精読:ヒュームの因果を扱う一節と、その推論の組み立てを読む — Epoché
解説 何の知識を問うているか 『人間知性研究』第4節第1部。直前の「原因と結果」の関係を受けた短句を抜粋する。a prioriは、ここでは経験に先立つ推論のこと。 別抜粋一:the knowledge of this relation is not, in any instance, attained by reasonings a priori; but arises entirely from experience, when we find that any particular objects are constantly conjoined with each other. 独自訳:この関係についての知識は、どの場合にも経験に先立つ推論によって得られるのではない。特定の対象が互いにいつも結びついていると分かる経験からのみ、生じる。 理性の使用を全て否定したり、全種類の知識をこの主張にまとめたりしない。 出典1 水と火を初めて見るなら 次は同じ段落の別箇所。間の文を省いている。 別抜粋二:Adam, though his rational faculties be supposed, at the very first, entirely perfect, could not have inferred from the fluidity and transparency of water that it would suffocate him, or from the light and warmth of fire that it would consume him. 独自訳:アダムの理性の能力が最初から完全だったと仮定しても、水の流動性と透明さから、それがおぼれさせるとは推論できなかっただろう。また、火の光と暖かさから、それが焼き尽くすとも推論できなかっただろう。 アダムは仮定の例であり、歴史上の観察報告ではない。水の見た目から窒息、火の光や暖かさから燃焼を予測できるかを考える。 出典1 主張と例が示す範囲 完全な理性を仮定しても、初めての対象の見える性質だけから効果は分からない。経験に先立つ推論と、経験から得る因果関係の知識を分ける例である。 過去に結びついたものが将来も必ず続くという保証を、この短い引用が証明したとはしない。 出典1 ヒュームの主張と例を分ける 段階 述べること 理由・限定 主張 因果関係の知識は経験から 対象がいつも結びつくと分かる 仮定の例 完全な理性のアダムでも水火の効果を推論できない 見える性質だけでは足りない 引用の限界 経験なしの推論と経験からの知識を分ける 将来の必然的な継続まで保証しない 参考文献 [1] David Hume/L.A.Selby-Bigge編1894(1777年版再録)。印刷27頁から本教材が独自転記・日本語訳。編者序文・索引・校異と原画像は転載しない。「ヒューム『人間知性研究』第4節第1部§23(1894年版、印刷27頁)」。 出典 本教材の独自訳・解説 CC BY-SA 4.0(ヒューム原文)