12.8 祝祭と暦 — Epoché
この課で分かるようになること ★三つの行事の 日付と決め方 を知る。 ★ 同じ名前でも中身が違う ことに気づける。 ★書かれていない 季節 を、ものから読み取れる。 祝日の決まり方が 国で違う ことを知る。 前提 : 12.7 まで。読は 8.72 まで。 ★行事は、説明なしに出てくる 英語の文章を読んでいると、行事の名が ぽんと出てきます 。説明はありません。 ★ 書き手は、読み手が知っていると思っています。 日本語の文章で「お盆」「正月」と書くとき、いちいち説明しないのと同じです。 8.47 読編 で「言われていない前提を探す」と言いました。★ 行事は、その前提のいちばん大きなもの です。知らないと、 いつの話か、どんな気分の場面かが分かりません 。 三つの行事 クリスマス 十二月二十五日 [1] 。英語圏で いちばん大きな行事 です。 ★ 日本のクリスマスとは、中身がまるで違います。 どこが 英語圏では 日本では 誰と過ごすか ★ 家族 。遠くにいても帰る 友人や恋人と過ごすことが多い 店は ★ 閉まる 開いている いつが山か ★ 二十五日の朝 二十四日の夜 ★ 「店が閉まる」がいちばん大事です。 英語圏では、クリスマスは 国じゅうが止まる日 です。日本の正月に近い感じ方をしてください。 だから、物語の中で 「クリスマスに一人でいる」 と書かれていたら、それは とても寂しい場面 です。★ 日本語の感覚で読むと、この重さが伝わりません。 イギリスでは、翌日の 十二月二十六日 も休みになります [2] 。★二日続けて 国が止まります 。 感謝祭 十一月の第四木曜日 [1] 。アメリカの行事で、★ 日本には対応するものがありません 。 どんな日か どういうことか ★ 家族が集まる 遠くからでも帰ってくる 一緒に食事をする 決まった料理がある ★ 木曜日 金曜も休みにして、四連休にすることが多い ★ クリスマスより家族色が強い と言われることもあります。宗教の行事ではないので、 誰でも参加できる からです。 イギリスにはありません。★ アメリカの文章とイギリスの文章を見分ける手がかり にもなります。 ハロウィン 十月三十一日。★ 法律で決まった祝日ではありません。 学校も店も、ふつうに開いています。 ★ ここが、日本に入ってきたときにねじれたところです。 本来は 日本では ★ 子どもの行事 ★ 大人の行事 として広まった 近所の家を回ってお菓子をもらう 街に出て仮装する 夜、家のまわりで 昼から、人の多い場所で ★ 仮装の部分だけが渡ってきました。 近所を回るという中心の部分は、 渡ってきていません 。 ★ 行事は、丸ごと渡るとはかぎりません。 渡るのは、 受け取る側にとって使いやすい部分 だけです。 12.4 知編 で「外来語は意味が変わる」と言いました。 行事も同じ です。 ★暦を知っていると、季節が読める 物語には、 季節が書かれていない ことがよくあります。★ けれども、ものが教えてくれます。 8.61 読編 — 何を摘みに行ったか ピーターの姉たちは、野いちごを摘みに出かけました。 blackberries for supper [3] ★ これが実るのは、夏の終わりから秋のはじめ です。本文には「八月」とも「秋」とも書かれていません。 そして、ピーターが畑で食べたものを思い出してください。レタス、いんげん、大根——★ どれも夏の終わりに畑にあるもの です。 ★ 季節は、書かれずに置かれています。 当時のイギリスの読者には、 言うまでもないこと だったからです。 8.62 読編 — どこへ出かけたか ベンジャミンは、畑が空いていることを ある一点から 判断します。 certainly for the day, because she was wearing her best bonnet [4] ★ いちばんよい帽子をかぶっている。だから、一日じゅう帰ってこない。 これは 推論 です。 9.6 論編 で扱った 手がかりから結論へ の形。★ 帽子と、出かける長さが結びついている のは、当時の暮らしの約束ごとです。 ★ 知らなければ、ただの描写に見えます。 知っていれば、 ベンジャミンの判断の速さ が分かります。 ★祝いのことばの言い分け 行事には、 決まった言い方 があります。そして、★ いつ言うか、誰に言うかが決まっています 。日本語の「あけましておめでとう」を十二月に言わないのと同じです。 どの言い方か いつ言うか 気をつけること Merry Christmas 十二月のうち。当日まで ★ 相手を選ぶ 。祝わない人もいる Happy Holidays 十二月から一月にかけて ★ 誰にでも言える 。行事を名指さない Happy New Year 年が明けてから ★ 日本と同じく、年が明けてから ★ 二つめが、この表でいちばん大事です。 英語圏には、 クリスマスを祝わない人 がたくさんいます。別の宗教の人、どの宗教にも属さない人、そもそも行事に関わらない人。 だから、 相手の事情が分からないとき は Happy Holidays と言います。★ 行事の名を出さずに、この時期のあいさつだけをする 言い方です。 ★ これは「気をつかった言い方」であって、「正しい言い方」ではありません。 家族や、祝うと分かっている相手には Merry Christmas でかまいません。使い分けるのは、 相手が分からないとき だけです。 6.17 話編 からずっと、この課程では 丁寧さの段 を扱ってきました。★ 行事のあいさつにも、段があります。 そして、この段は 上下ではなく、相手をどれだけ知っているか で決まります。 日本語との差も、ここに出ます。日本語では、 相手の宗教を気にしてあいさつを変える 習わしがありません。★ 気にする必要が無かった からです。英語圏では、 同じ町に別の暦を持つ人が住んでいます 。言い方の違いは、そこから出ています。 暦そのものの違い どこが 英語圏では 日本では ★ 週の始まり 日曜日から 月曜日からのことが多い ★ 年度の始まり 九月に学年が始まる国が多い 四月に始まる 祝日の決め方 ★ 法律で決まる [1] [2] 法律で決まる ★ 学年の始まりは、読むときに効きます。 英語の物語で 「夏休みが終わって新しい学年」 と書かれていたら、それは 九月 です。四月ではありません。 8.70 読編 の読本も、そういう暦の中で使われていました。★ 「新学期」という語一つで、季節が決まります。 年と世紀の言い方 暦のついでに、 年の言い方 を置いておきます。読み物に出てくると、 読み方が分からなくて止まる ところです。 書き方 どう読むか 考え方 1911 ★ 二つに割って読む 十九と十一に分ける 2011 ★ 割らずに読むことが多い 二千十一 1900 百の位で読む 十九百 ★ 二つに割るのが、古い年の読み方 です。千の位から読むのではありません。 12.5 知編 で「英語の数は三桁で区切る」と言いました。★ 年だけは、その規則から外れます。 世紀の数え方も、日本語と同じです。★ けれども、一つずれます。 千九百年代は 二十世紀 です。十九世紀ではありません。 この期に読んだ本は、 十九世紀から二十世紀の初め にかけて書かれたものでした。★ 「百年少し前」と思っておいてください。 そのくらいの幅で考えると、 暮らしの様子が読みやすくなります 。馬車が走り、家に電気が無く、子どもが一人で遠くまで歩く——★ どれも、その時代なら当たり前 です。 やってみる ★読 C の篇から、 季節が分かる手がかり を三つ探す。「春」「冬」と書かれているものは 数えません 。 ものや行いから分かるもの を探してください。 ★ 日本の行事を一つ選んで 、「外国の人に説明なしで通じるか」を考える。通じないとしたら、 どこが通じないか を一行で書く。 クリスマスについて、 日本と英語圏で違うところ を三つ書き出す。そのうえで、★ なぜ違うようになったか を考えてみる。 この課のまとめ ★ 英語の文章は、行事を説明せずに出す。 書き手にとって当たり前だから( 8.47 読編 )。 ★ クリスマスは、英語圏では国じゅうが止まる日。 店は閉まり、家族と過ごす。 だから「クリスマスに一人」は とても寂しい場面 。★日本語の感覚で読むと、重さが伝わらない。 感謝祭は 十一月の第四木曜日 。★ イギリスには無い ので、どちらの国の文章かの手がかりになる。 ハロウィンは 法定の祝日ではない 。★日本には 仮装の部分だけ が渡ってきた。 ★ 行事は丸ごと渡るとはかぎらない。 渡るのは、受け取る側が使いやすい部分だけ( 12.4 知編 )。 ★ 季節は、ものが教える。 8.61 読編 の野いちごは、夏の終わり。 ★ いちばんよい帽子=一日じゅう出かける ——暮らしの約束ごとを知ると、推論が読める( 9.6 論編 )。 ★ 英語圏の学年は九月に始まる。 「新学期」の一語で季節が決まる。 次の課へ 次の課は 12.9 、 英語のユーモアと礼儀 です。第 3 期の知編は、これで終わりになります。★ 間接さ・皮肉・謝罪の型 を扱います。 8.72 読編 の小男が 「分かった」と言いすぎた のは、なぜか。 8.69 読編 の士官が 「来る者は誰もいない」 としか言わなかったのは、なぜか。★ 言わないことで言う ——英語の礼儀の中心にある考え方です。 答え 一つめの課題について、 例を三つ 置きます。 ★ 8.61 読編 ——野いちごと、畑にあった野菜。 夏の終わり です。 ★ 8.66 読編 ——「ひどく暑い朝」と書かれ、インドが舞台です。 季節というより、暑い土地であること が分かります。★インドには、日本のような四季の区切りがそのままあてはまりません。 「暑い季節」と「雨の季節」で考える 土地です。 ★ 8.65 読編 ——砂漠と、水たまりに映った自分の姿。★ 季節が分かりません。 砂漠の話には、季節の手がかりが ほとんど出てきません 。これも一つの答えです—— 分からないと分かること が大事です。 参考文献 合衆国法典 第 5 編 6103 条(5 U.S.C. §6103)——アメリカ合衆国の連邦祝日を定める条文。感謝祭は 十一月の第四木曜日 、クリスマスは 十二月二十五日 と決まっている。 1971 年銀行営業法(Banking and Financial Dealings Act 1971)——イギリスの bank holiday を定める法律。イングランド・スコットランド・北アイルランドで 休みの日が違う 。 原文の出所: Beatrix Potter, "peter_rabbit"。パブリックドメイン(Project Gutenberg)。原文は 1 字も変えていない。https://www.gutenberg.org/ebooks/14838 原文の出所: Beatrix Potter, "benjamin_bunny"。パブリックドメイン(Project Gutenberg)。原文は 1 字も変えていない。https://www.gutenberg.org/ebooks/14838