3.3 名詞の数と冠詞 I — 数えるか数えないか — Epoché
この課でできるようになること 英語の名詞を、数えられるもの(可算)と数えられないもの(不可算)に分けて考えられる。 数えられる名詞の単数形を裸で置かず、 a ・ the ・ this ・ my などの印を必ず付けられる。 a と the を「聞き手はどれか特定できるか」という一つの問いで選べる。 量を言うとき、 many ・ few ・ a few と much ・ little ・ a little を使い分けられる。 前提 : 3.2 まで。 日本語で「本を買いました」と言うとき、何冊買ったかを言う必要はありません。1 冊でも 3 冊でも、名詞の形は同じです。英語はそうではありません。名詞を口に出すたびに、話し手は 2 つの問いに答えさせられます。1 つめは 数えるか、数えないか 。2 つめは 聞き手はどれか特定できるか 。この 2 つに答えた結果が、名詞の前に付く a ・ the ・ some ・ no であり、語尾の -s です。日本語話者にとってここが難しいのは、規則が複雑だからではありません。 問いそのものを持っていない ので、答えを埋めること自体を忘れるからです。 冠詞が最後まで残る誤りであることは、習得の順序を調べた研究がすでに示しています。英語の形態素—— -ing 、複数の -s 、 be 、冠詞、不規則な過去形、3 単現の -s 、所有の 's ——が身につく順序を並べると、 冠詞と 3 単現は遅い側 に来ます [1] 。遅いものを 1 回で終わらせようとすると、規則の一覧だけを覚えて使えないまま終わります。この課程は冠詞を 3 度に分けて回します。ここで置くのは 第一原則だけ です。総称——「犬という動物は」に当たる言い方——と、文章の中で定冠詞を追う読み方は 3.18 に、数量表現との組み合わせと総まとめは 3.32 に置いてあります。この課で全部を理解しようとしないでください。 例文で見る まず 10 文を見ます。英文の側で、名詞の前に何が付いているか——あるいは何も付いていないか——だけを見てください。そのあと訳を読むと、日本語の側にその印が 一つも現れていない ことが分かります。訳から英語を作ろうとすると必ず抜け落ちる部分が、ここに見えている部分です。 英文 日本語訳 見るところ Can I ask a question? [2] 質問していい? 不定冠詞。相手はまだどの質問か知らない Close the door. [3] ドアを閉めて。 定冠詞。この部屋のドアだと互いに分かっている I want some water. [4] 水が欲しい。 some は数えない名詞にも付く Are there any questions? [5] 質問はおありですか。 any は疑問文で「あるかないか」を問う There is no water. [6] 水が少しもない。 no は数がゼロだと名詞の前で言う Could you show me another one? [7] 他のを見せていただけますか。 another は「同じ種類のもう一つ別の」 Much water is needed. [8] たくさんの水が必要である。 much は数えない名詞に I have a little money. [9] お金を少し持っている。 a little は数えない名詞に「少しはある」 I have a few books. [10] 私は少し本を持っています。 a few は数えられる名詞の複数形に I have few books. [11] 私は少ししか本を持っていません。 a が無いと「ほとんど無い」に傾く 骨組み 規則は 1 つです。 数えられる名詞の単数形は、裸で文に置けません。 必ず前に印が要ります。印になるのは a ・ an ・ the ・ this ・ my などです。逆に言えば、英語で名詞が裸で立っているときは、それは複数形か、数えない名詞か、そのどちらかです。この一点を握っておくと、書いた英文を自分で点検できます。名詞に指を置いて、単数なのに前に何も無ければ、そこが穴です。 では、どの印を選ぶのか。第一原則はこれだけです。 聞き手がどれか特定できるなら the 、できないなら a 。 2 番めの例文で「ドアを閉めて」と言うとき、その場にドアは一つしかありません。相手は迷わずどれのことか分かります。だから the です。1 番めの例文で「質問していい?」と言うとき、相手はまだどの質問かを知りません。だから a です。この原則は「初めて出す名詞には a 、2 度目からは the 」という覚え方より広く効きます。初めて出す名詞でも、目の前に一つしかなければ最初から the が付くからです。母音の音で始まる語の前では a が an になります——綴りではなく音で決まります。 数えない名詞は、この規則の外にあります。 water ・ money ・ time ・ work ・ information は、1 つ 2 つと切り分けられないものとして扱われるので、 a も -s も付きません。裸のまま文に置けます(これを 無冠詞 と呼びます)。もちろん、聞き手が特定できるときは the が付きます。どの名詞が数えないほうに入るかは、物の性質というより 英語がそう決めている という面が強く、そこは語ごとに覚えるしかありません。数の少ない、よく使うものから覚えれば足ります。 量を言う語も、この線に沿って二手に分かれます。数えられる名詞の複数形には many ・ few ・ a few 、数えない名詞には much ・ little ・ a little が付きます。そして a が有るか無いかで向きが逆になります。 a few ・ a little は「少しはある」という肯定の向き、 few ・ little は「ほとんど無い」という否定の向きです。9 番めと 10 番めの例文が、まさにその一対です。同じことがお金でも起こります—— I have little money. [12] は「ほとんど持っていない」で、8 番めの例文とは逆の意味になります。なお much は、7 番めのような文では正しいのですが、ふだんの話し言葉の肯定文ではやや硬く響きます。話すときは a lot of のほうが自然です。 some ・ any ・ no ・ another は、この線をまたぎます。 some と any と no は、数えられる名詞の複数形にも数えない名詞にも付きます(3 番め・4 番め・5 番めの例文を見比べてください)。 another だけは違って、「もう一つ別の」という意味の上、数えられる名詞の単数形にしか付きません。これは an と other がくっついてできた語だからです。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。日本語も、数を言おうと思えば言えます。「一冊の本」「二人の子ども」のように、数のあとに 助数詞 を置きます。そして助数詞は物によって変わります——本は冊、人は人、紙は枚。この「物によって数え方が違う」という感覚は、英語の可算・不可算とよく似た土台に立っています。英語で a glass of water と器を借りて数えるのは、日本語で「水を一杯」と言うのと同じ発想です。だから、数えない名詞という考え方そのものは、日本語話者にとって新しいものではありません。 ずれるのは 3 つです。1 つめ。 日本語は必要なときだけ数を言い、英語は毎回言う。 日本語で「本を買った」と言えば、冊数は言わずに済みます。英語では a book か books か the book かを必ず選ばなければならず、選ばないという選択肢がありません。ここが最大の差です。日本語から訳そうとすると、原文に手がかりが無いので、決めようがなくて止まってしまいます。そのときは訳すのをやめて、 その場面を思い浮かべ直して ください。何冊か、相手は分かるか——この 2 つは、場面を見れば必ず答えが出ます。 2 つめ。 日本語の「その」と定冠詞は同じではありません。 定冠詞を「その」と訳す癖がつくと、範囲を狭く取りすぎます。日本語の「その」は、たいてい直前に話に出たものを指します。英語の定冠詞は、それに加えて、その場に一つしかないもの、世界に一つしかないもの、話し手と聞き手の間で当たり前になっているものにも付きます。2 番めの例文を「そのドアを閉めて」と訳すと、日本語としては大げさになります。訳すなら「ドアを閉めて」で十分で、そのぶんの意味は日本語では場面が引き受けているのです。 3 つめ。 日本語には「裸の名詞は複数かもしれない」という読み方がありません。 英語で名詞が複数形で裸のまま置かれていると、それは「そういうものは一般に」という意味を帯びます。 Water is life. [13] のように数えない名詞が裸で置かれているときも同じで、この水は目の前のコップの水ではなく、水というもの全体です。この使い方は 総称 と呼ばれ、英語の文章では非常によく出てきます。ここでは「裸で置かれていたら、目の前の何かではなく一般論を言っている」とだけ覚えておけば足ります。総称の三つの形——不定冠詞・定冠詞・無冠詞のどれを使うか——は 3.18 に置いてあります。 丁寧さの段 命令文を使いすぎる癖は 3.2 の主題でした。この課の道具にも、言い方を柔らげる働きがあります。 単数の不定冠詞は、頼みごとを「一つだけ」「ほんの少し」に見せます。 時間をくださいと頼むとき、 time と裸で言えば、相手には量の限りが見えません。 a minute と言えば、区切りの付いた小さな一つになります。次の 4 文を、段の低いほうから並べます。 英文 日本語訳 どこが柔らかいか Give me a minute. [14] もう少し待ってください。 命令文。ここが出発点 Could you hold on a minute? [15] ちょっと待ってくれる? Could you で相手に選ぶ余地を渡す Could I have a minute of your time? [16] 少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか? a minute をさらに小さく見せる Could I ask you a question? [17] 質問してもよろしいでしょうか。 a question も同じ働きをする 3 番めの文で単数の印を落として時間そのものを求めると、相手には終わりの見えない要求に聞こえます。4 番めも同じで、質問を複数形にすると、相手が引き受ける負担がそのぶん大きく見えます。聞きたいことが本当に何個もあるとしても、まず一つだけ差し出す——これは日本語で「ちょっと一つだけ」と前置きするのと同じ手つきです。 よくある誤り 日本語話者の英語に出るこの課の誤りは、3 つに集まります。どれも「問いに答え忘れた」形をしています。以下の誤文は Epoché の作例です。 数えられる名詞の単数形を裸で置く。 I have pen. → I have a pen. 。いちばん多い誤りで、日本語に印が無いことがそのまま出ています。書いたあとに単数の名詞を指で押さえて点検する習慣をつけてください。 数えない名詞を数える。 I need informations. → I need information. 。カタカナで知っている語ほど起きます。数えたいときは器を借ります—— a piece of information のように。 初めて出す名詞に定冠詞を付ける。 I bought the book. → I bought a book. 。相手がまだどの本か知らないのに定冠詞を使うと、聞き手は「どの本のことだろう」と探して迷います。特定できるかどうかは、自分ではなく 相手の側 で判定してください。 4 つめとして挙げるほどではありませんが、複数形の -s の落ちも同じ根から出ます。数を決めていないから、語尾も決まらないのです。3 つの誤りは別々の規則違反に見えて、実は「名詞を出す前に 2 つの問いに答える」という一つの手順を踏まなかった結果です。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Articles - 6 Minute Grammar BBC Learning English (6:03, 2019) ★0:35〜3:14。a と an と the の使いどころ(章「Examples」と「When to use」)。使わない場合は 3.18 で 練習 「例文で見る」の 10 文を、行の読み上げに続けて 音読 する。名詞の前の印—— a ・ the ・ some ・ no ——は強く読まず、次の名詞にくっつけて速く通す。10 文を通したら、1 番めと 2 番めの 2 文だけを、音声に重ねて シャドーイング する。 次の 4 つを英語で言う。①私は本を少し持っています ②私は本をほとんど持っていません ③私は少しお金を持っています ④私はお金をほとんど持っていません。①と②、③と④の違いが、どこに現れるかを声に出して確かめる。 次の 3 つには、この課の誤りがそれぞれ 1 つある。直して言い直す。① She has many money. ②本が数冊ある、と言うつもりの a few book ③目の前のドアを閉めてほしいときの Close a door. 。 この課のまとめ 英語の名詞は、出すたびに 2 つの問いに答える。数えるか数えないか、聞き手はどれか特定できるか。日本語にはこの 2 つの問いが無い。 規則は 1 つ。数えられる名詞の単数形は裸で置けない。印は a ・ an ・ the ・ this ・ my など。 第一原則は「聞き手が特定できるなら the 、できないなら a 」。「初出は a 、2 度目は the 」より広く効く。 量を言う語は二手に分かれ、 a の有無で向きが逆になる。 a few ・ a little は「少しはある」、 few ・ little は「ほとんど無い」。 名詞の区分 前に置ける語 この課の例 可算・単数 a ・ an ・ the ・ this