3.14 関係代名詞 II — 目的格と省略、所有格、関係副詞 — Epoché
この課でできるようになること 目的語の場所が空いている関係の文を、つなぎ目の語が無くても読める。 落とせる形と落とせない形を、空いている場所で見分けられる。 前置詞が文末に残る形を読めて、自分でも書ける。 whose ・ where ・ when ・ why が何を指すか言える。 前提 : 3.13 まで。 前の課の最後に、こう書きました——主格は省略できない、落とせる形があるのは目的格のほうだ、と。この課がその続きです。 英語の書き手・話し手は、落とせるところではたいてい落とします。つまり 教科書で習う形のほうが実際には少ない 。本を開いても、耳で聞いても、名詞の後ろにいきなり主語と動詞が続く形のほうをよく見ます。そこで「つなぎ目の語が無い」と気づけずに、文が途中で切れたように感じて止まってしまう——これが、関係代名詞を習ったのに読めない、という状態の正体です。この課は、その形に慣れることに使います。 例文で見る まず 10 文を見ます。 1 番めから 3 番めは、中身がまったく同じ です。つなぎ目に which を置いた形、 that を置いた形、そして何も置かない形。三つを続けて読んで、意味が一ミリも変わっていないことを確かめてください。語はどれも第 2 期の範囲の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ This is the book which you are looking for. [1] これが君の探している本です。 which が目的語の場所を埋めている This is the book that you're looking for. [2] これだろ、お前が探してる本って。 同じ内容。 which を that にした形 This is the book you are looking for. [3] これが君の探している本です。 同じ内容。つなぎ目の語を落とした形。これがいちばん多い That is the man whom I know well. [4] あれは私がよく知っている人です。 whom は人の目的格。改まった形 The people whom I meet are kind. [5] 私が出会う人々は親切だ。 主語の中に入ると、動詞まで遠くなる This is the book I told you about. [6] これだよ、俺が話してた本は。 前置詞は後ろに残る。 about が文末にある That is the girl whose father is a doctor. [7] あの子の父さんは医者です。 whose は「その人の」 This is the house where I live. [8] これが私の住んでいる家だ。 where は「そこで」。場所を指す That was the time when he came. [9] それが彼がきた時間だ。 when は「そのとき」。時を指す This is the reason why I came late. [10] これが私が遅れた理由です。 why は「その理由で」。理由を指す 三つの形はどれも正しく、どれも同じことを言っています。違うのは 響き だけで、 which がいちばん硬く、何も置かない形がいちばんふつうです。 骨組み この課の規則は一つです。 空いているのが目的語の場所なら、つなぎ目の語を落とせる。 主語の場所なら落とせません。この一本で、いつ落とせるかが全部決まります。 なぜ目的語だけ落とせるのか 理由は 並びで分かるから です。 This is the book you are looking for. [3] を見てください。 book の直後に you が来ています。名詞の直後に 別の主語 が立っているので、そこから新しい文が始まっていることが並びだけで分かります。語を置かなくても迷いません。 主格のほうはそうはいきません。前の課の The man who is standing there is my father. [11] から who を落とすと、名詞の直後に動詞が来ます。それでは後ろの文が主語を失ってしまい、どこまでが説明でどこからが本文なのか分からなくなります。 直後に主語が来るなら落とせる、動詞が来るなら落とせない ——読むときの見分け方もこれで足ります。 三つの形と、その響き 例文の 1 番めから 3 番めを、響きの順に並べ直します。 This is the book which you are looking for. [1] の which は 書き言葉・改まった文 で使います。 This is the book that you're looking for. [2] の that はその中間で、書いても話しても自然です。 This is the book you are looking for. [3] の落とした形が 話し言葉でいちばん多い 形になります。 人を指すときも同じ三段があります。 That is the man whom I know well. [4] の whom はもっとも改まった形で、今の話し言葉ではめったに出ません。 He isn't the kind of person who we want to work with. [12] のように who をそのまま目的語の場所に使うほうが今はふつうで、落としてしまうことも多くあります。 whom は読めればよい と思っておいてください。書くときに無理に使うと、かえって不自然になります。 ただし、長い主語の中に入ると落としにくくなります。 The people whom I meet are kind. [5] は主語が四語あり、動詞までが遠い。こういう文では、つなぎ目の語があったほうが読み手が助かります。 短ければ落とす、長ければ置く ——書くときの目安はこれで足ります。 前置詞は後ろに残る 日本語話者がいちばん落としやすいのがここです。 This is the book I told you about. [6] の文末に about が残っています。「私が話した本」の「について」にあたる語で、これが無いと 何を話したのか が言えていません。 This is the house I used to live in. [13] の in 、 This is the house he was born in. [14] の in も同じです。 なぜ後ろに残るのか。前置詞は目的語を取る語で、その目的語が つなぎ目の語として前へ移った からです。残された前置詞は行き場が無く、そこに立ったままになります。日本語では「について」が名詞のすぐ後ろに付くので、英語でも同じ場所にあるつもりで書いてしまい、落とします。 文末に前置詞が立っている形は正しい形 だと覚えておいてください。 前置詞をつなぎ目の語の手前に出す形もあります。 The people with whom I work are all very kind. [15] や This is the man of whom I spoke the other day. [16] がそれで、こちらはかなり硬い書き言葉です。第 9 編「論」で論文を読むときに出てきますが、自分で書く必要はほとんどありません。 whose — その人の、そのものの 所有を表すときは whose を使います。 That is the girl whose father is a doctor. [7] は「その子の父親が医者だ」で、 whose が「その子の」にあたります。 I have a friend whose father is a teacher. [17] 、 Look at the girl whose hair is long. [18] も同じ形です。 whose は人以外にも使えます。 Throw away the chairs whose legs are broken. [19] は椅子、 Do you know the man whose house we have just passed? [20] は家の話です。この語だけは 直後に名詞が来る のが目印で、ほかのつなぎ目の語とは形が違います。そして所有格は 落とせません 。落とすと、その名詞が誰のものか分からなくなります。 場所・時・理由を指す形 空いているのが「そこで」「そのとき」「その理由で」のような 副詞の場所 のときは、別の語を使います。 This is the house where I live. [8] の where 、 That was the time when he came. [9] の when 、 This is the reason why I came late. [10] の why です。 これらは 前置詞と目的語をまとめて引き受けた形 だと考えると分かりやすくなります。 This is the house where I live. [8] は「私が住んでいる家」で、 where が「その家の中で」にあたります。同じことを This is the house that he lives in. [21] のように前置詞を後ろに残して言うこともでき、意味は変わりません。 where を使えば前置詞が要らない ——それがこの形の便利なところです。 when と why も同じです。 The time when he did it was not known. [22] 、 Tell me the time when you will come. [23] は時、 This is the reason why I came here. [24] 、 I don't know the reason why he went there. [25] は理由。 the reason why は塊としてよく出るので、そのまま覚えてしまってかまいません。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語も、名詞に文をくっつけるときにつなぎ目の語を置きません。 「私が探している本」——「私が探している」と「本」のあいだに何もありません。つまり、英語の 落とした形のほうが日本語に近い のです。ここは日本語話者に有利な場所です。 落とした形は日本語と同じ並び方をする 日本語 英語(落とした形) 英語(語を置いた形) 私が探している本 the book you are looking for the book that you are looking for 私が話した本 the book I told you about the book that I told you about 私がよく知っている人 the man I know well the man whom I know well 真ん中の列と右の列は、語が一つ有るか無いかだけの違いです。そして左の日本語には、その語にあたるものがありません。だから 真ん中の列のほうが、日本語からは自然に出てきます 。前の課で「つなぎ目の語を落とすのは日本語の癖だ」と書きましたが、この課の形にかぎっては その癖が正解 になります。落ちているか落ちていないかを、空いている場所で決めてください。 日本語に無い区別 — 余る前置詞 日本語との差は、並びではなく 前置詞 に出ます。「私が話した本」の「について」は、日本語では「話した」にくっついて名詞の手前にあります。英語では about が文の最後に残ります。場所がまったく違うので、日本語から組み立てると 存在ごと忘れます 。 防ぎ方は一つ。 後ろの文を、いったん単独の文として口に出す ことです。「私はその本について話した」——ここまで言えば about が要ることは分かります。そのうえで、目的語を前に出して名詞にくっつければ、 about は自然と最後に残ります。書くときは、この二段階を頭の中で踏んでください。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。下の五つは、どれも 私にできることがあれば と申し出ていて、中身は五つとも同じです。そして 3 行めと 4 行めは、 that が有るか無いかだけ の違いです。この課で扱った省略が、そのまま段の材料になっています。 英文 日本語訳 どんな相手に Is there anything I can do? [26] 私に何かできることはありますか? 短く訊く。親しい相手 Is there anything I can do to help? [27] 何かお力になれることありませんか? 何のためかを足す。相手が答えやすくなる Is there anything I can do for you? [28] 私にできることが何かありますか。 相手を名指す。仕事の場面 Is there anything that I can do for you? [29] あなたのために何か私にできることはありませんか。 that を置く。改まった響きになる Let me know if there's anything I can do. [30] なにか私にできることがありましたらお知らせ下さい。 押しつけずに置いておく。いちばん柔らかい 一行めは短く、親しい相手に向きます。二行めは「何のために」を足したぶん、相手が答えやすくなります。三行めは相手を名指して、仕事の場面で使える形に。四行めは that を置いただけですが、 一語増えるだけで改まった響きになります 。五行めは訊く形をやめて、 押しつけずに置いておく 言い方です。相手が今すぐ答えなくてよいので、いちばん柔らかくなります。 ここから分かることがあります。 落とせる語をあえて置くと、丁寧さが一段上がる 。短く言うほど親しく、丁寧に言うほど語が増える——これは日本語と同じ仕組みです。「あるなら言って」と「もし何かございましたらお申し付けください」の差が、英語では that 一語や、訊く形から置く形への移し替えで作られます。 よくある誤り 三つ挙げます。どれも日本語の仕組みを英語にそ