3.12 フスハーと方言の地図、そして国際語 — Epoché
この 課 か でできるようになること フスハーと 口語 こうご の 役割 やくわり の 違い ちがい を、 場面 ばめん ごとに 言える いえる 。 エジプト 方言 ほうげん との 主な おもな 違い ちがい を 5 つ 挙げ あげ られる。 アラビア 語 ご から 他 ほか の 言語 げんご に 入っ はいっ た 語 ご を、 語根 ごこん とともに 説明 せつめい できる。 前提 ぜんてい : 3.11( 無母音 むぼいん で 読む よむ ③ 型 がた から 母音 ぼいん を 組み立てる くみたてる ) 書く かく 言葉 ことば と、 話す はなす 言葉 ことば が 違う ちがう この 課程 かてい が 教え おしえ ているアラビア 語 ご は、フスハーと 呼ば よば れます。 新聞 しんぶん ・ 書籍 しょせき ・ 演説 えんぜつ ・ニュース・ 公 こう 文書 ぶんしょ の 言葉 ことば であり、アラブ 世界 せかい のどこでも 通じる つうじる 共通 きょうつう の 言葉 ことば です。 しかし、 この 言葉 ことば で 日常 にちじょう 会話 かいわ をする 人 ひと はいません。 カイロの 市場 しじょう でも、ベイルートの 喫茶 きっさ 店 てん でも、カサブランカの 家庭 かてい でも、 人々 ひとびと が 話し はなし ているのはそれぞれの 地域 ちいき の 口語 こうご です。フスハーで 買い物 かいもの をすれば、 通じ つうじ はしますが、 芝居 しばい がかって 聞こえ きこえ ます。 この 状態 じょうたい を、 言語 げんご 学 がく では 二 に 層 そう 構造 こうぞう と 呼び よび ます。ひとつの 言語 げんご 共同 きょうどう 体 たい が、 書く かく 言葉 ことば と 話す はなす 言葉 ことば に 別 べつ の 体系 たいけい を 使っ つかっ ている 状態 じょうたい です。アラビア 語 ご はその 代表 だいひょう 例 れい で、1,000 年 ねん 以上 いじょう この 状態 じょうたい が 続い つづい ています。 学習 がくしゅう 者 しゃ にとって、これは 避け さけ て 通れ とおれ ない 事実 じじつ です。だから 隠し かくし ません。 この 課程 かてい はフスハーを 教え おしえ ます —— 読む よむ ため、 聞く きく ため、 改まっ あらたまっ て 話す はなす ためです。 日常 にちじょう 会話 かいわ のためには、 口 くち 編 へん で 口語 こうご (エジプト 方言 ほうげん )を 18 課 か かけて 扱い あつかい ます。 なぜフスハーを 先 さき にやるのか。 理由 りゆう は 3 つあります。 第 だい 一 いち に、 文字 もじ と 文法 ぶんぽう の 土台 どだい がフスハーにある こと。 口語 こうご はフスハーを 簡略 かんりゃく 化 か した 形 かたち なので、フスハーを 知っ しっ ていると 口語 こうご が 理解 りかい しやすくなります。 第 だい 二 に に、 書か かか れたものはすべてフスハー であること。 第 だい 三 さん に、 地域 ちいき を 選ば えらば ない こと。 口語 こうご はどれかひとつを 選ば えらば なければなりませんが、フスハーはどこでも 通じ つうじ ます。 逆 ぎゃく に 言え いえ ば、フスハーだけでは 日常 にちじょう が 回り まわり ません。 両方 りょうほう 要り いり ます。この 課程 かてい が 話 はなし 編 へん を 24 課 か に 絞り しぼり 、 口語 こうご 編 へん に 18 課 か を 割い さい ているのは、そのためです。 型 かた の 表 ひょう どの 場面 ばめん でどちらを 使う つかう か、 地図 ちず にしました。 実際 じっさい にアラブ 世界 せかい で 暮らす くらす と、この 使い分け つかいわけ が 自然 しぜん に 体 からだ に 入り はいり ます。 場面 ばめん 使う つかう 言葉 ことば この 課程 かてい での 扱い あつかい 新聞 しんぶん ・ 雑誌 ざっし ・ 書籍 しょせき を 読む よむ フスハー 読 どく 編 へん 読 どく 、 報 ほう 編 へん 報 ほう ニュースを 聞く きく フスハー 聞 ぶん 編 へん 聞 ぶん 演説 えんぜつ ・ 講義 こうぎ ・ 礼拝 れいはい フスハー 聞 ぶん 編 へん 聞 きき 、 古 こ 編 へん 古 ふる 改まっ あらたまっ た 自己 じこ 紹介 しょうかい ・ 面接 めんせつ ・ 電話 でんわ フスハー 話 はなし 編 へん 話 はなし 買い物 かいもの ・ 食事 しょくじ ・タクシー 口語 こうご 口 くち 編 へん 口 くち 家族 かぞく や 友人 ゆうじん との 会話 かいわ 口語 こうご 口 くち 編 へん 口 くち 文字 もじ メッセージ 口語 こうご (アラビア 文字 もじ かラテン 文字 もじ ) 口 くち 編 へん 口 くち 映画 えいが ・ドラマ・ 歌 うた 口語 こうご 口 くち 編 へん 口 くち 境目 さかいめ は 固定 こてい していません。 教育 きょういく のある 人 ひと どうしの 議論 ぎろん では、フスハーの 語彙 ごい が 口語 こうご に 混じり まじり ます。テレビの 討論 とうろん 番組 ばんぐみ では、 話し手 はなして が 話題 わだい によって 行き来 いきき します。 連続 れんぞく した 幅 はば のどこかに 立つ たつ 、という 感覚 かんかく に 近い ちかい ものです。 文字 もじ メッセージでは、 口語 こうご をアラビア 文字 もじ で 書く かく ことも、ラテン 文字 もじ と 数字 すうじ で 書く かく こともあります。 数字 すうじ を 使う つかう のは、ラテン 文字 もじ に 無い ない 音 おと を 表す あらわす ためです。8.10 課 か で 扱い あつかい ます。 読み よみ 方 かた エジプト 方言 ほうげん とフスハーの 主な おもな 違い ちがい を 5 つ 挙げ あげ ます。 口 くち 編 へん で 正面 しょうめん から 扱い あつかい ますが、ここで 見取り みとり 図 ず を 持っ もっ ておくと、 聞い きい たときに 驚か おどろか ずに 済み すみ ます。 第 だい 一 いち に、 音 おと が 変わり かわり ます 。 音 おん 編 へん 4 課 か で 扱っ あつかっ たのどびこのカーフは、エジプトでは 声門 せいもん 閉鎖 へいさ 音 おん になります。ジームは ガ行 がぎょう になります。1.5 課 か の 歯間音 しかんおん は、ターゥやダールに 置き換わり おきかわり ます。 第 だい 二 に に、 語末 ごまつ の 母音 ぼいん が 完全 かんぜん に 落ち おち ます 。 音 おん 編 へん 5 課 か で「 文 ぶん を 切る きる ところでは 落とす おとす 」と 言い いい ましたが、 口語 こうご では 文 ぶん の 途中 とちゅう でも 落ち おち ます。 第 だい 三 さん に、 否定 ひてい の 作り つくり 方 かた が 違い ちがい ます 。フスハーは 動詞 どうし の 前 まえ に 否定 ひてい の 語 ご を 置き おき ますが、エジプト 方言 ほうげん は 動詞 どうし を 前後 ぜんご から 挟み はさみ ます。 第 だい 四 よん に、 現在 げんざい 形 かたち に 印 しるし が 付き つき ます 。エジプト 方言 ほうげん では、いま 起き おき ていることを 表す あらわす のに 動詞 どうし の 頭 あたま にバの 音 おと を 足し たし ます。 未来 みらい ならハの 音 おと です。フスハーにはこの 印 しるし がありません。 第 だい 五 ご に、 疑問 ぎもん 詞 し が 違い ちがい ます 。 何 なん ・どこ・いつ・なぜ—— 日常 にちじょう でいちばん 使う つかう 語 ご が、フスハーとエジプト 方言 ほうげん でまったく 違う ちがう 形 かたち をしています。 項目 こうもく フスハーとエジプト 方言 ほうげん 意味 いみ 何 なん フスハー مَاذَا マーザー、エジプト 方言 ほうげん إِيه エーフ 何 なん どこ フスハー أَيْنَ アイナ、エジプト 方言 ほうげん فِين フェーン どこ いつ フスハー مَتَى マター、エジプト 方言 ほうげん إِمْتَى エムタ いつ なぜ フスハー لِمَاذَا リマーザー、エジプト 方言 ほうげん لِيه レーフ なぜ 〜ではない フスハー لَيْسَ ライサ、エジプト 方言 ほうげん مِش ミシュ 〜ではない 欲しい ほしい フスハー أُرِيدُ ウリードゥ、エジプト 方言 ほうげん عَايِز アーイズ 私 わたくし は 欲しい ほしい 並べる ならべる と、 別 べつ の 言語 げんご に 見える みえる ほど 違い ちがい ます。 それでも 同じ おなじ 言語 げんご だと 考え かんがえ られている のは、 書き言葉 かきことば が 共有 きょうゆう されているからです。 教育 きょういく を 受け うけ た 話者 わしゃ はどちらも 使え つかえ ます。 この 表 ひょう の 右側 みぎがわ は 口 くち 編 へん の 内容 ないよう です。いまは 覚え おぼえ なくて 構い かまい ません。 違い ちがい があることを 知っ しっ ておく のが、この 課 か の 目的 もくてき です。 頻出 ひんしゅつ 語 ご で 通す とおす 最後 さいご に、 語根 ごこん を 持た もた ない 語 ご と、アラビア 語 ご から 他 ほか の 言語 げんご へ 入っ はいっ た 語 ご を 扱い あつかい ます。 日本語 にほんご にも 英語 えいご にも、アラビア 語 ご 由来 ゆらい の 語 ご がかなりあります。 語 ご 意味 いみ 注 ちゅう كُحُول ar クフール アルコール( 日本語 にほんご ・ 英語 えいご ではアルコール) قِلْي ar キルイ 灰汁 あく ( 日本語 にほんご ・ 英語 えいご ではアルカリ) قَهْوَة ar カフワ コーヒー( 日本語 にほんご ・ 英語 えいご ではコーヒー、カフェ) 語根 ごこん ق‑ه‑و إنه يحب القهوة من دون سكر. [1] 彼 かれ は 砂糖 さとう を 入れ いれ ないコーヒーが 好き すき だ。 لا أفضّل القهوة. [2] 私 わたくし はコーヒーを 好ま このま ない。 سُكَّر ar スッカル 砂糖 さとう ( 日本語 にほんご ・ 英語 えいご ではシュガー) إنه يحب القهوة من دون سكر. 彼 かれ は 砂糖 さとう を 入れ いれ ないコーヒーが 好き すき だ。 صِفْر ar スィフル ゼロ( 日本語 にほんご ・ 英語 えいご ではゼロ、サイファー) 語根 ごこん ص‑ف‑ر حتى اليوم درجة الحرارة تحت الصفر. [3] 今日 きょう も 氷点 ひょうてん 下 か です。 كِيمِيَاء ar キーミヤーゥ 化学 かがく ( 日本語 にほんご ・ 英語 えいご ではケミストリー) تِلِفِزْيُون ar ティリフィズユーン テレビ( 日本語 にほんご ・ 英語 えいご ではテレビジョン) كُومْبِيُوتَر ar クームビユータル コンピューター( 日本語 にほんご ・ 英語 えいご ではコンピューター) 語根 ごこん の 欄 らん が 空い あい ている 語 ご は、 語根 ごこん を 持た もた ない 外来 がいらい 語 ご です。 アルコールとアルカリの 頭 あたま の「アル」は、 字 じ 編 へん 8 課 か で 扱っ あつかっ た 定冠詞 ていかんし です。ヨーロッパの 言語 げんご が 借りる かりる ときに、 定冠詞 ていかんし ごと 語 ご だと 思っ おもっ て 取り込み とりこみ ました。 アルジェブラ、アルマナック、アルコーブも 同じ おなじ です。 ゼロという 語 ご は、アラビア 語 ご の「 空 そら である」という 語根 ごこん から 来 き ています。 数 かず のゼロを 記号 きごう として 使う つかう 仕組み しくみ がインドからアラビア 語 ご 圏 けん を 経 へ てヨーロッパへ 伝わっ つたわっ たときに、 語 ご もいっしょに 旅 たび をしました。 英語 えいご のサイファー、 暗号 あんごう を 意味 いみ する 語 ご も 同じ おなじ 出どころ でどころ です。 テレビやコンピューターのような 近代 きんだい の 語 ご は、 語根 ごこん を 持ち もち ません 。 語根 ごこん 編 へん 4 課 か で 見 み たように、アラビア 語 ご は 既存 きそん の 語根 ごこん から 新しい あたらしい 語 ご を 作る つくる ことを 好み このみ ますが、 日常 にちじょう 語 ご では 外来 がいらい 語 ご がそのまま 使わ つかわ れることも 多く おおく あります。 日本語話者 にほんごわしゃ がつまずくところ フスハーで 日常 にちじょう 会話 かいわ をしようとする。 通じ つうじ ますが、 相手 あいて は 驚き おどろき ます。ニュースの 言葉 ことば で 買い物 かいもの をするようなものです。 旅行 りょこう で 使う つかう なら、 口 くち 編 へん の 口語 こうご をいくらか 覚え おぼえ ておくほうが 実際 じっさい 的 てき です。 口語 こうご を「 崩れ くずれ たアラビア 語 ご 」だと 思う おもう 。 そうではありません。それぞれの 地域 ちいき で 1,000 年 ねん 以上 いじょう 使わ つかわ れてきた、 体系 たいけい を 持っ もっ た 言葉 ことば です。フスハーが 正しく ただしく て 口語 こうご が 間違っ まちがっ ている