3.20 wh 節と間接疑問 — Epoché
この課でできるようになること 問いの形の塊を、主語・目的語・補語のどこにでも置ける。 ★塊の中の 語順を疑問文にしない 。 疑問詞 + to + 動詞で短く言える。 what の二つの顔(問いの what と「こと」の what )を見分けられる。 前提 : 3.19 まで。 前の課との違いを先に言っておきます。 3.19 型編 で扱ったのは 伝えるための取り込み でした。外側に「言った」「尋ねた」があり、内側の動詞が後退しました。この課で扱うのは 部品としての塊 です。外側は「知らない」「分かる」「〜である」——伝えているわけではないので、後退は起きません。 I don't know when he will come. [1] の will が will のままなのは、そのためです。 共通するのは一つだけ、 塊の中を疑問文の語順にしない ことです。二つの課を続けて置いたのはそのためです。日本語話者がいちばんよく踏む落とし穴で、しかも 自分では踏んだことに気づきません 。疑問詞が口から出た瞬間に、体が疑問文の形を作ってしまうからです。 例文で見る まず 10 文を見ます。見てほしいのは 塊がどこに立っているか です。1 番めと 2 番めは目的語、3 番めは主語、4 番めは補語。そして塊の中は、どれも 疑問詞のすぐ後ろが主語 です。語はどれも第 3 期の範囲(上位 1,980 語)の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ I don't know what I want. [2] 私は何が欲しいか分かりません。 問いの形の塊が、そのまま目的語になっている I don't know when he will come. [1] 彼がいつ来るか分かりません。 未来のことなら未来の形のまま。後退させるのは伝えるときだけ What he said is a good idea. [3] 彼の言ったことは名案だ。 ★塊が 主語 に立った。 what は「こと」 This is what I want. [4] これこそ私の欲しいものです。 ★塊が 補語 に立った I don't know what to do. [5] 何をすればよいのかわからない。 疑問詞 + to + 動詞。主語を言わずに済む I know how to do it. [6] やり方なら私は知っている。 how to は「やり方」 The problem is whether or not my parents will agree. [7] 問題は両親が同意してくれるかどうかです。 whether は「〜かどうか」。 or not を添えられる I don't know why he was late. [8] 私は彼が遅れた理由がわからない。 理由を塊にする Do you know when he will come? [9] 彼がいつ来るかご存知ですか。 問いの中に塊を入れた形。外側だけが疑問文の語順 I can't understand why he did that. [10] どうして彼がそんなことをしたのか理解できない。 打ち消しと合わせて使うことが多い 骨組み この課の規則は一つです。 問いの形の塊は、名詞と同じ場所に置ける。 置ける場所は三つ——主語・目的語・補語です。 三つの場所に置く どこに置くか その形 この課の例 目的語 動詞 + 塊 I don't know what I want. [2] 主語 塊 + 動詞 What he said is a good idea. [3] 補語 be + 塊 This is what I want. [4] 前置詞のあと 前置詞 + 塊 — 三行めの This is what I want. [4] を見てください。文の骨は This is … で、 what I want が … に入っています。つまり、この塊は 名詞ひとつと同じ重さ です。長く見えますが、文の作りとしては This is a book. と変わりません。 二行めの What he said is a good idea. [3] は、塊が主語に立った形です。主語が長くなるので、読むときは 動詞が出てくるまで待つ ことになります。第 3 期の読み物にはこの形がよく出るので、 主語の終わりを見つける 癖を付けてください。見つけ方は簡単で、 二つめの動詞が出たところ が切れ目です。 ★塊の中は疑問文の語順にしない これがこの課でいちばん大事な規則です。塊の中は 訊いていません 。だから主語と動詞をひっくり返しません。 訊くとき 塊にするとき Where is it? where it is What does he want? what he wants When will he come? I don't know when he will come. [1] 右の列では、疑問詞のすぐ後ろに 主語 が来ています。二行めでは does も消えています。疑問文を作るための道具なので、疑問文でなくなれば要らなくなります。そのかわり、動詞に s が戻ってきます。 ただし、 疑問詞そのものが主語 のときは、疑問詞の後ろにすぐ動詞が来ます。 What he said would happen has happened. [11] の What he said は、 what が said の目的語ですが、下の「実文で通す」に置いた to see what would happen [12] では what が主語です。 ひっくり返っているのではなく、主語がその疑問詞そのもの なのです。 疑問詞 + to + 動詞 — 主語を言わずに済ませる 塊の主語が、外側の主語と同じであることがよくあります。そういうときは 主語ごと省いて to + 動詞 にできます。 I don't know what to do. [5] は what I should do を縮めた形です。 I know how to do it. [6] 、 Tell me where to put these books. [13] も同じ作りです。 この形は 短いので会話でよく出ます 。そして読むときにも楽です。主語も時の印も無いので、迷うところがありません。ただし why だけはこの形を取りません。理由には「すべき」という含みが合わないからです。 if と whether — 「〜かどうか」 はい・いいえで答える問いを塊にするときは if か whether を使います。ふだんはどちらでもかまいません。ただし 使い分けが要る場所が三つ あります。 主語に立てるとき は whether だけ。 if を文の頭に置くと、条件の if に読まれてしまいます。 前置詞の後ろ も whether だけ。 or not をすぐ後ろに付ける ときも whether です。 The problem is whether or not my parents will agree. [7] がその形で、「どちらであっても」という含みが強く出ます。 迷ったら whether にしてください。 whether が使えない場所はありません。逆に if は上の三つで使えません。なお、この if は条件ではないので、未来のことなら未来の形のままです( 3.16 型編 )。 what の二つの顔 what には二つの使い方があります。見た目は同じなので、 読むときに迷います 。 どちらの what 意味 この課の例 問いの what 何が・何を(問いを塊にした) I don't know what I want. [2] 「こと」の what 〜するもの・〜すること This is what I want. [4] 見分け方があります。 「何」を入れて意味が通るなら問いの what 、 「もの・こと」を入れて通るならもう一方 です。 I don't know what I want. [2] は「何が欲しいか」、 This is what I want. [4] は「欲しいもの」。どちらとも取れる文もありますが、その場合は どちらで読んでも意味がほとんど変わりません 。無理に決めずに読み進めてください。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも文を名詞にする仕組みがあります。 「〜か」「〜こと」「〜の」で包めば、そのまま主語にも目的語にもなります。ずれるのは 包む印を置く位置 です。 ★日本語に無い区別 — 包む印が前か後ろか 伝えたいこと 日本語では 英語では 何が欲しいか分からない 何が欲しい か ・分からない I don't know + what I want 欲しいものはこれだ 欲しい もの はこれだ This is + what I want 彼が来るかどうか知らない 彼が来る か ・知らない I don't know + if he will come 日本語の側は、包む印(「か」「もの」)が 塊の最後 にあります。英語の側は、包む印( what ・ if )が 塊の最初 にあります。位置が正反対なので、 組み立てる順番が逆になります 。日本語は中身を全部言ってから包み、英語は 包む印を先に言ってから中身を言います 。 これは話すときに効いてきます。日本語の順で考えていると、中身を言い終わるまで何を言うか決まりません。英語では、 what や if を 先に口から出してしまう と、残りは落ち着いて言えます。読むときも同じで、 包む印を見た瞬間に「ここから塊だ」と分かります 。英語のほうが、切れ目は見つけやすいのです。 日本語の「か」は疑問詞と一緒に使える 日本語では「何が欲しいか」のように、疑問詞と「か」を 両方 置きます。英語では疑問詞だけで足ります。 what if I want のように二つ置くことはできません。 包む印は一つ —— 3.16 型編 で見た「つなぎ目の語は片側だけ」と同じ考え方です。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。この課の道具は 反対意見を言うときに効きます 。断定を 節に包む と、主語を自分の側に移せるからです。下の四つは、どれも「それは違うと思う」を伝えています。 英文 日本語訳 どんな相手に You are wrong. [14] お前が悪いよ。 言い切る。相手を主語に置く You're wrong about that. [15] そのことについて君は間違ってるよ。 当たる範囲を限る。それでも相手が主語 I'm not sure if this is correct. [16] これが正しいかどうか自信がないんだ。 ★節に包み、主語を自分に移す I'm not sure if it was good or bad. [17] 良かったのか、悪かったのかよく分かんないけど。 ★両方を挙げて、どちらとも決めない 一行めと二行めは、相手が主語です。「あなたが間違っている」と言っています。三行めで主語が I に移りました。間違っているかどうかは 節の中 に入り、文が言っているのは「私には確かでない」ということだけです。四行めはさらに、二つの可能性を並べて どちらとも決めていません 。 日本語でも同じことをしています。「それは違います」より「それで合っているかどうか、私には分かりません」のほうが角が立ちません。「か」で包んで、判断を自分の側に引き取っています。 包むという作り方まで同じ です。第 8 編「論」で反対意見を書くときに、この形をそのまま使います。 よくある誤り 三つ挙げます。どれも日本語の仕組みを英語にそのまま持ち込んだ形で、下の誤文は Epoché の作例です。書いた英文ではなく、 話した英文 で自分を確かめてください。 塊の中を疑問文の語順にする。 where is it → where it is 疑問詞が出た瞬間に体が疑問文を作ってしまいます。塊の中は訊いていません。 疑問詞の後ろは主語から 。 3.16 型編 ・ 3.19 型編 でも同じ誤りを挙げました。三度出るのは、それだけ根が深いからです。 do ・ does を残す。 what does he want → what he wants 疑問文を作るための道具なので、塊の中には要りません。そして外すと、動詞に s が戻ってきます。 二つ同時に直す 必要があるので、片方だけ直して落ち着かない形になりがちです。 包む印を二つ置く。 what if he wants → what he wants 日本語の「何が欲しいか」を写すと、疑問詞と「か」を両方置いてしまいます。英語では 疑問詞だけ 、はい・いいえの問いなら if / whether だけ です。 実文で通す 第 3 期の読み物には、この形が驚くほど多く出ます。物語は 登場人物が何を知り、何を知らないか で進むからです。五つ並べました。どれも塊の中が疑問文の語順になっていません。 どの篇から 原文 何が起きているか 8.41 読編 did not know what joy was [18] ★訊くなら what was joy 。塊なので主語が前に来る 8.42 読編 waited to see what would happen [19] ★ what が主語。だから後ろにすぐ動詞が来る 8.52 読編 may not know what breaking in is [20] 塊の主語が breaking in という長い塊。動詞は最後 8.59 読編 knew not what to say or think [21] 疑問詞 + to + 動詞。動詞が二つ並んでいる 8.68 読編 did not know how strong it was [22] ★ how と形容詞が ひと塊で前に出る 一行めをもう一度見てください。これは『オズの魔法使い』の冒頭、ヘンリーおじさんの暮らしを描いた一文です。 喜びというものを知らなかった ——「何が喜びか」を知らない、という形で書かれています。問いの形をした塊は、このように 人物の内側 を描くのに使われます。五行めの「どれだけ強いか知らなかった」も