14.95 コリント前書 13 — 抽象を、動詞で描く — Epoché
この篇でできるようになること ★ 抽象名詞だけで書く とどうなるかが分かる。 ★ 動詞を並べて人柄を描く やり方が読める。 ★ 同じ形の三連 の効き目が分かる。 ★ 三つ数えて終える 結び方が身につく。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ 特別編は 順番に読む必要がありません 。 ★ 1 篇が 1 作品 で、★ どの篇から始めてもかまいません。 ★ 12.17 知編 で、 英語には出典を書かずに引く二つの本がある と置きました。 ★ この章から出た言い方も多い です——★ through a glass, darkly ・ faith, hope, charity ——★ 小説の題にも映画の題にもなって います。 どちらのことか 確かめること ★ 本のこと ★ なぜ欽定訳は引かれ続けるのか( 12.17 知編 ) ★ 語のこと ★ 短い骨の語と、長い肉の語( 12.1 知編 ) ★ 14.94 英語の名文 を読んだ人へ 。 ★ そこでは 塩・光・丘の上の町 ——★ 目に見える物で語って いました。 ★ この篇は まるで逆 です——★ 見えないものばかり を語ります。 ★ 読編に 同じ訳の別の書 があります ——★ 8.211 読編 (「創世記」第 1〜2 章) 。★ そちらは 天地の造られる話 で、★ この篇は 「コリント人への第一の手紙」 です。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 270 語、段落は 10 に分かれ、文は 10 本、一文の平均は 27.0 語、いちばん長い一文は 54 語です。 ★ 節の番号は落としてあります ——★ 紙面の装置であって本文ではない からです。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 たとえ人の言葉と天使の言葉で語っても、愛が無ければ、私は鳴り響く真鍮、やかましいシンバルと同じです。 たとえ預言する力を持ち、あらゆる奥義とあらゆる知識に通じていても、たとえ山を動かすほどの完全な信仰を持っていても、愛が無ければ、私は何者でもありません。 たとえ貧しい人々を養うために全財産を与え尽くしても、たとえ自分の体を焼かれるために差し出しても、愛が無ければ、私には何の益もありません。 愛は長く耐え、親切です。愛はねたまず、愛は自慢せず、高ぶらず、見苦しくふるまわず、自分の利益を求めず、たやすく怒らず、悪を思いません。不正を喜ばず、真理を喜びます。すべてを忍び、すべてを信じ、すべてを望み、すべてに耐えます。 愛は決して絶えることがありません。しかし、預言ならばすたれ、異言ならばやみ、知識ならば消え去ります。 私たちが知るのは一部分であり、預言するのも一部分だからです。 しかし、完全なものが来たときには、部分的なものはすたれます。 私は子どもだったとき、子どものように話し、子どものように理解し、子どものように考えました。しかし、大人になったとき、子どもらしいことを捨てました。 いま私たちは鏡を通しておぼろに見ています。しかしそのときは顔と顔を合わせて見ます。いま私は一部分しか知りません。しかしそのときは、私が知られているのと同じように、私も知るでしょう。 いま、信仰と希望と愛がとどまります。この三つです。しかし、そのうちで最も大いなるものは愛です。 語釈 帯の外の語は 29 語です。★ その大半が -eth の語尾 ——★ 14 種あります 。 ★ suffereth ・ envieth ・ seeketh は suffers ・ envies ・ seeks です。 ★ 語尾を落として読めば、 知っている語ばかり です。 語(品詞) 意味 注 Beareth en 動 耐え忍ぶ。 bear の三人称(古い形) A loving mother beareth every hardship for the sake of her children. 愛情深い母親は、子どものために、どんな苦労も耐え忍びます。 Doth en 動 する。 do の三人称(古い形) The old clock doth chime every hour throughout the night. その古い時計は、夜どおし一時間おきに鳴ります。 Rejoiceth en 動 喜ぶ。 rejoice の三人称(古い形) The whole household rejoiceth whenever the traveler returns safely home. その旅人が無事に帰ってくるたびに、家族はみな喜びます。 abideth en 動 とどまる。 abide の三人称(古い形) True friendship abideth even after many long years apart. 真の友情は、長い年月離れていても、とどまり続けます。 angels en 名 天使(複数) In the old painting, angels surrounded the sleeping child. その古い絵の中で、天使たちが眠る子どもを取り囲んでいました。 believeth en 動 信じる。 believe の三人称(古い形) A wise merchant believeth only what he can verify himself. 賢い商人は、自分で確かめられることしか信じません。 bestow en 動 与える The king wished to bestow a great honor on the young knight. 王は、若い騎士に大きな名誉を与えたいと望みました。 brass en 名 真鍮(しんちゅう) The old bell was cast from solid brass long ago. その古い鐘は、昔、純粋な真鍮から作られました。 childish en 形 子どもじみた His childish behavior embarrassed everyone at the formal dinner. 彼の子どもじみたふるまいは、正式な晩さん会にいた全員を困らせました。 cymbal en 名 シンバル。打ち合わせて鳴らす金属の皿 The drummer struck the cymbal loudly at the song's end. 太鼓奏者は、曲の終わりにシンバルを大きく打ち鳴らしました。 darkly en 副 おぼろに。はっきりせずに Through the fogged window, he could see only darkly outside. 曇った窓を通して、彼は外がおぼろにしか見えませんでした。 endureth en 動 こらえる。 endure の三人称(古い形) A patient gardener endureth long winters while waiting for spring. 辛抱強い庭師は、春を待ちながら長い冬をこらえます。 envieth en 動 ねたむ。 envy の三人称(古い形) Nobody in the village envieth the old miser's lonely fortune. 村の誰も、あの孤独なけちな老人の財産をねたみません。 faileth en 動 絶える・すたれる。 fail の三人称(古い形) Even the best plan sometimes faileth when the weather turns. どんなによい計画も、天候が変わればしくじることがあります。 hopeth en 動 望む。 hope の三人称(古い形) A devoted student hopeth to make his old teacher proud. 熱心な生徒は、年老いた恩師を誇らしく思わせたいと望んでいます。 iniquity en 名 悪事 The reformer devoted his whole life to fighting iniquity. その改革者は、悪事と戦うことに生涯をささげました。 profiteth en 動 益になる。 profit の三人称(古い形) Idle gossip profiteth no one and often causes real harm. むだなうわさ話は誰の益にもならず、しばしば本当の害をもたらします。 prophecies en 名 預言(複数) The old book of prophecies gathered dust on the shelf. その古い予言の書は、棚の上でほこりをかぶっていました。 prophecy en 名 預言 Years later, the villagers realized the old prophecy had come true. 何年もたって、村人たちはその古い預言が本当になったと気づきました。 prophesy en 動 預言する The old wise woman claimed she could prophesy coming storms. その年老いた賢い女は、来るあらしを預言できると言いました。 puffed en 動 puffed up で「思い上がった」 The wrestler's chest puffed up with pride before the match. 試合の前、その力士の胸は誇りでふくらみました。 seeketh en 動 求める。 seek の三人称(古い形) A curious child always seeketh answers to the strangest questions. 好奇心の強い子どもは、いつも奇妙な問いへの答えを求めます。 spake en 動 語った。古い形 The elder spake softly of days long since passed away. その長老は、はるか昔に過ぎ去った日々について静かに語りました。 suffereth en 動 耐える。 suffer の三人称(古い形) A brave patient suffereth the treatment without a single complaint. 勇敢な患者は、一言の不満も言わずに治療を耐え忍びます。 thinketh en 動 思う。 think の三人称(古い形) A humble craftsman thinketh little of his own great skill. 謙虚な職人は、自分の見事な技についてあまり考えません。 tinkling en 動 ちりんちりん鳴っている A tinkling bell announced the arrival of the small carriage. ちりんちりん鳴る鈴が、小さな馬車の到着を告げました。 unseemly en 形 みっともない His unseemly manners shocked the guests at the wedding feast. 彼のみっともないふるまいは、結婚の宴の客たちを驚かせました。 vanish en 動 消える The morning mist would vanish as soon as the sun rose. 朝の霧は、日が昇るとすぐに消えていきました。 vaunteth en 動 誇る。 vaunt の三人称(古い形) A truly humble hero never vaunteth his own brave deeds. 本当に謙虚な英雄は、自分の勇敢な行いを誇りません。 抽象名詞だけで書く ★ この章に出てくる主語は、 ほとんど抽象名詞 です——★ charity ・ faith ・ hope ・ knowledge ・ prophecy 。 ★ charity だけで 9 回 出ます。 ★ 12.1 知編 で置いたとおり、 抽象を言う語は「肉」の側 ——★ 長く、ラテン・フランス系 です。 ★ ふつう、 肉ばかりで書くと読めなくなり ます ( 3.57 型編 )。 ★ ではなぜ、この章は読めるのか。 ★ 答えは 次の節 です。 動詞を並べて、人柄を描く ★ 愛とは何かを、 この章は定義しません 。 ★ 代わりに、 「すること」を並べ ます。 Charity suffereth long, and is kind; charity envieth not; charity Beareth all things, believeth all things, hopeth all things, endureth ★ 第四段落だけで、 -eth の動詞が 11 個 です。 ★ 耐える・親切である・ねたまない・誇らない・高ぶらない・不作法をしない・自分のものを求めない・怒らない・悪を思わない・耐え忍ぶ・信じる・望む・こらえる ——★ ぜんぶ 動詞 です。 どう書くか 読み手に何が残るか ★ 名詞で定義する ★ 言葉は残るが、絵が浮かばない ★ 動詞を並べる ★ 行いが浮かぶ。自分と比べられる ★ これが、 抽象名詞ばかりでも読める理由 です——★ 主語は抽象でも、 述語がぜんぶ行い だから です。 ★ 「愛は〜という感情である」ではなく、 「愛は〜する」 。 ★ 3.57 型編 で置いた 動詞の席を空けない の、いちばんよい例 です。 ★ もう一つ、 all things が 4 回くり返され ます ——★ 四つ続けて同じ目的語 です。 ★ 14.93 英語の名文 と同じ 形をそろえる 手 です( 3.44 型編 )。 同じ形の三連と、三つ数えて終える When I was a child, I spake as a child, I understood as a child, ★ as a child が 4 回 ——★ 話す・理解する・思う の三つを 同じ形で 並べています。 ★ 12.7 知編 で置いた 「三は、くり返しの