3.15 比較 — -er/more/最上級/as … as/比較級の強調 — Epoché
この課でできるようになること 形容詞を、短い語なら語尾で、長い語なら手前の語で比較の形にできる。 as … as で「同じくらい」、否定で「〜ほど〜ない」を言える。 差の大きさを much ・ even で言い分けられる。 比較級が 断定を避ける道具 でもあることを知っていて、言いにくいことを比較の形で言える。 前提 : 3.14 まで。 「こちらのほうが大きい」と言いたいとします。日本語は「大きい」に「ほう」「より」を添えるだけで済みます。形容詞そのものは 一文字も変わりません 。英語は違います。 big という語そのものを bigger に変えます。足すのではなく 変える ——これが第一のずれです。 第二のずれは、変え方が二通りあることです。短い語は語尾を変え、長い語は手前に別の語を置きます。そして、どちらを使うかは 意味ではなく語の長さ で決まります。意味で決まるなら考えれば分かりますが、長さで決まるので 語ごとに覚えるしかありません 。ただし目安ははっきりしていて、境目はそれほど多くありません。この課で目安を入れておけば、あとは読むたびに固まっていきます。 例文で見る まず 10 文を見ます。見てほしいのは 形容詞の形 です。語尾が変わっているか、手前に語が足されているか、そのどちらでもないか。3 番めと 5 番めが二通りの代表で、この二つの差が語の長さだけだということを、あとで確かめます。語はどれも第 2 期の範囲の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ This one is as good as that one. [1] これはあれと同じくらいよい。 as ではさむと「同じくらい」 Mine is not as good as yours. [2] 私の物は君の程よくありません。 否定にすると「〜ほど〜ない」になる I like this better than that. [3] そっちより、こっちの方が好きだな。 短い語は形を変える。これは不規則な変わり方 I'm much younger than you. [4] 私は君よりもずっと若い。 much を足して差の大きさを言う Life is more interesting than any book. [5] 人生はいかなる本よりも興味深い。 長い語は more を手前に置く This book is even more interesting than that one. [6] この本はあの本よりさらに面白い。 even で「さらに」と強める This book is the most interesting. [7] この本が一番面白い。 長い語の最上級は the most I'm the best. [8] 私は最高だ。 短い語の最上級。これも不規則 This book is less large than that one. [9] この本はあの本ほど大きくない。 less は「〜ほど〜でない」 The more I know him, the more I like him. [10] 彼を知れば知るほど、私は彼が好きになる。 the + 比較級を二つ並べると「〜すればするほど」 十の文で、比べ方は三つしか出ていません。同じくらいだと言う形、片方が上だと言う形、いちばんだと言う形です。どれを使っても、 比べる相手を文の中に置く ことは変わりません。 骨組み この課の規則は一つです。 英語は形容詞そのものの形を変えて比べる。変え方は語の長さで決まる。 短い語は語尾を変え、長い語は手前に語を置きます。 二通りの変え方 — 境目は音節の数 目安は 音節の数 です。1 音節の語は語尾を -er ・ -est に変えます。3 音節以上の語は手前に more ・ most を置きます。2 音節の語はどちらもあり、 -y で終わる語は語尾を変えるほうが多くなります。 I'm much younger than you. [4] の形容詞は 2 音節で -y で終わるので語尾が変わっています。 Life is more interesting than any book. [5] の形容詞は 4 音節あるので more が手前に来ました。二つの文がしていることは同じで、違うのは 形容詞が長いか短いか だけです。 長いほうに more を使う理由は、言いやすさにあります。長い語の語尾をさらに伸ばすと口が回りません。だから英語は 長い語では手前に一語置く ほうを選びました。理屈が分かっていれば、迷ったときに「この語の語尾を伸ばして言えるか」と口で試して決められます。 不規則に変わる語 — 数は少ない よく使う語のいくつかは、まったく別の形になります。 I like this better than that. [3] と I'm the best. [8] に出ている形がそれで、もとの形からは想像がつきません。同じように、「多い」を表す語も別の形になり、 He has more books than I do. [11] や In this company, there are more women than men. [12] に出ている形になります。 不規則に変わる語は 数えるほどしかありません 。しかも、どれも毎日使う語です。毎日使うから形が古いまま残った——言語ではよくあることで、日本語の「行く/行った」が「行きた」にならないのと同じです。数が少ないので、覚えてしまうのがいちばん速く済みます。 as ではさむ — 同じくらい、と、〜ほど〜ない 差が無いことを言うときは、形容詞を as ではさみます。 This one is as good as that one. [1] は「同じくらいよい」。形容詞は 形を変えません 。ここは日本語と同じで、「同じくらい」を足すだけです。 この形を否定にすると、意味が変わります。 Mine is not as good as yours. [2] は「同じくらいではない」ではなく、 「あなたのほど良くない」 ——つまり自分のほうが下だと言っています。否定の as の形は 必ず下側を指す と覚えてください。 It is not as good as it looks. [13] も同じで、見かけより中身が下だと言っています。 古い言い方では、最初の as を so にすることがあります。 Mine is not so good as yours. [14] や This problem is not so difficult as it seems. [15] がその形で、意味は変わりません。読めれば足りるので、書くときは as にそろえてください。 less — 使う場面は思ったより少ない 下だと言うもう一つの形が less です。 This book is less large than that one. [9] 、 He is less patient than his brother. [16] のように、「〜ほど〜でない」を言います。ただし実際の英語では、 否定の as の形のほうがずっとよく使われます 。 less は書き言葉寄りで、話し言葉で使うと少し理屈っぽく響きます。読めるようにしておいて、書くときは not as … as を選べば自然です。 差の大きさを言う — much と even 比較の形に語を足すと、差の大きさが言えます。 This book is much more interesting than that one. [17] の much は「ずっと」、 This book is even more interesting than that one. [6] の even は「さらに」です。 It's far better than before. [18] の far も同じはたらきをします。 ここに 日本語話者が必ず一度は踏む落とし穴 があります。「とても」にあたる語は、比較の形には付けられません。日本語では「ずっと大きい」も「とても大きい」も同じように作れますが、英語では 比べている形には別の語を使う と決まっています。差を強めたいときは much か even か far 。この三つだけ覚えておけば足ります。 だんだん、と、〜すればするほど 比較の形を二つ並べる言い方が二つあります。一つは同じ形を and でつないで だんだん変わっていく ことを言う形。 The day is getting longer and longer. [19] 、 Our world is getting smaller and smaller. [20] がそれです。長い語のときは You know, there are more and more old people. [21] のように more and more になります。 もう一つは、 the を付けた比較の形を二つ並べて 「〜すればするほど」 を言う形です。 The more I know him, the more I like him. [10] 、 The more you have, the more you want. [22] 、 The more books you read, the more you'll know. [23] がその形。 The more I think, the less I understand. [24] のように、後ろを下向きにして「考えるほど分からなくなる」とも言えます。形が決まっているので、 塊のまま覚えてしまう のが速く済みます。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも比べる仕組みがあります。 「より」「ほう」「いちばん」——足す語も決まっていて、比べること自体は日本語のほうがむしろ簡単です。ずれるのは 形容詞が変わるかどうか と、 比べる相手を言うかどうか です。 足すか、変えるか 日本語 英語 形容詞は 同じくらいよい as good as + 相手 変わらない より若い younger than + 相手 語尾が変わる より面白い more interesting than + 相手 手前に語が付く 左の列は三行とも「よい」「若い」「面白い」がそのまま残っています。右の列では、三行めだけ形容詞が無傷で、二行めは語尾が変わっています。日本語から英語にするときは、 形容詞に手を入れることを先に思い出す のがこつです。「より」にあたる語を探すのではなく、形容詞のほうを見てください。 日本語に無い区別 — 比べる相手を必ず言う 日本語では「こっちのほうがいい」と言えば、何と比べているかは言わなくても通じます。英語では than の後ろに 比べる相手を置くのがふつう です。 That house is much better than this. [25] も He is much older than he looks. [26] も、必ず相手が書いてあります。相手を置かないと、聞き手は何と比べたのかを探しにいきます。 ただし、場面から明らかなときは省けます。 It's far better than before. [18] の before のように、相手が時間のこともあります。書くときの目安は一つ、 読み手が相手を一秒で思い浮かべられるか 。思い浮かばないなら置いてください。 日本語に無い区別 — 二つと三つ以上で形が変わる 日本語の「いちばん」は、二つを比べるときにも使えます。「こっちとあっちなら、こっちがいちばんいい」と言っても通じます。英語では 二つなら比較の形、三つ以上なら最上級 ときっちり分かれます。 Which is better, this or that? [27] は二つなので比較の形、 This is the most interesting book of all. [28] は全部の中でなので最上級です。日本語の「いちばん」をそのまま訳すとここで外れるので、 いくつの中から選んでいるか を先に数えてください。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。この課の道具には、丁寧さに直接効く使い方があります。 比較の形は断定を避けられる のです。「これは悪い」と言わずに「あちらのほうがよい」と言えば、同じことを伝えながら誰も否定しません。下の四つは、どれも どちらがよいか の話です。 英文 日本語訳 どんな相手に I like this better than that. [3] そっちより、こっちの方が好きだな。 自分の好みとして言う。親しい相手 This would be better than that. [29] この方がまだしもあれよりよい。 would で一歩下がった提案にする I don't know which is better. [30] どちらがよいか私にはわかりません。 判断を保留する。押しつけない Which is better, this or that? [27] これとあれではどちらが良いですか。 相手に決めてもらう 一行めは自分の好みとして言い切っています。二行めは would を足して 一歩下がった提案 にしています( 3.10 型編 の過去形の距離)。三行めは判断そのものを保留していて、相手の意見が出てくる余地を作っています。四行めは最初から相手に決めてもらう形です。上から下へ、 自分の判断をどれだけ引っ込めるか が変わります。 仕事の場面では、二行めの形がとくに役に立ちます。相手の案を否定せずに別の案を出せるからです。「その案は良くない」ではなく「こちらのほうが良いかもしれません」。日本語でも同じことをしていますが、英語では 比較の形そのものがその役を引き受けて います。第 11 編「商」でこの形を何度も使います。 よくある誤り 三つ挙げます。どれも日本語の仕組みを英語にそのまま持ち込んだ形で、下の誤文は Epoché の作例です。書いた英文ではなく、 話した英文 で自分を確かめてください。 二通りの変え方を重ねる。 more better → better 語尾を変えたうえ