3.36 ヘッジと確信度 — 言い切れる範囲を示す — Epoché
この課でできるようになること ★ヘッジが 確信度を刻む道具 だと分かる。 ★ 五つの段 を使い分けられる。 ★ 二重にしない 。 ★ 証拠の強さと動詞 を合わせられる。 前提 : 3.35 まで。論は 9.10 まで。 例文で見る 10 文を並べます。行を押すと音が鳴ります。 右の列は、何が起きているか です。 英文 日本語訳 何が起きているか It seems that he knows about it. [1] 彼はそれについて知っている様だ。 ★ It seems that 。 「私にはそう見える」 He seems to be a student. [2] 彼は学生らしい。 同じ意味を seems to be で I think you're probably right. [3] おそらく、あなたが正しいと思います。 ★ probably 。 副詞で刻む He is likely to come. [4] 彼はおそらく来るだろう。 ★ is likely to 。 probably と同じくらい He is likely to be late again. [5] 彼はまた遅刻しそうだ。 同じ形。 繰り返しの見通し He may well be right. [6] たぶん彼の言うことはただしいだろう。 ★ may well 。 may より強い Well, you may be right. [7] なるほど、君の言うとおりかもしれない。 ★ 譲歩の may ( 10.10 作編 )。「かもしれないが」 He may have said so. [8] 彼はそう言ったかもしれない。 ★ may + 完了 。過去のことを推す( 3.26 型編 ) You might be late for school. [9] 君は学校に遅れるかもしれない。 ★ might 。 may より一段弱い The strong wind indicates that a storm is coming. [10] 強風は嵐が近づいていることを示している。 ★ 証拠が示す 。書き手は主語に出てこない 骨組み ★言い切らないのは、正確だから ★ これが、この課でいちばん大事なところ です。 どう読めるか 本当は ★ 自信が無いのだろう ★ ここまでしか言えない、と示している 責任を逃れている ★ あとで違ったときに直せるようにしてある ★ 学問の文章は、あとで誰かに直されることを前提に書かれます。 ★ だから、どこまでが確かで、どこからが見込みかを刻んでおく のです。 8.104 読編 の記事に、その形がそのまま出ていました—— it is unclear what caused such a sharp decrease [11] 。★ 「はっきりしない」と書いてあります。 ★ この一文があるから、残りの数が信じられます。 ★ 分からないことを分からないと書く人は、分かったことも正直に書く ——★ 読む人は、そう受け取ります。 ★五つの段 どのくらい 言い方 どういうときに ★ いちばん強い will / is ★ 言い切る 強い is likely to / probably たぶん ★ まんなか may / seems ★ 学術でいちばん使う 弱い might ありうる程度 ★ いちばん弱い could ★ 可能性を挙げただけ ★ まんなかの may が、学術でいちばん使われます。 ★ 「ありうる。けれども、確かめてはいない」 という段です。 ★ 段を飛ばさないでください。 ★ 強い段と弱い段を同じ段落で混ぜると、読む人はどちらを信じてよいか分からなくなります。 ★ 一つの文章の中では、上から二つくらいの段で通す のがふつうです。★ そして、いちばん大事な主張のところだけ、一段上げます。 ★二重にしない ★ may possibly のように重ねても、弱くなりません。 ★ ただ、曖昧になるだけ です。 どう書くか 読む人にどう届くか ★ 一つだけ使う ★ この段だ、と決まる ★ 二つ重ねる ★ どの段か分からない ★ 一つも使わない ★ 言い切っている ★ いちばん下も大事です。 ★ ヘッジを使わなければ、言い切ったことになります。 ★ だから、使わないことも一つの選択 です。 ★証拠の強さと動詞を合わせる 動詞 どういう意味か 強さ show ★ 証拠が直に示す 実験の結果など indicate 証拠が指し示す ★ まんなか suggest ★ 証拠がほのめかす ★ いちばん多く使う 例文の十番目—— The strong wind indicates that a storm is coming. [10] 。★ 主語は「強い風」です。 ★ 書き手は、文に出てきません。 ★ これが、学術の文の形 です。★ 「私はこう思う」ではなく、「この証拠がこう示している」。 ★ 3.35 型編 の受動と同じで、書き手を文から消しています。 ★ だから、動詞の選び方が判断そのもの になります。★ show と書けば「証明した」に近く、 suggest と書けば「そう読める」にとどまります。 日本語ならどう言うか ★ 日本語にもヘッジはあります。 「〜と思われる」「〜のようだ」「〜だろう」。★ けれども、一つ大きな違いがあります。 日本語 英語 誰が思っているか 〜と思われる It seems that … ★ 日本語では消える/英語では「私」 〜のようだ seems to be どちらも「私には」 〜だろう probably / will どちらも「私」 ★ 一行目が要注意 です。★ 日本語の「思われる」は、誰が思っているのかを消します ( 3.35 型編 の受動と同じ働き)。 ★ 英語の seem は、そうではありません。 ★ 「私にはそう見える」 という意味です。★ だから、「〜と思われる」を It seems にすると、書き手が一人、文の外に立ってしまいます。 ★ これは悪いことではありません。 ★ むしろ、英語のほうが正直 です。★ ただ、訳すときには覚えておいてください。 丁寧さの段 ★ ヘッジは、丁寧さの道具でもあります。 ★ 相手の言うことを全部は否定しないで済む からです。 英文 日本語訳 どう効くか Well, you may be right. [7] なるほど、君の言うとおりかもしれない。 ★ 譲歩 。「かもしれないが」で受けてから、自分を言う( 10.10 作編 ) He may well be right. [6] たぶん彼の言うことはただしいだろう。 ★ 相手を強く認める It seems that he knows about it. [1] 彼はそれについて知っている様だ。 ★ 断定を避けて伝える I think you're probably right. [3] おそらく、あなたが正しいと思います。 自分の考えにも段を付ける ★ 一つめが、議論でいちばん使う形 です。 6.26 話編 で 「反対するときほど、先に認める」 と置きました。★ may は、その「先に認める」を一語でやります。 ★ ただし、使いすぎると何も言っていないことになります。 ★ 一段落に一つ ——★ いちばん譲れないところの手前に置いてください。 よくある誤り 三つ挙げます。下の誤文は Epoché の作例です。 ヘッジを二重にする。 It may possibly rain. → It may rain. の形に。★ 重ねても弱くなりません。 maybe と may be を混ぜる。 He maybe right. → He may be right. の形に。★ 一語の maybe は副詞 です。★ 動詞の場所には置けません。 「かもしれない」を can で言う。 It can rain tomorrow. → It may rain tomorrow. の形に。★ can は「ありうる性質だ」であって、「今回そうなるかもしれない」ではありません。 実文で通す 読 D の記事二篇から、ヘッジを四つ引きました。 どの篇から 原文 どの段か 8.104 読編 heat above 37.7 degrees Celsius in the western states last year might have slowed breeding ★ might + 完了 。弱い段 8.104 読編 pesticides might be on the remaining plants 同じ段。★ 確かめていない 8.104 読編 The group also blames reductions in habitat and climate change ★ ヘッジが無い 。★ 団体が言い切っている 8.103 読編 It is part of a plan to better connect Senegal with the rest of the world [12] ★ ヘッジが無い 。事実として書いている ★ 一つめと二つめは might 、三つめと四つめはヘッジ無し です。★ 使い分けが、はっきりしています。 ★ 原因の話には might が付き、起きたことには付いていません。 ★ 記事を書いた人は、どこまでが確かかを知っていて、それを刻んでいます。 ★ だから、読むときはヘッジのある文とない文を分けてください。 ★ ヘッジのある文は、まだ決まっていないこと です( 9.8 論編 )。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 English Skills: Hedging Language Swansea University (2:31, 2022) ヘッジ(言い切らない書き方)。スウォンジー大学 Hedging University of York Writing Centre (3:20, 2021) 同じ主題をヨーク大学ライティングセンターから 練習 「例文で見る」の 10 文を 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。★ ヘッジの語を、少し強めに読む。 ★ 六つめと九つめを続けて読む。 ★ may well と might の距離 を耳で確かめてください。 ★ 「実文で通す」の四つを、段の順に並べ直す。 自分が書いた 10.10 作編 の賛否の段落を読み返し、★ ヘッジを数える。 ★ ゼロなら、全部言い切っています。 ★ 三つ以上なら、何も言っていないかもしれません。 この課のまとめ ★ 学術の文が言い切らないのは、言い切れる範囲を示しているから。 ★あとで直されることを前提に書かれている。 ★ 分からないことを分からないと書く人は、分かったことも正直に書く と読まれる( 8.104 読編 )。 ★ 五つの段 —— will > is likely to > may > might > could 。★まんなかの may を学術でいちばん使う。 ★ 段を飛ばさない。 一つの文章では上から二つくらいの段で通し、いちばん大事なところだけ一段上げる。 ★ 二重にしない。 重ねても弱くならず、ただ曖昧になる。★使わないことも一つの選択——言い切ったことになる。 ★ 証拠の強さと動詞を合わせる —— show > indicate > suggest 。 ★ 主語は証拠。書き手は文に出てこない ( 3.35 型編 )。★だから動詞の選び方が判断そのものになる。 ★ 日本語の「〜と思われる」は誰が思うかを消す。 ★英語の seem は「私にはそう見える」なのでずれる。 ★ ヘッジは譲歩の道具でもある ( 6.26 話編 ・ 10.10 作編 )。★一段落に一つ、いちばん譲れないところの手前に置く。 次の課へ 次の課は 3.37 、 定義の文型 です。★ ここまでの四課は、学術の文を「ほどく」道具でした。 ★ 次の三課は、学術の文を「組む」型 です—— 定義・分類・因果 。★ どれも 9.3 論編 から 9.6 論編 で日本語で考えた道具 です。★ それを、英語の形で置き直します。 答え 「練習」の四つの答えです。 ★ ヘッジの語は、英語では強く読みます。 ★ 弱く読むと、聞く人はヘッジに気づきません。 ★ 「かもしれない」は、はっきり言う ——★ ここが日本語と逆 です。 ★ may well は「たぶんそうだ」、 might は「そうかもしれない」。 ★ 二段も違います。 ★ 同じ may の形をしているのに です。 ★ 強い順に ——四つめ(ヘッジ無し)/三つめ(ヘッジ無しだが、★ 「団体が」と誰の判断かは書いてある )/一つめ・二つめ( might )。★ 三つめが面白いところ です。★ ヘッジは無いのに、誰が言っているかを書くことで同じ働きをさせています ( 12.10 知編 )。 ★ ゼロも三つ以上も、直したほうがよい です。★ 賛否の段落では、譲歩のところに一つ ——★ それだけで足ります。 ★ 自分の主張にヘッジを付けると、主張が消えます。 参考文献 Tatoeba 文 #291437(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/291437 Tatoeba 文 #427713(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/427713 Tatoeba 文 #2408644(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/2408644 Tatoeba 文 #289421(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/289421 Tatoeba 文 #288063(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/288063 Tatoeba 文 #40580(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org