3.11 助動詞 II — must/have to/should/may/might/be able to/need — Epoché
この課でできるようになること must not が禁止、 don't have to が不要だと区別でき、取り違えない。 must が義務を言っているのか推量を言っているのかを、文脈で見分けられる。 見込みの強さを must ・ may ・ might で三段に言い分けられる。 Why don't you が非難ではなく提案だと分かり、答え方を間違えない。 前提 : 3.10 まで。 前の課の助動詞は、できるかどうか・するつもりかどうかを言うものでした。話し手の 意志と力 の側です。この課の助動詞は、しなければならないかどうか・そうかもしれないかどうかを言います。 義務と見込み の側です。置き場所の規則は前の課と同じで、動詞の手前に置き、後ろの動詞は原形になります。新しく覚えることは形ではなく、 どれを選ぶか のほうです。 この課には、日本語話者がほぼ全員つまずく一点があります。「行かなくていいですよ」と言いたくて You must not go. と言ってしまう誤りです。これは「行ってはいけません」という 禁止 になります。日本語では「行かなくていい」と「行ってはいけない」が形のうえで近く、どちらも「行かない」で終わるので、隣にあるように感じます。英語ではこの二つは反対側にあります。この課の前半は、その距離を体に入れることに使います。 例文で見る まず 10 文を見ます。1 番めと 2 番めは同じ must ですが、言っていることが違います。4 番めと 5 番めは この課でいちばん大事な対 で、日本語訳を見比べると差がはっきりします。語はどれも第 2 期の範囲の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ I must go. [1] 行かねばならぬ。 must は「しなければならない」 He must be out. [2] 彼はいないだろう。 同じ must が「〜にちがいない」になる I have to go. [3] 行かなければならない。 have to も「しなければならない」。出どころが違う He doesn't have to go to school. [4] 彼は学校へ行かなくてもよい。 doesn't have to は「しなくてよい」。禁止ではない You must not come in. [5] 君は入ってはいけない。 must not は「してはいけない」。こちらが禁止 You should go. [6] 君は行ったほうがよい。 should は「したほうがよい」 He may be there. [7] 彼がそこにいるかもしれない。 may は「かもしれない」。五分五分より少し下 She might come. [8] 彼女は来るかもしれない。 might はもっと弱い「かもしれない」 May I come in? [9] 入ってもいいですか? May I は許しを乞う形 Will you be able to come? [10] 来られますか。 be able to なら助動詞の後ろに置ける 十の文に出た助動詞は must ・ have to ・ should ・ may ・ might ・ need ・ be able to の七つです。このうち have to ・ need to ・ be able to の三つは、形のうえでは助動詞ではありません。そこが後で効いてきます。 骨組み この課の規則は一つです。 義務と見込みは、同じ助動詞の列で言い分ける。 強いか弱いか、そして 否定したときにどちらが消えるか ——この二つを押さえれば、七つ全部がひとつながりになります。 ★ must not と don't have to — 反対側にある二つ 先に結論を置きます。 must not は「してはいけない」、 don't have to は「しなくてよい」。 前者は行為を禁じ、後者は義務を外します。まったく別のことを言っています。 You must not come in. [5] は、入ることを禁じています。 He doesn't have to go to school. [4] は、行く義務が無いと言っているだけで、行ってはいけないとは一言も言っていません。行ってもかまいません。 You needn't come. [11] も同じで、来る必要が無いという意味です。 need not と don't have to はここではほとんど同じはたらきをします。 なぜ反対になるのか。否定が どこに掛かっているか が違うからです。 must not は「しないことが義務だ」——否定が 行為 のほうに掛かります。 don't have to は「する義務が無い」——否定が 義務 のほうに掛かります。日本語ではどちらも文の最後に「ない」が来るので、掛かり先の違いが表に出ません。英語では not の置き場所がそのまま掛かり先を決めます。 覚え方を一つ。 禁止したいときだけ must を使う と決めてしまうことです。義務を外したいときは have to か need のほうを否定します。この決め方なら、口をついて出る前に選べます。 must の二つの顔 — 義務と、断定に近い推量 I must go. [1] は義務です。ところが He must be out. [2] は義務ではありません。「彼はいなければならない」ではなく、 「彼はいないにちがいない」 という推量です。見分け方は単純で、 後ろが be や状態を表す動詞なら推量 だと思って、まず間違いません。人に何かをさせる話なら義務、ものごとがどうなっているかの話なら推量です。 この推量の must は、見込みのいちばん強い段にあります。下に may があり、さらに下に might があります。 He may be there. [7] は「いるかもしれない」、 She might come. [8] は「来るかもしれないが、あまり期待していない」。 You may be right. [12] は相手の言い分を半分認める言い方で、 You might be right. [13] にすると、認め方がもう一段引きます。日本語ではどれも「かもしれない」になるので、 強さの段は語で作る と覚えておいてください。 must と have to — 出どころが違う どちらも「しなければならない」と訳されますが、出どころが違います。 must は話し手の中から、 have to は外の事情から 来ます。 I must go. [1] は自分がそう決めた言い方、 I have to go. [3] は時間や約束に押されている言い方です。 You have to go. [14] のように相手に言うときは、 have to のほうが角が立ちません。外の事情のせいにできるからです。 話し言葉では have got to もよく出ます。 I've got to go. [15] は have to と同じ意味で、 もっとくだけた言い方 です。書くときには使いません。なお have to は形のうえでは助動詞ではないので、三人称のときは has to になります。ここは助動詞の規則が効かない場所です。 should — 助言と、控えめな義務 should は「したほうがよい」で、 must より一段弱い言い方です。 You should go. [6] は勧めているだけで、強制していません。 Should I go? [16] のように自分のことを訊く形もよく使います。これは「行くべきでしょうか」と相手に判断を預ける言い方で、日本語話者にはいちばん使いやすい形かもしれません。 What should I do? [17] も同じ型です。 助動詞を並べたいとき — be able to 3.10 型編 で、助動詞は二つ並べられないと言いました。その答えがこれです。そちらは助動詞を一つ置いて意志と力を言う課、この課は 二つ言いたいときにどうするか の課です。 can の代わりに be able to を使えば、助動詞の後ろに置けます。 Will you be able to come? [10] は will の後ろに来ていますし、 He may not be able to come. [18] は may の後ろ、 I might be able to help you. [19] は might の後ろです。 助動詞でない形にすれば、助動詞の後ろに置ける ——これが英語のやり方です。同じ理由で、 He will have to go there. [20] のように have to も助動詞の後ろに来られます。 提案の形 — 「なぜしないのか」ではない 最後に、疑問の形をした提案を三つ置きます。 Why don't you come with me? [21] 、 Why don't we go home? [22] 、 Why not try it on? [23] です。どれも形は「なぜ〜しないのか」ですが、 理由を訊いてはいません 。「〜したらどうですか」という提案です。 Why don't you call him up? [24] のように、相手に動いてほしいときによく出ます。 だから、これに「忙しいので」と理由で答えると会話がずれます。答えるべきは やるかやらないか です。日本語の「行かない?」が誘いになるのと同じで、形は否定の疑問でも中身は誘いです。形そのものは 3.2 型編 の「たずねる形」と「打ち消す形」を重ねただけです——そちらは形の作り方を置いた課、この課はその形が 理由を訊かずに誘いになる という使い道の課です。そこは日本語と同じなので、知ってしまえば迷いません。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも義務と見込みの言い分けはあります。 「行かねばならない」「行ったほうがいい」「行くかもしれない」——強さの段も、ちゃんと三つあります。ずれるのは 否定したとき です。 否定したときだけ、割れ方が違う 日本語 英語の形 何を否定しているか 行ってはいけない must not + go 行くこと(行為) 行かなくてよい don't have to + go 行く義務 行く必要はない need not + go 行く必要 日本語の三つは、どれも文の最後が「ない」で終わります。だから 否定がどこに掛かっているかが、音の上では見えません 。英語では not の置き場所が掛かり先そのものなので、一行めと二行めは別の場所に not があります。日本語から英語にするときは、 禁じているのか、免じているのか を先に決めてください。決めてから、禁じるなら must 、免じるなら have to か need を選びます。 日本語に無い区別 — 一つの語が義務と推量を兼ねる 日本語では、義務の「ねばならない」と推量の「にちがいない」は別の語です。英語は must 一語で両方を兼ねます。これは日本語に対応物が無い形で、読むときに一瞬止まります。止まったら、 後ろの動詞が動きか状態か を見てください。動きなら義務、状態なら推量です。 He must be out. [2] の後ろは状態なので推量、 A man must work. [25] の後ろは動きなので義務です。 なぜ一語で兼ねられるのか。どちらも 「そうでないはずがない」と話し手が思っている という点で同じだからです。義務は「しないという選択肢が無い」、推量は「そうでない可能性が無い」。英語の話し手はこの二つを地続きのものとして扱っています。そう見ると、 may が「許可」と「かもしれない」を兼ねるのも同じ理屈だと分かります。どちらも 可能性を開く という一つのことです。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。前の課の段は 頼む 側でした。この課の段は 許しを乞う 側です。下の四つは、どれも「してもいいですか」を訊いていて、上から下へ、相手に預ける度合いが増えます。 英文 日本語訳 どんな相手に Can I come in? [26] 入ってもいいですか? 親しい相手・ふつうの場面 May I come in? [9] 入ってもいいですか? 目上・改まった場。許しを乞う形 Might I come in? [27] 入っても良いでしょうか。 さらに遠回し。かしこまった場だけ Could I try this on? [28] 着てみていいですか。 店で。過去形の距離を使う 一行めの Can I は、できるかどうかを訊く形をそのまま許可に使ったもので、いちばんくだけています。二行めの May I は 許しを乞う 形で、相手に決定権があることを認めています。改まった場ではこれが基本です。三行めの Might I は古風で、今の話し言葉ではめったに出ませんが、 出たときは相当かしこまっている と受け取ってください。四行めは 3.10 型編 で見た過去形の距離を使った形で、店や職場でいちばんよく出ます。 使い分けの目安を一つ。 相手のものを使うときは May I 、自分が動くだけなら Can I 。部屋に入る・物を借りる・質問するのように相手の領分に踏み込むことは、許しを乞う形のほうが合います。日本語の「よろしいでしょうか」と「いいですか」の差に近い感覚です。 よくある誤り 三つ挙げます。どれも日本語の仕組みを英語にそのまま持ち込んだ形で、下の誤文は Epoché の作例です。書いた英文ではなく、 話した英文 で自分を確かめてください。 「しなくてよい」を must not で言う。 You mustn't go. → You needn't go. 前者は「行ってはいけない」という禁止です。相手を気づかって言ったつもりが、逆に止めていることになります。この課でいちばん大きな誤りで、 禁じるときだけ must と決めておけば防げます。 have to を助動詞として扱う。 He have to go. → He has to go. have to は形のうえでは助動詞ではないので、三人称では has になります。 3.10 型編 で「助動詞の後ろは原形」「三単現の -s