原因・自己・道徳を問い直す――ヒューム — Epoché
解説 感じることと、思い出すこと ヒュームは心に現れるものを知覚と呼び、感じる印象と、記憶や想像などの観念を区別する。今の痛みとその記憶は、同じ出来事についてでも、迫ってくる強さが異なる。 違いは内容だけではない。複雑な観念が全てそのまま経験の複写という意味でもない。 出典1 繰り返しは、期待を生む 原因から結果が必ず起こる結び付きを、一回の観察で見出すことはできない。繰り返しは心に期待を生む。未来も過去と似ると過去の経験だけで証明しようとすれば、その前提を既に使ってしまう。 因果や予測を生活から捨てる指示ではない。客観的な必然的結び付きへの態度や、帰納批判の射程には解釈上の論争がある。 出典1 変わらない自己の印象はあるか 変わらず存続する実体としての自己の印象は見つからない。そこで自己を、関連する知覚の束や連続として説明する。 人間や経験の存在が全て無いという断言ではない。本人も『人間本性論』付録で、この自己説への疑いを述べた。 出典1 道徳の判断と、感情の働き 道徳は行動や感情を動かす。一方、理性だけにはその力がない。だから道徳の区別は理性だけから生じないと論じる。共感と、影響を受ける人々を考える一般的な視点で評価を整える。 理性が全く役立たないという意味ではない。私の気分だけでなく、身近な人に偏りがちな共感を修正することも含む。 出典1 どの材料から、何を説明するか 対象 見る材料や働き 限界 原因 反復から生じる期待 未来の保証を過去だけで証明できるか 自己 関連する知覚の束や連続 変わらない実体の印象は見つからない 道徳 共感と一般的な視点 理性だけ/私の気分だけにしない 原因・自己・道徳で同じ結論を反復するのでなく、異なる働きを分ける。 参考文献 [1] Hsueh Qu; Elizabeth S. Radcliffe「David Hume」。 出典