2.6 英語の中のラテン語とギリシア語 — 学術語彙への橋 — Epoché
この課でできるようになること 学術の語が 部品でできている ことを知っていて、部品で切れる。 接辞 30 の意味を言え、初めて見る語に当たりをつけられる。 語尾を見て 品詞 が分かる。 学術語彙の半分近くがすでにカタカナで日本語にあることを、数で言える。 前提 : 2.5 まで。 学術の英語は語が長い。初めて見ると身構えますが、長い語ほど 部品でできています 。英語の学術語彙の大半は、英語本来の語ではなく、ラテン語とギリシア語から取り入れた語だからです。取り入れるときに部品ごと持ってきたので、部品の意味が今でも生きています。 ここが日本語話者に有利な点です。日本語の学術語も、 漢語の部品でできています 。「生物学」は「生」「物」「学」、「再構成」は「再」「構」「成」。部品で意味を組み立てるという読み方を、日本語話者は すでに毎日やっています 。英語でも同じことをするだけです。 そしてもう一つ。学術語彙 NAWL の 462 語(959 語中、48.2%)は、すでにカタカナとして日本語に入っています [1] 。ビジネス語彙 BSL では 744 語(1,744 語中、42.7%)。 半分近くはもう知っている のです。残りを部品で読み解けば、学術の語彙はそれほど遠くありません。 部品 30 よく出る部品を三十挙げます。右の列の語は、 語彙表(NGSL・NAWL・BSL・TSL)に在ることを機械で確かめて あります。その部品を持つ語が実際にあることの裏づけです。語尾は 品詞 を決め、語頭は 意味の向き を決めます。 部品(位置) 何を表すか 学術語彙にある語 -tion (尾) 動作・その結果(名詞を作る) absorption / acceleration / accumulation -ity (尾) 性質・状態(名詞を作る) authority / availability / antiquity -ment (尾) 行為・その結果(名詞を作る) assignment / complement / displacement -ness (尾) 性質(名詞を作る。英語もとの語尾) consciousness / effectiveness -ism (尾) 主義・体系 capitalism / metabolism / nationalism -ist (尾) それをする人 biologist / capitalist / communist -ate (尾) 〜にする(動詞を作る) accelerate / accumulate / activate -ify (尾) 〜にする(動詞を作る) clarify / classify / simplify -ize (尾) 〜にする(動詞を作る) generalize / industrialize -al (尾) 〜の(形容詞を作る) artificial / bacterial / abdominal -ive (尾) 〜する性質の(形容詞を作る) adaptive / cognitive / collective -ous (尾) 〜に富む(形容詞を作る) conscious / indigenous / infectious -able (尾) 〜できる(形容詞を作る) comparable / incredible / liable -logy (尾) 〜学・〜の話 anthropology / archaeology / analogy -graph (尾) 書く・記す photograph / photographic / paragraph re- (頭) 再び・元へ reconstruct / reactor / reaction pre- (頭) 前もって・前の precede / precipitation post- (頭) あとの postgraduate / postpone sub- (頭) 下・下位の subjective / subset / substitution inter- (頭) あいだの・たがいの interact / interface / intervene trans- (頭) 越えて・移して transaction / transcribe / transmit ex- (頭) 外へ・かつての execute / execution in- (頭) 中へ、または打ち消し impact / implicit / immune dis- (頭) 打ち消し・分離 disability / disadvantage / discharge non- (頭) 〜でない nonlinear con- (頭) ともに・いっしょに coefficient / coherent de- (頭) 離れて・下へ・取り去る decay / deceive micro- (頭) 小さい microscope / microphone / microwave tele- (頭) 遠い telephone / television / telecommunication auto- (頭) 自ら・ひとりでに autonomy / automobile / automatically 三十の部品に、語彙表の語を 81 語添えました。同じ部品を持つ語はこれよりずっと多く、 一つの部品で何十語も読み解けます 。部品を覚える手間は、語を一つ覚える手間とほとんど変わりません。だから効率がまるで違います。 語尾で品詞が分かる 部品の中でも、 語尾はとくに役に立ちます 。意味が分からなくても、品詞が分かるからです。品詞が分かれば、文の中でその語がどの場所にいるかが決まり、読み進められます。 語尾 できる品詞 文の中での場所 -tion ・ -ity ・ -ment ・ -ness 名詞 主語か目的語。前に the が付きやすい -al ・ -ive ・ -ous ・ -able 形容詞 名詞の前か、 be の後ろ -ate ・ -ify ・ -ize 動詞 主語の後ろ -ist ・ -ism 名詞 人と、その考え方 同じ語根から、四つの品詞がそろうこともあります。そのときは 語尾だけが違う四つ が並びます。一つ覚えれば残りも読めるので、辞書で一語引いたら 同じ根の語を見わたす 癖をつけてください。次の課( 2.7 橋編 )で、その見わたし方を正面から扱います。 読み解いてみる 部品を知っていると、初めて見る語にどう当たりがつくか。手順は三つです。 一つめ、 語尾を見て品詞を決める 。これは意味を知らなくてもできます。二つめ、 語頭を見て向きを決める 。再びなのか、前もってなのか、打ち消しなのか。三つめ、 真ん中に知っている語が隠れていないか 探す。隠れていれば、そこが意味の中心です。 三つやっても分からないことはあります。それでかまいません。 当たりがつけば読み進められる のが目的で、正確な意味は文脈と辞書が教えてくれます。読みながら止まらないことのほうが、はるかに大事です。 実文で確かめる 学術の文といっても、骨は第 1 期で組んだものと同じです。違うのは語が長いことだけ。下の六つは、学術・実務の文でよく出る形です。 英文 日本語訳 見るところ In this company, there are more women than men. [2] この会社は女性の方が男性より数が多い。 比べる文。学術の文の骨はこれと同じ Life is more interesting than any book. [3] 人生はいかなる本よりも興味深い。 比べる文。語が長くなるだけで形は変わらない It is good to do your best. [4] 最善をつくすことはよいことである。 長い主語を It で後ろへ送る形 There has been a change of plans. [5] 計画に変更があります。 There has been で状況を報告する There have been no problems so far. [6] 今のところ問題ありません。 同じ形。学術・実務の報告でよく出る What has changed since then? [7] あれから何が変わった? since then で幅のある時間を言う 六つの文に難しい形は一つもありません。比べる形、長い主語を後ろへ送る形、状況を報告する形。どれも第 2 期の型編で組み上げたものです。 学術の英語が難しいのは、語彙のせいであって形のせいではない ——これが、この編で言いたいことです。 語表 部品で読み解く練習に要る語を並べます。どれも学術の文で毎ページ出る語で、 部品が見えるもの を選びました。この表の語は作品辞書に入るので、読書ページで意味が引けます。 語(品詞・強勢の型) 意味 注 structure en 名・動 ●○ カタカナとの差 ストラクチャ → ●○ (5 拍を 2 音節に) 連語 the structure of function en 名・動 ●○ カタカナとの差 ファンクション → ●○ (5 拍を 2 音節に) 連語 the function of analysis en 名 ○●○○ カタカナとの差 アナリシス → ○●○○ (5 拍を 4 音節に) 連語 an analysis of theory en 名 ●○ カタカナとの差 セオリー → ●○ (4 拍を 2 音節に) 連語 in theory method en 名 ●○ カタカナとの差 メソッド → ●○ (4 拍を 2 音節に) 連語 a method of factor en 名 ●○ カタカナとの差 ファクター → ●○ (4 拍を 2 音節に) 連語 a key factor process en 名・動 ●○ カタカナとの差 プロセス → ●○ (4 拍を 2 音節に) 連語 the process of element en 名 ●○○ カタカナとの差 エレメント → ●○○ (5 拍を 3 音節に) 連語 an element of principle en 名 ●○○ カタカナとの差 プリンシプル → ●○○ (6 拍を 3 音節に) 連語 in principle evidence en 名 ●○○ カタカナとの差 エビデンス → ●○○ (5 拍を 3 音節に) 連語 evidence for definition en 名 ○○●○ カタカナとの差 デフィニション → ○○●○ (5 拍を 4 音節に) 連語 by definition distribution en 名 ○○●○ カタカナとの差 ディストリビューション → ○○●○ (8 拍を 4 音節に) 連語 the distribution of 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Latin and Greek roots and affixes | Reading | Khan Academy Khan Academy (6:23, 2020) ラテン語・ギリシア語の語根と接辞。カーンアカデミー(非営利) 練習 「実文で確かめる」の 6 行を、行を押して音を聞いてから続けて 音読 する。3 周する。3 周目は 3 行めと 4 行めの 2 行を、音声に重ねて シャドーイング する。この 2 行は長い主語を後ろへ送る形で、学術の文にいちばんよく出る。 「部品 30」の表の右の列から語を十個選び、 語尾で品詞を決め、語頭で向きを決める 。意味を辞書で引くのは、二つを決めたあとにすること。当たりがついていた語と、外れた語を分けて書き留める。 自分の分野の英語の文章を一段落選び、 長い語に印を付けて部品で切る 。切れた語と切れなかった語を数える。切れなかった語は、部品の表に無い部品を持っている。それが自分の分野で次に覚えるべき部品になる。 この課のまとめ ★ 学術の語は部品でできている。 ラテン語とギリシア語から部品ごと取り入れたので、部品の意味が今も生きている。 日本語の学術語も漢語の部品でできている。 部品で組み立てる読み方は、日本語話者がすでに毎日やっている 。 学術語彙 NAWL の 48.2%、ビジネス語彙 BSL の 42.7% は、すでにカタカナとして日本語にある。 語尾は品詞を決め、語頭は意味の向きを決める。 意味が分からなくても品詞は分かる。 -tion ・ -ity ・ -ment は名詞、 -al ・ -ive は形容詞、 -ate ・ -ize は動詞。 読み解く手順は三つ——語尾で品詞/語頭で向き/真ん中に知っている語を探す。 三つやって分からなくてもよい。 当たりがつけば読み進められる ことが目的。 学術の英語が難しいのは 語彙のせいであって形のせいではない 。形は第 2 期の型編で組み上げたもので足りる。 次の課へ 次の課は 2.7 、題は 語形成 — 1 語から 5 語へ です。この課で部品を覚えました。次の課では、その部品を使って 一つの語根から語を広げます 。一語を覚えたつもりが、実は五語ぶんの入口だった——そういう覚え方に切り替える課です。語彙を増やす速さが、ここで一段変わります。 答え 3 行めと 4 行めは、どちらも主語の場所に It や There が立っていて、中身が後ろにあります。学術の文でこの形が多いのは、 主語になる中身が長いから です。シャドーイングでは、頭の二語を弱く速く言い、後ろの中身を立ててください。英語の話し手もそう言っています。 当たりが外れた語は、部品の意味が 比喩的に動いている ことが多い。「下」を表す部品が「あとの」を表したり、「離れて」が「取り去る」になったり。外れたこと自体は失敗ではありません。 当たりをつけて読み進められたかどうか だけを見てください。 切れなかった語が多くても気にしないでください。分野ごとに、よく出る部品は違います。自分の分野で三つか四つ足せば、切れ方はかなり変わります。第 9 編「論」で、分野ごとの語彙の集め方を扱います。 参考文献 この数は課程の計測