11.31 戰國策 燕策 — 鷸蚌相爭 — Epoché
この篇でできるようになること 鷸と蚌の言い分から、替わる語と同じ語を挙げられます。 動作の最中、条件の結果、しようとしない態度を訳せます。 鳥を表すように見える字を動詞として読み、説得の場面への対応を説明できます。 前提 :11.30「戰國策 楚策 — 狐、虎の威を假る」。目の前の相手だけを見たために起こる取り違えを、別の争いで読みます。 易水を通ったという語り出し 戰國策の燕策二にある話です。趙が燕を攻めようとしたとき、蘇代は趙の惠王に会い、二国が争えば秦が利益を得ると説きます。この小話の漁師が、外側の場面では秦に当たります。 今者臣來,過易水 は、いま自分が来る途中で易水を通った、と語り始める部分です。前の二篇と違い、ここでは説く人の語り出しも抄に残っています。誰かに向かって話している文章だと、最初から分かります。 貝が日に当たる、鳥がつつく、貝がくちばしを挟む、という動作の後に、二つの言い分が並びます。最後に、一言も話さない漁師が現れ、二者をともに捕らえます。 今していることと、その結果 蚌方出曝 の 方 は、ちょうど出て日に当たっているところです。動作の最中を示し、現代語の 正在 と比べられます。 特別編 29篇 の、今にも飲もうとする直前とは、時の捉え方が違います。 即有死蚌 の 即 は、そうなれば、という条件を受けた結果です。現代語の 就 が手がかりになります。雨が降らないという前の条件を落として、無条件で貝が死ぬと訳さないでください。 この 有 は、死んだ貝が出てくる、という意味です。誰かが貝を所有するという話ではありません。動作の途中から、相手が予想する結果へ、同じ一段の中でも時間が移ります。 二つの言い分を並べる 鷸の語 読み 蚌の語 読み 違い 今日不雨 こんにちあめふらず 今日不出 こんにちいでず 雨が降らないことと抜け出ないこと 明日不雨 みょうにちあめふらずんば 明日不出 みょうにちいでずんば 同じ条件を明日にも延ばす 即有死蚌 すなはちしぼうあらん 即有死鷸 すなはちしいつあらん 死ぬとされる相手が入れ替わる 今日、明日、否定、結果という順は同じです。自分が耐えれば相手が先に死ぬという言葉を、互いに返しています。形をそろえることで、一方だけが言い負かすのでなく、同じ強さで譲らない様子が見えます。 この話では、二者はどちらも相手を離さないまま、第三者への注意を失っています。その様子が、同じ形の繰り返しに表れます。 雨を、降る動詞として読む 今日不雨 の 雨 は yù と読み、雨が降るという動詞です。雨そのものを指す名詞の yǔ と読み分けます。否定の後ろで、起こる動作を述べています。 今日は雨ではない、という名詞の判断にすると、字の働きが変わります。今日降らず、明日も降らないなら、という条件を受け取ってください。口に出すときも、字が同じだから同じ読みだと決めないことが大切です。 日本語の名詞、雨、だけを当てはめないでください。降るという動詞まで含めて訳すと、雨がない日が続くという条件を読めます。 できないのか、しようとしないのか 兩者不肯相舍 は、二者が互いに離そうとしないという意味です。 肯 は、進んでする気持ちを述べます。現代語にも 肯 ・ 不肯 として残ります。 不能 なら、能力や状況によってできないことになります。今回の文は、できるかどうかよりも、譲って離そうとする意思がないことを述べます。単に力が足りなくて動けないという説明へ変えないようにします。 相手が先に弱るはずだという見込みを持ち続けるため、争いが止まりません。互いの言葉だけを聞いている間に、その争いから利益を得る別の者が近づく結末になります。 何も言わない漁師 漁者得而并禽之 の 禽 は、捕らえるという 擒 に当たる字です。動詞の後ろに、二者を受ける対象の 之 が続きます。鳥と一緒に、という名詞の読みではつながりません。 漁師の発言はありません。鳥と貝が言い合う文の後に、短い動作の文で二者を手に入れます。議論に加わって勝つのではなく、争っている状態から利益を得る人物です。 鳥の話だから禽も鳥の名だ、と続けないでください。ここは対象を捕らえる動詞の位置です。両方とも捕らえた、と読めます。 外側の説得へ戻ると、趙と燕が争って弱る間に秦が得をするという警告になります。相手に勝つことだけでなく、その外にいる第三者を見るよう、蘇代は小話で促しています。 語釈 語 品詞 意味 日本語との差 例文 訳 蚌 名詞 どぶがいなどの二枚貝 日本語では「はまぐり」とも訓むが、ここは川辺の淡水の貝 蚌方出曝 貝がちょうど出て日に当たっている 鷸 名詞 しぎ 肉をつつく鳥 鷸啄其肉 しぎがその肉をつつく 曝 動詞 日にさらす ここでは日に当たる 出曝 出て日に当たる 拑 動詞 挟む 貝が口を閉じて挟む 拑其喙 そのくちばしを挟む 喙 名詞 くちばし 挟まれる部分 其喙 そのくちばし 方 副詞 ちょうど〜している 動作の最中 方出曝 ちょうど出て日に当たっている 雨 動詞 雨が降る 名詞の読みと分ける 今日不雨 今日雨が降らない 即 接続の語 そうなれば 条件の後の結果 即有死蚌 そうなれば死んだ貝ができる 肯 助動詞 進んで〜する できるかとは違う 不肯相舍 互いに離そうとしない 舍 動詞 放す 捨に当たり shě と読む。前篇の舍人の舍(shè)とは読みも意味も違う 兩者不肯相舍 二者は互いに放そうとしない 禽 動詞 捕らえる ここでは擒に当たる 并禽之 両方とも捕らえる 練習 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 蚌_出曝 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 _有死蚌 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 蚌_謂鷸曰 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 兩者不_相舍 空欄を埋め、本文のまとまりを書いてください。 漁者得而并_之 今日不雨,明日不雨,即有死蚌。 の条件と相手の名を替え、貝の言い分に書き換えてください。 兩者不肯相舍 を現代語にし、 不肯 を 不能 に替えた文も書いて、違いを述べてください。 雨 ・ 禽 ・ 方 ・ 即 の本文での働きを、ア 動詞として使う名詞の字、イ 別の字に当たる字(通假字)、ウ 副詞、エ 接続の語、から選んでください。 二つの同じ形の言い分と、漁師の役割を説明してください。 着急 ・ 冷静 ・ 伤害 ・ 稳 を全部使い、争う鳥と貝に漁師が近づく場面を、現代語の文で二つ描いてください。 音読:次の原文の句を ▶ で聞き、声に出して読んでください。 今日不雨,明日不雨,即有死蚌。 今日不出,明日不出,即有死鷸。 兩者不肯相舍,漁者得而并禽之。 ▶ の手本を聞き、鷸と蚌の二つの言い分を同じ調子と速さで音読します。二者が離さず、漁師が捕らえる結びでは調子を変え、短く読んでください。 この篇のまとめ 二つの言い分を同じ順で読み、動作の最中と条件の結果を分けました。しようとしないという態度と、無言で捕らえる第三者を、説得の枠へ戻して捉えます。 次の篇へ 次の11.32では韓非子の買櫝還珠を読みます。箱の飾りだけが買われる話で、材料を示す形の繰り返しと、何と言えるかを結ぶ言葉を確かめます。 答え 蚌方出曝 即有死蚌 蚌亦謂鷸曰 兩者不肯相舍 漁者得而并禽之 今日不出,明日不出,即有死鷸。 双方都不肯松开。 双方都不能松开。 前は離そうとしない意思、後は離すことができない能力や状況を表します。 雨 はア(名詞の字を、降るという動詞として使う)、 禽 はイ(捕らえるという 擒 に当たる字)、 方 はウ(最中を示す副詞)、 即 はエ(条件から結果へつなぐ語)です。 互いに自分が耐えれば相手が死ぬと述べ、離そうとしません。漁師は言い合いに加わらず両方を捕らえ、説得の外側では秦に当たります。 渔夫不着急,脚步很稳。 它们都不冷静,只想伤害对方。 参考文献 劉向(編)『戰國策 燕策二』。パブリックドメイン(著者没後70年経過)。本文は抄。 出所: https://zh.wikisource.org/wiki/戰國策 (士禮居叢書本)/燕/二