1.7 文強勢とリズム — 内容語を打ち、機能語を弱く — Epoché
この課でできるようになること 内容語と機能語を品詞で見分け、英語の文のどこを打つかを声に出す前に決められる。 機能語の弱形( a ・ the ・ to ・ and ・ of ・ can )を知り、聞こえない語が聞こえるようになる。 日本語の拍で刻む調子と英語の打つ音節で刻む調子の差を説明でき、語数が増えても文の長さがあまり変わらない理由が分かる。 短い文に強勢の印を打ち、打つ語だけを強く長く言って音読できる。 前提 : 1.6 まで。 1.6 音編 で立てた山は、 語の中 の山でした。基本語のうち 2 音節以上の語は 65.6%、そのうち 44.0% は山が語頭にありません。この山は語ごとに決まっていて、辞書を引けば書いてあります。動かないのが原則で、動く場合(名詞と動詞で位置が変わる語)でさえ、動き方が決まっていました。この課で立てるのは 文の中 の山です。こちらは辞書に書いてありません。同じ語が、文の中で負っている役目によって打たれたり打たれなかったりします。語の強勢が語の持ち物なのに対して、文強勢は その文でのその語の立場 から決まる、と考えてください。 英語の文は、語を同じ重さで並べません。意味を運ぶ語をはっきり強く長く言い、文の骨組みを支えるだけの語は短く軽く流します。日本語話者の音読でいちばん目立つ癖は、全部の語を同じ重さで並べてしまうことです。一語ずつ律儀に読むと、聞き手には「どれが大事なのか分からない平らな列」に聞こえます。逆に、打つ語さえ正しく打てていれば、間の語が多少つぶれていても意味は届きます。この課の作業は 1.6 音編 と同じ形です—— 持ち上げるより、削るほうが効きます。 打つ語と弱くする語 打つか打たないかは、その語がどの品詞かでほとんど決まります。 それ自体で何かを指したり述べたりする語は打ちます。 名詞・本動詞・形容詞・副詞、それに疑問詞と指示詞。これらは文から抜き取っても中身が残る語で、まとめて内容語と呼びます。電報や見出しに残るのはこの側の語です。 それ自体では中身を持たず、語と語の関係を示すだけの語は弱く短く言います。 冠詞・前置詞・代名詞・接続詞、それに be 動詞と助動詞。まとめて機能語と呼びます。文法の骨組みを作る大事な語ですが、聞き手はそこから新しい情報を受け取りません。だから英語の話し手はここを速く軽く通り過ぎ、聞き手もそれを当てにして聞いています。 品詞の束 打つか 例語 名詞 打つ book ・ man ・ student ・ office 本動詞 打つ come ・ appear ・ play ・ want 形容詞 打つ good ・ young ・ new ・ kind 副詞 打つ always ・ here ・ away ・ well 疑問詞 打つ what ・ when ・ where ・ how 指示詞 打つ this ・ that ・ these ・ those 冠詞 弱く短く a ・ an ・ the 前置詞 弱く短く to ・ of ・ at ・ from 代名詞 弱く短く I ・ you ・ he ・ my 接続詞 弱く短く and ・ but ・ or ・ as be 動詞 弱く短く am ・ is ・ are ・ was 助動詞 弱く短く can ・ will ・ would ・ have この分け方には例外もあります。同じ that でも、「あれ」と指す指示詞なら打ち、「〜ということ」とつなぐ接続詞なら打ちません。 have も、「持っている」という本動詞なら打ち、完了の助けとして働くなら打ちません。品詞の名前ではなく その文での役目 で決まる、というのはそういう意味です。とはいえ迷う語は多くありません。まずは表のとおりに、名詞と動詞と形容詞を打つところから始めてください。 打つ数の見当も付けておきます。この課で選んだような短い文なら、打つ語は 2 つから 4 つです。文が長くなっても、増える語の多くは機能語のほうで、山の数はそれほど増えません。英語の文は、少数の山とその間を埋める弱い音の連なりでできている——この形を頭に入れておくと、自分の音読が平らになったときにすぐ気づけます。 弱形 — 機能語の母音は曖昧母音に潰れる 機能語は弱く短くなるだけではありません。 母音そのものが変わります。 力の抜けた曖昧母音 [ə] に潰れるのです。 1.6 音編 で確かめたとおり、この母音は英語でいちばんよく鳴る母音でした。語の中では弱い音節がこの母音を作りましたが、文の中では機能語がそれを次々に作り出します。同じ語が単独で言われるときと文の中に置かれたときで別の音になる——この 2 つの形を、強い形と弱い形(弱形)と呼びます。 下の表は、音の辞書が返す形と、その母音を曖昧母音に潰した形を並べたものです。潰した側がおよその弱形になります。左の列に付いている縦棒は、強く言う母音の前に立てる印です。右の列にはそれがありません——強く言う場所がもう無いからです。声に出すときは、母音を「あいまいに、短く」——口の構えをほとんど作らずに息だけ通す、というつもりでちょうどよいくらいです。 弱くなる語 単独で言うとき 文の中で to [tˈu] [tə] of [ˈʌv] [əv] can [kˈæn] [kən] for [fˈɔɹ] [fəɹ] from [fɹˈʌm] [fɹəm] as [ˈæz] [əz] at [ˈæt] [ət] was [wˈɑz] [wəz] are [ˈɑɹ] [əɹ] 表に入れなかった語が 3 つあります。 a [ə] ・ the [ðə] ・ and [ənd] の 3 語です。この 3 語は、音の辞書が返す形 そのもの がすでに弱形になっています。強い形で言われることがあまりにも少ないので、辞書が弱い形のほうを代表に採っているのです。英語でいちばんよく使われる語がまさにこの 3 語だということを考えると、英語の音の流れの中では、曖昧母音がどれほどの割合を占めているかが見当ついてくるはずです。 ここで 聞く側と言う側を分けます 。弱形は、 聞く側には必須 です。聞き取れないと感じる文の多くは、知らない語が入っているのではなく、知っている機能語が弱形になっていて「無い音」に聞こえているだけです。1.9 から 1.12 で扱う連結・脱落・同化は、この弱形の上に積み上がっていく現象なので、ここで形を知っておかないと先へ進めません。 一方、 言う側は「短く軽く」で足ります 。表の [ə] を寸分たがわず再現する必要はありません。国際共通語としての英語の発音研究(設計書 §2 #5 の Lingua Franca Core )は、通じるために欠かせない核心に 核強勢 ——文の中でいちばん強く打つ 1 か所——を入れる一方、弱形とリズムは非核心に置いています。つまり、機能語をやや強めに言ってしまっても通じなくはならない。だから練習の重点は、 弱形を作ることより内容語を打つこと に置いてください。核強勢そのものは 1.8 で扱います。 日本語との差 — モーラ拍と強勢拍 日本語は 拍(モーラ) を等間隔に並べる言語です。「た・べ・ま・し・た」は 5 拍で、どの拍もほぼ同じ長さを占めます。拍が 7 つあれば 5 つの文より長くなり、10 あればもっと長くなる。文の長さは拍の数にほぼ比例します。俳句や短歌が拍を数えて成り立つのは、拍が時間の単位として安定しているからです。 英語はそうではありません。等間隔に近づこうとするのは 打つ音節どうしの間隔 のほうです。山から次の山までがだいたい同じ時間に収まるように、間に挟まった弱い音節は詰められ、速く短く発音されます。弱い音節が 1 つしかなければゆっくり、3 つ挟まっていればその 3 つを大急ぎで通り抜ける。だから 語数が増えても文の長さがあまり変わりません 。増えるのはたいてい機能語で、機能語は間隔の中に押し込められるからです。 この課で使う池の文に、ちょうどよい組があります。 A man appeared at the door. [1] (1人の男が戸口に現れた。)は 6 語・7 音節。 Can you come to my office for a minute? [2] (ちょっとオフィスに来てくれる?)は 9 語・11 音節。語数も音節数もずいぶん違いますが、 打つ語はどちらも 3 つ です。この 2 本を、机を 3 回叩きながら——同じ間隔で 3 回叩きながら——読んでみてください。9 語のほうは間の音節を詰めなければ叩く音に間に合いません。その「詰める」感じが英語のリズムです。 日本語話者の音読が長く間延びして聞こえるのは、機能語を拍として律儀に並べてしまうからです。冠詞や前置詞に日本語の 1 拍分の時間を与えると、その分だけ山と山の間隔が広がり、英語の聞き手が当てにしている周期が崩れます。 削るべきは機能語の時間です。 池の文に印を打つ 短い文を 10 本選びました。全語が基本語の上位 600 語に収まり、打つ語は 2 つから 4 つです。「打つ語」の列に並べたのが内容語——強く、長く、母音をはっきり言う語です。そこに挙がっていない語は全部、弱く短く流します。まず読み上げを聞いて山の位置を耳で確かめ、それから自分で読んでください。 英文 打つ語 日本語訳 A book is on the table. [3] book ・ table 本がテーブルの上にある。 Are you coming to the party? [4] coming ・ party パーティーに来ますか。 A book is made of paper. [5] book ・ made ・ paper 本は紙で出来ている。 A man appeared at the door. [1] man ・ appeared ・ door 1人の男が戸口に現れた。 A group of children were playing. [6] group ・ children ・ playing 子供達の一団が戯れていた。 A friend of mine came to see me. [7] friend ・ came ・ see 私の友人の1人が私に会いにきました。 Can you come to my office for a minute? [2] come ・ office ・ minute ちょっとオフィスに来てくれる? A young person wants to see you. [8] young ・ person ・ wants ・ see お若いかたがあなたにお会いしたいそうです。 A group of young men were fighting. [9] group ・ young ・ men ・ fighting 若者の一団がけんかをしていた。 A new student came into the class. [10] new ・ student ・ came ・ class 新入生が教室へ入ってきた。 並べ方には意味があります。上の 2 本は打つ語が 2 つ、次の 5 本が 3 つ、下の 3 本が 4 つ。下へ行くほど山が増えて忙しくなります。1 本目と 3 本目を見比べてください。どちらも A book is で始まる同じ長さの文ですが、打つ数が違います。語数はリズムを決めません。 決めるのは内容語の数です。 機能語のほうも見ておいてください。この 10 本には、前の節で弱形を見た語がそのまま並んでいます—— the ・ are ・ of ・ to ・ a ・ for ・ at ・ can の 8 語。これらを 1 つ 1 つ発音しようとしないでください。打つ語から次の打つ語へ渡る 橋 だと思って、速く通り抜けます。橋を渡り切ることではなく、向こう岸に着地することが目的です。 読み上げと音読 読み上げを聞くときの耳の向け方は 1.6 音編 と同じです。 どこが長いか を聞きます。ただし今度は語の中ではなく文の中で聞いてください。1 本の文の中で、はっきり長く聞こえる場所が 2 つから 4 つあるはずです。そこが打つ語です。数えられるようになったら、印を見ずに聞いて、打つ語だけを書き取ってみてください。文全体は書き取れなくても、打つ語だけなら拾えます。 これが英語の聞き取りの土台になる聞き方です。 音読のときは、内容語を 1 つずつ置いていくつもりで読みます。機能語は「置く」のではなく「通す」。うまくいかないときは、いったん内容語だけを並べて言ってみてください。たとえば 4 本目なら 3 語だけを等間隔に置く。それができてから、間に機能語を 足さずに滑り込ませます 。足すと元の平らな読み方に戻ります。滑り込ませると、山の位置が動きません。 自分の音読を確かめる道具は 2 つです。1 つは音読判定——機能語を強く長く言うと、判定はそこを別の語として拾ったり、内容語のほうを落としたりします。もう 1 つは録音です。録音を聞いて、山が 2 つから 4 つ数えられれば成功、平らな列に聞こえたらやり直し。 山の数を自分で数えられるかどうかが、この課の合格の目安です。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Mini English lessons : Stress timed and weak forms British Council France (1:59, 2019) 打つ音節で刻む調子と弱形 練習 「池の文に印を打つ」の 10 本を、打つ語だけを強く長く、ほかを短く軽くして 音読 し、音読判定にかける。綴りどおりに返らなかった文を書き出し、その文の打つ語をもう一度確かめてから 3 回言い直す。 同じ 10 本を、今度は 機能語をわざと強く長く言って 読む( a ・ the ・ to ・ of を内容語と同じ重さで打つ)。1 の読み方と続けて録音し、聞き比べる。どちらが自分の普段の読み方に近いかを 1 行書く。 10 本のうち打つ語が 3 つの 5 本を、読み上げに声を重ねて シャドーイング する。机を同じ間隔で