8.38 What Can You Do — 何ができるか(VOA の台本) — Epoché
この篇でできるようになること 音の似た二語の取り違え が、なぜ起きるかを言える。 綴りを 一字ずつ言って 直すやりとりが読める。 can を手がかりに話の筋を追える。 付加疑問 と 話し言葉だけの綴り が分かる。 前提 : 8.37 まで。 読む前に 題材は 仕事と、できること です。ピートは仕事が無く、 自分には何の技もない と思っています。アナが「みんな何かはできる」と言って、できることを一つずつ聞いていきます。——最後に、思いがけないものが見つかります。 気をつけるところを三つ置きます。 一つめ、 can の多さ です。この篇には can ・ can't が合わせて 26 回出ます。 この語が話の背骨 です。 二つめ、 聞き違いの場面 です。アナが Can you write code? と聞くと、ピートは Sure, c-o-l-d. と答えます。 別の語として聞き取って います。下の「構文の骨」で扱います。 三つめ、 話し言葉だけの綴り です。 I’m gonna write about my feelings in my blog. の gonna は going to のことです。 言ったとおりに綴った形 で、書き言葉には使いません。台本だから出てきます。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 476 語、せりふは 42 本です。読 B でいちばん長い篇の一つです。書き出しはこうです。 Anna: Hi, there! Washington, D.C. is a great place to work. 先に原文だけを、 辞書も語釈も見ずに 最後まで読んでください。読み終わったら、 ピートに何ができると分かったか を自分に言ってみてください。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 アナ:こんにちは! ワシントンD.C.は働くのにすばらしい場所です。ここでは多くの人が政府や政治の仕事をしています。でも、ほかの仕事もたくさんあります。病院でも、大学でも働けます。コーヒーショップでも働けます。ちょっと待って、友だちが見えた気がします。ピート? あなたなの? ピート:やあ、アナ。 アナ:なんだか違って見えるわね。あなたのひげ……本当に大きいわ。 ピート:気に入らないんだね? アナ:いえいえ。ただ……違って見えるだけよ。 (給仕の人に)ありがとう。それで、どうしたの? 悲しそうね。 ピート:仕事がないんだ。 アナ:ごめんなさい、聞こえないわ。 ピート:仕事が、ない、んだ! アナ:まあ。それはお気の毒に、ピート。 ピート:ぼくには技能がないんだ。 アナ:誰にだって技能はあるわ。自分のを見つけなきゃ。 ピート:どうかなあ、アナ。 アナ:ピート、私、質問するのが得意なの。いくつか聞かせて。 ピート:本当に、アナ? ぼくを助けられる? アナ:ええ、できるわ。手伝わせて。 ピート:いいよ、アナ。きみなら助けられるかもしれない。 アナ:コードは書ける? ピート:もちろん、 c-o-l-d 。これが何の役に立つの? アナ:違う、 cold (寒い)じゃないわ。コードよ。ほら、携帯のアプリやウェブサイトを作るための。コードを書けば大金が稼げるのよ。 ピート:大金? でも、ぼくはコードが書けない。 アナ:次の質問。運転はできる? ピート:レーシングカーを運転するってこと? レーサーになるのは本当に大変だよ。まず、レーシングカーが要るし…… アナ:違うの、タクシーやバスを運転するってことよ。 ピート:だめだ、運転するといつも眠っちゃうんだ。 アナ:まあ、それはよくないわね。次の質問。教えることはできる? 学校の先生になれるわよ。 ピート:いや、教えられない。 アナ:料理はできる? レストランのシェフになれるわよ。 ピート:いや、コードは書けない! 教えられない! 料理もできない! アナ、ぼくは何もできないんだ。悲しいよ。自分の気持ちをブログに書くことにする。 アナ:ブログを書いてるの? ピート:うん、ブログを書いてるよ。 アナ:フォロワーは何人いるの? ピート:さあ……五万九千五百三十八人。 アナ:ピート、それはすごい数のフォロワーよ! 書いてお金が稼げるわ! ピート:書くのは簡単さ。誰だって書ける。 アナ:誰もがうまく書けるわけじゃないわ。あなたは作家になれるわよ! ピート:ぼくは作家になれる。ぼくは作家になれる! ぼくは作家になれるんだ! ありがとう、アナ。 マーシャ:こんにちは、ピート。こんにちは、アナ。 ピート:やあ、マーシャ。ごめん、もう行かなきゃ。 マーシャ:どこへ行くの? ピート:作家になるんだ! マーシャ:がんばってね、ピート! (アナに)作家になるのは簡単じゃないって、彼、分かってるのよね? アナ:ワシントンD.C.には、いろいろな仕事があります。ピートは作家になりたいそうです。幸運を祈ります。たっぷりの幸運を。それではまた次回! 語釈 帯の外の語は 31 語です。下に 全部 出します。 字母の名が三つ ( c ・ o ・ l )入っているのが、ほかの篇に無いところです。理由は下で説明します。 語(品詞) 意味 注 Anna en 名 アナ。この台本の主人公 C en 名 D.C. の一部。ワシントンの正式な名の一部 Code en 名 計算機に読ませる符号(言い直すところで大文字) Code helps computers understand what to do. コードはコンピューターに何をすべきか理解させる助けになります。 Hi en 間 やあ Hi there! It has been a long time. やあ!久しぶりですね。 Marsha en 名 マーシャ。アナの友人 Oh en 間 ああ Oh no, I think we missed the bus. ああ、バスに乗り遅れたと思います。 Pete en 名 ピート。アナの友人 Tons en 名 たくさん。 Tons of money で大金 Tons of tourists visit this beach every summer. 毎年夏、たくさんの観光客がこの浜辺を訪れます。 Washington en 名 ワシントン anna en 名 アナ( Anna と同じ語) apps en 名 電話などで使う小さな仕組み(複数) I downloaded several useful apps on my phone. 私は携帯電話に便利なアプリをいくつかダウンロードしました。 asleep en 形 眠って。 fall asleep で眠り込む The baby quickly fell asleep in her arms. その赤ちゃんは彼女の腕の中ですぐに眠り込みました。 beard en 名 あごひげ My grandfather has a long white beard. 私の祖父は長い白いあごひげを生やしています。 blog en 名 日々書きつける場 She writes about cooking on her personal blog. 彼女は自分のブログで料理について書いています。 c en 名 字母の名。 c-o-l-d と一字ずつ言うところ The word cat begins with the letter c. 「 cat 」という単語は文字 c で始まります。 chef en 名 料理長 The chef prepared a delicious three course meal. その料理長はおいしい三皿の食事を用意しました。 code en 名 計算機に読ませる符号 The programmer wrote clean code for the app. そのプログラマーはそのアプリのためにきれいなコードを書きました。 coffee en 名 珈琲 I drink a cup of coffee every morning. 私は毎朝一杯のコーヒーを飲みます。 excuse en 動 許す。 Excuse me で「失礼ですが」 Please excuse me for arriving a bit late. 少し遅れて到着したことをお許しください。 followers en 名 読んでいる人(複数) Her blog has thousands of loyal followers. 彼女のブログには何千人もの熱心な読者がいます。 hi en 間 やあ He waved and said hi from across the street. 彼は手を振って通りの向こうから「やあ」と言いました。 l en 名 字母の名 The word love starts with the letter l. 「 love 」という単語は文字 l で始まります。 luck en 名 運。 Good luck で「うまくいきますように」 I wished her good luck before the interview. 私は面接の前に彼女の幸運を祈りました。 marsha en 名 マーシャ( Marsha と同じ語) o en 名 字母の名 The word dog has the letter o in it. 「 dog 」という単語には文字 o が含まれています。 pete en 名 ピート( Pete と同じ語) sad en 形 悲しい She felt sad after watching the movie. 彼女はその映画を見た後、悲しい気持ちになりました。 server en 名 給仕する人 The server brought our food to the table. その給仕係は私たちの料理をテーブルに運びました。 tons en 名 たくさん We had tons of fun at the festival. 私たちはお祭りでとても楽しい時間を過ごしました。 washington en 名 ワシントン( Washington と同じ語) websites en 名 網の上の場所(複数) She designs websites for small local businesses. 彼女は地元の小さな企業のためにウェブサイトを設計しています。 構文の骨 ★ code と cold — 音が似るとはどういうことか この篇の山です。 誰が 言っていること アナ Can you write code? ピート Sure, c-o-l-d. How is this going to help? アナ No, not “cold.” Code; you know, for making phone apps, or websites. ピートは code を cold と 聞き取りました 。そして、そう聞いたことを示すために 綴りを一字ずつ言って います—— c ・ o ・ l ・ d 。 ここで日本語話者は不思議に思うはずです。「コード」と「コールド」は、 まるで違う語に聞こえる のではないか、と。 それはカタカナで考えているからです。カタカナでは 「ル」という一拍が増える ので、長さがはっきり変わります。ところが英語では、そうではありません。 その語 カタカナでの見え方 英語での実際 code コード(三拍) 一音節 cold コールド(四拍) 一音節 。 l が一つ増えるだけ どちらも一音節 です。英語の cold の l は「ル」とは鳴りません。舌の奥が持ち上がるだけの、 こもった音 です。 1.3 音編 で置いた L のうち、 語の終わりに来るほう がこれです。 だから、この二語の差は 拍が一つ増えること ではなく、 こもった音が一つ挟まること です。カタカナで覚えていると、 ありもしない差を探して、ある差を聞き落とします 。 1.1 音編 と 1.11 音編 で置いたとおりです。 そして、この篇は 直し方 も教えてくれます—— 綴りを一字ずつ言う 。英語では、聞き取れないときにこうするのがふつうです。電話でも、名前を伝えるときにこうします。 字母の名を言えることは、実用の技 です。 ★ can が話の背骨 can と can't は、この篇に合わせて 26 回出ます。どう出るかを順に並べると、話の形がそのまま見えます。 どこ can の出方 はじめ I don’t have a skill ——できることが無いと言う まんなか Can you drive? ・ Can you teach? ・ Can you cook? ——一つずつ聞く どん底 I can’t code! I can’t teach! I can’t cook! ——三つ続けて否定 転がる You can be a writer! ——できることが見つかる 終わり I can be a writer. I can be a writer! ——三度くり返す can't が三つ並んだあとに、 can が三つ並ぶ 。きれいに釣り合っています。 8.29 読編 で置いたとおり、 同じ形が並ぶのは、書き手がわざと置いたから です。 そして、この釣り合いが この篇の題 です—— What Can You Do 。できないことを三つ数えた人が、できることを三度言えるようになる。それだけの話です。 文の終わりに付く小さな問い この篇には 付加疑問 が二つ出ます。文の終わりに、短い問いをくっつける形です。 原文 付いている問い 言いたいこと You don’t like it, do you? do you? 気に入らないんでしょう? He does know that it’s not easy to be a writer, doesn’t he? doesn't he? 分かっているんでしょうね? 日本語の「〜でしょう?」「〜だよね?」に当たります。働きは 念を押す ことです。 形には決まりがあります—— 前が否定なら、うしろは肯定。前が肯定なら、うしろは否定 。一つめは don't + do you? 、二つめは does + doesn't he?