7.6 日 → 英の型変換 — 主語を立てる・動詞を決める — Epoché
この課でできるようになること ★日本語に無い主語を 自分で立てられる 。 ★「〜は」が主語とはかぎらないと知っている。 物事を主語に立てられる(無生物主語)。 主語を決めてから動詞を決める、という順で組み立てられる。 前提 : 7.5 まで。 なぜ訳す(訳さない)か 日 → 英の訳は、日本語を書いた人のためにするものではありません。 英語で読む人のため にします。だから、日本語の形を残す義理はありません。 残すと、かえって読めなくなります 。 そして、日 → 英には英 → 日に無い難しさがあります。 英語には必ず主語が要る ことです( 3.24 型編 )。日本語の文の多くは主語を言いません。言っていないものを訳すことはできないので、 読み取って、立てる しかありません。 この「読み取って立てる」ところで、 訳す人の判断 が入ります。誰の話なのか、何の話なのか。日本語では 決めずに済んでいた ことを、英語にするときには決めなければなりません。 ★「〜は」は主語とはかぎらない 学校では「〜は」が主語だと習います。半分は当たっていますが、半分は外れています。日本語の「〜は」は 題を示す 語で、主語であることもあれば、そうでないこともあります。 日本語の文 「〜は」が指すもの 英語の主語 私は本を読んだ 主語(読んだ人) 私 この本は読みやすい 主語(読みやすいもの) この本 学校までは三十分かかる 題 (主語ではない) それ(形式主語) 象は鼻が長い 題 (主語ではない) 象の鼻 下の二行に注目してください。「学校までは」は主語ではありません。 これから話す範囲 を示しているだけです。「象は」も同じで、長いのは鼻であって象ではありません。 ここを取り違えると、英語の文が崩れます。「象は鼻が長い」を An elephant is long nose と言ってしまうのは、 「は」を主語だと思った からです。英語にするときは、 「何がどうした」を日本語で言い直して から始めてください。 手順 三手で進む 何手目か 何をするか 決まらないときは 一手目 主語を決める 題を外して「何が」を探す 二手目 動詞を決める 主語がするのは何かを考える 三手目 残りを後ろへ並べる 長いものほど後ろ( 3.24 型編 ) 順番が大事です。 主語が先、動詞が後 。日本語は動詞が最後に来るので、つい動詞から考えてしまいますが、英語では 主語が決まらないと動詞が決まりません 。誰がするかで、使える動詞が変わるからです。 主語が決まらないときは、 題を外して みてください。「学校までは三十分かかる」から「学校までは」を外すと「三十分かかる」が残ります。残ったものの主語は「(行くのに)三十分)」——つまり 時間がかかるという事柄そのもの です。英語では、これを it で受けます。 ★物事を主語に立てる 日本語は 人を主語にしたがる 言語です。英語はそうではありません。 物事がふつうに主語に立ちます 。 「コメントを付けるとコードが読みやすくなります」を英語にするとき、日本語の形をなぞれば「あなたがコメントを付ければ」から始めたくなります。英語では、 コメントを付けることそのもの が主語になります。下の実例の三つめがその形です。 この形は、英語では 硬くも不自然でもありません 。むしろ、書き言葉ではこちらがふつうです。第 8 編「論」で意見文を書くときには、 人を主語にしないほうが説得力が出る 場面が多くあります。 実例 五つ並べます。 右の日本語を先に読み、英語を隠して 、自分なら何を主語にするかを決めてから見てください。 英文 日本語訳 何が起きているか I can walk to school in half an hour. [1] 学校までは歩いて30分で行けます。 日本語に主語が無い。 I を自分で立てる It takes two hours to read this book. [2] この本を読むのに2時間かかります。 日本語の「〜のに」が主語になる。 It を置いて後ろへ回す Adding comments makes it easier to read the code. [3] コメントを付けるとコードが読みやすくなります。 ★物事が主語に立つ(無生物主語) I was caught in the rain. [4] 雨に降られたんだよ。 ★主語も動詞も入れ替わる。迷惑の受身は英語にできない It took half an hour. [5] 30分で着いたよ。 「〜で着いた」が「〜かかった」になる 一つめと二つめ — 主語を立てる 一つめの日本語には主語がありません。誰が歩くのかは、前後の話から決めます。英語では I を立てています。 立てなければ文にならない からです。 二つめは、題を外すと「二時間かかる」が残ります。かかるのは この本を読むこと です。それを主語にすると長くなるので、 it を置いて後ろへ回しています( 3.24 型編 )。 日本語の「〜のに」が、英語では主語になる ——ここは覚えておく価値があります。 三つめ — 物事が主語に立つ 三つめは 無生物主語 の形です。「コメントを付けること」が主語で、動詞は「〜を容易にする」。日本語では「〜すると〜になる」と言うところを、英語では 前半を主語、後半を目的語 にしています。 この組み替えができると、訳文が急に英語らしくなります。目安は一つ—— 日本語に「〜すると」「〜のおかげで」「〜によって」があったら、その前半を主語にしてみる 。 四つめと五つめ — 動詞ごと入れ替える 四つめは 3.17 型編 で扱った形です。「雨に降られた」は 迷惑の受身 で、英語にはこの形がありません。だから主語も動詞も入れ替えて、 つかまえられた ほうを言っています。 五つめも同じで、「三十分で着いた」が「三十分かかった」になっています。 日本語と英語で、出来事の切り取り方が違う のです。語を置き換えるだけでは届きません。 何が起きたのかを言い直す ——これが日 → 英の仕事の本体です。 やってみる 二つやります。どちらも 主語を決めてから 始めてください。 ★次の五つを英語にする。どれも日本語に主語がないか、「〜は」が主語ではない。 主語を紙に書いてから 英語を作ること。①この道は駅まで続いている ②ここからは海が見える ③この薬を飲むと眠くなる ④彼には子どもが三人いる ⑤昨日は寒かった 自分が今日書いた日本語(メール、覚え書き、何でもよい)から 一文を選び 、英語にする。選んだ文の「〜は」が主語かどうかを先に確かめる。主語でなければ、 題を外して「何が」を探す 。 練習 「実例」の五文を、行を押して音を聞いてから続けて 音読 する。読むときは 主語をはっきり 言う。日本語話者は主語を弱く言いがちだが、英語の主語は文の柱なので、そこが弱いと文全体が頼りなく聞こえる。3 周する。3 周目は三つめを、音声に重ねて シャドーイング する。 「やってみる」の五つについて、 選んだ主語を五つ並べて書く 。人が主語になったものと、物事が主語になったものを数える。物事が一つも無かったら、 もう一度どれかを物事の主語で作り直す 。 翌日、作った五文を読み返し、 主語が英語として自然か を確かめる。不自然に感じたら、たいてい 日本語の「は」をそのまま主語にしている 。 この課のまとめ ★ 日 → 英は訳すのではなく作り直す。 書いていないものを足す仕事。 ★ 英語には必ず主語が要る ( 3.24 型編 )。言っていないものは、読み取って立てるしかない。 ★ 「〜は」は主語とはかぎらない。 題を示しているだけのことが多い。 主語が決まらないときは 題を外して「何が」を探す 。 順番は 主語が先、動詞が後 。誰がするかで使える動詞が変わる。 ★ 物事がふつうに主語に立つ (無生物主語)。書き言葉ではこちらがふつう。 「〜すると」「〜のおかげで」があったら、 その前半を主語にしてみる 。 ★ 語を置き換えるだけでは届かない。 日本語と英語で出来事の切り取り方が違う(「雨に降られた」)。 長いものは後ろへ回し、空いた席には it を置く( 3.24 型編 )。 次の課へ 第 7 編「訳」の第 3 期はこの課で終わりです。第 3 期の学習順では、訳の次は読です。次の課は 8.41 、題は オズの魔法使い(1)— 竜巻の来る前 。読 C の 32 篇が始まります。ここまで積んだ 1,980 語と、第 3 期の型八つで、 本物の物語がそのまま読めます 。訳はもう付きません。段落ごとの要旨だけを置きます。 読んで、分かる ——そこまで来たことを、最初の篇で確かめてください。 答え 主語は順に——①この道 ②(形式主語の)それ、または「あなた」③この薬 ④彼 ⑤(天気の)それ、になります。①は「は」がそのまま主語。②は題なので、海を主語にするか you を立てます。③は 無生物主語 で、薬が眠気を起こす、という形にできます。④は「彼には」が主語で、動詞は「持つ」。⑤は天気の it です( 3.24 型編 )。 自分の日本語を英語にすると、 主語のない文の多さ に驚くはずです。日本語で書いているときには気づきませんが、英語にしようとした瞬間に、 誰の話なのか決めていなかった ことが分かります。これは訳の問題ではなく、 もとの文の問題 です。決めてから書いた日本語は、訳しやすくなります。 物事が主語になったものが一つも無かったなら、まだ 日本語の形に引きずられて います。③はとくに、物事を主語にしたほうが短く済みます。「この薬は眠気を起こす」——人を出さずに言えると、第 8 編「論」で書くときに文が締まります。 参考文献 Tatoeba 文 #21493(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/21493 Tatoeba 文 #56818(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/56818 Tatoeba 文 #1038962(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/1038962 Tatoeba 文 #26769(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/26769 Tatoeba 文 #72748(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/72748