3.17 受動態 I — be + 過去分詞、by、get、SVOO の受動 — Epoché
この課でできるようになること be + 過去分詞で受動の文を作れる。 ★ by を 言わない のがふつうだと知り、言うべき少数の場合を見分けられる。 get の受動と、人を主語に立てる受動を使い分けられる。 日本語の「られる」のうち、 英語にできないもの が分かる。 前提 : 3.16 まで。 第 2 期の型編では、文をつなぐところまでを扱いました。第 3 期では、 同じ出来事をどの側から言うか を選べるようにします。受動態はその最初の道具です。「犬が少年をかんだ」と「少年が犬にかまれた」は同じ出来事ですが、話の中心に置くものが違います。英語は 主語に置いたものを話の中心とみなす ので、どちらを主語にするかが、そのまま「何の話か」を決めます。 そしてもう一つ、受動態には日本語の受身に無い働きがあります。 行為者を文から消せる ことです。誰がやったか分からないとき、言う必要がないとき、言いたくないとき——英語はこの形に逃がします。この課では、その「消す」ほうを主に扱います。 例文で見る まず 10 文を見ます。見てほしいのは by があるかどうか です。10 文のうち by があるのは 2 文だけです。残りの 8 文では、した人が文から消えています。語はどれも第 3 期の範囲(上位 1,980 語)の中にあります。 英文 日本語訳 見るところ My bag was stolen. [1] バッグを盗まれました。 盗った人が分からない。だから言わずに済ませる Her name is known all over the world. [2] 彼女の名は世界中で知られています。 誰が知っているかを言う必要がない Foreign books are sold at the shop. [3] その店では洋書が売られている。 誰が売るかは問題にならない I was invited to the party. [4] 私はそのパーティーに招待された。 招いた人を言わずに済ませた Each child was given a present. [5] それぞれの子供がプレゼントをもらった。 もらう人のほうが主語に立った That's what I was told. [6] 私はそのように教えられた。 言った人を言いたくない、という含みも出る I was moved by her love for other people. [7] 私は彼女の他の人々に対する愛に感動した。 ここは by を言う。何に動かされたかが要るから The play was produced by him. [8] その劇は彼によって演出された。 ここも by が要る。誰の作かが話の中身だから I got lost. [9] 道に迷ってしまいました。 get の受動。起きてしまったことを言う I was born 20 years ago. [10] 私は二十年前に生まれた。 生まれるはこの形のまま。能動では言わない 消えた 8 文を読み直してください。 消えていても困らない はずです。かばんを盗ったのが誰かは分かりませんし、彼女の名前を知っている人を一人ずつ挙げても意味がありません。受動態は、そういうときのための形です。 骨組み この課の規則は一つです。 受動態は、した人を言わないで済ませるための形。 作り方は be + 過去分詞。過去分詞は 3.9 型編 の現在完了で使った形と同じものです。 作り方 — be の形が時を運ぶ 過去分詞そのものには時がありません。時を運ぶのは be のほうです。 These books are used by him. [11] は今のこと、 The boy was helped by me. [12] は過ぎたこと。動詞の本体(使う・助ける)は動かず、 be だけが変わっています。だから受動の文では、 be を見れば時が分かる と覚えてください。 過去分詞の形を間違える人は多くありません。間違えるのは 過去形と取り違える ときです。 was stole と言ってしまう誤りは、現在完了でも同じところでつまずきます( 3.9 型編 )。不規則動詞は、過去形と過去分詞を 二つ並べて 覚えてください。 ★ by はふつう付かない 学校の練習では、能動の文を受動に書き換えます。書き換えると主語が余るので、それを by で後ろに置きます。その練習を何十回もするので、 受動態には by が付くもの だと体が覚えてしまいます。実際は逆です。 この課を組むときに、池の英文から受動の文を 3,532 文 拾って数えました。そのうち by で行為者を言っているのは 423 文(12.0%) しかありません。残りの 9 割近くでは、した人が文から消えています。受動態は 書き換えの結果ではなく、消すための道具 だと思い直してください。 では、いつ by を言うのか。 行為者が話の中身のとき だけです。 The play was produced by him. [8] は、誰が演出したかがその文の言いたいことなので by が要ります。 I was moved by her love for other people. [7] も同じで、何に動かされたのかを言わなければ、文が空になります。逆に My bag was stolen. [1] に by someone を足しても、何も増えません。 足して何も増えないなら、足さない。 get の受動 — 起きてしまったこと be の代わりに get を置く言い方があります。 I got lost. [9] 、 He got caught. [13] 、 They got married. [14] がその形です。 be の受動が 状態 を言うのに対して、 get の受動は そうなった ことを言います。話し言葉で、しかも 自分の思いどおりでないこと に多く出ます——迷う、捕まる、けがをする、結婚する。 硬い文章には出ません。第 8 編「論」で意見文を書くときは be のほうを使ってください。話編(第 6 編)と聞編(第 5 編)では、 get のほうがむしろふつうに出ます。 人を主語に立てる — give 型の受動 目的語を二つ取る動詞( 3.4 型編 の give ・ tell ・ show など)は、受動にするとき どちらの目的語も主語にできます 。英語がふつう選ぶのは 人のほう です。 Each child was given a present. [5] 、 He was given a book by me. [15] 、 That's what I was told. [6] は、どれも人が主語に立っています。 日本語では「それぞれの子供に贈り物が与えられた」と、 物のほう を主語にするほうが自然に聞こえます。英語でこれをやると、訳したような硬い文になります。 人を主語に上げる ——これが英語の癖です。 形は受動、意味は受動でないもの be born は受動の形をしていますが、能動では使いません。 I was born 20 years ago. [10] 、 Where were you born? [16] のように、 形ごと覚える のがいちばん速く済みます。 もう一つ、 He was made to do so. [17] のような be made to は、「させられた」という意味になります。 3.23 型編 の使役で改めて扱うので、ここでは そういう形がある とだけ見ておいてください。 日本語ならどう言うか 同じところから入ります。 日本語にも受身があります。 「かまれた」「知られている」——作り方も似ていて、動詞に「れる・られる」を付けます。ずれるのは 何を受身にできるか と、 受身で何を言えるか です。 「られる」は四つの仕事をしている 「られる」の使い方 日本語の例 英語では 受身 犬にかまれた 受動態(この課) 尊敬 先生が来られた 受動態にしない。ふつうの文で言う 可能 たくさん食べられる can ( 3.10 型編 ) 自発 昔が思い出される 受動態にしない。 remember などで言う 四つのうち、英語の受動態に当たるのは 一行めだけ です。残り三つを受動態にすると、通じないか、別の意味になります。「先生が来られた」を受動にすると「先生が来させられた」と読まれかねません。日本語の「られる」を見たら、 まずどの仕事をしているのか見分けて から英語にしてください。 ★日本語に無い区別 — 迷惑の受身は英語にできない ここがこの課でいちばん大きな差です。日本語は 自動詞も受身にできます 。「雨に降られた」「赤ん坊に泣かれた」「友達に来られた」——どれも「自分が困った」ことを言っています。英語にはこの形がありません。 受動にできるのは目的語を取る動詞だけ だからです。 では「雨に降られた」は英語でどう言うのか。 I was caught in the rain. [18] です。降るほうではなく、 つかまえられた ほうを言います。 catch は目的語を取る動詞なので、受動にできます。日本語が「迷惑だ」という気持ちを受身で運ぶのに対して、英語は 別の動詞を選んで 同じことを言っています。 持ち主の受身も同じです。日本語の「かばんを盗まれた」は、 持ち主 が主語で、かばんは目的語のままです。英語ではこう言えません。 My bag was stolen. [1] のように、 盗まれた物のほう が主語に立ちます。「私は盗まれた」と言うと、盗まれたのが私自身になってしまいます。 日本語に無い区別 — 行為者を消すという働き 日本語で行為者を消したいときは、受身にしなくても済みます。「そう言われている」とも言えますし、主語をただ省いて「そう聞いた」とも言えます。日本語は 主語を言わないで文が立つ からです。 英語は主語を置かないと文が立ちません。だから、行為者を消したいときに 受動態が要る のです。ここが受動態の存在理由です。日本語話者が受動態を使わずに済ませてしまうのは、日本語では主語を落とすだけで足りるからで、 同じ消し方が英語にはない ことに気づいていないからです。 丁寧さの段 この節は毎課置きます。日本語話者の英語には丁寧さの段が一段しかない、という実測があるからです。この課の道具は 角を取るのにそのまま効きます 。受動にすると、 命じている人が文から消える からです。下の四つは、どれも「ここでは吸わないでほしい」を伝えています。 英文 日本語訳 どんな相手に Don't smoke here. [19] ここでタバコを吸わないで。 言い切る。親しい相手か、貼り紙 You are not to smoke here. [20] ここで煙草を吸ってはなりません。 規則として言う。まだ相手に向いている Smoking is not permitted here. [21] ここでの喫煙は許可されていません。 受動にして、行為者も相手も文から消す I'm sorry, you are not allowed to. [22] すみません、禁止されています。 詫びを添える。断っているのが自分でないと示す 一行めは命令で、相手に正面から向いています。二行めは規則として言っていますが、 you が残っているので、まだ相手を指しています。三行めで you が消えました。禁じているのが誰なのかも、禁じられているのが誰なのかも文にありません。 規則だけがそこにある という形です。四行めは詫びを添えて、断っているのが自分の意志でないことを示しています。 日本語でも同じことをしています。「吸わないでください」より「こちらは禁煙となっております」のほうが角が立ちません。「なっております」には、そう決めた人が出てきません。 仕組みまで同じ です。違うのは、日本語が主語を落として作るのに対して、英語は 受動態という形を使って作る ところだけです。 よくある誤り 三つ挙げます。どれも日本語の仕組みを英語にそのまま持ち込んだ形で、下の誤文は Epoché の作例です。書いた英文ではなく、 話した英文 で自分を確かめてください。 自動詞を受動にする。 was happened → happened 受動にできるのは 目的語を取る動詞だけ です。起きる・着く・現れる・死ぬは目的語を取らないので、受動にできません。日本語は「雨に降られた」のように自動詞を受身にできるので、そのまま持ち込むとこの誤りが出ます。 目的語があるか を先に確かめてください。 by をいつも付ける。 by someone → 何も足さない。足して何も増えないなら、足しません。書き換えの練習でついた癖です。行為者が 話の中身のとき だけ by を置いてください。この課で数えたとおり、池の受動でも by が出るのは 12.0% だけです。 過去分詞でなく過去形を置く。 was stole → was stolen be の後ろは過去分詞です。不規則動詞で起きやすく、現在完了( 3.9 型編 )でも同じところでつまずきます。過去形と過去分詞を 二つ並べて 覚え直してください。 実文で通す 第 3 期からは、型の課で扱った形を 読み物の実文 で見ます。作例でも池の短文でもなく、これから読む篇にそのまま出てくる文です。五つ並べました。 by があるのは 一つだけ で、この課で数えた割合とちょうど合っています。 どの篇から 原文 そこで起きていること 8.46 読編 When Dorothy was left alone she began to feel hungry. [23] 置き去りにした人は文にいない。ドロシーの側から言っている 8.61 読編 His back was turned towards Peter [24] 背を向けたのは本人だが、ピーターから見た形で言っている 8.70 読編 is found in many parts of the world [25] 誰が見つけるかは問題でない。説明文の受動はほとんどこれ 8.53 読編 I was turned in among them [26] 馬が語り手。された側からしか言えない出来事 8.47 読編 was waited upon