11.10 老子 第三十三章 — 人を知る者は智なり — Epoché
この篇でできるようになること 八つの主語と述語を、句の切れ目から読み取れます。 他人を知る形と自分を知る形の語順を比べられます。 前半と後半の作り、最後の一句の違いを説明できます。 前提 :11.9「老子 第八章 — 上善は水の若し」。同じ形の繰り返しの中で、内容がどう動くかを見ます。 主語をまとめて判断する 本文には 者 が八回あります。前の語句をまとめて主語を作り、その後に述語を置きます。 知人者、智 なら、人を知る者は賢い、という判断です。 特別編 4篇 では、判断を文末の字で結ぶ例を見ました。この章では、その結びの字を置かずに判断します。主語と述語の間に、現代語の 是 を必ず補って読む必要もありません。性質を述べる現代語の文と比べるなら、 型編 6課 の形容詞述語も手がかりです。 読点の前が人を表すまとまり、後ろがその人についての判断です。 知人者、智 を「人を知る者の知恵」という一つの名詞にしないでください。後ろは、人を知る者について述べています。 他人のときと、自分のとき A 読み B 読み 違い 知人 人を知る 自知 自ら知る(意味は自分を知る) 人は動詞の後、自分を表す自は動詞の前 勝人 人に勝つ 自勝 自ら勝つ(意味は自分に勝つ) 他人に向かうことと、自分に向かうことを比べる 人と自を、そのまま同じ場所で入れ替えているわけではありません。 自 は自分を対象として受けながら、この形では動詞より前に来ます。自分が知るという主語だけの意味にしないようにします。 現代語の 了解别人 ・ 了解自己 では、対象がどちらも動詞の後ろです。一方、書き下しの「自ら知る」は原文と同じ順に進みます。相手が他人の 知人 を「人を知る」と読むときには、語順を入れ替えます。意味が分かった後も字の並びへ戻ると、同じ動詞の二つの句が、どこを入れ替えて対になっているかを追えます。 自分を知るとは、自分のあり方を知ることです。「自分が知っている人」の意味にすると、他人を知ることとの対が崩れます。 前半の二組の対 初めは、人を知る者と自分を知る者を比べ、次に、人に勝つ者と自分に勝つ者を比べます。それぞれの結論も、賢い・物事がよく見える、力がある・強いという違いを持ちます。 自分へ向けることを重く見る並びとして読むことはできます。ただし、本文に「後の方が上だ」という比較の言葉があるわけではありません。順位を明記した文と、並べ方から読み取る解釈を分けましょう。 有力 は力がある、 有志 は志があるという述語です。名詞の前に 有 を置く 型編 5課 の形と結び付けて読めます。 後半の四つと、最後の一句 原文 読む内容 知足者、富 足るを知る者は豊かである 強行者、有志 努めて行う者は志がある 不失其所者、久 自分の置きどころを失わない者は長く続く 死而不亡者、壽 死んでも消えない者はいのちが長い 後半は、他人と自分を入れ替える二組の対ではありません。四つの別々のことを、同じ形に入れて並べています。 其所 は、ここではおのおのの置きどころを受けます。特定の一人の名を前へ探す必要はありません。 最後の句だけは、死んだ後のことへ話が進みます。 死而不亡 の接続は、死ぬ、しかし消えないという対比です。そろえた形を保ちながら、最後で扱う範囲を変えているところを読みます。 語釈 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 者 助詞 人のまとまりを作る 後ろに判断が続く 知人者 人を知る者 自 代詞 自分を・自分に この形では動詞の前 自知 自分を知る 智 形容詞 賢い 知人者の述語 知人者、智 人を知る者は賢い 明 形容詞 物事がよく見える(明らか) 自知者の述語 自知者、明 自分を知る者は物事がよく見える 勝 動詞 勝つ 相手の位置に注意 自勝 自分に勝つ 知足 動詞 足ることを知る 十分なことを知るというまとまり 知足者、富 足るを知る者は豊かである 強行 動詞のまとまり 努めて行う 無理に押し通すだけの意味ではない 強行者 努めて行う者 亡 動詞 消えてなくなる 死と対比される 不亡 消えない 壽 形容詞 いのちが長い 最後の句の結論 死而不亡者、壽 死んでも消えない者はいのちが長い 練習 空欄を埋めて本文の句を書いてください。 知_者、智 空欄を埋めて本文の句を書いてください。 _知者、明 空欄を埋めて本文の句を書いてください。 死_不亡者、壽 空欄を埋めて本文の句を書いてください。 _失其所_、久 前半の四句を、人を表すまとまりを主語にして現代語に書き換えてください。 了解自己 ・ 战胜自己 を、本文の二字の形にしてください。他人が対象の場合との語順の違いも書きましょう。 前半の次の四句が、他人に向く句か自分に向く句かを、「他人/自分」から選んでください。 知人者、智 ・ 自知者、明 ・ 勝人者、有力 ・ 自勝者、強 後半の並びと、最後の一句の違いを説明してください。 自信 ・ 诚实 ・ 减肥 などの語を使い、自分を知る人と、自分に勝つ人の態度を、現代語の人を表すまとまりで二文書いてください。 本文に「〜者、〜」の形の句はいくつありますか。 者 を数え、それぞれの句の主語と述語を分けてください。 音読:次の原文の句を ▶ で聞き、声に出して読んでください。 知人者、智,自知者、明。 ▶ の手本に続いて、 知人者、智 と 自知者、明 の二句を同じ速さで読みます。読点の前の主語と、後ろの判断の間に軽く間を置いてください。 この篇のまとめ 八つの主語と判断を読み、人と自分で対象の位置が変わるところを見ました。前半の対、後半の四つ、最後の死後への広がりを、同じ形の中で捉えます。 次の篇へ 次の11.11では、大きいものの小さな始まりを三つ並べた章を読みます。起点を表す字と、後半への論の運びを追います。 答え 知人者、智 自知者、明 死而不亡者、壽 不失其所者、久 了解别人的人是聪明人。 了解自己的人心里很明白。 战胜别人的人有力量。 战胜自己的人很强大。 自知 ・ 自勝 。自分を表す字は動詞の前、 知人 ・ 勝人 の人は動詞の後ろです。 知人者、智 は他人、 自知者、明 は自分、 勝人者、有力 は他人、 自勝者、強 は自分です。 後半は四つの別々の内容を同じ判断の形で並べます。最後の一句は、ほかの七句と違って死後のことへ進みます。 了解自己的人很诚实。 战胜自己的人有自信。 八つです。 知人者 ・ 自知者 ・ 勝人者 ・ 自勝者 ・ 知足者 ・ 強行者 ・ 不失其所者 ・ 死而不亡者 が主語で、読点の後ろの 智 ・ 明 ・ 有力 ・ 強 ・ 富 ・ 有志 ・ 久 ・ 壽 が述語です。 参考文献 老子『老子 第三十三章』。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。本文は全文。 出所: 当館所蔵の文書