14.23 問いだけの詩 — 二行ずつ韻を踏み、最後に一語だけ替える — Epoché
この篇でできるようになること ★ 二行ずつ韻を踏む 作り(対韻)が聞き取れる。 ★ 韻が機械で測りきれない ことと、その理由が分かる。 ★ 答えない問いを積む 詩の運びが追える。 ★ くり返しで一語だけ替える 手が見える。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ 特別編は どの篇から読んでもかまいません 。★ 前の篇を読んでいなくても通じるように書いてあります。 ★ これは 千七百九十四年 の詩集 に入っています。★ その詩集は 子どもの歌の形で書かれて いて 、★ やさしい語・短い行・くり返し で作られています。★ けれども 子どもの詩ではありません 。 どちらのことか 確かめること ★ 形のこと ★ 子ども向けの歌や物語がどんな形をしているか( 12.7 知編 ) ★ 素材のこと ★ lamb (子羊)が英語で何を指すか( 12.17 知編 ) ★ 一つ断ります。 ★ この詩の題は Tyger と綴られることが多い のですが、★ この版は Tiger です。★ 原文を変えていないので、 この版のままにして あります。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。★ 韻文なので 一行が一段落 です。本文は 143 語、行は 24 行、一行の語数は平均 6.0 語です。 ★ 数えられた 22 行は、どれも 7・8 音節 です(七音節が 16 行)。★ 14.21 英語の名文 の十音節より 短い ので、★ 一行が ひと息で言い切れ ます ——★ だから 覚えやすい のです。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 とら、とら、燃えて明るい、 夜の森のなかで、 どんな不滅の手が、どんな目が、 お前のおそろしい釣り合いを形づくれたのか。 どんな遠い深みで、どんな空で お前の目の火は燃えていたのか。 どんな翼に乗って、彼はあえて高みを目指したのか。 どんな手が、あえてその火をつかんだのか。 そして、どんな肩が、どんな技が お前の心臓の筋をよじり合わせられたのか。 そして、お前の心臓が打ち始めたとき、 どんな畏るべき手が、どんな畏るべき足が。 かなづちは何だったのか。鎖は何だったのか。 どんな炉のなかに、お前の脳はあったのか。 金床は何だったのか。どんな畏るべき握りが その死をもたらす恐ろしさを、あえてつかんだのか。 星々が槍を投げ下ろし、 その涙で天をうるおしたとき、 彼は自分の作ったものを見てほほえんだのか。 子羊を作ったあの方が、お前を作ったのか。 とら、とら、燃えて明るい、 夜の森のなかで、 どんな不滅の手が、どんな目が、 お前のおそろしい釣り合いを、あえて形づくったのか。 語釈 帯の外の語は 18 語しかありません。★ 半分が 鍛冶場の道具 です—— hammer ・ anvil ・ furnace 。★ とらを 打ち出された物 として書いている からです。 語(品詞) 意味 注 anvil en 名 金づち仕事の台。鉄をのせて打つ The blacksmith hammered the glowing iron upon a heavy anvil. 鍛冶屋は熱く光る鉄を重い金づち仕事の台の上で打ちました。 aspire en 動 高く上ろうとする Young students often aspire to become doctors or teachers. 若い学生たちはしばしば医者や教師になろうと高く上ろうとします。 clasp en 動 しっかりつかむ She let him clasp her hand tightly during the storm. 嵐のあいだ、彼女は彼に自分の手をしっかりつかませました。 deadly en 形 命を奪う A deadly fever spread quickly through the crowded harbor town. 命を奪う熱病は、混み合った港町にすばやく広がりました。 dread en 形 畏るべき The sailors spoke of the sea's dread power at night. 船乗りたちは夜、海の畏るべき力について語りました。 fearful en 形 おそろしい The child grew fearful whenever thunder rolled across the hills. 雷が丘を渡ってくるたび、その子はおそろしい気持ちになりました。 furnace en 名 炉。鉄を溶かす火所 Workers fed coal into the furnace throughout the freezing night. 凍えるような夜通し、作業員たちは炉に石炭を入れ続けました。 hammer en 名 かなづち He struck the nail firmly with a small wooden hammer. 彼は小さな木のかなづちで釘をしっかり打ちました。 heaven en 名 天 The old song promised that kindness leads straight to heaven. その古い歌は、優しさがまっすぐ天へ通じると約束していました。 immortal en 形 死ぬことのない The old poem imagined an immortal spirit living beyond the stars. その古い詩は、星の向こうに生きる死ぬことのない魂を思い描きました。 lamb en 名 子羊 A small lamb followed the shepherd across the green field. 小さな子羊が緑の畑を渡る羊飼いについて行きました。 sinews en 名 すじ。筋と腱 Years of rowing had built strong sinews in his arms. 何年も漕いだことで、彼の腕には強いすじができました。 spears en 名 槍(複数) The soldiers carried long spears as they marched toward the fort. 兵士たちは要塞へ行進する間、長い槍を持っていました。 symmetry en 名 釣り合いの整った形 The old cathedral was admired for its perfect symmetry. その古い大聖堂は完璧な釣り合いの整った形で称えられました。 thee en 代 あなたを。 you の古い形 No harm shall ever come near thee while I live. 私が生きているかぎり、どんな害もあなたには近づきません。 thine en 代 あなたの。母音の前で thy の代わりに使う Take this small ring; from today it shall be thine. この小さな指輪を受け取って。今日からそれはあなたのものです。 thy en 代 あなたの( your の古い形) Trust thy own eyes before believing every rumor you hear. 耳にするうわさすべてを信じる前に、あなたの目を信じなさい。 tiger en 名 とら A hungry tiger prowled silently near the edge of the village. 飢えたとらが村のはずれを静かに歩き回りました。 二行ずつ韻を踏む ★ 行末の音を数えました。 ★ 24 行が 二行ずつ 12 組 に分かれ ます。 組の例 行末の語 ★ 一組め bright / night ★ 三組め skies / eyes ★ 五組め art / heart ★ 七組め chain / brain ★ 機械で音が揃うと確かめられたのは 8 組 、★ 外れたのが 4 組 です。★ 外れた組は 韻を踏んでいないのではありません ——★ 機械の測り方に 三つの穴 があるだけ です。 外れた組 機械が外した理由 aspire / fire ★ 辞書が同じ音を二通りに書いている spears / tears ★ 辞書が「裂く」の tears を先に返す(ここは「涙」) eye / symmetry ★ いまは第一音節を強く読むが、詩では行末を強く読む ★ 一つめ ——★ fire は二音節、 aspire も二音節で、 終わりの音は同じ です。★ 辞書の書き方が違うだけ です。 ★ 二つめ ——★ tears には 二つの読み があります 。★ 「涙」なら spears と揃い、 「裂く」なら揃いません 。★ 本文は watered heaven with their tears ですから 「涙」 です。 ★ 三つめ ——★ symmetry の最後の音節は、 いまの英語では弱い です。★ この詩では そこを強く読んで eye と揃え ます ——★ 二百年前の詩の読み方 です。 ★ ここが大事です。 ★ 機械は 数えられることしか数えません 。★ 合わないときは、 詩を疑う前に測り方を疑って ください。 問いだけを積む ★ この詩には問いが 14 個 あります。★ What で始まる問いが 6 つ、 dare が 4 回 出ます。★ 答えは 一つもありません 。 What immortal hand or eye What the hammer? what the chain? ★ 二行めは 動詞がありません 。★ What the hammer? —— 「かなづちは何だったのか」 で、★ was が落ちています ( 3.40 型編 )。★ 落とすほど 問いが速く畳みかかり ます。 ★ 問いの向きが、途中で変わります。 どのあたりか 何を問うか ★ はじめ ★ だれが作ったのか(作った者) ★ 中ほど ★ どんな道具で作ったのか(作り方) ★ 終わりの前 ★ 子羊を作った者と同じ者なのか( 12.17 知編 ) Did He who made the lamb make thee? ★ ここがこの詩のいちばん重い一行 です。★ やさしいとらと、おそろしいとらを 同じ者が作ったのか ——★ 答えないまま、 最初の四行に戻り ます。 一語だけ替えて戻る ★ 最後の四行は、 最初の四行とほとんど同じ です。★ 違うのは 一語だけ です。 どこか 本文 ★ 四行め Could frame thy fearful symmetry? ★ 二十四行め Dare frame thy fearful symmetry? ★ Could が Dare に替わり ます。★ 「できたのか」から 「あえてしたのか」 へ ——★ 問いが 力の話から、意志の話に変わって います。 どちらの語か 何を問うか ★ Could ★ そんなことができる者がいるのか(力) ★ Dare ★ そんなことをあえてする者がいるのか(意志) ★ くり返しは 同じことを言うため ではありません 。★ 二十行のあいだに 読み手が変わった ので、★ 同じ四行が 違って聞こえ ます ——★ そのうえで一語替えて、 差をはっきりさせて います。 訳 ★ 難しいところだけ訳します。 原文の要 日本語 Tiger, tiger, burning bright ★ とら、とら、 燃えて明るい Could frame thy fearful symmetry? ★ お前のおそろしい釣り合いを 形づくれた のか What dread hand and what dread feet? ★ どんな畏るべき手、どんな畏るべき足が Did He who made the lamb make thee? ★ 子羊を作ったあの方が、お前を作ったのか ★ 一つめの burning bright に注意してください。 ★ 燃えているのは 火ではなく毛皮の色 です——★ 夜の森で 光って見える という意味で、★ 同時に 鍛冶場の火 にもつながり ます( 3.61 型編 )。 音読 三周します 。★ 一周めは最初の四行だけ 、★ 二周めは問いの行だけ 、★ 三周めは通して 読みます。判定は次の 2 文でします。 Tiger, tiger, burning bright What the hammer? what the chain? 一文めは、★ 頭を強く 始めてください。★ Ti- が強く、 -ger が弱い ——★ 強・弱の組が 四つ で一行です。★ 14.21 英語の名文 の 弱・強 とは 逆 で、★ だから 太鼓のように聞こえ ます。 二文めは、★ 二つの問いのあいだで 短く切って ください。 ★ 動詞が無いので、 切らないと一つの問いに聞こえ ます。 ★ 語尾は 二回とも上げ ます。 この篇で使う型 型の名 この篇での出方 戻る課 節の圧縮 What the hammer? what the chain? 3.40 型編 古い英語 Could twist the sinews of thy heart? 3.63 型編 比喩 burning bright 3.61 型編 並列構造 And what shoulder and what art 3.44 型編 語順の焦点 In what distant deeps or skies 3.58 型編 考える ★ この詩は とらを見ていません 。★ 見ているのは とらを作った者 です。 ★ 考えてほしいのは、 なぜ作った者の話になるのか です。★ 手がかりは 語釈の半分が鍛冶場の道具 だということ——★ hammer ・ anvil ・ furnace 。 ★ とらを 打ち出された物 と見るなら、★ 打った者が いなければならない のです。 練習 原文を 通して音読 する。3 周する。1 周目は最初の四行だけ、2 周目は問いの行だけ、3 周目は通して読む。★ 強・弱の組を四つに保つこと。 ★ 韻の組を書き出す 。 12 組の行末の語を並べ、 耳で揃うかどうか を自