0.3 この課程の読み方 — Epoché
この課でできるようになること 読み物の課が「原文」「現代語訳」「解説」の三つの文書でできていることを知り、切り替えて読める。 読書ページの道具——ふりがな・訳語・辞書・読み上げ・本文を隠して再生——を、それぞれ何のために使うか言える。 文法の課と読み物の課で、読む順序を使い分けられる。 前提 : 0.2 まで。 この課程は本ではなく、読書ページの上で読みます。だから、ページにどんな道具があって、どれをいつ使うかを先に知っておくと、読み物の課で迷いません。この課は文法の話ではなく、道具の話です。実際にページの上で押しながら読んでください。 現代語に残っている形 紙の古文の教科書には、原文の下に脚注、後ろに現代語訳がありました。ページをめくって行ったり来たりするうちに、どこを読んでいたか分からなくなる。あの往復が、古文を遠ざけていた一因です。読書ページでは、往復のかわりに 切り替え と 押す を使います。原文の語を押せば語義が出て、文書を切り替えれば同じ段落の現代語訳が読めます。 古文ではこうなる 三つの文書 読み物の課(読編・源編・特別編)は、一つの作品の中に三つの文書を持っています。 文書 中身 いつ読むか 原文 校訂本の本文。歴史的仮名遣いのまま 最初と最後。まず原文で通し、解説を読んだあとにもう一度 現代語訳 原文と同じ段落番号で並べた訳 原文で分からなかった段落だけ確かめる 解説 読む前に・語釈・述語の印・音読・練習・まとめ 原文を一度通したあと 読書ページの文書の切り替えは、画面の言語の欄にあります。原文と現代語訳は、段落の番号を揃えてあるので、「原文の三段落目が分からない」と思ったら、現代語訳の三段落目へ移ってください。 最初から現代語訳を読まない のが、この課程の唯一の約束です。訳を先に読むと、原文が読めた気になって、読めるようにはなりません。 ふりがな 本文の漢字には、ふりがなを付けたり消したりできます。第 1 期の読み物ではふりがなを付けたまま読んで構いません。第 2 期からは消して読み、読めなかった漢字だけ付け直してください。古語の読みは作品ごとの辞書に登録してあるので、「給ふ」を「たまう」、「候ふ」を「そうろう」と、いまの音で表示します。 訳語 本文の語の上に、短い訳語を重ねて表示できます。原文の語を押すと語義の全体が出ますが、訳語はそれより短く、「あはれ→しみじみとした情趣」のように語の上に貼ります。第 1 期の読み物では、まず訳語を消して原文だけで読み、詰まったら訳語を出す、という順にしてください。 辞書 原文の語を押すと、その作品の辞書の語義が出ます。この課程では、各課の新出語を辞書に登録してあります。語義には「読み・品詞・意味・現代語との差」が書いてあります。 「現代語との差」の欄は必ず読んでください。 「ありがたし」のように、いまの意味で読むと逆になる語があります。 読み上げと「本文を隠して再生」 読み上げは、原文をいまの音で読みます。「思ふ」は「おもう」、「けふ」は「きょう」です。読み上げの声を聞いてから自分で音読する、という順を、この課程のすべての読み物で使います。「本文を隠して再生」は、本文を見えなくして音だけを流す道具です。歌編「歌」で、百人一首を暗誦するときに使います。聞いて、隠れた本文を自分で復元できたら、その歌は覚えたことになります。 原文で確かめる 道具を実際に使ってみます。『方丈記』の書き出しです。 ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは、かつ消え、かつ結びて、久しくとどまりたる例なし。 [1] まず、何も押さずに一度読んでください。「うたかた」「かつ」「例」で止まったはずです。 「うたかた」を押してください。辞書に「水の泡」と出ます。「かつ〜かつ〜」は「一方では〜、他方では〜」、「例(ためし)」は「先例・そういうこと」。 読み上げを聞いてください。「あらず」「結びて」「とどまりたる」が、いまの音で読まれます。 もう一度、自分で音読してください。一度目より速く読めていれば、道具が効いています。 この四つの手順—— 素で読む・押す・聞く・音読する ——が、読み物の課の基本の型です。 読み上げと音読 文法の課(第 1〜8 編・漢編)では、「原文で確かめる」の例文と表が読み上げの対象です。解説の文は読み上げません。読み上げを聞くのは、規則を音で確かめるためで、判定はありません。読み物と歌の課では、音読を判定にかけられます。判定は、原文を歴史的仮名遣いからいまの音に直したものと、あなたの声を比べます。原文どおり「おもふ」と読むと外れ、「おもう」と読むと当たります。 判定に通ることが目的ではなく、いまの音で読めることが目的です。 練習 この課の『方丈記』の一文で、辞書を一語、ふりがなを一度、読み上げを一度、それぞれ使ってください。 「最初から現代語訳を読まない」のはなぜか、自分の言葉で説明してください。 『方丈記』の一文を、読み上げのあとで二回、声に出して音読してください。二回目は読み上げを止めて読んでください。 この課のまとめ 読み物の課は原文・現代語訳・解説の三文書。段落の番号は揃えてある。訳は先に読まない。 道具は五つ: ふりがな・訳語・辞書・読み上げ・本文を隠して再生。「現代語との差」の欄を必ず読む。 読み物の型は、素で読む → 押す → 聞く → 音読する。 次の課へ 0.4 では、古典の地図——上代・中古・中世・近世と、この課程で読む作品——を一枚で見ます。 答え (実際に使えば完了) (例)訳を先に読むと、原文の意味を知った状態で原文を眺めることになり、「読めた」と「読めた気がする」の区別がつかなくなる。原文で詰まってから訳を見れば、何が分からなかったかが残る。 読みの目安: ゆくかわの ながれは たえずして、しかも、もとの みずに あらず。よどみに うかぶ うたかたは、かつきえ、かつむすびて、ひさしく とどまりたる ためしなし。 参考文献 鴨長明『方丈記』冒頭(國文大觀)。パブリックドメイン(作者没後 70 年以上)。漢字は通行の字体に改めた。出所: https://ja.wikisource.org/wiki/方丈記_(國文大觀)