8.40 九つの童謡 — 詩には用がある(Mother Goose) — Epoché
この篇でできるようになること 覚えるための詩 という使い方を知る。 答えを言わない詩 (なぞなぞ)を楽しめる。 二人で掛け合う詩 の形が分かる。 古い形( thee ・ hath )を、 驚かずに 読める。 前提 : 8.39 まで。 読む前に 九首入っています。 8.39 読編 と同じように、 題のところで別の歌に変わります 。 前の篇との違いは一つです。 この篇の歌には、役目があります 。音のためだけに作られたのではなく、 何かをするために作られた 歌が混じっています。 どの歌 その役目 Thirty Days Hath September 月の日数を覚える A Thorn なぞなぞ 。答えは書かれていない Just Like Me 二人で掛け合う One Two Three 数を覚える ついでに掛け合う I Ll Tell You A Story 始まりと終わりだけ の歌 気をつけるところを二つ置きます。 一つめ、 古い形 です。 thee は you の古い形、 hath は has の古い形です。どちらも今は使いませんが、 童謡と聖書と古い詩には出ます 。 8.39 読編 で置いたとおり、 歌は古い語を今に運ぶ器 です。 二つめ、 なぞなぞの歌には答えが無い ことです。三つめの歌がそれです。読んでも意味が通りませんが、 通らないのが正しい のです。答えは題に書いてあります。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 296 語、九首入っています。読 B でいちばん短い篇です。 Away, birds, away! Take a little and leave a little, 8.39 読編 と同じく、 先に声に出して 読んでください。意味が分からなくてもかまいません。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 鳥追い あっちへ行け、鳥よ、あっちへ行け!/少し取ったら少し残して、/二度と来るんじゃないぞ。/もし来たら、撃ち抜いてやる、/そうしたらお前もおしまいだ。 わたしも同じ 「二つ続きの階段をのぼったよ。」「わたしも同じ。」 「部屋に入ったよ。」「わたしも同じ。」 「窓から外を見たよ。」「わたしも同じ。」 とげ 林へ行って、それを手に入れた。/腰をおろして、それを探した。/そして家へ持って帰った、見つからなかったから。 九月は三十日 三十日あるのは九月、/四月、六月、十一月。/二月だけは二十八日、/残りはみんな三十一日。/ただし閏年は別で、そのときは/二月の日数が二十九日。 フェル先生 あなたが好きではありません、フェル先生。/そのわけは言えません。/でもこれだけは分かっています、よく分かっています、/あなたが好きではありません、フェル先生! お話をしよう お話をしよう/ジャック・ア・ノーリーのお話を。/さあ、お話が始まった。/もう一つお話をしよう/その弟のお話を。/さあ、お話はおしまい。 一、二、三 一、二、三、四、五、/あるとき魚を生け捕りにした。/六、七、八、九、十、/でもまた放してやった。/どうして放してやったの?/だって指をかまれたんだもの。/どの指をかまれたの?/右手の小指。 ダービーの男 ダービーの小さなおじいさん、/わたしにどんな仕打ちをしたと思う?/わたしのパンとチーズを持っていった、/それがわたしへの仕打ちさ。 ベティ・ブルー ちびのベティ・ブルー、/よそ行きの靴を片方なくした。/ちびのベティはどうしたらいい?/もう片方に合うように、/もう一つあげなさい。/そうすれば二つの靴で歩けるよ。 語釈 帯の外の語は 21 語で、読 B でいちばん少ない篇です。下に 全部 出します。 語(品詞) 意味 注 Betty en 名 ベティ。女の子の名 Bird en 名 鳥。題の中の語 Bird watchers gathered early to see rare species. 野鳥観察者たちは珍しい種を見るために早く集まりました。 Derby en 名 ダービー。イングランドの町 Hath en 動 has の古い形。題の中の語 She hath traveled far to see her family. 彼女は家族に会うために遠くまで旅をしました。 Jack en 名 ジャック。男の名 Nory en 名 ノーリー。 Jack-a-Nory で歌の中の名 Scarer en 名 追い払う者。題の中の語 The farmer built a scarer to protect his crops. その農夫は作物を守るために追い払う仕掛けを作りました。 Thorn en 名 とげ。題の中の語 Thorn bushes grew thickly along the garden fence. とげのある低木が庭のフェンス沿いに生い茂っていました。 alive en 形 生きている The old dog is still alive and happy. その老犬はまだ生きていて元気です。 betty en 名 ベティ( Betty と同じ語) birds en 名 鳥(複数) Birds sang sweetly in the trees this morning. 今朝、鳥たちが木々で美しくさえずっていました。 bite en 動 かむ Please do not bite your nails, honey. ねえ、爪をかまないでください。 bread en 名 パン She baked fresh bread early this morning. 彼女は今朝早く焼きたてのパンを焼きました。 cheese en 名 乳を固めた食べ物 He added extra cheese to his sandwich. 彼はサンドイッチにチーズを追加しました。 finger en 名 指 She cut her finger while chopping vegetables. 彼女は野菜を切っているときに指を切りました。 hath en 動 has の古い形 Time hath a way of healing old wounds. 時は古い傷を癒す力を持っています。 leap en 名 跳ぶこと。 leap-year で閏年 The cat made a sudden leap onto the table. その猫はテーブルへ突然跳び上がりました。 shoe en 名 靴 He tied his shoe before running outside. 彼は外で走る前に靴ひもを結びました。 stairs en 名 階段 She climbed the stairs quickly to her room. 彼女は自分の部屋へ急いで階段を上りました。 thee en 代 あなたを。 you の古い形 I shall always remember thee, my dear friend. 親愛なる友よ、私はいつもあなたのことを覚えています。 wood en 名 林 They walked slowly through the quiet wood. 彼らは静かな林の中をゆっくりと歩きました。 構文の骨 ★覚えるための詩 四つめの歌を見てください。 Thirty days hath September, April, June, and November; February has twenty-eight alone, All the rest have thirty-one, これは 暦の歌 です。三十日の月はどれか、二十八日の月はどれか、残りは三十一日—— 月の日数を覚えるために作られました 。 日本語にも同じものがあります。「 西向く侍 」——二・四・六・九・十一の月が三十日までだという覚え方です。どちらも 覚えにくいことを、覚えやすい形に載せた もので、作り方は同じです。 そして、この歌にも 韻 があります。 行の終わり 揃っているか September / November 揃っている alone / thirty-one 揃っている time / twenty-nine ほぼ 揃っている 三つめは 完全には揃っていません 。英語の詩はこれを許します—— 近い音でよい のです。むしろ、ぴったり揃える語が見つからないときに近い音で済ませるのは、詩のふつうの手です。 覚えるための詩の作り方はこうです—— 覚えたい中身を、韻と拍子に載せる 。英語を学ぶときにも使えます。覚えにくい語をいくつか集めて、 韻を踏む順に並べる だけで、残り方が変わります。 ★答えを言わない詩 三つめの歌は、三行しかありません。 I went to the wood and got it; I sat me down to look for it And brought it home because I couldn't find it. 読んでも 意味が通りません 。林で手に入れたのに、すわって探し、見つからなかったから家に持ち帰った—— ぜんぶ矛盾して います。 答えは 題 に書いてあります—— A Thorn 、 とげ です。 とげなら通ります。林で 刺さり 、すわって 抜こうと探し 、見つからなかったから 刺さったまま 持ち帰った。 it が何かを入れ替えるだけで、矛盾が消えます 。 8.24 読編 で置いた指示語の話を思い出してください。あそこでは 指す先が文章の中に無い のが問題でした。この歌では、 指す先を隠すのが遊び です。同じ仕掛けが、片方では欠陥になり、片方では面白さになります。 ★二人で掛け合う詩 二つめと七つめは、 二人で言う歌 です。 "I went up two pairs of stairs." "Just like me." 一人が何かを言うと、もう一人が Just like me (わたしも)と返します。それが三度くり返されます。 引用符で二人の声が分けられて います。 七つめは、問いと答えでできています。 Why did you let it go? Because it bit my finger so. Which finger did it bite? The little one upon the right. 問いが二つ、答えが二つ 。しかも go と so 、 bite と right で韻を踏んでいます。 掛け合いが、そのまま韻の型になって います。 こういう歌は、 覚える早さが違います 。相手の言葉が次の行を呼ぶので、 忘れても相手が思い出させて くれます。二人で読む相手がいるなら、この二首はそうしてください。 古い形 — thee と hath この篇には古い形が三つ出ます。 古い形 今の形 どの歌に thee you (目的語の形) Doctor Fell hath has Thirty Days Hath September I sat me down I sat down A Thorn 三つめに注目してください。 sat のあとに me が入っています。今は言いませんが、古い英語では 自分の動きに me を添える 言い方がありました。意味は変わりません。 こういう形に当たったとき、することは一つです—— 今の形に置き換えて読む 。 thee は you 、 hath は has 。それで意味は取れます。 覚える必要はありません。ただし、 見て驚かない ことは大事です。古い詩や聖書を開いたとき、 ここで止まるかどうか で読める量が変わります。 訳 第 2 期の読み物に 文ごとの訳は付けません 。 歌ごと の要旨を置きます。 どの歌 だいたいの中身 The Bird Scarer 鳥を追う歌。少し取って少し残せ、二度と来るな。来たら撃ち抜くぞ、それでおしまいだ Just Like Me 「二階まで上がった」「わたしも」。「部屋に入った」「わたしも」。「窓の外を見た」「わたしも」 A Thorn 林へ行って手に入れた。すわって探した。見つからなかったので家へ持ち帰った。(答え=とげ) Thirty Days Hath September 九月・四月・六月・十一月は三十日。二月だけ二十八日。残りはみな三十一日。ただし閏年は二月が二十九日 Doctor Fell フェル先生は好かない。理由は言えない。だがこれだけは確かだ——フェル先生は好かない I Ll Tell You A Story ジャック・ア・ノーリーの話をしよう。——さあ始まった。その弟の話もしよう。——さあ終わった One Two Three 一から五まで数えて、魚を生け捕りにした。六から十まで数えて、また逃がした。なぜ逃がした。指をかまれたから。どの指。右手の小指 The Man Of Derby ダービーの小さな老人が、わたしにどうしたと思う。パンとチーズを取り上げた。そういう仕打ちをした Betty Blue ベティは晴れ着の靴を片方なくした。どうしよう。もう片方に合うのをもう一つやればよい。そうすれば二本の足で歩ける 六つめの歌に気をつけてください。 話をすると言って、話をしていません 。「始まった」と言った次の行で「終わった」と言います。 始まりと終わりだけがあって、中身が無い ——これも 8.39 読編 の「意味が通らない歌」の仲間で、 聞き手をからかう歌 です。 音読 この篇は、 相手がいるなら二人で 読んでください。二つめと七つめは掛け合いの歌なので、一人で読むと半分しか働きません。 四つめの歌(暦の歌)は、 覚えるつもりで 読んでください。三周も読めば、たいてい覚えます。 覚えたら、この課でいちばん得をしたことになります 。一生使える知識だからです。 五つめの歌は、 同じ行を二度、同じ調子で 言ってください。一行めと四行めが同じ文です。同じに言うから、 理由が言えないという中身 が立ちます。 読 B の二十四篇をふり返る これで第 2 期の読み物は終わりです。二十四篇で何を置いてきたかを、束ごとに並べます。 どの束 何篇 そこで置いた読み方 百科事典(8.17〜8.24) 八篇 長い一文を切る/段落の頭に主題/数字と記号は目で