11.19 決裁を通す — 一枚と、質疑 — Epoché
★ 断っておきます。 ★ この課で扱うのは 組み立てと書式 だけ です——★ 一枚の作り方・見出しの立て方・数の出し方・想定問答の置き方 。 ★ その場で 何と言うか は、 6.54 話編 が受け持ちます。 ★ そちらは 口で言う側 、この課は 紙に置く側 です。 この課でできるようになること ★ 決裁の一枚 を、六行で組める。 ★ 見出しを主張にする ことができる。 ★ 数を三つに絞る ことができる。 ★ 質疑を先に受ける ことができる。 前提 : 10.28 まで。商は 11.18 まで。話は 6.54 まで。 場面 ★ 四半期の予算の会議です。 ★ 枠は二十分、 うち五分が質疑 。 ★ 決める人は三人、 資料は前の日に配ってあります 。 ★ ここで通らなかった案を、あとから見直すと、 中身が弱かったことはあまりありません 。 ★ 足りなかったのは、 決めるのに要るもの です ——★ いくら要るのか、何が返ってくるのか、 いつまでに決めればよいのか 。 ★ だから、 説得は話し方の話ではありません 。 ★ 決める人の手元に 決められる紙が一枚ある かどうか です。 語彙 ★決裁の一枚、六行 ★ ひな型を置きます。 ★ 会社も人も架空で、 数はすべて仮 です。 Request: one more test engineer for the Sakae line, from May to September. [1] Why now: the new model starts its trial runs in June. [1] Cost: 4.2 million yen for five months. [1] Return: two weeks saved on each trial run. [1] Risk of doing nothing: the June date moves. [1] Decision needed by April 20. [1] ★ 六行しかありません。 ★ けれども、 この六つが揃っていればその場で決められます 。 どの行か 無いとどうなるか ★ 何が欲しいか ★ 相談に見える ★ なぜ今か ★ 来期でよい話になる ★ いくらか ★ 持ち帰りになる ★ 何が返るか ★ 費用だけが残る ★ やらない場合どうなるか ★ 比べていないと読まれる ★ いつまでに決めるか ★ いつまでも決まらない ★ いちばん落ちやすいのは 五行めと六行め です。 ★ 五行めが無いと、 ほかの手を検討していない と見られます ——★ 六行めが無いと、 会議が終わっても何も動きません 。 見出しは、題ではなく主張 ★ 11.8 商編 で 読み上げない ことを置きました。 ★ そちらは 話の並べ方 、この課は 並べた中身に付ける札 です。 ★ 読み上げないなら、 見出しは一人で働かなければなりません 。 弱い見出し 強い見出し ★ Test capacity ★ Test time is what moves the launch date ★ Schedule ★ June trial runs need one more engineer ★ Budget ★ Five months of one engineer, 4.2 million yen ★ 左は 中身の名札 です。 ★ 右は 言いたいこと です。 ★ 名札は、 説明を聞かないと意味を持ちません 。 ★ 確かめ方が一つあります ——★ 見出しだけを上から続けて読む 。 ★ それで筋が通れば、 その順で通ります 。 ★ 通らなければ、 並べ方が違うか、見出しがまだ名札のまま です。 数は、三つまで ★ 11.9 商編 で 声では概数のほうがよい と置きました。 ★ そちらは 声に乗せる数 、この課は 紙に残す数 です。 ★ 紙の側にも、 同じだけ厳しい上限 があります ——★ 一枚に載せる数は 三つ 。 ★ 費用・効果・期限 です。 ★ 四つめを足すと、 どれが決め手か分からなくなります 。 ★ 残りは 配布資料の中 へ回してください。 どう書いた数か 読む人はどうするか ★ 単独の数 ★ 比べる先を自分で探す ★ 前の年と並べた数 ★ そのまま読める ★ 幅で出した数 ★ 悲観の側で決められる ★ 三つめが、 いちばん通ります 。 ★ 4.0 to 4.4 million yen と書くと、★ 決める人は 上の端で考えて 判を押します ——★ だから、 あとで増やす相談が要りません 。 ★ 一つの数に見えても、 分母と基準の年 が無ければ数ではありません 。 ★ 割合を書くなら、 すぐ横に元の数 を添えてください。 質疑は、紙の裏で先に受ける ★ 五分の質疑で 何が来るかは、だいたい分かっています 。 ★ 分かっているなら、 来る前に書いておけます 。 Question: what if the trial runs are late? [1] Answer: the launch moves by about four weeks. [1] Question: can we use the people we have? [1] Answer: we can, and testing then takes three weeks longer. [1] Not yet known: how many trial runs the new model needs. We will know by April 15. [1] ★ これを 配布資料の末尾 に置きます。 ★ 置くと、 二つのことが起きます ——★ その問いが来たときに 間が空かない 。 ★ そして、 読んだ人はもう聞きません 。 どんな問いか どこに置くか ★ 必ず来る問い ★ 配布資料の末尾 ★ 来たら困る問い ★ 本文の中で、先に出す ★ 答えの無い問い ★ 調べる期日を書く ★ 二つめが、 いちばん勇気の要るところ です。 ★ けれども、 弱いところを自分で先に出した案は、そこを突かれません 。 ★ 隠した案は、 そこだけを突かれます 。 ★ 三つめは、 「分かりません」で終えない ということ です。★ 最後の一行が 期日 で終わっているのを見てください ——★ 調べる日が書いてあれば、 知らないことは欠陥ではなくなります 。 日本の商慣習との差 ★ 差は、 決める場所 です。 どう進めるか どちらに多いか ★ 先に回して、会議で確かめる ★ 日本の社内に多い ★ 会議で決めて、あとで回す ★ 相手方に多い ★ 前者では、 会議の前に話が付いています 。 ★ だから、 会議は確かめの場 です。 ★ 後者では、 その二十分で決まります 。 ★ どちらが良いかという話ではありません。 ★ 混ぜると通らない という話です——★ 前者の書き方(背景から順に積む)で後者の会議に出ると、 結論に入る前に時間が尽きます 。 ★ もう一つ、 「持ち帰って検討します」 の扱いが違います。 ★ 英語で仕事をする側では、これは 断りに近く聞こえます ——★ 日付が無いから です。 ★ だから、 持ち帰るなら日付を置く ——★ Decision needed by April 20 の行が 一枚の最後にある のはこのため です。 ★ 三つめの差は、 見送る案を書くかどうか です。 一枚に置く欄 無いとどう読まれるか ★ やらない場合 ★ ほかの手を比べていない ★ 小さく試す場合 ★ 全額か零かの話になる ★ 日本の社内の紙では、 案は一つで出す のがふつう です。 ★ 英語の決裁では、 選べる形 にしてあるほうが通ります ——★ 決める人の仕事は 選ぶこと だからです。 ★ 最後に、 11.16 商編 で置いた「行いの例を一つ」 がここでも効きます。 ★ そちらは 人について書く紙 、この課は 案について書く紙 ですが、 信用の作り方は同じ です。 ★ 効果の行に 数だけ を書くと信じてもらえません ——★ その数が出た 一件 を添えてください。 やってみる ★ いま抱えている案を、六行にする 。★ 何が欲しいか/なぜ今か/いくらか/何が返るか/やらない場合/いつまでに決めるか 。★ 六十〜九十語。 ★ 見出しを、名札から主張に書き換える 。★ 手元の資料の見出しを五つ写し、 それぞれ一文の主張 に直す。 ★ 直したあと、 五つを続けて読む 。 ★ 数を三つに絞る 。★ 資料に出てくる数を全部書き出し、 費用・効果・期限 の三つだけ残す。 ★ 残りの行き先(配布資料のどこか)も書く。 ★ 想定問答を三組書く 。★ 必ず来る問い/来たら困る問い/ 答えの無い問い 。 ★ 三つめには 調べる期日 を入れる。 練習 「決裁の一枚、六行」の六行を 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。 ★ 「弱い見出し」の三つと「強い見出し」の三つを、 交互に音読 する。 ★ 左は Test capacity のように 二語で終わります ——★ 右は文なので、 終わりを下げて 読んでください。 ★ Decision needed by April 20 を そらで言えるまで 音読する。 ★ by のあとの日付を いちばん強く 読んでください ——★ この一行は 日付のために在る から です。 この課のまとめ ★ 通らない理由は、たいてい中身ではない ——決めるのに要るものが一枚に無い。 ★ 決裁の一枚は六行 ——何が欲しいか/なぜ今か/いくらか/何が返るか/やらない場合/いつまでに決めるか。 ★ 落ちやすいのは五行めと六行め 。やらない場合が無いと比べていないと読まれ、期日が無いと何も動かない。 ★ 見出しは題ではなく主張 ( 11.8 商編 の「読み上げない」の続き)。見出しだけ続けて読んで筋が通れば、その順で通る。 ★ 一枚に載せる数は三つ ——費用・効果・期限。四つめを足すと、決め手が見えなくなる。 ★ 幅で出した数がいちばん通る —— 4.0 to 4.4 million yen 。上の端で判を押してもらえる。 ★ 割合には、すぐ横に元の数 ( 11.9 商編 の「分母は数のそばに」)。 ★ 質疑は紙の裏で先に受ける ——想定問答を配布資料の末尾に。読んだ人はもう聞かない。 ★ 弱いところは自分で先に出す 。隠した案は、そこだけを突かれる。 ★ 答えの無い問いには、調べる期日を書く 。日付があれば、知らないことは欠陥にならない。 ★ 「持ち帰って検討します」は、日付が無いと断りに聞こえる —— Decision needed by April 20 。 ★ 英語の決裁では、選べる形にする 。決める人の仕事は選ぶこと。 次の課へ 次の課は 11.20 、 面接と履歴書 です。★ この課で置いたのは 案を通す紙 でした。 ★ 次の課で書くのは、 自分を通す紙 です ——★ 骨は、 驚くほど似ています 。 答え 「やってみる」の四つの答えです。 ★ 六行に落とすと、 二行めが書けない ことがあります。 ★ 「なぜ今か」が書けない案は、 今でなくてよい案 です ——★ そこで止めるのは損ではありません。 ★ 来期に出せばよく、 そのあいだに四行めの材料が溜まります 。 ★ 見出しを主張に直すと、 並べ方の誤りが見えます 。 ★ 名札のままだと、 どの順でも通って見える から です。 ★ 続けて読んで話が飛ぶところが、 説明を足すべきところ です——★ スライドを足すのではなく、 見出しを直す ほうが早いことが多い です。 ★ 数を三つに絞ると、 いちばん自信のある数が残らない ことがあります。 ★ 苦労して出した数ほど載せたくなる ——★ けれども、 載せる基準は「決めるのに要るか」 です。 ★ 要らない数は、 配布資料の中で待たせておく 。 ★ 想定問答は、 二つめでいちばん時間がかかります 。 ★ 来たら困る問いを書くのは、 自分の案の弱いところを言葉にすること だから です。 ★ 書けたなら、 その案はもう強くなっています ——★ 書けないなら、 まだ会議に出す時期ではありません 。 参考文献 Epoché の作例(社内の予算の決裁に出す一枚と、その配布資料)。CC BY 4.0。★会社も人も架空、数はすべて仮。https://epoche.app/