11.4 論語 為政 — 之を知るを之を知ると為す — Epoché
この篇でできるようになること 是知也 の 是 (これ)と 也 (なり)の働きを分けて読めます。 六つの 知 のうち、最後の一つだけ読みが分かれることを説明できます。 書き下しから原文を書き戻し、判断を現代語で言い直せます。 前提 :11.3「論語 為政 — 學びて思はざれば則ち罔し」。同じ形を並べた後の結論に注目します。 名を呼んで始まる言葉 冒頭で呼ばれる 由 は、弟子の子路の名です。先生は、相手を呼んでから知ることについて語ります。一般的な標語として読む前に、誰が誰へ話しているかを確かめましょう。 誨女知之乎 は、知るということを教えようか、という問いかけの形です。書き下しの「女に之を知るを誨へんか」と対応させます。 女 は、ここでは女性ではありません。相手を指す 汝 の通假字で、なんじ、と読みます。 特別編 1篇 の通假字と同じく、見慣れた字の普段の意味だけで決めないことが大切です。 教える相手は、冒頭で呼ばれた子路です。 女 を女性と読んで、別の人が登場したと考えないようにします。 これ、と指してから結ぶ 最後の 是知也 では、初めの 是 が「これ」を表します。指しているのは、前に述べた態度です。知っていることは知っているとし、知らないことは知らないとする、という態度です。 文末の 也 は判断を結びます。書き下しでは「是れ知なり」となり、「これ」と「なり」が違う働きを担っています。 文編 6課 で見た判断の形を、短い句の中で確認できます。 A 読み B 読み 違い 是 これ 是 〜である 本文の漢文では指示、現代語の基本文では主語と判断を結ぶ 也 なり 是 〜である 漢文は判断を文末の 也 で結ぶ。現代語は 是 を述語の前に置く 現代語に言い直すなら、指し示す 这 も必要になります。同じ形の字だからといって、漢文の 是 をそのまま現代語の判断の動詞にしないでください。どこが主語で、どこで判断を結んでいるかを分けると、対応が見えます。 是知也 を、初めから「知である」とだけ読むと、何を指しているかが落ちます。「これ」が前の内容を受けていることを残しましょう。 認める働きを読む 知之為知之 では、知っていることを知っていることとして認めます。 不知為不知 では、知らないことを知らないこととして認めます。 為 はここで「〜とする」という動詞です。 特別編 2篇 で、人のために考える句を見ました。その句の 為 は、誰のためにという相手を結ぶ介詞でした。ここでは二つのまとまりの間に置かれ、どう認めるかを述べます。同じ字の訳を一つに固定せず、何と何の間にあるかを見ます。 知之 では、知る動詞の後ろに、その対象を受ける代詞があります。現代中国語の動詞と目的語の順と共通します。ただし日本語で「之を知る」と読むときは順が入れ替わります。現代中国語との共通点と、訓読の語順を混同しないでください。 六つ目の字で立ち止まる 発言の 知 は、合わせて六つです。教えようかという句に一つ、肯定の句に二つ、否定の句に二つ、最後の結びに一つあります。少ない字を繰り返して、知ることについて考えさせています。 最後の 知 は、知恵という 智 として読む注釈があります。その読みでは、知るという動作を並べた後に、知恵とは何かという結論へ進みます。一方、知るという意味のまま読む注釈もあります。ここは読みが分かれるところです。 どちらを中心に読む場合も、知っているか知らないかを正直に分ける態度が、前の二句に置かれています。知識の量だけを増やす話として受け取ると、この組み立てを見落とします。結論の字を見るときも、前の二句へ戻ってください。 語釈 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 由 固有名詞 子路の名 呼びかける相手 由! 由よ 誨 動詞 教える 教え導く(目上から下へ) 誨女知之乎 おまえに知ることを教えようか 女 代詞 おまえ 汝の通假字 誨女 おまえに教える 之 代詞 それ 知る対象を受ける 知之 それを知る 為 動詞 〜とする・認める ここでは介詞ではない 知之為知之 知ることを知るとする 是 代詞 これ 現代語の判断の動詞と分ける 是知也 これが知である 知 動詞・名詞 知る・知恵 最後は智と読む注釈もある 是知也 これが知である 也 語気詞 判断を結ぶ なりと読む 是知也 これが知である 練習 空欄を埋め、本文の句を書いてください。 誨_知之乎 空欄を埋め、本文の句を書いてください。 知之_知之 空欄を埋め、本文の句を書いてください。 _知_ 是知也 を、知恵と読む解釈に沿って現代語にしてください。指示と判断の対応も書きましょう。 「之を知るを之を知ると為す」を本文の字の順で書いてください。 「知らざるを知らずと為す」を本文の字の順で書いてください。 六つの 知 のうち、知恵と読む注釈があるものを選び、句を書いてください。 この章で、指示の語と判断を結ぶ語を分けて説明してください。 「知らないことは知らないと言う」態度を、現代語で二通りに言ってください。一つは 老实 、もう一つは 诚实 を使います。 知之為知之 の 為 と、特別編 2篇の 為人謀 の 為 を比べ、それぞれの働きを書いてください。 誨女知之乎 の 女 を「なんぢ」と読む理由を、書き下しで確かめて書いてください。 ▶ で語釈の 知之為知之 と 是知也 の手本を聞きます。 是知也 は前で間を置き、何を指して結んだかを意識して読んでください。 この篇のまとめ 指示の語を、現代語の判断の動詞と取り違えないようにします。繰り返す二句と最後の判断を結び、知ることについての態度を読みます。通假字や読みの違いは、前後の意味と書き下しで確かめます。 次の篇へ 次の11.5では、三人で行けば師がいるという章を読みます。人をまとめて表す字と、文末で場所を受ける字を見ます。 答え 誨女知之乎 知之為知之 是知也 这就是智慧。 漢文の 是 を 这 で受け、 也 による判断を 是 で表しています。 知之為知之 不知為不知 是知也 の 知 です。知るという意味で読む注釈もあります。 是 は前の態度を指す「これ」で、 也 は判断を結ぶ「なり」です。 老实说,我不知道。 (正直に言うと、私は知りません。) 说不知道也是一种诚实。 (知らないと言うのも、一つの誠実さだ。) どちらも本文の 不知為不知 の態度を言っています。 為人謀 の 為 は、人の前に置いて「人のために」と相手を結ぶ介詞です。 知之為知之 の 為 は、二つの 知之 の間に置かれ、「〜とする(認める)」という動詞です。 書き下しは「女に之を知るを誨へんか」で、 女 は教える相手です。相手は冒頭で呼ばれた子路なので、女性ではなく 汝 (おまえ)の通假字として「なんぢ」と読みます。 参考文献 孔子の弟子たち『論語 為政』。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。本文は抄。 出所: 当館所蔵の文書