5.3 道案内 — 命令文の連なりと、母音の付かない語末 — Epoché
この課で聞き取れるようになること 道案内の対話を、台本を見ずに、順路(距離・どこでどちらへ曲がるか・曲がったあとに見えるもの)だけ聞き取れる。 命令文がいくつも続くとき、その並びを「手順の列」として受け取り、指示がいくつあったかを数えられる。 空間を表す前置詞と方向の語が弱く流れて鳴らなくても、前後から補って聞ける。 語末の子音に母音を足さずに聞き、子音で終わる似た語を取り違えずに書き取れる。 前提 : 5.2 まで。 聞編 聞の 3 課目です。 5.1 聞編 で自己紹介を、 5.2 聞編 で買い物を聞きました。この課は道案内です。前の 2 つと決定的に違うところが 1 つあります。自己紹介は少しくらい聞き落としても話は先へ進み、買い物なら値段は札にも書いてある。ところが道案内は、 相手の口から出た情報しか手がかりが無い 場面です。しかも二度目に同じことを聞いても、相手はたいてい同じ速さで繰り返します。だから、この場面の聞き取りは「全部の語を取る」から「順路だけを取る」に切り替える必要があります。 追うものは 3 つに絞ります。1 つ目は 命令文の連なり ——道案内の返事は命令文がいくつも並んだ形で来ます。2 つ目は 前置詞と方向の語 。 3.5 型編 で見た in ・ on ・ at に along や to が加わります。3 つ目は 語末の子音 —— left と right と light のように、道案内でいちばん大事な語がそろって子音で終わります。この 3 つ以外は追いません。 聞く前に 初めて来た町の道ばたです。話し手を A と B と呼びます。A は道をたずねる側、B は答える側で、目的地は学校です。8 段落あり、A から始まって交互に話します。1 段落が 1 人の話す番で、短い文が 1 つか 2 つ入っています。 固有名詞は出てきません。初めての町では、名前を覚えるより順路を覚えるほうが先だからです。聞き取る中身は 3 つだけにしておきます。 どのくらいの距離か(歩けるのか)・どこでどちらへ曲がるか・曲がったあとに何が見えるか。 この 3 つが取れれば、その道案内は聞けたと数えて構いません。 知っておく語 先に 5 語だけ音の形を確かめます。5 語とも台本に出てきます。意味はどれも既に知っているはずなので、確かめるのは音のほうだけです。「音節と語末の子音」の列は、その語がいくつの山でできているかと、最後にどの音で閉じるかを示します。5 語が全部 1 音節でありながら、終わりの音だけが少しずつ違う——そこを見てください。 知っておく語 意味 音節と語末の子音 street 通り 1 音節。頭に子音が 3 つ続き、終わりも t 1 つで閉じる。母音は真ん中に 1 つだけ left 左 1 音節。終わりは ft の 2 つ。日本語なら母音が入るはずの所に、何も入らない right 右 1 音節。終わりは t 。左の語と終わりが同じなので、違いを運ぶのは語頭のほう light 信号(明かり) 1 音節。終わりは t 。右の語と母音も語末も同じで、違うのは語頭だけ road 道 1 音節。終わりは d 。 t で終わる語との違いは、最後のひと息にしかない この課で追う 3 つ — 命令文の連なり・前置詞・語末の子音 1 つ目は命令文の連なりです。 3.2 型編 で、命令文は主語を置かず動詞から始まる形だと見ました。道案内の返事は、その命令文がいくつも並んだ形で来ます。この台本には命令文が 5 つあります。日本語なら「この道を行って、信号を左に曲がって、右の道に入って」と、動詞を「〜て」でつないで 1 本の長い文にするところです。英語はつなぎません。1 つ 1 つが独立した文として続けて出てきます。つなぎの語が無いので、指示と指示の切れ目を示すものは 息の切れ目しかありません 。だから慣れないうちは、5 つの指示が 1 つの長い文に聞こえます。 ただし、これは聞く側に有利にもはたらきます。命令文は動詞から始まるので、文の頭がいきなり内容語——強く長く鳴る音——になるからです。 1.7 音編 で見た弱形は文の頭ではなく途中に来ます。つまり道案内では、はっきり聞こえる山が、だいたい指示の切れ目と重なっている。山が来るたびに「次の指示が始まった」と数えていけば、 指示がいくつあったかは、語が取れなくても分かります 。まず数え、それから 1 つずつ中身を埋めにいく。これが道案内を聞くときの順序です。 なお 3.2 型編 では、日本語話者が命令文を使いすぎる(母語話者の 2.5 倍)ことも見ました。一言だけ足します。 相手が返してくる命令文は失礼ではありません。 道案内や料理の手順のように、手順をそのまま渡す場面では、英語でも命令文がふつうの形です。使いすぎが問題になるのは依頼の場面のほうです。 2 つ目は前置詞と方向の語です。 3.5 型編 で、 in ・ on ・ at が空間の言い方から時間の言い方へ広がるのを見ました。道案内は、その空間の側を素朴に使う場面です。台本に出てくるものを下に並べます。どれも短く、しかも全部が機能語——つまり 1.7 音編 の弱形になり、速さの中ではほとんど鳴りません。 前置詞・方向の語 どんな絵か 台本での出どころ along 線に沿ってずっと。道の上を進み続ける 2 段落目 at 点。信号という一点で何かが起きる 4 段落目 to 向き。「左のほうへ」と向きを指す 4 段落目 on 面。「右の側にある」と面に載せる 6 段落目 from 起点。「ここから」と測り始める所 1・2 段落目 in 中。時間の幅の中に収まる 8 段落目 表を見て「これなら全部知っている」と思ったはずです。それでも聞き取れないのは、 知っていることと、消えかけた音から復元できることが別だから です。手がかりは前後にあります。動詞が turn なら、後ろに来るのは方向の語です。 the right のようなかたまりが来るなら、その前は on か to のどちらかで、選択肢はいつも 2 つか 3 つしかありません。前置詞は「聞き取る」のではなく「埋める」のだと考えてください。 3 つ目は語末の子音です。 1.1 音編 で、英語の語は子音で終わることが多い(基本語の 76%)と見ました。あのときは 言う側 の話でした——語末に母音を足すと音節が増えて通じなくなる、という。この課は 聞く側 で、困り方がちょうど逆になります。日本語の耳は、語末に子音を聞くと、そこに母音があったものとして補ってしまう。その結果、 left と light と right が似た形に均されます。道案内でこの 3 語を取り違えると、行き先そのものが変わります。 手当ては 2 つです。1 つ目、 語末に母音を足さない耳で聞く 。英語の語末の子音は口の形を作ったところで息を止めて終わるので、「無い」ように聞こえるのが正常です。聞き逃したと思わないでください。2 つ目、 区別を運んでいるのは語頭のほうだと決める 。 left も right も light も、終わりは同じ t で、違いは頭にしかありません。 1.3 音編 と 1.4 音編 で立てた l と r の聞き分けが、そのまま効く場面です。 聞き方 この編の課は 音が本体 で、画面の文字はその確かめです。だから台本はこの課の終わり、答えより後ろに置いてあります。先に読むと、文字を追いながら音を聞くことになり、聞き取りの練習になりません。手順は 5.1 聞編 で決めた 4 段と同じで、中身だけをこの課に合わせます。 台本を見ずに 2 回聞く。 1 回目は指示の数だけを数えます。強い山が来るたびに指を折る、それだけで構いません。2 回目に中身を取りにいきます。分からない語は飛ばして、上の 3 点だけを拾ってください。 読み上げに声を重ねる(シャドーイング)を 3 回。 台本は見ません。語を正しく言おうとしないでください。命令文の頭を強く出すことと、語末の子音で母音を足さずに息を止めること——この 2 つだけを真似ます。 台本を見て確かめる。 消えて聞こえた所が前置詞だったことを、上の表と突き合わせます。「知らない語ではなかった」ことを毎回確かめるのが、この段の目的です。 台本を見ずに、もう 1 回通して声を出す。 この 4 段目だけを 音読判定 にかけ、綴りどおりに返らなかった段落を書き出してください。 判定が返すのは綴りだけですが、この課にはうってつけです。 left のつもりで言った語が light として返ってきたら、崩れているのは語頭です。何も返らなければ、崩れているのは語末のほうです。 判定の間違い方が、そのまま自分の弱点の名前になっている ——聞編でこの道具がいちばん役に立つのは、この使い方です。 問い 聞き方の 1 段目と 2 段目を終えてから、3 段目より先に答えるのがこつです。台本を見てから答えると、聞けたのか読めたのかが自分でも分からなくなります。1 から 3 が順路の問い、4 が調子の問い、5 と 6 が書き取り、7 がシャドーイングの仕上げです。 目的地までどのくらいかかると B は言っているか。歩きか、乗り物か。何段落目で分かったかも書く。 B が出した指示は全部で 5 つある。出てきた順に、日本語で並べる。 曲がるのは全部で何回か。左と右のどちらが先か。曲がる目印は何か。 台本には問いが 4 つある。終わりが 上がる のはどれとどれか。何段落目かで答える。 書き取り。 4 段落目の 2 つ目の文を書き取る。6 語のうち 5 語が子音で終わる。 書き取り。 2 段落目の 2 つ目の文を書き取る。前置詞が 1 つと、数のおおよそを表す語が 1 つ入っている。その 2 つを落とさない。 シャドーイング。 聞き方の 4 段目を 8 段落すべてで行い、 音読判定 にかける。綴りどおりに返らなかった段落を書き出す。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Let's Learn English Lesson 6 - Where Is the Gym VOA Learning English (7:22, 2016) 建物の中で道をたずねる この課のまとめ 道案内で聞き取るのは 3 点だけ——距離・どこでどちらへ曲がるか・曲がったあとに見えるもの。全部の語を取ろうとしない。 返事は命令文の連なりで来る。日本語の「〜て」に当たるつなぎが無いので、切れ目は息の切れ目だけ。文の頭が強く鳴るので、山を数えれば指示の数が分かる。 空間の前置詞と方向の語は全部が機能語で、弱く流れて鳴らない。前後が決まれば入りうる前置詞は 2 つか 3 つしかないので、聞き取るのではなく埋める。 語末の子音は開放されないので「無い」ように聞こえるのが正常。似た 3 語の区別を運ぶのは語頭のほうで、語末は「子音で閉じた」ことだけ確かめればよい。 次の課へ 次は 5.4 時間と予定です。何時に、どこで、というやりとりに移ります。この課の「順路だけを取る」構えは、そのまま「時刻と場所だけを取る」に置き換わります。前置詞も同じ顔ぶれが出てきますが、こんどは空間ではなく 時間 の側で使われます。 3.5 型編 の後半、 in ・ on ・ at が時間へ広がる話が、そこで耳の側から戻ってきます。「機能語は鳴らないものと当てにして前後から埋める」習慣を、そのまま持っていってください。 答え 歩いて 5 分。2 段落目の The school is only five minutes' walk from here. [1] から分かる。8 段落目でも You should get there in five minutes walking. [2] と念を押している。乗り物の話は一度も出てこない。距離を聞いたのは 1 段落目の Is it far from here? [3] なので、答えは 2 段落目の頭に来ると見当を付けて聞けるとよい。 順に、①この道を 5 分ほど行く(2 段落目の Go along this street about five minutes. [4] )②左側を保つ(4 段落目の Keep to the left. [5] )③最初の信号を左へ曲がる(同じく Turn left at the first light. [6] )④右の道を取る(6 段落目の Take the road on the right. [7] )⑤ついて来る(8 段落目の Follow me. I know the way. [8] )。5 つとも主語が無く、動詞から始まっている。 2 回。左が先で、右が後。目印は信号で、4 段落目の Turn left at the first light. [6] から分かる。曲がったあとに何が見えるかは、6 段落目の If you turn right, you will see a big building. [9] が言っている。 上がるのは 1 段落目の 2 つ目 Is it far from here? [3] と、3 段落目の Is this the right road? [10] 。どちらも はい・いいえで答える問い。下がるのは 1 段落目の 1 つ目 Where is the school? [11] と、5 段落目の Which way should I go? [12] 。どちらも疑問詞で始まる問いである。 Turn left at the first light. [6] 子音で終わらないのは 4 語目だけで、あとは全部が子音で閉じている。書き取れなかった人は、聞こえた強い山から形を組み立て直すとよい。山と山の間に鳴っている弱いものは、上の表の中の 1 つしか入らない。 Go along this street about five minutes. [4] はっきり鳴るのは動詞と、道を表す名詞と、数のところだけ。「この道を、しばらく行く」という形だと分かれば、間の 2 語は埋まる。 返らなかった段落は、命令文の頭を弱く始めているか、語末の子音に母音を足していることが多い。頭を強く、終わ