5.34 哲学の講義 — 分けてから、片方を掘る — Epoché
この課で聞き取れるようになること ★ 講義の三つの動き が聞き分けられる。 ★ 「二つに分ける」が聞こえたら紙に線を引く ことができる。 ★ 例は定義の言い換え だと分かる。 ★ 否定の例を主張と取り違えない 。 前提 : 5.33 まで。語は 4.64 まで。知は 12.15 まで。 聞く前に ★ 哲学の講義は、 難しい語が多いから難しい のではありません。 ★ 語はむしろ、やさしいことが多い です。 ★ 難しいのは、 どこまでが前置きで、どこからが主張か が分かりにくいこと です。 ★講義の三つの動き どの動きか どこか 何をしているか ★ 一 分ける ★ 一段落め ★ 二つに割る ★ 二 片方を置く ★ 二段落め ★ こちらは済んだ、と言う ★ 三 残りを掘る ★ 三段落めから ★ ここが講義の中身 ★ この型は、 9.16 論編 の 序の三つの動き とよく似ています ——★ 領域を置き、隙間を見せ、そこに入る。 ★ 違うのは、 講義では「分ける」が先に来る こと です。★ 声では、 全体を先に見せないと聞く人が迷う から です( 11.8 商編 )。 ★「二つに分ける」が聞こえたら、紙に二本線 ★ これは、この課でいちばん実際に効く手 です。 聞こえたもの 手を動かす ★ 二つに分けられる ★ 紙に二本、線を引く ★ 一つめは…… ★ 左の欄に書く ★ 二つめは…… ★ 右の欄に書く ★ そして、 どちらの欄が長くなるか を見てください。 ★ 長いほうが、 その講義の主題 です。 ★ この台本では、 右の欄(事実)だけが伸びます ——★ 左の欄(観念の関係)は、一段落で終わります。 ★例は、定義の言い換え ★ 哲学の講義では、 例がたくさん出ます 。 ★ 太陽、玉突きの玉、三角形。 ★ これを 「分かりやすくするための飾り」 だと思うと、聞き落とします。 ★ 例は、 定義の言い換え です ——★ 10.20 作編 で「境界の例を自分で置く」と置いたのと同じ です。 どう聞くか 何が起きるか ★ 飾りとして聞く ★ 例を飛ばし、定義も分からないまま ★ 言い換えとして聞く ★ 定義が分からなくても、例で分かる ★否定の例は、主張ではない ★ この台本には、 聞き間違えやすい一文 があります。 ★ 「明日、太陽が昇らない」 ——★ ヒュームは、 そう主張しているのではありません 。 何を言っているか 何を言っていないか ★ そう言っても矛盾しない ★ そうなるだろう ★ だから証明できない ★ だから信じるな ★ これは、 3.30 型編 の仮定法 と同じ働き です——★ 「もしそうだとしたら」を調べているだけ で、★ そうだと言ってはいません。 ★ 哲学の講義で「とんでもないことを言っている」と感じたら、 たいていここ です。 ★ 一度、 「そう言っても矛盾しない」 と置き換えて聞き直してください。 知っておく語 聞き方 三度聞きます。 ★ 一度目は、 紙に二本線を引いて、左右に振り分ける 。 ★ どちらが長くなるか を見る。 ★ 二度目は、 例を三つ 探す。 ★ それぞれ、どちらの欄の例か を決める。 ★ 三度目に、 ヒュームが何をやろうとしているか を聞く。 ★ 五段落めに書いてあります。 第 6 期の聞編、五つの手つき どの課 何を使ったか 5.30 聞編 ★ 交互に来る ——二人のとき 5.31 聞編 ★ 役・型・名指し ——三人以上のとき 5.32 聞編 ★ 地図を三度待つ ——一人が長く話すとき 5.33 聞編 ★ 引用の始まりと終わり この課 ★ 分ける・置く・掘る ★ 五つを並べると、一つの線が見えます。 ★ どれも 「誰が、いま何をしているか」 を取る手 です。 ★ 第 5 期の聞編は「内容の前に、形を聞く」でした( 5.29 聞編 )。 ★ 第 6 期は、 形の中でも「役と動き」を聞く 期 です。 ★ そして、 どちらも内容が分からないときに効きます 。 ★ 分かるときには、要りません。 問い 台本を聞いて、答えてください。 ★ 人の理性の対象は、いくつに分けられると言われたか。 ★ そして、それは何と何か。 ★ 一つめの種類は、どうやって見つけられると言われたか。 ★ 二つめの種類について、何が言われたか。 ★ 「反対の……」 ★ 太陽の例は、何を示すために出されたか。 ★ ヒュームは、この分野がどうなっていると言ったか。 もっと深く — 時間のあるときに じっくり取り組みたい人向けの、長めの講義や原典の解説です。この課を進めるのに見る必要はありません。長さを見て、興味のあるところだけ選んでください。 1. Course introduction YaleCourses (46:03, 2008) 哲学の講義そのもの。イェール大学の公開講義(第 1 回) 練習 台本を 三度聞く 。★ 上の「聞き方」の順で 。 ★ 一段落めを音読する 。★ into two kinds のところで 一拍おいて ください ——★ そこが、分かれ目 です。★ 3 周する。 ★ 四段落め(太陽の例)を音読する 。★ no less と no more を 強く 読んでください ——★ この二つが、 比べているという印 です。 ★ 五段落めをそらで言えるまで 音読する。★ 9.16 論編 で 隙間の見せ方 として引いた一文 です。 この課のまとめ ★ 哲学の講義は、語が難しいのではない。 どこまでが前置きで、どこからが主張かが分かりにくい。 ★ 講義の型は三つの動き ——分ける/片方を置く/残りを掘る。 ★ 「二つに分ける」が聞こえたら、紙に二本線を引く。 長くなるほうが、その講義の主題。 ★ 例は飾りではなく、定義の言い換え。 定義が分からなくても、例で分かる。 ★ 否定の例は、主張ではない。 「明日太陽が昇らない」は「そう言っても矛盾しない」であって「そうなる」ではない。 ★ とんでもないことを言っていると感じたら、たいていそこ。 一度「そう言っても矛盾しない」と置き換えて聞き直す。 ★ 第 6 期の聞編は、「誰が、いま何をしているか」を取る五つの手だった。 ★ 形を聞く手は、内容が分からないときに効く。 分かるときには要らない。 次の課へ 聞編の第 6 期はここで終わりです。★第 6 期の学習順では、聞の次は 話 です。次の課は 6.40 、 第 6 編「話」の第 6 期のはじめ です。★ この期で聞いたものを、 こんどは自分で話します 。 答え 「問い」の五つの答えです。 ★ 二つ です——★ 観念の関係( Relations of Ideas ) と★ 事実( Matters of Fact ) 。★ to wit は 「すなわち」 という古い言い方 です。★ これが聞こえたら、 次に中身が来ます 。 ★ 考えるだけで見つけられる と言われました。★ 「宇宙のどこかに在るものに頼らずに」。 ★ つまり、 外を見に行かなくてよい ということ です。★ これが、 左の欄が一段落で終わる理由 です——★ 掘るところが無い から。 ★ 反対のことも、やはりありうる と言われました。★ 「矛盾を含まないから」。 ★ ここが、 この講義の中心 です ——★ だから証明できず、だから別の道を探すことになります。 ★ いま言った「反対もありうる」を示すため です。★ つまり、 例は定義の言い換え ——★ 「矛盾を含まない」を、目に見える形にしただけ です。★ くり返しますが、 太陽について何かを言っているのではありません 。 ★ ほとんど耕されてこなかった と言いました。★ 「古代の人にも近代の人にも」。 ★ 9.16 論編 で、これを 隙間の見せ方 として引きました ——★ 講義でも論文でも、 同じ一文が同じ働きをします 。 台本 答えを出してから読んでください。 All the objects of human reason or enquiry may naturally be divided into two kinds, to wit, Relations of Ideas, and Matters of Fact. [1] Propositions of this kind are discoverable by the mere operation of thought, without dependence on what is anywhere existent in the universe. [1] The contrary of every matter of fact is still possible; because it can never imply a contradiction [1] That the sun will not rise to-morrow is no less intelligible a proposition, and implies no more contradiction than the affirmation, that it will rise. [1] This part of philosophy, it is observable, has been little cultivated, either by the ancients or moderns [1] We fancy, that were we brought on a sudden into this world, we could at first have inferred that one Billiard-ball would communicate motion to another upon impulse [1] 参考文献 David Hume『An Enquiry Concerning Human Understanding』第 4 節。パブリックドメイン(Project Gutenberg)。