8.195 一行は十音節 — 行の切れ目と文の切れ目はずれる — Epoché
この篇でできるようになること ★ 一行が十音節・五つの山 で組まれていると分かる。 ★ 行の切れ目と文の切れ目がずれる のを追える。 ★ 綴りを詰めた形( o’er ・ wish’d )が音のためだ と分かる。 ★ 韻文と散文が入れ替わる 場所と、その理由が読める。 前提 : 8.194 まで。 読む前に ★ この篇の原文の文書は、 一行が一段落 になっています 。★ ほかの篇と形が違います が、★ 誤りではありません。 どちらの文章か 何が単位か ★ 散文(ここまでの篇) ★ 段落。行がどこで折れても意味は変わらない ★ 韻文(この篇) ★ 行。行そのものが音の単位で、動かせない ★ だから、読むときも 行を意識して ください。 ★ 行の終わりで 必ず切るのではありません が、★ 行の終わりは 音の節目 です。 ★ 古い英語については 3.63 型編 で置きました ——★ 替わったのは六つだけ 。★ この篇では thou ・ thee ・ thy が合わせて 11 回出ます。 ★ どれも 親しい相手への二人称 で、★ 敬語ではありません。 ★ もう一つ断っておきます。 ★ この篇は 語数で切って あるので 、★ いちばん最後の行は 文の途中で終わり ます。 ★ 続きは 8.196 読編 ではなく、 第 5 幕 に飛びます。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 1408 語、行は 184 行、文は 119 本、一文の平均は 11.8 語です。話し手の名が立つ行は 29 行あり、話し手は 5 人です。 ★ 一文の平均が 11.8 語 ——★ 8.194 読編 の四分の一以下 です。★ けれども 読みやすいとは限りません 。★ 短いのは、 掛け合いが多い から です。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。 どちらが心にとって気高いのか、耐え忍ぶことか、 荒れ狂う運命の投げる石や放つ矢を、 それとも武器を取って、押し寄せる苦難の海に立ち向かい、 立ち向かうことでそれを終わらせることか。死ぬ――眠る、 それだけのこと。そして眠りによって終わらせるのだと言えるなら、 胸の痛みも、生身の体が受け継ぐ 数知れぬ生まれつきの打撃も。それこそは 心から願うべき成就だ。死ぬ、眠る。 眠る、もしかすると夢を見る――ああ、そこが厄介なところだ。 その死の眠りの中でどんな夢がやって来るか、 この世のしがらみを振り捨てたあとに、 それを思えば、ためらわずにはいられない。そこに考えどころがあり、 それが不幸をこれほど長い命にしているのだ。 でなければ、誰が耐えるだろう、世の鞭と嘲りに、 圧制者の不正に、おごる者の無礼に、 さげすまれた恋の痛みに、法の遅れに、 役人の横柄に、そして足蹴に―― 辛抱強い真価が、値打ちのない者から受ける足蹴に―― 自分の手で決着をつけられるというのに、 ただの小刀一本で。誰がこんな重荷を背負うだろう、 うめき、汗を流しながら、うんざりする人生の下で、 もし死んだあとの何かへの恐れがなければ―― まだ誰も見つけていない国、その境から 旅人が一人も帰って来ない国への恐れが、意志を惑わせ、 私たちに、いま抱えている災いをむしろ耐えさせるのでなければ、 知りもしない別の災いへ飛び込むよりは。 こうして意識が、私たちみなを臆病者にする。 こうして決意の生まれつきの血色は 思いの青白い色に覆われて病み衰え、 大きな重みと意味を持つ企ても、 このためらいのせいで流れがそれ、 行動という名を失う。待て、静かに、 美しいオフィーリアだ。ニンフよ、祈りの中で、 私の罪をみな思い出してくれ。 オフィーリア 殿下、 このところずっと、ご機嫌はいかがでいらっしゃいますか。 ハムレット ありがとう、元気だ、元気だ、元気だ。 オフィーリア 殿下、あなたからいただいた思い出の品がございます、 ずっと前からお返ししたいと思っていたものです。 どうか、いまお受け取りください。 ハムレット いや、私ではない。 何もあげた覚えはない。 オフィーリア 尊い殿下、くださったことはよくご存じのはずです。 それに、それほど甘い息で綴られた言葉も添えて、 品物をいっそう豊かにしてくださいました。その香りが失せた今、 これをお返しします。気高い心にとっては、 贈り主が薄情になれば、豊かな贈り物も貧しくなるのです。 さあ、殿下。 ハムレット は、は! お前は貞淑か。 オフィーリア 殿下? ハムレット お前は美しいか。 オフィーリア どういう意味でございますか。 ハムレット お前が貞淑で美しいのなら、貞淑はお前の美しさに 言い寄らせてはならない、ということだ。 オフィーリア 殿下、美しさにとって、貞淑ほどよい付き合い相手がありましょうか。 ハムレット そうとも、まったくだ。美しさの力が貞淑を 今あるものから女衒に変えてしまうほうが、貞淑の力が美しさを 自分に似たものに変えるよりも早いのだから。これはかつては逆説だったが、今は時代が その証拠を見せている。私はかつてお前を愛していた。 オフィーリア 本当に、殿下、そう信じさせてくださいました。 ハムレット 信じるべきではなかったのだ。美徳をどれほど接ぎ木しても、私たちの古い 台木の味は抜けないのだから。私はお前を愛してはいなかった。 オフィーリア それなら、私はなおさら欺かれていたのです。 ハムレット 尼寺へ行け。なぜ罪人を生む者になりたがるのか。私は 自分ではまずまず真っ当なつもりだ。だが、それでも自分を責められることがいくらでもあって、 母が私を産まなければよかったと思うほどだ。私はひどく高慢で、 執念深く、野心が強い。私の手招き一つで動く罪のほうが、 それを入れておく考えや、それに形を与える想像や、それを行う時間よりも 多いのだ。私のような男が、地と天のあいだを這いずり回って 何をすればよいのか。私たちはみな、まったくの悪党だ。誰も信じるな。さっさと 尼寺へ行け。お前の父親はどこにいる。 オフィーリア 家におります、殿下。 ハムレット 戸を閉めて閉じ込めておけ。阿呆の真似をするのは 自分の家の中だけにさせるのだ。さらばだ。 オフィーリア ああ、あの方をお助けください、恵み深い天よ。 ハムレット もしお前が嫁ぐなら、持参金にこの呪いをくれてやろう。たとえお前が 氷のように貞潔で、雪のように清らかでも、中傷からは逃れられないぞ。 尼寺へ行け、行け。さらばだ。それとも、どうしても嫁ぐと言うなら、 阿呆と結婚しろ。賢い男なら、お前たちが自分たちをどんな化け物にするか、よく知っているからな。 尼寺へ行け、それも早く。さらばだ。 オフィーリア ああ、天の力よ、あの方を元に戻してください。 ハムレット お前たちの化粧のことも聞いているぞ、十分すぎるほどな。神はお前たちに一つの 顔をお与えになったのに、お前たちは自分で別の顔をこしらえる。浮かれて踊り、気取って歩き、 舌足らずにしゃべり、神の造られたものにあだ名を付け、自分のふしだらを 無知のせいにする。もういい、もうたくさんだ、それで私は気が狂ったのだ。言っておく、 これ以上結婚はさせない。すでに結婚している者は、一人を 除いて生かしておいてやる。残りは今のままでいるがいい。尼寺へ行け。 [退場] オフィーリア ああ、なんという気高い心が、ここで打ち倒されてしまったのか。 宮廷人の目、軍人の剣、学者の舌、 この美しい国の望みの的であり、薔薇の花であり、 流行の鏡、礼儀の手本、 あらゆる人に仰ぎ見られたお方が、すっかり、すっかり落ちてしまわれた。 そして私は、女たちのうちでいちばん打ちひしがれた、みじめな者、 あの方の音楽のような誓いの蜜を吸った私が、 今は、あの気高く、このうえなく尊い理性が、 調子が狂って耳ざわりに鳴る美しい鐘のようになり、 咲き誇る若さの比類ない姿と面差しが 狂気に枯らされたのを見るのだ。ああ、悲しい、 かつて見たものを見たうえで、今見ているものを見るとは。 王とポローニアスが登場。 王 恋だと? あれの思いはそちらへは向いていない。 言ったことも、少し筋道を欠いてはいたが、 狂気のようではなかった。あれの心の中には何かがあって、 その上に憂鬱が卵を抱くように座りこんでいる。 そして、それが孵って外に出てくれば、 何か危ういことになるのではと心配だ。それを防ぐために、 私はすばやく決断して、 このように定めた。あれをすぐにイングランドへ行かせ、 滞っている貢ぎ物を求めさせる。 もしかすると、海や見知らぬ国々が、 さまざまな珍しいものによって、 あれの心に何やら根づいてしまったこの事柄を追い出してくれるかもしれない。 そのことで頭を絶えず打ちつけているせいで、あれは いつもの自分らしさを失っているのだ。どう思う? ポローニアス よろしいかと存じます。しかし、それでもやはり私は思うのです、 あの方の嘆きの起こりと始まりは、 顧みられなかった恋から生じたのだと。どうした、オフィーリア。 ハムレット様が何とおっしゃったか、話さなくてよい。 みな聞いていた。陛下、お心のままになさってください。 ですが、もしよろしければ、芝居のあとで、 あの方の母君である王妃様お一人に頼んでいただいて、 嘆きの訳を打ち明けるよう、遠慮なく問いただしていただき、 私は、お許しいただければ、二人の話がすべて 聞こえるところに控えます。もし王妃様が突き止められなければ、 イングランドへお送りください。あるいは、陛下のお知恵が いちばんよいとお考えになる所に閉じ込めてください。 王 そうしよう。 身分の高い者の狂気は、見張らずにおいてはならぬ。 [一同退場] 第二場 城の広間 ハムレットと数人の役者たちが登場。 ハムレット あの台詞は、頼むから、私が言って聞かせたとおりに、舌の上で軽やかに 言ってくれ。もし、多くの役者たちのように大げさにわめき立てるなら、 町の触れ役に私の台詞を言ってもらったほうがましだ。それに、手でこんなふうに 空を切りすぎないでくれ。何事も穏やかにやるのだ。激情の奔流の、 嵐の、いわば旋風のまっただ中でこそ、 それを滑らかにする節度を身につけ、生み出さなければならない。ああ、心底 腹が立つのだ、かつらをかぶった騒々しい男が、激情を ずたずたに、ぼろぼろに引き裂いて、平土間の客の耳をつんざくのを聞くのは。あの連中は たいてい、わけの分からない黙り芝居と騒ぎのほかは 何も分からないのだ。ターマガントをやりすぎるそんな男は、鞭で打たせてやりたい。 ヘロデよりもヘロデらしくわめき立てる。頼むから、それはやめてくれ。 第一の役者 かしこまりました。 ハムレット といって、おとなしすぎてもいけない。自分の分別を師とするのだ。 動作を言葉に合わせ、言葉を動作に合わせる。そのときには特に 気をつけて、自然の節度を踏み越えないことだ。何事も やりすぎれば、芝居の目的から外れてしまう。芝居の目的は、 昔も今も、いわば自然に向かって鏡を掲げること、 美徳にはその顔立ちを、嘲られるべきものにはその姿を見せ、時代そのものの 年齢と体つきには、その形と刻印を見せることなのだ。さて、これをやりすぎたり、 物足りなく終えたりすれば、心得のない客は笑わせられても、 目の利く客を嘆かせずにはおかない。そして、その一人の評のほうが、君たちの考えでも、 劇場いっぱいのほかの客の評よりも重くなければならない。ああ、私の見たことのある役者の中には 語釈 帯の外の語は 164 語です。★ 二通りに分かれます ——★ 第一に いま使わない語 ( fardels (重荷)・ bodkin (小刀)・ quietus (決着))、★ 第二に 綴りを詰めた形 ( o’er ・ wish’d ・ compos’d )。★ 第二のほうは 語ではなく書き方 で、★ あとの節で理由を見ます。 語(品詞) 意味 注 Devoutly en 副 心から She prayed devoutly every night before going to sleep. 彼女は毎晩眠る前に心から祈ります。 England en 名 イングランド My cousin studies medicine at a university in England. 私のいとこはイングランドの大学で医学を学んでいます。 Exeunt en 動 みな退場する。劇の指示に使うラテン語 The old script says 'Exeunt' whenever every character must leave. その古い台本には、皆が退場するとき「 Exeunt 」と書かれています。 Hamlet en 名 ハムレット。デンマークの王子 Haply en 副 もしかすると Haply the letter will arrive before he leaves for Rome. もしかするとその手紙は、彼がローマへ発つ前に届くかもしれません。 Herod en 名 ヘロデ。古い芝居でわめき立てる役 Herods en 名 ヘロデ役。 out-Herods Herod でヘロデ以上にわめく II en 名 二。ローマ数字 Lord en 名 殿。 my lord で目上の人への呼びかけ My lord, the carriage is waiting for you at the gate. 殿、馬車が門であなたをお待ちしています。 OPHELIA en 名 オフィーリア。台詞の頭に立つ話し手の名 Ophelia en 名 オフィーリア。宰相ポローニアスの娘 O’er en 前 〜の上を。 over の詩の形 The old bridge arches gracefully o’er the narrow, rushing river. その古い橋は、狭くて速い川の上を優雅にまたいでいます。 Polonius en 名 ポローニアス。デンマークの宰相 Termagant en 名 ターマガント。中世の芝居でわめき立てる役 Th’expectancy en 名 望みの的。 the expectancy を詰めた形 Th’observ en 名 見られる人。 the observe