傷した男は冷たい地面に横たわってうめいていました。 hole en 名 穴 The rabbit quickly disappeared into its small hole. うさぎはすばやく小さな穴の中に姿を消しました。 luck en 名 運。 bad luck で運が悪い It was bad luck that the rain ruined the picnic. 雨がピクニックを台無しにしたのは運が悪かったです。 moaning en 動 うなっている The old floorboards kept moaning under his heavy feet. 古い床板は彼の重い足の下でうなり続けました。 possession en 名 持ち物 The ring was her most treasured possession. その指輪は彼女の最も大切な持ち物でした。 screamed en 動 金切り声で言った She screamed loudly when she saw the spider. 彼女はクモを見て大きな金切り声を上げました。 spare en 動 見のがす、助ける The king decided to spare the young prisoner. 王はその若い囚人を助けることに決めました。 stone en 名 石 He skipped a flat stone across the calm pond. 彼は平たい石を穏やかな池の水面で跳ねさせました。 stranger en 名 見知らぬ人 A stranger knocked on the door late at night. 見知らぬ人が夜遅くにドアをノックしました。 till en 接 〜するまで They stayed awake till the storm finally passed. 彼らは嵐がついに過ぎるまで起きていました。 treasure en 名 宝 The pirates buried their treasure on a hidden island. 海賊たちは隠された島に宝を埋めました。 構文の骨 ★教訓は比べる形で立つ 二つの教訓を並べます。 どの話 教訓 The Fisherman And The Little Fish A small gain is worth more than a large promise. The Miser A possession is worth no more than the use we make of it. どちらも is worth + than の形です。 二つを並べて、どちらに値打ちがあるかを言う 。これが教訓のいちばん多い形です。 なぜかというと、 教訓とは選び方のこと だからです。「A のほうがよい」と言われて初めて、読む側は自分の選びを直せます。「A はよい」だけでは、何と比べてよいのか分かりません。 ★ more than と no more than 二つの教訓は、同じ形に見えて 正反対 です。違うのは no の一語だけです。 その形 その意味 この篇での言い方 A is worth more than B A のほうが値打ちがある 小さな儲けのほうが、大きな約束より値打ちがある A is worth no more than B A は B と同じだけ しか値打ちがない 持ち物は、それを使うぶんしか値打ちがない no more than は「B より多くない」ではありません。 「B と同じで、それ以上ではない」 という強い打ち消しです。 8.31 読編 の no stronger than a single stick と同じ形です。 三つめの話で、なぜこの形なのかを考えてください。けちん坊は金を穴に埋めて、一度も使いませんでした。見知らぬ人は、穴に 石 を投げ込んで言います—— It is worth just as much to you as the treasure you lost! 。「あなたにとっては、失くした宝と 同じだけの 値打ちがある」。 使わない金は石と同じ。だから教訓も no more than の形になります。 話の中身と、教訓の形が合っている ——よく書かれた寓話はそうなっています。 However + 形容詞 — どんなに〜でも 二つめの話の、漁師の最後のせりふです。 However small you may be, you are better than nothing at all. However + 形容詞 で 「どんなに〜でも」 という意味になります。「どんなに小さくても、お前は何も無いよりましだ」。 その形 その働き However + 形容詞 + you may be どんなに〜でも 。譲歩 中に入る may 「〜かもしれないが」と 一歩ゆずる ための語 同じ話に、もう一つ変わった形があります。 How foolish I should be これは「どれほどおろかなことだろう」という感嘆です。 should が入っているのは、 実際にはそうしないから です。「もし逃がしたとしたら、どれほどおろかだろう」—— やらないことを仮に言う ときの形です。 ★呼び名と中身が食い違うときは皮肉 一つめの話の、鼬のせりふを見てください。 My friend 「わが友よ」。ずいぶん親しい呼び方です。ところが、そのあとに続くのはこうです。 言っていること ほんとうの中身 I know what you've been doing お前のしたことは分かっている You will have to stay there till you feel just like you did when you went in 入ったときと同じ細さになるまで出られない Good night, and good enough for you. おやすみ—— いい気味だ 助けるどころか、置き去りにして帰ります。 呼び名と中身が食い違って います。これが 皮肉 です。 英語の物語は皮肉をよく使います。そして、 皮肉だとは書きません 。 8.27 読編 で置いたとおり、 物語は説明せず見せます 。読む側が、呼び名と中身のずれに気づくしかありません。 見分ける手がかりを一つ置きます—— やたらに丁寧な呼びかけのあとに、冷たい中身が来たら皮肉 。日本語でも同じことをしますから、感じは分かるはずです。 訳 第 2 期の読み物に 文ごとの訳は付けません 。 話ごと の要旨を置きます。 どの話 その話の筋 The Mouse And The Weasel (かごの中で食べ続けた)鼠はついに満腹し、出ようとして穴まで身を引きずった。だが頭を出すのが精いっぱい。腹の苦しさと出られない焦りで、すわったままうめいていた。そこへ鼬が通りかかり、すぐに事情を見て取って言う——「わが友よ、何をしていたかは分かっている。詰め込んでいたのだ。当然の報いだ。入ったときと同じになるまで、そこにいるほかない。お