12.10 新聞と報道の英語 — Epoché
この課で分かるようになること ★ 逆ピラミッド が何かを言える。 ★ 見出しで落ちるもの を三つ挙げられる。 ★報道の英語が 誰が言ったかを必ず書く 理由が分かる。 ★ VOA がなぜ自由に使えるか を言える。 前提 : 読は 8.104 まで。論は 9.10 まで。作は 10.12 まで。 ★逆ピラミッド — 大事さの順に並べる 新聞記事の並べ方には、名前が付いています。 逆ピラミッド ( inverted pyramid )です。★ いちばん大事なことが最初にあり、下へ行くほど細かくなる という形です。 8.103 読編 の一文目 In Senegal, educators are starting to teach English to younger children [1] ★ これだけで、記事の中身が分かります。 どこで・誰が・何を ——三つとも一文目に入っています。 ★ 残りの全部は、この一文を細かくしたもの です。★ いつから/何校で/何曜日に/誰が反対しているか。 8.104 読編 の一文目 the number of monarch butterflies spending the winter in the western United States has dropped to its second-lowest mark [2] ★ こちらも同じです。 何が・どうなった が一文目にあります。★ そして、「二番目に低い」という言い方に注目してください。 ★ 一文目から、すでに比べています ( 9.9 論編 )。 ★なぜ、この並べ方なのか どういう読み方をされるか だから、どう並べるか ★ 途中でやめる ★ 大事なことを先に ★ 紙面が足りず、後ろから切られる ★ 後ろほど、無くてよいことを 見出しだけ見る 見出しに結論を入れる ★ 二行目が、この形の生まれた理由 です。★ 新聞は、記事の長さが決まってから書くのではありません。 ★ 紙面が足りなければ、後ろから切ります。 ★ だから、切られても困らない順に並べておく のです。 ★ 10.9 作編 で書いた説明文とは、逆です。 どちらの文章か 何を先に置くか 説明文( 10.9 作編 ) ★ 読む人が知っていること ★ 記事 ★ いちばん新しいこと ★ どちらが正しいということではありません。 ★ 説明文は、最後まで読まれる前提 で書きます。★ 記事は、途中でやめられる前提 で書きます。★ 前提が違えば、並べ方も変わります。 ★見出しの文法 — 落とす 新聞の見出しには、 ふつうの文とは違う決まり があります。★ いちばん大きな決まりは、「落とす」 ことです。 ★ 見出しそのものは、読んだ篇の本文には入っていません。 ★ けれども、記事の途中に付いている小見出しは、本文の一部です。 ★ ここでは、その小見出しで見ます。 8.103 読編 の小見出し この記事には、三つの小見出しが付いています。 A desire to learn [1] ——★ 動詞が無い。 名詞のかたまりだけ。 Change or be left behind [1] ——★ 主語が無い。 命令の形。 Criticism of the program [1] ——★ これも動詞が無い。 8.104 読編 の小見出し The survey began in 1997 [2] ——★ これはふつうの文。 小見出しは、見出しほど強く落としません。 Heat might have hurt western monarchs [2] ——★ 冠詞が無い。 ふつうなら The heat と書くところ。 future unclear [2] ——★ be 動詞が無い。 ふつうなら is unclear と書くところ。 落ちるもの、落ちないもの 何が落ちるか なぜ落とせるか ★ 冠詞 ★ 無くても意味が変わらない ★ be 動詞 ★ 形容詞が来れば、そこが述語だと分かる 主語(命令の形のとき) 読む人に向けていると分かる ★ 落ちないもの ★ 名詞・動詞・数 ——落とすと意味が消える ★ だから、見出しを読むときは「足しながら」読みます。 ★ 冠詞と be 動詞を頭の中で戻すと、ふつうの文になります。 ★ 7.7 訳編 で「冠詞を訳さない」ことを扱いました。 ★ 見出しでは、書く側が先に落としています。 ★ 落とせるものは、訳さなくてよいもの ——二つは同じことの裏表です。 ★誰が言ったかを必ず書く 報道の英語を読むと、★ said が異様に多い ことに気づきます。★ これは、下手な文章ではありません。 ★ 決まり です。 She told AFP [1] ——誰が言ったか said Kama, who has a degree in English [1] ——★ 言った人が何者かまで書く Pelton said [2] ——短くても、必ず付く ★ なぜ、これほど繰り返すのか。 ★ 9.8 論編 で扱った「事実と意見」の線を、記事の中で引いているから です。 どう書いてあるか 読む人が受け取るもの ★ 誰が言ったかが書いてある ★ その人の意見 ★ 書いていない ★ 新聞社が確かめた事実 ★ つまり、 said が付いているところは、新聞社が「これは私たちが確かめたことではありません」と言っている のです。 ★ だから、記事を読むときは said を探してください。 ★ 付いていない文だけが、その新聞社が引き受けている部分 です。 8.104 読編 で読んだ 「はっきりしない」 という一文にも、★ 言った人の名前が付いていました。 ★ 分からないことを「分からない」と書くときも、誰がそう言っているかを書く ——★ ここまで徹底しています。 ★数は、比べる相手と一緒に 8.104 読編 の数の書き方を、もう一度見ます。★ 9.9 論編 で扱ったことが、そのまま出てきます。 a decrease of 96 percent from 233,394 in 2023 [2] ——★ 割合と、元の数と、年 The record-low count was 1,901 monarchs in 2020 [2] ——★ いちばん低かった年 The highest number recorded was 1.2 million in 1997 [2] ——★ いちばん高かった年 ★ 一つの数に、必ず比べる相手が付いています。 ★ 去年の数、いちばん低かった年、いちばん高かった年。 ★ これは、親切でやっているのではありません。 ★ 比べる相手を書かない数は、報道として通らない からです。★ 読む人が判断できないもの を出したことになります。 VOA Learning English とは この課程で読んだ記事二篇は、どちらも VOA Learning English のものです。★ 三つのことを知っておいてください。 何か どういうことか ★ アメリカ政府が作っている ★ 著作権が無い(パブリックドメイン) ★ やさしい英語で書く ★ 語をしぼり、ゆっくり読む放送のために ★ 語釈が記事に付く ★ 記事の最後に、難しい語の説明が並ぶ ★ 一つめが、この課程にとって大きい ところです。★ アメリカ政府の職員が仕事として作ったものには、著作権がありません。 ★ だから、全文をそのまま載せられます。 ★ 8.103 読編 と 8.104 読編 は、一字も変えていません。 ★ 段落の切れ目で分けただけ です。 ★もともとは、放送の原稿 8.103 読編 の終わりのほうに、★ 読み手が自分の名を言う一行 があります—— Andrew Smith [1] 。 ★ これは、放送のなごりです。 ★ VOA はもともとラジオ放送 で、★ 記事は読み上げの原稿 でした。★ だから、最後に読み手が名乗ります。 ★ 文章の形の中に、その文章がどこから来たかが残っています。 ★ 「なぜこの一行があるのか」と思ったら、たいてい理由があります。 記事の最後の語釈 8.103 読編 の本文の後ろには、 語釈 が並んでいます。たとえば conversation に oral exchange of sentiments [1] という説明が付いています。 ★ これも、VOA の作りです。 ★ 英語を学ぶ人のために、記事に語釈を付けて出しています。 ★ この課程の読編で語釈が付いているのと、同じ考え方 です。 やってみる ★ 8.103 読編 の一文目だけを読んで、 ★ 「この記事には、あと何が書いてあるはずか」を三つ書き出す。 そのあと本文を読んで、★ 当たった数を数える 。★ 当たるほど、逆ピラミッドが効いています。 ★ 8.104 読編 の小見出し三つを書き写し、 ★ 落ちているもの (冠詞・ be 動詞)を 戻して みる。 ★ 8.104 読編 を読み直して、 said や told の★ 付いていない文に印を付ける。 ★ それが、この記事が引き受けている部分 です。 今日のニュースを一つ、★ 日本語で読む。 ★ そして、逆ピラミッドになっているかを確かめる。 ★ 日本の新聞記事も、たいていこの形です。 この課のまとめ ★ 逆ピラミッド ——大事なことが先、下へ行くほど細かい。★ 後ろから切られても困らない順に並べてある。 ★ 説明文( 10.9 作編 )とは逆。 説明文は最後まで読まれる前提、記事は途中でやめられる前提。 ★ 見出しでは落とす ——冠詞・ be 動詞・主語。★ 落ちないのは名詞・動詞・数。 ★ 見出しは、足しながら読む。 ★落とせるものは訳さなくてよいもの( 7.7 訳編 )。 ★ 誰が言ったかは、必ず書く。 said が付いている文は、★ 新聞社が「確かめたことではない」と言っている ( 9.8 論編 )。 ★ said が付いていない文だけが、その新聞社の引き受けている部分。 ★ 数には、必ず比べる相手が付く ( 9.9 論編 )。去年の数・最低の年・最高の年。 ★ VOA はアメリカ政府の制作物で、著作権が無い。 だから全文をそのまま載せられる。★もともとラジオ放送の原稿なので、最後に読み手が名乗る。 次の課へ 次の課は 12.11 、 イギリス小説の世界 です。★ この課で見たのは、いまの英語でした。 ★ 次の課では、二百年前に戻ります。 8.91 読編 から 8.94 読編 まで読んだ 『高慢と偏見』 が、★ どういう世界の中で書かれたか を見ます。 答え 「やってみる」の四つの答えです。 ★ 三つのうち二つ当たれば、じゅうぶん です。★ 当たりやすいのは「いつから」「どこで」「なぜ」。 ★ 当たりにくいのは「誰が反対しているか」 です。★ 反対の声は、記事の後ろのほうに来ます ——★ 切られてもよい位置 だからです。★ そこにも、この形の性質が出ています。 ★ 戻すと、ふつうの文になります。 ★ 「熱が西部のオオカバマダラを傷つけたかもしれない」 、★ 「西部のオオカバマダラの将来ははっきりしない」。 ★ 戻せたなら、見出しは読めています。 ★ 印の付かない文は、思ったより少ないはずです。 ★ 数と、団体の名と、いつ何が起きたか——それくらい です。★ 原因の話には、ほとんど全部誰かの名前が付いています。 ★ 原因は、まだ分かっていない からです。 ★ 日本語の記事も、たいてい逆ピラミッドです。 ★ ただし、日本語の記事のほうが一文目が長いことが多い ——★ 「いつ・どこで・誰が・何を」を一文に詰めるから です。★ 英語では、それを二文か三文に分けます。 参考文献 原文の出所: VOA Learning English, "senegal_starts_introducing_english_in_preschools"。パブリックドメイン(アメリカ合衆国政府の制作物)。原文は 1 字も変えていない。https://learningenglish.voanews.com/ 原文の出所: VOA Learning English, "monarch_butterfly_count_nears_30_year_low"。パブリックドメイン(アメリカ合衆国政府の制作物)。原文は 1 字も変えていない。https://learningenglish.voanews.com/