8.36 Let's Agree to Disagree — 町か田舎か(VOA の台本) — Epoché
この篇でできるようになること 認めてから反対する 言い方を見分けられる。 agree と言っているのに 反対している 文を読み違えない。 意見が 比べる形 で言われることに気づける。 所有代名詞 ( mine ・ hers )が分かる。 前提 : 8.35 まで。 読む前に 題材は 落とし物のかばん から始まります。アナが道でかばんを拾い、通りかかる人に「これはあなたのですか」と聞いて回ります。持ち主のフィルが見つかり、そこから 町と田舎のどちらがよいか という話になります。 気をつけるところを三つ置きます。 一つめ、 持ち主をたずねる言い方 です。はじめの四つのやりとりは、ぜんぶ Is this bag yours? とその答えでできています。答えには It's not mine. It might be hers. のように、 「〜のもの」を一語で言う代名詞 が出ます。下の「構文の骨」で表にします。 二つめ、 agree と disagree です。この二語が話の背骨です。ただし I agree と言ったあとに 反対が来る ところが二か所あります。そこで取り違えると、話がまるごと逆になります。 三つめ、 意見がほとんど比べる形で言われる ことです。 more + 名詞 + than が何度も出ます。 8.32 読編 の教訓と同じ形です。 意見も、比べることで立ちます 。 原文 原文は別の文書にあります(作品ページの「原文」)。全部で 436 語、せりふは 26 本です。書き出しはこうです。 Anna: You know, I am from the country and sometimes I miss it. 先に原文だけを、 辞書も語釈も見ずに 最後まで読んでください。読み終わったら、 二人は結局どちらが正しいと決めたか を自分に聞いてみてください。 全訳 原文の全訳です。この課程のために、原文に沿って訳しました。番号は原文の段落の番号で、原文と行き来できます。 アナ:あのね、私は田舎の出身で、ときどき田舎が恋しくなるんです。でも、都会の暮らしが本当に好き! 都会が大好きです。あら、見て。誰かがかばんをなくしたみたい。あの人たちのかもしれない。すみません。このかばんはあなたのですか? ジル先生:いいえ。私のではありません。あの女の人のかもしれません。 アナ:すみません。このかばんはあなたのですか? サラ:いいえ。私のではありません。あの男の人のかもしれません。 アナ:ありがとう。こんにちは。このかばんはあなたのですか? フィル:はい、ぼくのです。旅行の荷物が全部入っているんです。ありがとう、ありがとう! アナ:大丈夫ですか? なんだか……落ち着かないみたい。 フィル:ええ、ワシントンD.C.に来るのは初めてなんです。ぼくは田舎の小さな町の出身で。ちょっと途方に暮れていて。 アナ:私も田舎の出身なんです! 分かります。初めてここに来たとき、私も途方に暮れていました……いつも。 フィル:それで、あなたは田舎に住むのと都会に住むのと、どちらが好きですか? アナ:私は都会に住むのが好きです。 フィル:どうして? アナ:都会はわくわくするから! 田舎より文化があります。博物館やレストランがたくさんあります。毎晩、お芝居や音楽があります。それに、仕事も多いんです。だから私はここにいるんです。 フィル:うーん、それは賛成です。都会のほうが文化はあるし、仕事も多いかもしれない。でも、田舎のほうが自然が多い! 静かで美しい。木も山も多いし、空気がきれいです。ハイキングやキャンプにも行けます。都会は美しくない。うるさくて汚いです。 アナ:それには反対です。いろいろな建物がみんな美しいと思います。それに、いろいろな人を眺めるのが好きなんです。 フィル:それも違うところですね。田舎の人は人なつっこい。いつも「こんにちは!」と言います。ここでは誰も「こんにちは」と言わない。都会の人は失礼だと思います。 アナ:うーん、それは賛成です。田舎の人は人なつっこい。でも、都会の人が失礼だとは思いません。ただ忙しいだけだと思います。 フィル:なるほど、そのとおりですね。 アナ:私を見て。私は都会に住んでいて、あなたに「こんにちは」と言いましたよ。 フィル:でも、あなたは田舎の出身でしょう。 アナ:いい考えがあります。人に「こんにちは!」と言いましょう――たくさんの人に! フィル:えっ? どうして? アナ:だって、私たちが「こんにちは」と言えば、その人たちもほかの人に「こんにちは」と言うかもしれないでしょう……こんにちは! フィル:……そして、その人たちがもっと多くの人に「こんにちは」と言う! それはすばらしい考えですね! あなたがぼくのかばんを見つけてくれてよかった。 アナ:さあ。人に「こんにちは」と言いに行きましょう。 アナ:人と意見が合う必要はありません。相手には相手の意見があります。私たちには私たちの意見があります。そして、私たちがよく言うように、「意見が合わないということで合意する」ことはいつでもできるんです! それではまた次回……! こんにちは! 語釈 帯の外の語は 21 語です。下に 全部 出します。 町と田舎を言い分ける形容詞 (やかましい・汚れた・静かな・人あたりのよい・無作法な)が並んでいるのが、この篇の特徴です。 語(品詞) 意味 注 C en 名 D.C. の一部。ワシントンの正式な名の一部 Excuse en 動 許す。 Excuse me で「失礼ですが」 Excuse me, could you tell me the time? すみませんが、今何時か教えていただけますか。 Washington en 名 ワシントン anna en 名 アナ。この台本の主人公 dirty en 形 汚れた Please wash your dirty clothes before dinner. 夕食前に汚れた服を洗ってください。 disagree en 動 意見が合わない I disagree with your opinion about this plan. 私はこの計画についてのあなたの意見に賛成しません。 excuse en 動 許す Please excuse my late arrival to the meeting. 会議への遅刻をお許しください。 friendly en 形 人あたりのよい Our new neighbor is very friendly and helpful. 私たちの新しい隣人はとても人あたりがよく親切です。 glad en 形 うれしい I am glad to see you today. 今日あなたに会えてうれしいです。 hello en 間 こんにちは She waved and said hello to her friend. 彼女は手を振って友達にこんにちはと言いました。 hiking en 名 山歩き We went hiking in the mountains last weekend. 私たちは先週末山でハイキングに行きました。 jill en 名 ジル。通りかかる人の名 museums en 名 博物館(複数) We visited several museums during our trip to Paris. 私たちはパリ旅行中にいくつかの博物館を訪れました。 nervous en 形 落ち着かない She felt nervous before her big presentation. 彼女は大事な発表の前に落ち着かない気持ちになりました。 noisy en 形 やかましい The street outside was noisy all night long. 外の通りは一晩中やかましかったです。 oh en 間 ああ He quietly whispered oh no under his breath. 彼は小声で「ああ、しまった」とつぶやきました。 peaceful en 形 静かで穏やかな The lake was peaceful in the early morning. その湖は早朝、静かで穏やかでした。 phil en 名 フィル。かばんの持ち主の名 rude en 形 無作法な It is rude to interrupt someone while speaking. 話している人の言葉をさえぎるのは無作法です。 sarah en 名 サラ。通りかかる人の名 theater en 名 演劇、芝居 We watched a new play at the theater. 私たちは劇場で新しい劇を見ました。 構文の骨 ★反対する前に、まず認める この篇でいちばん大事な形です。二度出ます。 誰が 言っていること フィル Well, I agree. There is more culture in the city and there might be more jobs. But the country has more nature! アナ Well, I agree. Country people are friendly. But I don't think city people are rude. どちらも まったく同じ組み立て です。 その順 何をしているか 一つめ Well, I agree. ——まず 認める 二つめ 相手の言ったことを 言い直してうなずく 三つめ But ——そこから 反対する 日本語話者がいちばん取り落とすのがここです。 I agree を見ると「賛成した」と思って、そのあとの But を 軽く読んでしまいます 。ところが、 言いたいのは But のうしろ です。前半は 反対するための前置き にすぎません。 なぜこんな言い方をするのか。 いきなり否定すると、話が終わってしまう からです。まず認めれば、相手は聞く気を保ちます。英語の議論はこの形で進みます。覚えておくと、読むときだけでなく 自分が言うときにも使えます 。 この篇の題も、そこから来ています—— agree to disagree 。「 意見が合わないということで、合意する 」。だからこの話に 勝ち負けはありません 。最後にアナがそう言って締めます。 もう一つ、短い言い方も覚えてください。 That's a good point. 「そこはもっともだ」。 相手の一点だけを認める 言い方です。全部に賛成しなくても言えるので、話をつなぐのに便利です。 ★意見は比べる形で言う 二人の意見は、ほとんどが more + 名詞 + than の形です。 誰が 比べていること アナ(町) It has more culture than the country アナ(町) there are more jobs フィル(田舎) the country has more nature フィル(田舎) There are more trees and mountains どれも「 あちらより多い 」と言っています。「町はよい」ではなく「町は田舎より〜が多い」。 8.32 読編 で置いたとおりです—— 比べないと、よい悪いは言えません 。 ただし、比べていない言い方も一つだけあります。 The city is not beautiful. It's noisy and dirty. ここだけ 言い切り です。比べていません。だからこの一文は きつく響きます 。実際、このすぐあとにアナが I disagree. と返します。 比べない言い方は、角が立つ ——この篇はそれを実演しています。 ★「〜のもの」を一語で言う 書き出しの四つのやりとりは、落とし物の持ち主をたずねる場面です。ここに 所有代名詞 が集まっています。 原文 意味 元の言い方 Is this bag yours? あなたのですか your bag It's not mine. わたしのではない my bag It might be hers. 彼女のかもしれない her bag It might be his. 彼のかもしれない his bag that's mine それはわたしのだ my bag 日本語の「わたしの」は、うしろに名詞が無くても言えます。英語もそうですが、 形が変わります —— my → mine 、 your → yours 、 her → hers 。 3.4 型編 で置いた形が、ここで四つ続けて出ます。 終わりのほうにも一つ出ます。 They have their opinions. We have ours. ours は our opinions のことです。 同じ名詞をくり返さない ための形で、ここでは二つの文を きれいに釣り合わせて います。 訳 第 2 期の読み物に 文ごとの訳は付けません 。 場面ごと の要旨を置きます。 どこ その場面 落とし物 アナは田舎の出で、ときどき恋しくなるが、町の暮らしが好きだと言う。道で落とし物のかばんを見つけ、通りかかる人に持ち主をたずねる。ジルもサラも自分のではないと答え、三人めのフィルのものと分かる 町か田舎か フィルは田舎の小さな町から来たばかりで、落ち着かない。アナも田舎の出なのでその気持ちが分かると言う。フィルが「町と田舎、どちらの暮らしが好きか」と聞く アナの言い分 町がよい。田舎より文化がある。博物館も食べ物屋も多い。毎晩、芝居も音楽もある。仕事も多い。だからここにいる フィルの言い分 それは認める。文化は町のほうがあるし、仕事も多いだろう。だが自然は田舎のほうがある。静かで美しく、木も山も多い。空気もきれい。山歩きも野宿もできる。町は美しくない。やかましく汚い アナの言い返し それには反対。さまざまな建物が美しいと思うし、いろいろな人を眺めるのも好きだ 人の話 フィルは、田舎の人は人あたりがよく、いつも挨拶をするのに、ここでは誰も挨拶をしない、町の人は無作法だと言う。アナは「田舎の人が人あたりがよいのは認める。だが町の人が無作法だとは思わない。忙しいだけだ」と返す。フィルは「それはもっともだ」と受ける 締め アナが「二人で挨拶をして回ろう」と言い出す。挨拶が人から人