3.4 前置詞 — 対格をとる・奪格をとる・両方 — Epoché
この課でできるようになること 主な前置詞 15 を、とる格と意味で言える。 in ・ sub の対格(方向)と奪格(位置)を使い分けられる。 都市名・ domus が前置詞なしで方向・場所・起点を言うことを知っている。 前提 : 3.3 まで。 前置詞は、名詞の前に立って格を要求する小さな語です。日本語の「〜へ」「〜で」「〜から」が名詞の 後ろ に付く後置詞なのに対し、ラテン語は 前 ——英語と同じ位置です。読むときは 前置詞を名詞の後ろへ回す (返り読み)。前置詞の数は少なく(核心語で 23)、とる格で三つに分かれます。 対格をとる前置詞 — 動きと範囲 前置詞 意味と例 ad 〜へ・〜のもとへ・〜まで。 ad tē veniō 君のもとへ来る / ad hoc これに対して per 〜を通って・〜によって。 per ipsum 彼によって / per annōs 何年もの間 inter 〜の間に。 inter hominēs 人々の間で ante / post 〜の前に/〜の後に(場所も時も)。 ante bellum 戦争の前に / post mortem 死後 apud 〜のもとで・〜の家で・〜(著者)の中に。 apud eōs 彼らのもとで trāns 〜を越えて。 trāns mare 海を越えて contrā 〜に反して。 contrā nātūram 自然に反して propter 〜のために(理由)。 propter metum 恐れのために 奪格をとる前置詞 — 起点・随伴・欠如 前置詞 意味と例 ā/ab 〜から・〜によって(動作主)。 ā Deō 神から・神によって ex/ē 〜の中から。 ex urbe 都市から / ē caelō 天から dē 〜から下へ・〜について。 dē caelō 天から / dē amīcitiā 友情について cum 〜と一緒に。 cum illō あの人と / mēcum 私と(後ろに付く) sine 〜なしに。 sine tempore 時間なしに prō 〜の前に・〜のために・〜の代わりに。 prō patriā 祖国のために cōram 〜の面前で。 cōram populō 民の前で 両方とる in ・ sub — 対格は方向、奪格は位置 格(助詞) 意味と例 対格 (方向・〜へ) in urbem 都市へ / in caelum 天へ / sub rēgem 王の下へ 奪格 (位置・〜で) in urbe 都市で / in caelō 天で / sub rēge 王の下で ★これが第 1 期でいちばん実用的な区別です。 in の後ろが対格なら「〜へ(動き)」、奪格なら「〜で(位置)」。ドイツ語の in +4 格/3 格と同じ仕組みで、日本語の「へ」と「で」の違いに対応します。 in prīncipiō (初めに)は奪格(時点)、 in aeternum (永遠へ)は対格。 前置詞なしで方向・場所・起点を言う語 都市の名前・小さな島・ domus (家)・ rūs (田舎)は前置詞を使わず、格だけで言います。 Rōmam (ローマへ・対格)・ Rōmae (ローマで・地格)・ Rōmā (ローマから・奪格)、 domum (家へ)・ domī (家で)・ domō (家から)。地格は第 1・2 変化の単数では属格と同じ形、それ以外は奪格と同じ形。第 1 期の統制作文にローマと家が出るので、ここで覚えておいてください。 実文で前置詞を読む 原文 日本語訳 見るところ Nunc autem ad te venio: [1] しかし今、私はあなたのもとへ行く。 ad tē 対格(方向) Dixitque ad illos: [2] そして彼は彼らに向かって言った。 ad illōs ——後古典は「〜に言う」を ad +対格でも言う Omnia per ipsum facta sunt: [3] すべては彼によって成った。 per ipsum 対格(手段・経由) Deus autem noster in cælo; [4] しかし私たちの神は天に。 in caelō 奪格(位置)。 est 省略 Quia de aqua tuli eum. [5] 水から彼を引き上げたからだ。 dē aquā 奪格(起点) Non sumus sub rege; [6] 私たちは王の下にいない。 sub rēge 奪格(位置) Haec poena apud eos est gravissima. [7] この罰は彼らのもとで最も重い。 apud eōs 対格。カエサル『ガリア戦記』 ibunt de virtute in virtutem: [8] 彼らは力から力へと進むだろう。 dē virtūte (奪格・起点)→ in virtūtem (対格・方向)。一文に両方 背景 — 前置詞はもと副詞だった ラテン語の前置詞は、もともと 副詞 でした。古い時代には ad (そばへ)・ in (中で)は動詞に掛かる副詞で、格だけで「〜へ・〜で」を言い分けていた。格の区別が弱まるにつれて、副詞が名詞に寄り添って意味をはっきりさせるようになり、前置詞になった。だから前置詞は 格を「支配する」のではなく、格の意味を「補強する」 —— in +対格が方向なのは対格がもともと方向を言う格だからで、 in +奪格が位置なのは奪格に地格が合流しているからです。前置詞と格の組み合わせは恣意的ではありません。 この歴史は、動詞の 接頭辞 を見ると今も分かります。 ad-veniō (〜へ来る=到着する)・ ex-eō (外へ行く)・ in-dūcō (中へ導く)・ trāns-eō (越えて行く)——前置詞と同じ語が動詞に付いて方向を示す。英語の advent ・ exit ・ induce ・ transit はこの合成語が輸入されたものです。語編の語 I で接頭辞を体系的に扱いますが、この課の前置詞 15 を覚えれば、英語の語源の半分はもう手の中にあります。 前置詞の 位置 にも例外があります。 cum は人称代名詞の後ろに付く( mēcum・tēcum・nōbīscum・vōbīscum 、関係代名詞でも quōcum )。 causā ・ grātiā (〜のために)は属格の 後ろ に置く後置詞で、日本語と同じ位置です( exemplī grātiā 「例のために」=e.g.)。詩では前置詞と名詞の間に他の語が割り込むこともある。第 1 期の統制作文にはこの例外は mēcum・tēcum しか出しません。 最後に、日本語話者が前置詞で戸惑う点を一つ。日本語の「〜に」は方向にも位置にも使えます(「東京に行く」「東京にいる」)が、ラテン語は in urbem / in urbe で必ず分ける。訳すときは問題になりませんが、 書く・言うときに必ず一度は間違えます 。動詞が「行く・来る・送る・置く」のような移動なら対格、「いる・ある・住む・座る」のような静止なら奪格——動詞を見て決める癖をつけてください。ドイツ語を学んだ人は同じ規則( Wohin ?/ Wo ?)を知っています。 日本語ならどう言うか 日本語の後置詞との対応表を頭に置いてください: へ= ad / in +対格、で(場所)= in +奪格、から= ab/ex/dē 、と= cum 、なしに= sine 、のために= prō (利益)/ propter (理由)、について= dē 、の間に= inter 、の前に/後に= ante/post 。位置が逆なだけで、意味の切り方はよく似ています。日本語話者が誤りやすいのは「に」——方向の「に」(東京に行く)は ad/in +対格、位置の「に」(東京にいる)は in +奪格。 Dē virtūte in virtūtem ībunt .(彼らは力から力へと進むだろう) 語(順に) 意味 読む順 Dē 〜から ② virtūte 力 ① in 〜へ ④ virtūtem 力 ③ ībunt. 行くだろう ⑤ 前置詞は名詞の後ろへ回す(レ点)。動詞はそのまま最後。 新出語 語(品詞) 意味 注 ad la 前置詞+対格 〜へ、〜のもとへ、〜まで、〜に対して 日本語との差 英語 ad- ・ advent Ad therotrophium ivi. [9] 私は動物園へ行った。 Ad rem. [10] さて本題に入ろうか。 per la 前置詞+対格 〜を通って、〜によって、〜の間ずっと 日本語との差 英語 per- ・ permit ante la 前置詞+対格・副詞 〜の前に(場所・時) 日本語との差 英語 ante- ・ antique 。a.m.= ante merīdiem Hortus ante domum est. [11] 庭は家の前にあります。 Raeda ante receptaculum est. [12] 車はガレージの前だよ。 post la 前置詞+対格・副詞 〜の後に 日本語との差 英語 post- 。p.m.= post merīdiem Pulchrum est post tam longum spatium temporis te revidere. [13] 久しぶりにお会いできて嬉しいです。 apud la 前置詞+対格 〜のもとで、〜の家で、〜の著作中に 日本語との差 apud Cicerōnem =キケロの著作に Haec poena apud eos est gravissima. この罰は彼らのもとで最も重い。 trāns la 前置詞+対格 〜を越えて 日本語との差 英語 trans- 。 Gallia Trānsalpīna contrā la 前置詞+対格・副詞 〜に反して、向かい合って 日本語との差 英語 contra- ・ contrary propter la 前置詞+対格 〜のために(理由)、〜の近くに 日本語との差 prope (近く)から cōram la 前置詞+奪格 〜の面前で 日本語との差 英語 coram (法廷用語) Rōma la 名詞・第 1 変化・女性( -ae ) ローマ 日本語との差 Rōmam・Rōmae・Rōmā 前置詞なし 読むときの手順 — 前置詞を見たら 前置詞は読むときの 目印 として使えます。前置詞を見つけたら、その直後(ときに 1 語おいて)に名詞があり、二つで一つの句を作る。句の終わりが分かれば文の切れ目が分かる。だから長い文を読むときは、まず前置詞に印を付けて句をくくり、残った語で主語・目的語・動詞の骨組みを取り出す——読編の「構文の骨」で毎回この作業をします。 in を見たら、次の名詞の語尾が対格( -m・-s )か奪格( -ā・-ō・-e・-ibus )かを必ず確かめる。この一手間で「へ」と「で」を取り違えません。前置詞句は日本語では名詞の後ろに助詞を付けて一語のように扱えるので、返り読みの番号も句に一つ振れば足ります。 練習 練習 1 — 格を選ぶ 次の前置詞の後ろを正しい格にしてください( urbs 都市)。 in ___ (都市へ) in ___ (都市で) ex ___ ad ___ sine ___ per ___ 練習 2 — 前置詞なしで 「ローマへ」「ローマで」「ローマから」「家へ」「家で」をラテン語にしてください。 練習 3 — 本文を隠して復唱する 上の 8 文を 3 段で読んでください。前置詞と名詞は 一息で ( in-CAE-lō )——前置詞に強勢はありません。 この課のまとめ 前置詞は名詞の 前 に立ち、格を決める。読むときは後ろへ回す。 対格: ad・per・inter・ante・post・apud・trāns・contrā・propter 。奪格: ā/ab・ex・dē・cum・sine・prō 。 in・sub は対格で方向、奪格で位置 ( in urbem / in urbe )。 都市名・ domus は前置詞なし( Rōmam・Rōmae・Rōmā )。 次の課へ 第 3.5 課は 疑問と否定 。 -ne ・ nōnne ・ num の三つの疑問、疑問詞、そして nōn ・ nēmō ・ nihil ・ numquam の否定。語順を変えずに疑問文を作る——日本語と同じです。 答え 練習 1 : in urbem / in urbe / ex urbe / ad urbem / sine urbe / per urbem 。 練習 2 : Rōmam / Rōmae / Rōmā / domum / domī 。 参考文献 Vulg . Ioh . 17:13( Nunc autem ad te venio: )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Vulg . Luc . 12:15( Dixitque ad illos: )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Vulg . Ioh . 1:3( Omnia per ipsum facta sunt: )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Vulg . Ps . 113:11( Deus autem noster in cælo; )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Vulg . Exod . 2:10( Quia de aqua tuli eum. )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Sen . Ep . 4.33.4( Non sumus sub rege; )。 Perseus Digital Library ( canonical-latinLit , phi 1017. phi 015)。 CC BY-SA 4.0 Caes . Gal . 6.13.6( Haec poena apud eos est gravissima. )。 Perseus Digital Library ( phi 0448. phi 001)。 C