11.23 財務の英語 — 売上・利益・現金 — Epoché
★ 切り分けを先に書きます。 ★ 11.9 商編 は 数を声で説明する課 でした。 ★ この課は 紙に書かれた数を読む課 です ——★ だから、 間の取り方や「つまり」の使い方は出てきません 。 ★ 出てくるのは 語と、段と、単位 です。 ★ もう一つ断っておきます。 ★ この課は 会計の課ではありません ——★ 11.12 商編 と同じで、 専門家に何を聞けばよいか分かるだけの語 を置きます。 この課でできるようになること ★ 三枚が何に答える紙か が分かる。 ★ 利益の段 を聞き分けられる。 ★ 単位・前年同期比・幅 で数を出せる。 ★ 現金と利益が別のもの だと分かる。 前提 : 11.22 まで。読は 8.191 まで。 場面 ★ 四半期の報告書が回ってきました。 ★ 8.191 読編 で読んだ あの一本 です。 ★ 読編では 読み物として 読みました ——★ ここでは 数の紙として 読み直します。 Report for the Quarter Ending 30 June 2026 [1] ★ 「二〇二六年六月三十日に終わる四半期の報告」。 ★ いちばん先に読むのは、 この一行 です ——★ どの期間の紙か 。 ★ 期の終わりの日は会社ごとに違うので、 ここを外すと比べ先を間違えます 。 the figures below are made up [1] ★ 「以下の数はすべて作ったもの」。 ★ 教材としての断り です。 ★ この課に出る金額は すべてこの報告書の中の数 で、 実在の会社の数ではありません 。 語彙 ★三枚は、三つの問いに答える ★ 財務の紙は、 三枚で一組 です。 ★ 三枚が別のことを言っているのではなく、 三つの別の問いに答えている のです。 どの紙か 何に答えるか ★ P/L (損益計算書) ★ 期のあいだに、もうかったか ★ B/S (貸借対照表) ★ その日に、何を持ち何を負っているか ★ キャッシュフロー計算書 ★ 期のあいだに、現金がどう動いたか ★ もう一つの見分け方があります ——★ 期間の紙か、一日の紙か 。 いつの紙か どれがそれか ★ 期のあいだ(三か月・一年) ★ P/L と、キャッシュフロー計算書 ★ ある一日の姿 ★ B/S ★ この違いは、 語の選び方に出ます 。 ★ for the quarter [1] のように 期間を言う語 が付いていれば期間の紙、★ at the end of the quarter [1] のように ある日を言う語 が付いていればその日の姿です。 利益には、段がある Sales for the quarter were 4,180 million yen, an increase of six per cent on the same quarter last year [1] ★ 「この四半期の売上は四十一億八千万円、前年同期比で六パーセントの増加」。 ★ これが いちばん上の行 です。 The cost of materials was 2,510 million, or sixty per cent of sales, against fifty-seven per cent a year ago [1] ★ 「材料費は二十五億一千万円、売上の六十パーセント。一年前は五十七パーセントだった」。 ★ ここから、 引き算が始まります 。 Operating profit was therefore 262 million, or six per cent of sales, against seven per cent a year ago [1] ★ 「したがって営業利益は二億六千二百万円、売上の六パーセント。一年前は七パーセントだった」。 どの段の利益か 何を引いたあとか ★ gross profit (売上総利益) ★ 売った物の原価まで ★ operating profit (営業利益) ★ ふだんの費用も ★ net profit (当期純利益) ★ 利息と税も ★ 報告書に出ているのは 真ん中の段 です。 ★ 本業でどれだけ稼げたかを見る数 だからです。 ★ いちばん下の段は、 借り入れの多さや税で動きます ——★ だから、 年ごとに比べるには真ん中が向きます 。 ★ 身につけてほしいのは、 語ではなく問い です ——★ 「利益」と言われたら、 どの段の話か を聞いてください。 ★ 三つのうちどれかで、 同じ会社の同じ期が良くも悪くも見えます 。 数の出し方 — 単位・比べ先・幅 ★ 数そのものより、 数の置き方 で読めるかどうかが決まります。 数の出し方 読む人に起きること ★ 単位を頭で一度 ( million yen [1] ) ★ あとは数だけで読める ★ 比べ先を添える ( on the same quarter last year [1] ) ★ 良いか悪いかが決まる ★ 見込みは幅で ( between 16,800 and 17,200 [1] ) ★ 悲観の側で決められる ★ 三つめについて、 報告書はもう一歩進んでいます 。 This range is wider than usual because of the price of materials [1] ★ 「この幅はいつもより広い。材料の値のせいである」。 ★ 幅を出すだけでなく、 広い理由 を書いています ——★ ここまで書くと、 読む人は幅の中のどこを見るか決められます 。 ★ 概数の出し方にも作法があります。 ★ 8.188 読編 に引かれている一節が、 その形 です。 It is difficult to estimate what the extent of this diminution has been [2] ★ 「その減りがどれほどだったかを見積もるのは難しい」。 ★ そう断ってから、 概数を出します 。 in round figures he has gained from 70 to 120 per cent in fifty years in money return [2] ★ 「ざっと言えば、五十年で金銭の戻りが七十から百二十パーセント増えた」。 ★ 難しいと断ったうえで 幅で出す ——★ これが、 分からないことを隠さずに数を出す形 です。 ★ もう一つ、 仮定の数 の書き方です。 If the cost of materials had stayed at fifty-seven per cent of sales, profit would have been about 125 million higher [1] ★ 「材料費が売上の五十七パーセントのままだったら、利益は一億二千五百万円ほど高かっただろう」。 ★ これは 実際には起きなかった数 です ——★ だから、 仮定の形 で書かれています( 3.30 型編 )。 ★ この形を読み落とすと、 起きたことと混ざります 。 ★ 数の使える範囲も、 紙に書いてあります 。 These numbers come from a single machine over one month [1] ★ 「この数は、一台の機械の一か月ぶんである」。 ★ だから買い足しの計画にはまだ使えない、と続きます ——★ 11.19 商編 で置いた 答えの無い問いには期日を書く と同じ作り です。 現金と利益は、別のもの ★ ここが、 この課でいちばん高くつくところ です。 ★ もうかっているのに 金が足りなくなる ことがあります。 any undertaking likely to pay, and seen to be likely, can perish for want of money [3] ★ 「もうかりそうで、しかもそう見えている事業でも、 金が足りなくて潰れることがある 」。 ★ 百五十年前のバジョットの一行 です。 ★ いまも変わりません。 どちらの数か 何が入っているか ★ 利益 ★ まだ受け取っていない売上も入っている ★ 現金 ★ いま手元にあるものだけ ★ 売上が伸びると、 現金はいったん減ることがあります 。 ★ 材料は先に払い、 代金はあとで受け取る から です。 ★ 報告書は、 そこを数で見せています 。 Money owed to us by customers stood at 1,050 million, or an average of forty-eight days of sales [1] This is four days longer than at the end of March [1] ★ 「客から受け取る予定の金は十億五千万円、売上の四十八日ぶんにあたる。三月末より四日長い」。 ★ この 「何日ぶん」 という言い方が、 現金の回りを見る道具 です。 売上が伸びたときに起きること どこに出るか ★ 受け取り待ちが増える ★ 売上の何日ぶんか ★ 先に払う材料費が増える ★ 期末の現金 Cash rose by 150 million over the quarter [1] We paid 180 million of a bank loan in April and took no new debt [1] ★ 「四半期で現金は一億五千万円増えた。四月に銀行借入を一億八千万円返し、新たな借入はしなかった」。 ★ 現金が増えた理由が 借入ではない と分かります ——★ ここを書かない報告書は、 読めません 。 ★ 最後に、 現金は寄せると力になる という話です。 A million in the hands of a single banker is a great power [3] But the same sum scattered in tens and fifties through a whole nation is no power at all [3] ★ 「一人の銀行家の手にある百万は大きな力である。けれども、同じ額が国じゅうに十や五十に散らばっていれば、 何の力でもない 」。 ★ 会社の中でも同じ です——★ 口座がいくつにも分かれていると、 合計は足りているのに払えない ことが起きます。 日本の商慣習との差 ★ 差は、 桁の切れ目 から始まります。 どちらの数え方か どこで切るか ★ 日本語の 万・億 ★ 四桁ごと ★ 英語の thousand ・ million ★ 三桁ごと ★ だから、 頭の中で読み替えようとすると必ず間違えます 。 ★ 紙に数字を書き、 三桁ごとに区切りを打ち直してから 読んでください。 ★ 11.9 商編 で置いた 数の聞き間違いの型 も、半分はこの切れ目のせい です。 ★ 二つめの差は、 利益の段そのもの です。 ★ 日本の決算書には、 英語の三段に直に当たらない段 があります。 ★ 訳語を当てにいくより、 何を引いたあとの数か を聞くほうが速い です——★ 11.11 商編 で置いた 分かったつもりの語が危ない の典型 です。 ★ 三つめの差は、 見込みの出し方 です。 見込みの出し方 どちらに多いか ★ 一つの数で出す ★ 日本の社内に多い ★ 幅で出し、広い理由も書く ★ 相手方に多い ★ 一つの数で出すと、 外したときに数そのものが疑われます 。 ★ 幅で出すと、 疑われるのは幅の広さだけ です ——★ そして幅は、 次の期に狭められます 。 ★ 四つめは、 期の区切り です。 ★ 期の終わりの日は会社ごとに違います 。 ★ だから、 「第一四半期」だけでは何月から何月か決まりません ——★ 報告書の頭が 終わりの日を書いている のはこのため です。 やってみる ★ 手元の数字を、三つの問いに割る 。★ もうかったか/持っているか/ 現金が回っているか 。 ★ どの問いにも答えられない数は、 報告に載せる必要がありません 。 ★ 「利益」を段で言い直す 。★ 直近の会議で聞いた「利益」を一つ思い出し、 どの段だったか を確かめる。 ★ 分からなければ、 それを聞くのが次の会議の一問 です。 ★ 見込みを幅で書き直す 。★ 一つの数で出している見込みを一つ選び、 幅と、幅が広い理由 を添える。 ★ 四十〜六十語。 ★ 受け取り待ちを日数で出す 。★ いま受け取り待ちの金が、 売上の何日ぶんか を出す。 ★ 三か月前と比べて、 伸びているか を見る。 練習 「利益には、段がある」に引いた三文(売上/材料費/営業利益)を 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。 ★ Operating profit was therefore 262 million, or six per cent of sales, against seven per cent a year ago を ゆっくり 読む。 ★ against の前で ひと呼吸置く ——★ そこから先が 比べ先 です。 ★ any undertaking likely to pay, and seen to be likely, can perish for want of money を そらで言えるまで 音読する。 ★ money を いちばん強く 読んでください ——★ 利益ではなく金の話 だからです。 この課のまとめ ★ いちばん先に読むのは期間の行 —— Report for the Quarter Ending 30 June 2026 [1] 。期の終わりの日は会社ごとに違う。 ★ 三枚は三つの問いに答える ——もうかったか( P/L )/その日に何を持ち何を負っているか( B/S )/現金がどう動いたか(キャッシュフロー計算書)。 ★ 期間の紙と、一日の紙がある 。語で見分ける——期間を言う語か、ある日を言う語か。 ★ 利益には段がある —— gross profit ・ operating profit ・ net profit 。 ★ 「利益」と言われたら、どの段か聞く 。段が違えば、同じ期が良くも悪くも見える。 ★ 報告書に出るのは営業利益 。借り入れと税で動かない段だから、年ごとに比べるのに向く。 ★ 単位は頭