14.22 誰も島ではない — 散文が詩のように引かれるとき — Epoché
この篇でできるようになること ★ 散文なのに詩のように引かれる 理由が分かる。 ★ 一つのことを何度もたとえ直す 作りが追える。 ★ 答えない問い (修辞の問い)が拾える。 ★ 長い一文をセミコロンで切る 読み方が身につく。 前提 : 特別編に門はありません。第 5 期まで済んでいれば、どこからでも読めます(目安は 3.40 まで/4.60 まで)。 読む前に ★ 特別編は どの篇から読んでもかまいません 。★ 前の篇を読んでいなくても通じるように書いてあります。 ★ これは 千六百二十四年 の文章 で、★ 書いた人は 詩人であり、教会の説教者 でした。★ 重い病のあいだに書いた 思いめぐらしの記録 の一つです。 どちらのことか 確かめること ★ ことばのこと ★ 英語の書き手が聖書と説教から何を借りるか( 12.17 知編 ) ★ 考えのこと ★ この時代の人が自分と世界をどう見たか( 12.16 知編 ) ★ 読み方を先に言います。 ★ この文章は 一つの段落 で、★ 一文が長い です。★ 切れ目は セミコロン にあります( 3.45 型編 )。★ 句点まで待たずに、 セミコロンで息をついで ください。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。★ 散文なので 行で切っていません ——★ 原本のまま 一段落 です。本文は 717 語、文は 20 本、一文の平均は 35.9 語です。 ★ いちばん長い一文は 95 語 、★ セミコロンが 14 個 あります。★ 一文が長いのは 思いつくままに継いでいく から で、★ 読みにくさの理由は 語ではなく長さ です。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 ことによると、この鐘が弔って鳴っているその人は、ひどく病が重くて、それが自分のために鳴っているとは知らないのかもしれません。そしてことによると、私は自分を実際よりずっとよいと思いこんでいて、私のまわりにいて私のありさまを見ている人たちが、私のためにそれを鳴らさせたのに、私はそれを知らないのかもしれません。教会は公同のもの、普遍のものであり、その行いもすべてそうです。教会のすることはすべて、すべての人のものです。教会が子どもに洗礼を授けるとき、その行いは私に関わります。その子はそれによって、私の頭でもあるあの体につながれ、私がその一部である体に接ぎ木されるのですから。そして教会が人を葬るとき、その行いは私に関わります。人類はみな一人の著者によるものであり、一巻の書物です。一人の人が死ぬとき、一つの章が書物から破り取られるのではなく、よりよい言語へ翻訳されるのです。そしてどの章も、そのように翻訳されねばなりません。神はいく人もの翻訳者を使われます。ある部分は老いによって、ある部分は病によって、ある部分は戦によって、ある部分は裁きによって翻訳されます。けれども、どの翻訳にも神の手があり、その手は、散らばった私たちの頁のすべてを、ふたたび綴じ合わせてくださるでしょう。どの書物も互いに開かれて置かれる、あの書庫のために。ですから、説教を告げて鳴る鐘が、説教者だけでなく会衆をも来るようにと呼ぶように、この鐘は私たちみなを呼んでいます。けれども、この病によって戸口のこれほど近くまで連れてこられた私を、どれほどいっそう呼んでいることでしょう。訴訟にまで及んだ争いがありました(そこには信心と体面、宗教と世評とが入りまじっていました)。どの修道会が朝いちばんに祈りの鐘を鳴らすべきか、という争いです。そして、いちばん早く起きた者が最初に鳴らすべし、と決まりました。夕べの祈りのために鳴るこの鐘の尊さを正しく理解するなら、私たちは早く起きることによって、その鐘を自分のものにしたいと願うでしょう。その鐘が、まことにそれの持ち主であるあの人のものであるのと同じく、私たちのものにもなるように、という心がけで。鐘は、自分のために鳴っていると思う人のために、確かに鳴っているのです。そして、鐘がまたいったん鳴りやんでも、その出来事がその人の心にはたらきかけたその瞬間から、その人は神と結ばれているのです。日が昇るとき、それを見上げない人がいるでしょうか。けれども、彗星が現れたとき、そこから目をそらす人がいるでしょうか。何かの折に鳴るどんな鐘にでも、耳を傾けない人がいるでしょうか。けれども、自分自身のひとかけらをこの世から送り出しているあの鐘から、耳をそらすことのできる人がいるでしょうか。人はだれも島ではなく、それだけで完全なものではありません。人はみな大陸のひとかけら、本土の一部です。土くれが一つ海に洗い流されれば、ヨーロッパはそれだけ小さくなります。岬が一つ流されても、あなたの友の、あるいはあなた自身の領地が流されても同じことです。だれの死も私を小さくします。私は人類の中に含まれているのですから。ですから、だれのために鐘が鳴っているのかを知ろうと、人をやって尋ねさせることは決してしないでください。それはあなたのために鳴っているのです。また、これを不幸をねだること、不幸を借りてくることと呼ぶこともできません。まるで私たちが自分だけでは十分に不幸でなく、隣人たちの不幸を身に引き受けて、隣の家からもっと取ってこなければならないかのように。まことに、もし私たちがそうしたとしても、それは許されてよい貪欲でしょう。苦しみは宝であり、それを十分に持っている人はほとんどいないのですから。苦しみによって熟し、実り、その苦しみによって神にふさわしいものにされていない人は、十分な苦しみを持っているとは言えません。もし人が地金の、あるいは金の延べ棒の形で宝を運び、そのどれも通用する貨幣に鋳造していなければ、その宝は旅の途中の費用をまかなってはくれないでしょう。苦難は、その本性においては宝ですが、その使い道においては通用する貨幣ではありません。私たちがそれによって、わが家である天国へ、だんだん近づいてゆくのでなければ。ほかの人もまた病んでいるかもしれません。死ぬほど病んでいるかもしれません。そして、この苦しみは、鉱山の中の金のように、その人のはらわたの中に横たわっていて、その人には何の役にも立たないかもしれません。けれども、その人の苦しみを私に告げるこの鐘は、その金を掘り出して、私に当ててくれるのです。もし私が、他人の危険をこうして思いめぐらすことによって、自分の危険を省みるようになり、私たちのただ一つの守りである神に頼ることによって、自分の身を守るのであれば。 語釈 帯の外の語は 47 語です。★ 二つに分かれます ——★ 教会の語 ( baptizes ・ congregation ・ sermon )と、★ たとえに使う物の語 ( promontory ・ clod ・ bullion )です。★ 二つめが要 です——★ 抽象の話を 手で触れる物 に置き換えて います。 語(品詞) 意味 注 Catholic en 形 普遍の・公同の(ここでは「カトリックの」ではない) Catholic families in the village walked together to evening Mass. カトリックの家族たちは村で一緒に夕方のミサへ歩いて行きました。 Europe en 名 ヨーロッパ affliction en 名 苦しみ。身に降りかかる苦 A long illness became the greatest affliction of her youth. 長い病がその若さのいちばんの苦しみとなりました。 aright en 副 正しく Read the old letter aright before you judge its writer. その古い手紙を正しく読んでから、書いた人を判断しなさい。 baptizes en 動 洗礼を授ける The village priest baptizes every newborn child in spring. 村の司祭は春に生まれた子どもたちすべてに洗礼を授けます。 begging en 名 こい求めること His constant begging for money embarrassed the whole family. お金をしきりにこい求める彼の様子は、家族全員を恥じ入らせました。 bowels en 名 はらわた。体のいちばん奥 A strange pain settled deep within her bowels that night. その夜、奇妙な痛みが彼女のはらわたの奥に居座りました。 bullion en 名 地金。鋳ていない金銀 The old ship carried crates of gold bullion across the sea. その古い船は金の地金を積んだ箱を海の向こうへ運びました。 clod en 名 土くれ He kicked a clod of dirt across the empty field. 彼は空っぽの畑の向こうへ土くれを蹴りました。 comet en 名 ほうき星 A bright comet crossed the night sky for three weeks. 明るいほうき星が三週間にわたって夜空を横切りました。 congregation en 名 集まった信徒 The whole congregation stood silently as the bell tolled. 鐘が鳴るあいだ、集まった信徒たちは黙って立っていました。 contemplation en 名 静かに思いめぐらすこと She sat in quiet contemplation long after the guests left. 客が帰ったあとも長く、彼女は静かな思いめぐらしに座っていました。 contention en 名 争い The old boundary caused years of contention between neighbors. その古い境界線は隣人たちの間に長年の争いを引き起こしました。 covetousness en 名 欲深さ His covetousness for land eventually cost him every friend. 土地への欲深さは結局、彼の友人をすべて失わせました。 defray en 動 費えをまかなう The charity offered to defray the cost of his surgery. その慈善団体は彼の手術の費えをまかなうと申し出ました。 dignity en 名 品位 Even in defeat, the old captain kept his quiet dignity. 敗れてなお、その老いた船長は静かな品位を保ちました。 doth en 動 does の古い形。詩の言い方 The bell doth ring each morning before the sun rises. 太陽が昇る前に、その鐘は毎朝鳴ります。 excusable en 形 許される A small mistake like this is easily excusable in beginners. このような小さな誤りは初心者には十分に許されるものです。 fetch en 動 取ってくる Please fetch some water from the well before dinner. 夕食の前に井戸から水を取ってきてください。 hath en 動 has の古い形 The old man hath seen many winters upon this hill. その老人はこの丘で多くの冬を見てきました。 heaven en 名 天 They believed the old church stood closer to heaven. 彼らはその古い教会が天に近いところに立っていると信じました。 ingrafted en 動 接ぎ木された New branches were carefully ingrafted onto the young apple tree. 若いりんごの木に新しい枝が丁寧に接ぎ木されました。 intermit en 動 途中でやむ The stubborn fever would intermit for only a few hours. その頑固な熱は数時間だけ途中でやみました。 mankind en 名 人類 The scientist devoted her whole life to studying mankind. その科学者は人類を研究することに人生のすべてを捧げました。 manor en 名 荘園 The old manor had stood empty since the war ended. その古い荘園は戦争が終わってからずっと空いていました。 mingled en 動 混じり合った Joy and sadness mingled together at the quiet farewell. その静かな別れでは、喜びと悲しみが混じり合いました。 miserable en 形 みじめな He felt miserable after losing the letter she had sent. 彼女が送った手紙を失って、彼はみじめな気持ちになりました。 misery en 名 みじめさ Years of misery finally ended when the war stopped. 戦争が終わったとき、長年のみじめさはついに終わりました。 perchance en 副 ひょっとすると Perchance the missing letter still waits inside that old drawer. ひょっとすると、あの古い引き出しの中にまだ失われた手紙があるかもしれません。 piety en 名 信心 Her quiet piety impressed everyone who visited the small chapel. その小さな礼拝堂を訪れた誰