8.35 Taking Chances — 役がついた(VOA の台本) — Epoché
この篇でできるようになること 台本 の形(行の頭の名前)に慣れる。 縮約形 を、読むときに元の形へ戻せる。 書き出しに並ぶ 経験の現在完了 を受け取れる。 書き言葉と話し言葉の違いを、 数で 言える。 前提 : 8.34 まで。 百年前の本と、今の話し言葉を数えくらべる 8.25 読編 で、百科事典と読本を数えくらべました。同じことを、 百年前の本 (読本六篇と寓話四篇)と 今の台本 (この四篇)でやってみます。 測ったもの 百年前の本 10 篇 今の台本 4 篇 100 語あたりの縮約形 0.5 個 3.7 個 7.1 倍 です。縮約形とは I've ・ don't ・ it's のように、 アポストロフィで二語をつないで縮めた形 です。 これが 話し言葉のいちばんの目印 です。百年前の本にも会話の部分には出てきますが、地の文にはほとんど出ません。台本は全部が会話なので、一気に増えます。 読むときに困ることはありません。 元の形に戻すだけ です。 縮約形 元の形 I've I have don't do not it's it is (または it has ) I'll I will you're you are didn't did not 一つだけ気をつけてください。 's は 二通り あります—— is の縮約と、 「〜の」を表す印 です。 Actor’s Studio の 's は「〜の」のほうで、縮約ではありません。 前後を見て決めて ください。 読む前に 題材は 対談の番組 です。アナという人が、演出家のケリーの番組に招かれ、 映画の役が三つ決まった という知らせを伝えます。アナはケリーの劇で「十五番の木」の役をやった人で、この日も 木の衣装のまま 来ています。 気をつけるところを三つ置きます。 一つめ、 行の頭の名前 です。 Anna: や Kelly: は せりふではありません 。「ここから誰がしゃべる」という印です。台本ではこれがふつうの書き方で、 引用符は使いません 。 8.25 読編 から 8.34 読編 までで引用符の読み方を積みましたが、台本ではその印ごと要らなくなります。 二つめ、 書き出しに現在完了が四つ並ぶ ことです。下の「構文の骨」で扱います。 三つめ、 番組の名と劇の名が長い ことです。 Actor’s Studio 、 The Woods Are Alive ——どちらも 作品の名 なので、意味を取ろうとしないでください。 8.23 読編 で置いたとおり、 大文字の塊は名前として飛ばす 。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 432 語、せりふは 20 本です。書き出しはこうです。 Anna: Hello, it's Anna! I did it - Washington, D.C. is my home. 先に原文だけを、 辞書も語釈も見ずに 最後まで読んでください。縮約形のところで 止まらないで ください。読み終わったら、 アナに何が起きたか を一行で言ってみてください。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 アナ:こんにちは、アナです! やりました――ワシントンD.C.が私の家になりました。この一年をふり返ると、本当にたくさんのすばらしいことをしてきました! 世界じゅうから来た人たちに会いました。いい友だちもたくさんできました。それに、すてきな仕事もあります! そして、たくさんの思いきった挑戦もしてきました。そして今、本当に大きな知らせがあるんです! お楽しみに……さあ、3、2、1…… ケリー:こんにちは、「俳優スタジオの角を曲がって通りの向かい側から」へようこそ! 多くの人が俳優になることを夢見ます。でも、その夢がかなわないことはとてもよくあります。 ケリー:さて、今日はある女性をお迎えします。そして――彼女の俳優としての経歴は本当に飛躍しました。実は、彼女は私の劇『森は生きている!』に出演してくれたんです。ああ。彼女は「木の15番」の役を本当に生き生きと演じてくれました! アナ・マテオさんを温かくお迎えしましょう! アナ:ありがとうございます。お招きいただいて本当にありがとうございます。 ケリー:どうぞ、どうぞ、おかけください。ほら、ほら、手を貸しましょう。 アナ:ありがとう。ありがとう。わあ、またお会いできてうれしいです、ケリー演出家! ケリー:私もまた会えてうれしいわ、アナ。まだ木の衣装を着ているのね。これはあなたの大きな知らせと何か関係があるのかしら? アナ:はい。はい、あります。 ケリー:では、アナ、その知らせを私たちに聞かせてください。 アナ:ケリー、私、映画三本に出演するんです。 ケリー:すごいわ! アナ、もっと聞かせて。 アナ:ええと、一本目はSF映画です。二本目はラブコメディです。そして三本目はアクション映画です。 ケリー:本当にすばらしい! 当ててみましょうか――全部で木の役を演じるのね! アナ:そうなんです! こういうことなんです。あなたの劇の準備のために、この世界で木で「ある」とはどういうことかを知らなければなりませんでした。どこで食事をして、どこで買い物をして、どこで人に会い、どうやって街を動き回ればいいのかを知らなければならなかったんです。 ケリー:すごいわ。あなたにはこれから大きなことが起こると思うわ、アナ。それで、教えて。映画の仕事のためにハリウッドへ引っ越すの? アナ:いいえ。映画を撮ったら、戻ってきます。ワシントンD.C.が私の家ですから。 ケリー:ご家族もきっととても誇りに思っているでしょうね。 アナ:はい、そうなんです。あのね、ケリー、少し前まで、私は自分の暮らしにあまり満足していませんでした。変わらなければなりませんでした。だから、思いきって挑戦してみたんです。うまくいったこともあります。失敗したこともあります。でも、私は決して挑戦をやめません。 ケリー:さて、アナ、知らせと、そのほかにもたくさんのことを聞かせてくれてありがとう。 ケリー:それではまた次回…… 語釈 帯の外の語は 25 語です。下に 全部 出します。 半分以上が名前 (人・町・作品)で、残りもカタカナで日本語に入っているものが多いはずです。 語(品詞) 意味 注 Actor’s en 名 俳優の。 Actor's Studio で番組の名の一部 Actor’s nerves often show before the curtain rises. 俳優の緊張はしばしば幕が上がる前に表れます。 Alive en 形 生きている。劇の題の中の語 Alive and healthy, the puppy wagged its tail happily. 元気いっぱいで生きている子犬はうれしそうにしっぽを振りました。 Amazing en 形 驚くほどの Amazing dancers performed on the stage last night. 驚くほどのダンサーたちが昨夜舞台で踊りました。 Anna en 名 アナ。この台本の主人公 C en 名 D.C. の一部。ワシントンの正式な名の一部 Hello en 間 こんにちは Hello, my old friend! I did not expect to meet you here. こんにちは、旧友よ。ここであなたに会うとは思っていませんでした。 Hollywood en 名 ハリウッド。映画の町 Kelly en 名 ケリー。演出家の名 Matteo en 名 マッテオ。アナの姓 Oh en 間 おお、ああ Oh, I forgot to bring my umbrella today. ああ、今日は傘を持ってくるのを忘れました。 Studio en 名 稽古場。番組の名の一部 Studio classes help young actors build their skills. 稽古場でのレッスンは若い俳優たちが技術を磨く助けになります。 Washington en 名 ワシントン Woods en 名 森。劇の題の中の語 Woods cover much of this quiet northern region. 森はこの静かな北部地域の多くを覆っています。 actors en 名 俳優(複数) The actors rehearsed their lines before the show. 俳優たちは公演前にせりふを練習しました。 amazing en 形 驚くほどの The magician performed an amazing trick for the children. その手品師は子どもたちに驚くほどの手品を披露しました。 anna en 名 アナ( Anna と同じ語) comedy en 名 喜劇 We watched a funny comedy at the theater. 私たちは劇場で愉快な喜劇を見ました。 costume en 名 衣装 She wore a colorful costume for the party. 彼女はパーティーのために色鮮やかな衣装を着ました。 fiction en 名 作りごと。 science fiction で空想科学 I enjoy reading science fiction novels on weekends. 私は週末に空想科学小説を読むのが好きです。 kelly en 名 ケリー( Kelly と同じ語) proud en 形 誇らしい Her parents are proud of her hard work. 彼女の両親は彼女の努力を誇りに思っています。 romantic en 形 恋愛の They watched a romantic movie on their anniversary. 二人は記念日に恋愛映画を見ました。 succeeded en 動 うまくいった After many attempts, she finally succeeded in the exam. 何度も挑戦した後、彼女はついに試験に成功しました。 washington en 名 ワシントン( Washington と同じ語) wow en 間 わあ Wow, this chocolate cake tastes absolutely delicious today! わあ、このチョコレートケーキは今日、本当においしいです。 構文の骨 ★経験の現在完了が四つ並ぶ 書き出しの独白を見てください。一年をふり返って、こう言います。 原文 何を言っているか I’ve done so many amazing things たくさんのすごいことをしてきた I have met people from all over the world 世界じゅうの人に会ってきた I’ve made many good friends よい友だちをたくさん作ってきた And I've taken a lot of chances たくさん賭けに出てきた 四つとも have + 過去分詞 、 3.9 型編 の 現在完了 です。しかも四つとも 経験 の使い方——「これまでに〜してきた」。 なぜ四つ並ぶのか。 一年をふり返っているから です。現在完了は 過去から今までをひとまとめ にします。過去形( I did )だと「そのときやった」という一点になってしまい、 ふり返りになりません 。 並んだ四つのうち、二つは I've 、一つは I have 、一つは I've —— 同じ人が、同じ文の並びの中で、縮めたり縮めなかったり しています。話し言葉はそういうものです。 規則ではなく、そのときの調子で決まります 。 台本の行の頭は印 この篇には 20 本のせりふがあります。どれも行の頭に名前が付いています。 台本の書き方 物語の書き方(8.25〜8.34) Anna: Thank you. "Thank you," said Anna. 名前は 行の外 にある印 名前は 文の中 にある 引用符は 使わない 引用符が 要る 台本のほうが 読むのは楽 です。誰の言葉かを探す必要がありません。そのかわり、 どう言ったか は書かれていません。 8.33 読編 の whined や cried のような語が、台本にはないのです。 ではどうするか。 せりふそのものから読み取ります 。 Thank you. Thank you so much for having me here. ——二度お礼を言っているので、 ずいぶん恐縮している ことが分かります。台本は、読む側にそれをさせます。 同じことを二度、言い方を変えて言う この篇の終わりに、こういう一続きがあります。 So, I took some chances. Sometimes I succeeded. Sometimes I failed. But I will never stop trying. 短い文が四つ並んでいます。しかも Sometimes で始まる二文が 同じ形で、中身だけ反対 になっています——うまくいった/うまくいかなかった。 8.29 読編 で置いたとおり、 同じ形が二度出たら、わざと置いている のでした。ここでは 釣り合わせる ために置いています。成功と失敗を同じ重さで並べてから、 それでもやめない と結ぶ。この篇の題( Taking Chances 、賭けに出る)がそのまま出ているところです。 訳 第 2 期の読み物に 文ごとの訳は付けません 。 場面ごと の要旨を置きます。 どこ その場面 書き出しの独白 アナのふり返り。ワシントンが自分の家になった。この一年でたくさんのことをし、世界じゅうの人に会い、よい友を得て、よい仕事もある。賭けにも出てきた。そして今、大きな知らせがある 番組の始まり 演出家ケリーの対談番組。俳優になる夢はたいていかなわないが、今日の客は違う——自分の劇で「十五番の木」を演じた人だと紹介してアナを迎える 知らせ 木の衣装のまま来たアナが、映画三本に出ると告げる。空想科学、恋愛喜劇、活劇。ケリーが「どれも木の役だろう」