14.73 四つの数だけで示す — 名の付く前の比較優位 — Epoché
この篇でできるようになること ★ 数だけで示す 論の運びが読める。 ★ would ・ might で作る 仮の話 が追える。 ★ 一文が四十語を超える 文の切り方が身につく。 ★ 国の中と国のあいだで話が変わる ところが分かる。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ 特別編は 順番に読む必要がありません 。★ 1 篇が 1 作品 で、★ どの篇から始めてもかまいません。 ★ リカード(一七七二〜一八二三)は 証券の仲買人として財を作り、そのあとで経済学を書いた 人です。★ だからこの章には 手形と送金の話 が出て きます——★ 本人の商売の現場 です。 ★ 読む前に、三つ確かめてください。 どちらのことか 確かめること ★ 学問のこと ★ 経済学がどこから生まれたか( 12.18 知編 ) ★ 数のこと ★ 数字を検める四つの問い( 9.21 論編 ) ★ 論のこと ★ 比べる書き方( 9.5 論編 ) ★ 同じ本の 第 1 章 は、もう読編の課になっています。 どこか 何を読むか 8.182 読編 ★ リカード『原理』 第 1 章 。価値と労働(読編) 14.71 英語の名文 ★ スミス『国富論』第 5 篇。分業の代償 14.72 英語の名文 ★ マルサス『人口論』。前提を二つ置く書き方 ★ 8.182 読編 は 「価値とは何か」 、★ この篇は 「では、なぜ国どうしで売り買いするのか」 です。★ 同じ本の 別の章 です。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。本文は 1830 語、段落は 15 に分かれ、文は 43 本、一文の平均は 42.6 語です。 ★ この平均は、 第 VIII 部の十篇でいちばん長い です。★ いちばん長い一文は 131 語 ——★ 手形の値段の話をしている段 です。★ 14.77 英語の名文 (テイラー、一九一一年)の平均は 19.6 語 ですから、★ ちょうど 二倍 あります。 ★ 語の出方に この章の作りが見え ます ——★ cloth が 31 回、 wine が 28 回、 England が 27 回、 Portugal が 19 回 です。★ この四語が ずっとくり返され ます ——★ 二つの国と二つの品だけで、話が進む からです。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 完全に自由な通商の制度のもとでは、それぞれの国は、自然と、自国の資本と労働を、自国にとっていちばん有益な用途に振り向けます。このように個々の利益を追い求めることは、全体の普遍的な善と見事に結びついています。それは勤勉を刺激し、工夫に報い、自然が授けた特有の力をもっとも効果的に用いることによって、労働をもっとも効率よく、もっとも経済的に配分します。一方で、生産物の総量を増やすことによって、全体に利益を行きわたらせ、利害と交わりという一つの共通のきずなによって、文明世界の全体にわたる諸国民の普遍的な社会を結びつけます。ぶどう酒はフランスとポルトガルで造られ、穀物はアメリカとポーランドで育てられ、金物その他の品はイングランドで製造される、と決めるのは、まさにこの原理なのです。 一つの同じ国の中では、利潤は、おおまかに言えば、つねに同じ水準にあります。あるいは、資本の用い方がより安全で快いか否かに応じて違うだけです。異なる国どうしのあいだでは、そうではありません。もしヨークシャーで用いられる資本の利潤が、ロンドンで用いられる資本の利潤を上回るなら、資本はすぐにロンドンからヨークシャーへ移り、利潤は等しくなるでしょう。しかし、資本と人口の増加によって、イングランドの土地の生産の割合が下がった結果、賃金が上がり利潤が下がったとしても、だからといって、資本と人口が、利潤がもっと高いかもしれないオランダやスペインやロシアへ、イングランドから必ず移るということにはならないでしょう。 もしポルトガルがほかの国々と通商の結びつきを持っていなかったなら、ポルトガルは、資本と勤労の大部分をぶどう酒の生産に用いて、それで自国で使うためにほかの国々の毛織物や金物を買う、ということをせずに、その資本の一部をそれらの品の製造に振り向けざるをえなかったでしょう。そうして手に入れる品は、おそらく、質においても量においても劣るものになったでしょう。 ポルトガルがイングランドの毛織物と引き換えに渡すぶどう酒の量は、それぞれの生産に注がれた労働の量によって決まるのではありません。もし両方の品がイングランドで製造されるか、両方がポルトガルで製造されるのであれば、そのようにして決まるのですが。 イングランドは、毛織物を生産するのに 100 人の一年間の労働を要し、もしぶどう酒を造ろうとすれば、同じ期間に 120 人の労働を要するかもしれない、という事情にあるとしましょう。そうであれば、イングランドは、ぶどう酒を輸入し、それを毛織物の輸出によって買うことが自国の利益になると気づくでしょう。 ポルトガルでぶどう酒を生産するには、80 人の一年間の労働しか要らず、同じ国で毛織物を生産するには、同じ期間に 90 人の労働を要するかもしれません。そうであれば、ポルトガルにとっては、毛織物と引き換えにぶどう酒を輸出するのが有利でしょう。この交換は、ポルトガルが輸入する品が、イングランドよりも少ない労働でポルトガルで生産できるとしても、行われるかもしれません。ポルトガルは 90 人の労働で毛織物を作ることができるにもかかわらず、それを生産するのに 100 人の労働を要する国から輸入するでしょう。なぜなら、ポルトガルにとっては、資本の一部をぶどうの栽培から毛織物の製造へ振り向けて自分で生産できるよりも多くの毛織物をイングランドから得られるぶどう酒の生産に、資本を用いるほうが有利だからです。 こうして、イングランドは 100 人の労働の生産物を、80 人の労働の生産物と引き換えに渡すことになります。このような交換は、同じ国の個人どうしのあいだでは行われえません。100 人のイングランド人の労働を、80 人のイングランド人の労働と引き換えに渡すことはできません。しかし、100 人のイングランド人の労働の生産物は、80 人のポルトガル人、60 人のロシア人、あるいは 120 人の東インドの人々の労働の生産物と引き換えに渡されることがありえます。この点での、一つの国と多くの国とのあいだの違いは、より利益の多い用途を求めて資本が一つの国から別の国へ移ることの難しさと、同じ国の中の一つの地方から別の地方へ資本がつねに素早く移ることとを考えれば、たやすく説明がつきます。 このような事情のもとでは、ぶどう酒と毛織物の両方がポルトガルで造られ、したがって、毛織物を作るのに用いられているイングランドの資本と労働がその目的のためにポルトガルへ移されることは、疑いなく、イングランドの資本家にとっても、両国の消費者にとっても有利でしょう。その場合、これらの品の相対的な価値は、一方がヨークシャーの生産物で、もう一方がロンドンの生産物である場合と同じ原理によって決まるでしょう。そして、ほかのどの場合でも、もし資本が、もっとも利益をあげて用いられる国々へ自由に流れるなら、利潤率に違いは生じえず、品物の実質的な価格、すなわち労働で測った価格にも、それらが売られることになっているさまざまな市場へ運ぶのに要する追加の労働の量のほかには、違いは生じえないでしょう。 しかし、経験が示すところでは、資本が持ち主の直接の管理のもとにないときの、想像上の、あるいは現実の不安と、生まれた国と縁故のある土地を離れ、すっかり固まった習慣を抱えたまま、見知らぬ政府と新しい法律に身を任せることを誰もが自然にいやがる気持ちとが合わさって、資本の国外への移住を押しとどめています。これらの気持ちは、私としては弱まるのを見たくないものですが、財産を持つたいていの人に、自分の富のためにより有利な用途を外国に求めるよりも、自国での低い利潤率で満足させるのです。 金と銀が流通の一般的な媒介物として選ばれたので、それらは、通商の競争によって、世界のさまざまな国々のあいだに、もしそのような金属が存在せず、国どうしの取引が純粋な物々交換であった場合に起こるであろう自然な取引に適合するような割合で、配分されます。 こうして、毛織物は、輸入元の国で要した費用よりも多くの金で売れるのでなければ、ポルトガルに輸入されることはありえません。そして、ぶどう酒は、ポルトガルで要した費用よりも多くイングランドで売れるのでなければ、イングランドに輸入されることはありえません。もし取引が純粋な物々交換であるなら、それが続きうるのは、イングランドが毛織物をとても安く作れるために、一定の量の労働で、ぶどうを栽培するよりも毛織物を製造することによって、より多くのぶどう酒を手に入れられるあいだだけであり、またポルトガルの勤労に逆の結果が伴っているあいだだけでしょう。さて、イングランドがぶどう酒を造る方法を発見し、輸入するよりも自分で育てるほうが自国の利益になったとしましょう。イングランドは当然、資本の一部を外国貿易から国内の取引へと振り向けるでしょう。輸出のために毛織物を製造するのをやめ、自分のためにぶどう酒を造るでしょう。これらの品の貨幣価格は、それに応じて決まるでしょう。ここイングランドでは、毛織物が以前の価格のままである一方でぶどう酒は下がり、ポルトガルではどちらの品の価格にも変化は起こらないでしょう。毛織物は、しばらくのあいだは、この国から輸出され続けるでしょう。その価格がここよりもポルトガルでの方が高いままだからです。しかし、それと引き換えに渡されるのは、ぶどう酒ではなく貨幣になるでしょう。そして、ここでの貨幣の蓄積と外国での貨幣の減少とが、二つの国における毛織物の相対的な価値にはたらいて、毛織物を輸出しても利益が出なくなるまで、それが続くでしょう。もしぶどう酒造りの改良がきわめて重要なものであれば、二つの国が仕事を取り替える、つまり、二つの国が消費するぶどう酒をすべてイングランドが造り、毛織物をすべてポルトガルが作ることが、両国にとって利益になるかもしれません。しかし、これは、イングランドでは毛織物の価格を上げ、ポルトガルではそれを下げるような、貴金属の新しい配分によってしか実現できないでしょう。ぶどう酒の相対的な価格は、その製造の改良による実際の利点の結果として、イングランドで下がるでしょう。つまり、その自然価格が下がるでしょう。毛織物の相対的な価格は、貨幣の蓄積によってイングランドで上がるでしょう。 こうして、イングランドでぶどう酒造りが改良される前には、ここでのぶどう酒の価格が 1 樽あたり 50 ポンドで、ある量の毛織物の価格が 45 ポンドであり、一方ポルトガルでは同じ量のぶどう酒の価格が 45 ポンド、同じ量の毛織物の価格が 50 ポンドだったとしましょう。そうすれば、ぶどう酒は 5 ポンドの利益をもってポルトガルから輸出され、毛織物は同じ額の利益をもってイングランドから輸出されるでしょう。 改良のあと、イングランドでぶどう酒が 45 ポンドに下がり、毛織物は同じ価格のままだとしましょう。通商におけるすべての取引は、それぞれ独立した取引です。商人がイングランドで毛織物を 45 ポンドで買い、それをポルトガルでいつもの利益をつけて売ることができるあいだは、その商人はイングランドから毛織物を輸出し続けるでしょう。その商人の仕事は、ただイングランドの毛織物を買い、ポルトガルの貨幣で買う為替手形でその代金を払うことです。この貨幣がどうなるかは、その商人にとってはどうでもよいことです。手形を送ることによって、自分の負債を済ませたのですから。その商人の取引は、疑いなく、この手形を手に入れられる条件によって左右されますが、その条件はそのときにはその商人に分かっています。そして、手形の市場価格、すなわち為替相場に影響しうる原因は、その商人の考えることではありません。 もし市場がポルトガルからイングランドへのぶどう酒の輸出に好都合であれば、ぶどう酒の輸出業者は手形の売り手となり、その手形は、毛織物の輸入業者か、その輸入業者に手形を売った人によって買われるでしょう。こうして、どちらの国からも貨幣が移る必要なしに、それぞれの国の輸出業者は自分の品物の代金を受け取ることになります。たがいに直接の取引をすることなしに、ポルトガルで毛織物の輸入業者が支払った貨幣は、ポルトガルのぶどう酒の輸出業者に支払われ、イングランドでは、同じ手形の取引によって、毛織物の輸出業者が、ぶどう酒の輸入業者からその価値を受け取る権限を与えられるのです。 しかし、もしぶどう酒の価格が、イングランドへぶどう酒をまったく輸出できないようなものであったなら、毛織物の輸入業者はやはり同じように手形を買うでしょう。しかし、その手形の価格はより高くなるでしょう。手形の売り手が、二つの国のあいだの取引を最終的に決済できるような反対の手形が市場に無いことを知っているからです。売り手は、自分の手形と引き換えに受け取った金貨や銀貨を、イングランドにいる取引先に実際に送り出さなければならないことを知っているかもしれません。その取引先が、売り手がその取引先あてに行うことを認めた請求に支払えるようにするためです。そこで売り手は、かかるはずのすべての費用を、自分の正当でいつもの利益とともに、手形の価格に上乗せするかもしれません。 語釈 帯の外の語は 44 語です。★ 第 VIII 部でいちばん少ない ほうです——★ 同じ語をくり返す章 だからです。★ 二つの群れに分かれます ——★ 貿易と金の語 ( exportation ・ remittance ・ negociation )、★ 国と人の名 ( Portugal ・ Portuguese ・ Russians )です。★ negociation ・ intrust は 古い綴り で、★ いまは negotiation ・ entrust です。 語(品詞) 意味 注 America en 名 アメリカ England en 名 イン