8.27 The New Year — 新年の銀貨(McGuffey 読本) — Epoché
この篇でできるようになること 引用符の中が 実際の言葉かどうか を見分けられる。 見分けの手がかりが 引用符の前に置かれた語 だと分かる。 物語が 説明せずに動作で見せる ことに気づける。 短い段落の連なりを、 場面の送り として読める。 前提 : 8.26 まで。 読む前に 題材は 新年にもらった銀貨 の話です。エドワードという男の子が、元日に父から新しい銀貨を二枚もらいます。前から欲しかった本を買いに、通りへ出ます。その途中で、寒さに震えている一家に出会います。 この一家は 言葉が通じません 。外国から来た人たちで、英語が分かりません。だからこの篇には、 言葉のやりとりでない伝え合い が出てきます。首を振る、口を指さす、子どもを指さす——それだけです。 気をつけるところを三つ置きます。 一つめ、 段落が短い ことです。十一段落で 245 語ですから、一段落あたり 22 語しかありません。一段落が 一つの場面 です。紙芝居をめくるように、 段落の切れ目で目を止めずに 送ってください。 二つめ、 古い綴りが一つ 出ます。 gayly です。今は gaily と綴ります。百年以上前の本なので、こういうものが混じります。 誤りではありません 。 三つめ、 話が答えの前で切れる ことです。最後に父が「どんな本を買ったのか」と聞きます。エドワードは うつむいて、すぐに顔を上げます 。——そこで終わります。答えは窓の外です。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 245 語、十一段落です。書き出しはこうです。 He looked in every room, and shouted the words of welcome. 先に原文だけを、 辞書も語釈も見ずに 最後まで読んでください。読み終わったら、 引用符の中の言葉を、ほんとうに誰かが言ったか を一つずつ考えてみてください。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 彼はどの部屋ものぞいては、祝いの言葉を大声で叫びました。通りへも駆け出して、出会うかもしれない人たちにその言葉を繰り返しました。 彼が戻ってくると、父親がぴかぴかの新しい一ドル銀貨を二枚くれました。 それを受け取ると、彼の顔はぱっと明るくなりました。前から書店で見かけていたきれいな本を何冊か、ずっと買いたいと思っていたのです。 彼は本を買うつもりで、うきうきした気持ちで家を出ました。 通りを駆けていくと、貧しいドイツ人の一家――父親と母親と三人の子ども――が寒さに震えているのが目に入りました。 「新年おめでとうございます」とエドワードは言って、楽しげに通り過ぎようとしました。男は首を横に振りました。 「あなたはこの国の人ではないのですね」とエドワードは言いました。男はまた首を横に振りました。わたしたちの言葉が分からず、話すこともできなかったからです。 けれども男は、自分の口と子どもたちを指さしました。まるで「この小さな子たちは、長いあいだ何も食べていないのです」と言うかのようでした。 エドワードは、この貧しい人たちが困りはてているのだとすぐに分かりました。彼は銀貨を取り出し、一枚を男に、もう一枚をその妻に渡しました。 二人の目は、ありがたさにどれほど輝いたことでしょう!二人は自分たちの言葉で何か言いました。それはきっと「幾重にも感謝します。お祈りのときにはあなたのことを忘れません」という意味だったのでしょう。 エドワードが家に帰ると、父親はどんな本を買ったのかと尋ねました。彼は少しのあいだうつむきましたが、すぐに顔を上げました。 語釈 帯の外の語は 16 語です。下に 全部 出します。 体の動きを表す語 (震える・振る・きらめく)が多いのが、この篇の特徴です。理由は下で説明します。 語(品詞) 意味 注 Edward en 名 エドワード。男の子の名 German en 形 ドイツの He is learning to speak the German language. 彼はドイツ語を話せるようになろうと勉強しています。 belong en 動 属する、〜のものである These toys belong to my little brother. これらのおもちゃは私の弟のものです。 bookstore en 名 書店 We spent the afternoon browsing in the bookstore. 私たちは午後、書店で本を眺めて過ごしました。 bright en 形 光っている、真新しい She polished the coins until they looked bright. 彼女はコインが光るまで磨きました。 distress en 名 困りきっていること The lost child cried out in distress. 迷子になった子供は困り果てて泣き叫びました。 doubtless en 副 きっと、まちがいなく He will doubtless arrive at the station before noon. 彼はきっと正午前に駅へ着くでしょう。 gayly en 副 浮き浮きと( gaily の古い綴り) The children danced gayly around the old maypole. 子供たちは古いメイポールの周りで浮き浮きと踊りました。 gratitude en 名 ありがたく思う気持ち She expressed her gratitude with a warm smile. 彼女は温かい笑顔で感謝の気持ちを表しました。 mouth en 名 口 He covered his mouth when he coughed loudly. 彼は大きな咳をしたとき口を覆いました。 prayers en 名 祈り(複数) The family said their prayers before dinner. 家族は夕食前にお祈りを唱えました。 shivering en 動 震えている( shiver の - ing 形) The puppy was shivering in the cold rain. 子犬は冷たい雨の中で震えていました。 shook en 動 振った( shake の過去形) He shook the bottle before opening it. 彼はふたを開ける前に瓶を振りました。 shouted en 動 大声で言った( shout の過去形) She shouted his name across the busy street. 彼女はにぎやかな通りの向こうから彼の名前を大声で呼びました。 silver en 形 銀の Grandmother wore a beautiful silver necklace to the party. 祖母はパーティーに美しい銀のネックレスをつけていきました。 sparkled en 動 きらめいた( sparkle の過去形) The diamond sparkled brightly in the evening light. そのダイヤモンドは夕方の光の中できらめきました。 構文の骨 ★引用符の前に置かれた語を見る この篇には引用符が三か所あります。 そのうち、実際に口に出されたのは一つだけ です。 引用符の前に置かれた語 ほんとうに言ったか "I wish you a happy New Year," said Edward 言った 。 said と書いてある as if to say 言っていない 。口を指さしただけ which doubtless meant この言葉では言っていない 。別の言語で言ったことを、語り手が推しはかって英語に置いた 二つめを見てください。 But he pointed to his mouth, and to the children, as if to say, "These little ones have had nothing to eat for a long time." この男は 一言もしゃべっていません 。口を指し、子どもたちを指しただけです。引用符の中の英語は、 語り手が、身ぶりを言葉に置き換えたもの です。だから as if to say (言っているかのように)と前置きされています。 三つめも同じです。 They said something in their language, which doubtless meant この人たちは しゃべっています 。ただし 英語ではありません 。語り手は英語が分からないので、 doubtless (きっと)と断ったうえで、 意味をこうだろうと置いて います。 まとめると、規則はこうです—— 引用符の前の語を見る 。 前に置かれた語 引用符の中は何か said ・ cried ・ replied 実際に口に出された言葉 as if to say ・ as if 言っていない 。書き手が身ぶりを言葉にした meant ・ which meant 別の言い方で言われた 。書き手が置き換えた 8.25 読編 では 誰の言葉か を引用符で見分けました。この篇では ほんとうに言われたか を見分けます。同じ印でも、見るところが一段深くなりました。 ★物語は説明せず、動作で見せる この篇は「言葉が通じなかった」と 一度も書いていません 。そのかわり、こう書きます。 書かれている動作 読む側が受け取ること The man shook his head. 分からない、と言っている The man again shook his head やはり分からない。 二度目 で確定する But he pointed to his mouth 言葉をあきらめて、身ぶりに切り替えた How their eyes sparkled with gratitude! ありがたく思っている 首を振る動作が 二度 書かれているところが要です。一度だけなら「聞こえなかった」かもしれません。二度目で、読む側は 「この人は英語が分からないのだ」 と分かります。書き手はそれを 説明せずに、分からせて います。 だからこの篇には、 体の動きを表す語 が多いのです。語釈の一覧をもう一度見てください——震える、振る、指さす、きらめく、うつむく。 説明しない文章は、動作の語が増えます 。 これは物語のいちばん大事な作法です。百科事典は 説明します 。物語は 見せます 。見せられたものから何を受け取るかは、読む側に任されています。 段落が短いと場面が速い この篇は 十一段落で 245 語、一段落 22 語ほどです。 8.23 読編 の City は一段落 58 語でしたから、半分ほどしかありません。 短い段落が並ぶと、 場面が速く送られます 。一段落が一つの絵で、めくるように進む。だから読み方も変わります—— 段落の切れ目で目を止めない 。止めると、絵がつながらなくなります。 説明文では段落の頭で立ち止まるのが正解でした( 8.18 読編 )。物語では逆に、 送り続けるのが正解 です。文章の種類で、目の動かし方が変わります。 訳 第 2 期の読み物に 文ごとの訳は付けません 。段落ごとの要旨だけを置きます。この篇は段落が多いので、 場面ごと にまとめます。 どこ その場面 一つめから三つめ 元日の朝。エドワードは家じゅうを回って祝いの言葉を叫び、通りへ出て会う人ごとに繰り返す。帰ると父が真新しい銀貨を二枚くれた。前から書店で見ていた本が買える 四つめから七つめ 本を買うつもりで通りへ出ると、寒さに震えるドイツの一家がいた。新年の挨拶をしたが、男は首を振る。この国の者ではないのかと聞くと、また首を振った。英語が分からないのだ。男は口と子どもたちを指した 八つめから十 エドワードは困りきっているのだと分かり、銀貨を出して、一枚を男に、もう一枚をその妻に渡した。二人の目はありがたさに輝き、自分たちの言葉で何かを言った。きっと「幾重にも感謝します、祈りの中であなたを覚えています」という意味だっただろう 十一 家に帰ると、父がどんな本を買ったのかと聞いた。エドワードは少しうつむいたが、すぐに顔を上げた 最後の一行で切れています。 エドワードが何と言ったかは書かれていません 。けれども、読む側には分かります。 うつむいた のは言いにくかったから、 すぐに顔を上げた のは恥じていないからです。ここも、説明せずに見せています。 音読 この篇の音読は、 引用符の三か所を区別して 読んでください。 エドワードの挨拶は ふつうに声に出して 。実際に言った言葉です。 身ぶりを言葉にした引用は 少し低く、ゆっくり 。誰の声でもないからです。 最後の「きっとこういう意味だった」も 低く 。語り手の推しはかりです。 声を使い分けられると、 ほんとうに言われた言葉がどれか が音で分かります。英語の朗読者も、そうやって読み分けます。 段落の切れ目では 息を継ぐだけ にして、長く止まらないでください。場面の送りが遅くなります。 この篇で使う型 型の名 この篇での出方 戻る課 関係代名詞 II those he might meet 。目的格が落ちている 3.14 型編 助動詞 II those he might meet の might 。「会うかもしれない人」 3.11 型編 現在完了 have had nothing to eat for a long time 。ずっと続いている 3.9 型編 後ろから修飾 intending to buy the books 。分詞が添える 3.8 型編 前置詞と句動詞 He took out his dollars ・ He hung his head 3.5 型編 接続詞と副詞節 As he ran down the street 。時の枠 3.16 型編 練習 引用符の三か所を書き出して、それぞれ 実際に言われたか を○ × で書く。 × を付けたものについて、 なぜ × なのか を、引用符の前の語を挙げて一行書く。 四つめから七つめの段落を、 引用符ごとに声を変えて 音