8.65 らくだのこぶ — 語が物に変わる — Epoché
この篇でできるようになること ★ 語が物に変わる 仕掛けを、本文の中で追える。 動かない人物のまわりで、誰が話を運んでいるかを言える。 三度のくり返しが、どこで破られるかを見つけられる。 帯の外の語を、語釈を見ながら読み通せる。 前提 : 8.64 まで。型は 3.24 まで。語は 4.36 まで。 読む前に 世界がまだ新しかったころ、動物たちが人間のために働きはじめました。ところが、らくだだけが働きません。砂漠の真ん中にいて、話しかけられると Humph! と言うだけです。 この語は、訳しにくい語です。「ふん」でも「けっ」でもいい。★大事なのは 意味ではなく、同じ音がくり返されること です。 出てくる者 何をする者か the Camel らくだ。働かない the Three 馬・犬・牛。働く三頭 the Djinn in charge of All Deserts 砂漠をあずかる精霊 the Man 人間。働かせる側 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 1097 語、最後に 長い詩 がついています。 NOW this is the next tale, and it tells how the Camel got his big hump. ★まず、 humph という語が 本文に 21 回 出ることを頭に入れて読んでください。数えながら読む必要はありません。ただ、 多い と思っていてください。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 さて、これが次のお話で、らくだがどうして大きなこぶを持つようになったかを語るお話です。 年月のはじめのころ、世界がまだとても新しくてなにもかもがそうだったころ、動物たちがちょうど人間のために働きはじめたころ、一頭のらくだがいました。らくだは、働きたくなかったので、吠える砂漠のまんなかに住んでいました。それに、らくだ自身も吠える者だったのです。そこでらくだは、小枝やとげや御柳(ギョリュウ)やトウワタやいばらを、ひどく、ものすごくなまけながら食べていました。そして誰かに話しかけられると、「 Humph! (フン!)」と言いました。ただ「フン!」とだけ、それ以上は何も言いませんでした。 やがて月曜日の朝、馬がらくだのところへやって来ました。背中には鞍をつけ、口にははみをくわえていました。そして言いました。「らくだよ、おお、らくだよ、出てきて、ぼくらみんなと同じように駆け足をしなよ。」 「フン!」とらくだは言いました。そこで馬は帰っていって、人間に話しました。 やがて犬がらくだのところへやって来ました。口に棒をくわえていました。そして言いました。「らくだよ、おお、らくだよ、来て、ぼくらみんなと同じように取ってきたり運んだりしなよ。」 「フン!」とらくだは言いました。そこで犬は帰っていって、人間に話しました。 やがて牛がらくだのところへやって来ました。首にはくびきをつけていました。そして言いました。「らくだよ、おお、らくだよ、来て、ぼくらみんなと同じように畑を耕しなよ。」 「フン!」とらくだは言いました。そこで牛は帰っていって、人間に話しました。 その日の終わりに、人間は馬と犬と牛を呼び集めて、言いました。「三頭よ、おお、三頭よ、おまえたちにはたいへん気の毒に思う(世界がまだとても新しくてなにもかもがそうなのだから)。だが、砂漠にいるあのフンとかいうやつは働けないのだ。働けるのなら、もうとっくにここに来ているはずだからな。だから、あいつのことはほうっておくことにする。そのぶんを埋め合わせるために、おまえたちが倍働かなければならない。」 それを聞いて三頭はたいへん腹を立てました(世界がまだとても新しくてなにもかもがそうだったので)。そして砂漠のふちで、談判と、インダバと、パンチャーヤトと、パウワウを開きました。すると、らくだがひどく、ものすごくなまけながらトウワタをかみかみやって来て、三頭を笑いました。それから「フン!」と言って、また行ってしまいました。 やがて、すべての砂漠をあずかるジンが、砂ぼこりの雲の中を転がりながらやって来ました(ジンはいつもそうやって旅をするのです。それが魔法だからです)。そしてジンは立ち止まって、三頭と談判やパウワウをしました。 「すべての砂漠のジンさま」と馬は言いました。「世界がまだとても新しくてなにもかもがそうだというのに、誰かがなまけているのは正しいことでしょうか。」 「もちろん正しくない」とジンは言いました。 「それでは」と馬は言いました。「あなたの吠える砂漠のまんなかに、あるやつがいるのです(そいつ自身も吠える者です)。首が長くて脚が長くて、月曜日の朝から少しも働いていません。駆け足をしようとしないのです。」 「ひゅう!」とジンは口笛を吹きながら言いました。「アラビアじゅうの金を賭けてもいい、そいつはわしのらくだだ! そいつはそのことについて何と言っている?」 「『フン!』と言うのです」と犬は言いました。「それに、取ってきたり運んだりしようとしません。」 「ほかに何か言うかね?」 「『フン!』だけです。それに、畑を耕そうとしません」と牛は言いました。 「よろしい」とジンは言いました。「ちょっと待っていてくれるなら、わしがそいつを『フン』とさせてやろう。」 ジンは砂ぼこりのマントに身をくるんで、砂漠を横切る方角を定め、ひどく、ものすごくなまけているらくだを見つけました。らくだは水たまりに映る自分の姿を眺めていました。 「長くてぶくぶく言うわが友よ」とジンは言いました。「世界がまだとても新しくてなにもかもがそうだというのに、おまえが少しも働いていないと聞いたが、これはどういうことかね?」 「フン!」とらくだは言いました。 ジンは腰をおろし、あごを手にのせて、大きな魔法を考えはじめました。そのあいだ、らくだは水たまりに映る自分の姿を眺めていました。 「おまえは月曜日の朝からずっと、三頭によけいな仕事をさせてきた。何もかも、おまえのひどいなまけぐせのせいだ」とジンは言いました。そしてあごを手にのせたまま、魔法を考えつづけました。 「フン!」とらくだは言いました。 「わしがおまえなら、もう二度とそれは言わないがね」とジンは言いました。「一度言いすぎることになるかもしれないぞ。ぶくぶく君、わしはおまえに働いてもらいたいのだ。」 それでもらくだはまた「フン!」と言いました。ところが、そう言ったとたん、あんなに自慢にしていた自分の背中が、ふくらんで、ふくらんで、大きな大きな、ぶらぶら揺れる「フン」になっていくのが見えました。 「それが見えるかね?」とジンは言いました。「それはおまえ自身の『フン』で、働かなかったせいで、おまえが自分自身の身に招いたものだ。今日は木曜日で、おまえは仕事が始まった月曜日から少しも働いていない。さあ、これからおまえは働くのだ。」 「どうやって働けというのです」とらくだは言いました。「背中にこんな『フン』があるのに。」 「それはわざとそう作ったのだ」とジンは言いました。「何もかも、おまえがあの三日間を休んだからだ。これでおまえは、何も食べずに三日間働けるようになる。その『フン』で生きていけるからな。わしがおまえに何もしてやらなかったなどと、決して言うんじゃないぞ。砂漠から出て、三頭のところへ行き、行儀よくするんだ。自分で『フン』としてみろ!」 そこでらくだは、その「フン」ごと、自分で「フン」として、三頭の仲間に加わりに出かけていきました。そしてその日から今日まで、らくだはいつも「フン」を背負っています(今では、らくだの気持ちを傷つけないように、それを「 hump 」、こぶと呼んでいます)。けれども、らくだは世界のはじめに休んだ三日間に、まだ追いついていません。そして、行儀よくするやり方も、まだ覚えていないのです。 らくだのこぶは、みっともないかたまり/動物園でよく見られるね/でももっとみっともないのは、ぼくらにできるこぶ/することが少なすぎてできるこぶ。 子どもたちも、大人たちもおおお/することが足りないとおおお/ぼくらにこぶができる/らくだのこぶが/黒と青のあざのようなこぶが! ぼくらはもじゃもじゃ頭でベッドからはい出す/がみがみ、ぎゃあぎゃあした声で。/ぼくらは震えて、しかめっつらをして、ぶうぶう言って、うなる/お風呂に、靴に、おもちゃに。 そして、ぼくには隅っこがあるはず/(きみにも一つあるのを知ってるよ)/ぼくらにこぶができたとき/らくだのこぶが/黒と青のあざのようなこぶが! この病の治しかたは、じっと座っていることじゃない/火のそばで本を抱えて、むっとこもっていることでもない/大きなくわとスコップも持って/ほんのり汗をかくまで掘ることさ。 そうすれば分かるよ、お日さまと風が/それから庭のジンも/こぶを取りのけてくれたことが/恐ろしいこぶを/黒と青のあざのようなこぶを! ぼくもきみと同じようにこぶができるうう/することが足りないとおおお/みんなこぶができる/らくだのこぶが/子どもたちにも、大人たちにも! 語釈 帯の外の語は 79 語です。「寄り合い」を指す語が 四つ 並ぶところがあります。どれも英語のもとの語ではありません。 語(品詞) 意味 注 Arabia en 名 アラビア Cameelious en 形 らくだじみた。作られた語 The old camel had a strange Cameelious hump on his back. その老いたらくだは背中に奇妙ならくだじみたこぶを持っていました。 Camel en 名 らくだ A tired camel walked slowly across the wide desert sand. 疲れたらくだが広い砂漠の砂の上をゆっくりと歩きました。 Camel’s en 名 らくだの The camel's hump stored water and fat for the journey. そのらくだのこぶは旅のために水と脂肪をたくわえていました。 Desert en 名 砂漠 The travelers crossed a vast Desert without finding any water. 旅人たちは水を見つけられないまま広大な砂漠を渡りました。 Deserts en 名 砂漠(複数) Wide Deserts stretched for miles beyond the last small village. 最後の小さな村の先には広い砂漠が何マイルも広がっていました。 Djinn en 名 ジン。アラビアの精霊 A powerful Djinn appeared suddenly from a cloud of smoke. 強力なジンが煙の雲の中から突然現れました。 Djinns en 名 ジン(複数) Old stories say Djinns once lived among the desert rocks. 昔の物語では、ジンたちがかつて砂漠の岩の間に住んでいたと言われています。 Howler en 名 吠える者 The night wind became a howler that shook every tent. 夜の風はすべてのテントを揺らす吠える風になりました。 Howling en 形 吠えるような。荒れはてた They wandered through a howling wilderness with no shelter nearby. 彼らは近くに避難場所もない荒れはてた荒野をさまよいました。 Humph en 間 ふん。らくだの言う唯一の語 Humph, said the old man, and he walked away quietly. ふん、とその老人は言って、静かに立ち去りました。 Kiddies en 名 子どもたち The Kiddies laughed and played together in the garden. 子どもたちは庭で一緒に笑い、遊びました。 Magic en 名 魔法 The children believed the old book was full of Magic. 子どもたちはその古い本には魔法がいっぱい詰まっていると信じていました。 Magics en 名 魔法(複数) The book described many old Magics passed down for centuries. その本は何世紀も伝えられてきた多くの古い魔法について説明していました。 O en 間 呼びかけの語 O traveler, rest here before the desert sun grows hotter. おお、旅人よ、砂漠の日が強くなる前にここで休んでください。 Ox en 名 牛 A patient ox pulled the heavy cart up the hill. 辛抱強い牛が重い荷車を丘の上まで引っ張りました。 Whew en 間 ひゅう。口笛の音 Whew, he sighed, wiping the sweat from his tired face. ひゅう、と彼は疲れた顔の汗をふきながらため息をつきました。 Zoo en 名 動物園 Every Sunday the family visited the Zoo near their home. 毎週日曜日、その家族は家の近くの動物園を訪れました。 bath en 名 ふろ The tired dog fell asleep right after its warm bath. その疲れた犬は温かいふろのすぐあとに眠ってしまいました。 behave en 動 行儀よくする The teacher asked the children to behave during the trip. 先生は子どもたちに旅行の間、行儀よくしてくださいと頼みました。 boots en 名 くつ(複数) He cleaned the mud off his boots before entering the house. 彼は家に入る前にくつの泥を落としました。 bubbles e