8.109 短さで組み立てる — ゲティスバーグ演説 — Epoché
この篇でできるようになること ★ 過去・現在・未来の三段 が取れる。 ★ 三つ重ねの反復 の働きが分かる。 ★ 言うことと、したこと の対が読める。 ★ 短さそのものが意味を持つ ことを言える。 前提 : 8.108 まで。型は 3.40 まで。 読む前に ★ 南北戦争の最中、一八六三年十一月十九日の演説です。 ★ 四か月前にこの地で大きな戦いがあり、その戦場に墓地を作る式が開かれました。 ★ この日の主役は、リンカンではありません。 ★ 前に立った弁士が二時間話し、そのあと大統領が短く言葉を添える——そういう段取りでした。 ★ リンカンの言葉は、数分で終わりました。 ★ いま残っているのは、こちらのほうです。 ★ 読むときは、長さを気にしながら読んでください。 ★ 文は 11 本、一文の平均は 24.8 語 です。★ いちばん長い一文は 82 語 ——★ これは、短い演説の中で一つだけ長い文です。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。★ 全文を通して読めます。 書き出しです。 Four score and seven years ago our fathers brought forth, on this continent, a new nation ★ 「八十七年前、われらの父祖は、この大陸に新しい国を生み出した」。 ★ Four score and seven は「四つの二十と七」で八十七です。 ★ Eighty-seven と言えば済むところを、わざわざ古い数え方にしています ——★ 聖書の調子です。 ★ そして、書き出しの三語で 時 が決まります。 ★ これが、以下の組み立ての一段目になります。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 八十七年前、われわれの父祖は、この大陸に新しい国を生み出した。自由のうちに生を受け、すべての人は平等に造られているという命題に捧げられた国である。いま、われわれは大きな内戦のさなかにあり、その国が、あるいはそのように生を受け、そのように捧げられたどんな国であれ、長くもちこたえられるかどうかを試されている。われわれはその戦争の大きな戦場に集っている。われわれは、その国が生きられるようにと、ここで命を捧げた人々の最後の安息の地として、その戦場の一部を捧げるためにやって来た。われわれがこうすることは、まったくふさわしく、正しいことである。しかし、より大きな意味では、われわれはこの地を捧げることも——聖なるものとして捧げることも——聖なるものとすることもできない。ここで戦った勇ましい人々が、生きている者も死んだ者も、すでにこの地を聖なるものとして捧げたのであり、それは、何かを加えたり値打ちを減らしたりするわれわれの乏しい力をはるかに超えている。世界は、われわれがここで言うことをほとんど心に留めず、長く覚えていることもないだろう。しかし、彼らがここでしたことを忘れることは決してできない。むしろ、ここで戦った人々がこれまでかくも気高く進めてきた、やり終えていない仕事に、ここで身を捧げるべきなのは、われわれ生きている者である。むしろ、われわれの前に残された大きな務めに、ここで身を捧げるべきなのは、われわれである——その務めとは、これらの誉れある死者から、彼らが最後の、余すところのない献身を捧げたその大義への、いっそうの献身を受け継ぐことであり——これらの死者をむだに死なせはしないと、われわれがここで固く決意することであり——この国が、神のもとで、自由の新しい誕生を得ることであり——そして、人民の、人民による、人民のための政治を、地上から滅ぼさないことである。 一八六三年十一月十九日。 語釈 帯の外の語は 12 語だけです。★ この課程でいちばん少ない篇 です。★ 難しい語を使っていないのに、重く響きます ——★ なぜかを、これから見ます。 語(品詞) 意味 注 Liberty en 名 自由 Liberty allows citizens to speak freely without fear of punishment. 自由は市民に処罰を恐れることなく自由に話すことを許します。 brave en 形 勇ましい The brave firefighter rushed into the burning building to save the child. その勇ましい消防士は子どもを救うために燃える建物に駆け込みました。 consecrate en 動 聖なるものとして捧げる The bishop returned to consecrate the newly built chapel on Sunday. 主教は新しく建てられた礼拝堂を聖なるものとして捧げるために戻ってきました。 consecrated en 動 聖なるものとして捧げた The old priest consecrated the ground before the new cemetery opened. その老司祭は新しい墓地が開く前にその土地を聖なるものとして捧げました。 detract en 動 値打ちを減らす A few small typos should not detract from the essay's strong argument. いくつかの小さな誤字はその小論文の強力な主張の値打ちを減らすべきではありません。 devotion en 名 身を捧げること Her devotion to her patients earned her deep respect from colleagues. 患者への彼女の身を捧げることは同僚たちからの深い敬意を得ました。 endure en 動 もちこたえる The old bridge was built to endure even the harshest winter storms. その古い橋は最も厳しい冬の嵐にももちこたえるように建てられました。 hallow en 動 聖なるものとする The villagers continued to hallow the spring where their ancestors once prayed. 村人たちは先祖がかつて祈った泉を聖なるものとし続けました。 nobly en 副 気高く The young soldier nobly volunteered to lead the dangerous night patrol. その若い兵士は危険な夜間パトロールを率いることに気高く志願しました。 perish en 動 滅びる Without water, the young seedlings would surely perish within days. 水がなければ、その若い苗は数日のうちに間違いなく滅びるでしょう。 unfinished en 形 やり終えていない He left the unfinished painting propped against the studio wall. 彼はやり終えていない絵を工房の壁に立てかけたままにしました。 vain en 形 むだな( in vain でむだに) She made a vain effort to convince him to stay longer. 彼女は彼にもっと長く滞在するよう説得しようとむだな努力をしました。 ★過去・現在・未来の三段 ★ 段落の頭を見てください。 どの段か 頭の語 何を言うか ★ 一段目 Four score and seven years ago ★ この国は何のために建てられたか ★ 二段目 Now we are engaged ★ いま、それが試されている ★ 三段目 It is for us the living ★ これから、生きている者が何をするか ★ 三語だけで、話の骨が取れます。 ★ 昔・いま・これから。 ★ 9.10 論編 で「問いを立てる」と置きました。 ★ この演説は、問いを立てずに、時の順だけで組んでいます。 ★ 短い文章では、こちらのほうが速い のです。 ★ 二段目の中身を見ます。 testing whether that nation, or any nation so conceived and so dedicated, can long endure ★ 「そのように生まれ、そのように捧げられた国が、長くもちこたえられるかどうかを試している」。 ★ that nation, or any nation に注意してください。 ★ 自分の国の話から、「そういう国ならどこでも」へ広げています。 ★ 一語で、戦争が世界の問題になります。 ★三つ重ねる ★ この演説には、三つ重ねが何度も出ます。 we can not dedicate—we can not consecrate—we can not hallow—this ground ★ 「われわれはこの地を捧げることも、聖別することも、清めることもできない」。 どの語か どんな重さか ★ dedicate ★ ある目的に当てる。式のための語 ★ consecrate ★ 神に捧げる。宗教の語 ★ hallow ★ 聖なるものとする。いちばん古い語 ★ 三語は、だんだん重くなります。 ★ そして、だんだん古くなります。 ★ 「できない」を三度重ねながら、語を古いほうへ遡らせている のです。 ★ いちばん有名な三つ重ねは、最後にあります。 government of the people, by the people, for the people ★ 「人民の、人民による、人民のための政治」。 ★ 前置詞を三つ変えただけです。 どの前置詞か 何を言うか ★ of ★ 誰のものか ★ by ★ 誰が動かすか ★ for ★ 誰のためか ★ 3.31 型編 で「小さな語に芯がある」と置きました。 ★ ここは、その極みです ——★ 二文字の語三つで、政治の定義をしています。 ★言うことと、したこと ★ この演説の中心に、一つの対があります。 The world will little note, nor long remember what we say here, but it can never forget what they did here. ★ 「世界は、われわれがここで言うことをほとんど心に留めず、長くも覚えていまい。だが、彼らがここでしたことを忘れることはできない」。 どちらか どう書かれているか ★ われわれが言うこと ★ 心に留めない・長く覚えない ★ 彼らがしたこと ★ 決して忘れられない ★ この一文は、外れました。 ★ 世界は、彼がここで言ったことを覚えています。 ★ けれども、外れたことが効いています。 ★ 自分の言葉を低く置いた人の言葉だから、重く響く ——★ 8.105 読編 でフランクリンが見栄を先に認めたのと、働きは似ています。 ★ もう一つ、 here という語に注意してください。 ★ この短い演説に 8 回 出ます。★ 立っている場所が、そのまま話の錨になっています。 ★ dedicate が形を変えながら戻ってくる ★ dedicate とその仲間は、この演説に 6 回 出ます。★ そのつど、誰が何に捧げられるかが変わります。 どこで出るか 誰が何に捧げられるか ★ 一段目 ★ 国が、万人は平等だという考えに ★ 二段目 ★ われわれが、この土地の一部を墓地に ★ 三段目 ★ 生きている者が、残された仕事に ★ 同じ語が、土地の話から人の話へ移っています。 ★ 墓地を捧げる式に来たはずが、終わりには 聞いている者が捧げられる 側になっています。 ★ これが、この演説の仕掛けです。 ★ 同じ語をくり返しながら、中身をずらしていく。 ★ 語が変わらないので、聞く人は移されたことに気づきません。 ★長い一文は、一つだけ ★ この演説でいちばん長い一文は 82 語 です。★ 最後の一文です。 ★ そこまでは、短い文が並びます。 ★ いちばん短いのは十語ほどです。 ★ そして最後に、ダッシュでつながれた長い一文が来ます。 どこか 文の長さ どんな調子か ★ はじめ ★ ふつう ★ 落ち着いて事実を置く ★ なか ★ 短い ★ 言い切って刻む ★ おわり ★ いちばん長い ★ 息を継がずに押し上げる ★ 1.7 音編 で「内容語を打ち、機能語を弱く」と置きました。 ★ 読み上げるとき、文が長いほど打つ場所は増えます。 ★ ここは、最後だけ切れ目を作らないことで、終わりを高く持ち上げています。 訳 どのあたり 要旨 起 八十七年前、父祖はこの大陸に、自由のうちに生まれ、万人は平等に造られたという命題に捧げられた新しい国を生み出した。 承 いま我らは大きな内戦のさなかにあり、そのように生まれた国が長くもちこたえられるかを試している。戦場の一部を、ここに倒れた者の眠る地として捧げに来た。 転 だが、より大きな意味では、この地を捧げることも聖別することも清めることも、我らにはできない。ここで戦った者たちが、すでにそれをしてしまった。 結 むしろ、生きている我らが、彼らの残した仕事に捧げられるべきなのだ。この死者たちを無駄に死なせず、人民の、人民による、人民のための政治を地上から滅ぼさぬために。 音読 ★ この篇は短いので、全文を暗唱できます。 本文を隠して復唱 し、判定は次の 2 文でします。 It is altogether fitting and proper that we should do this. government of the people, by the people, for the people 一文めは 十語 です。★ fitting and proper を一息で読んでください。 ★ 式の言葉づかいです ——★ 直後に、それをひっくり返す But が来ます。 二文めは 九語 です。★ 前置詞を三つとも強く読んでください ——★ of ・ by ・ for 。 ★ the people を強く読むと、この文は壊れます。 この篇で