9.24 決めたことを残す — 決定・保留・反対 — Epoché
この課でできるようになること ★ 決定を、一行で切り出せる 。 ★ 決まらなかったことに節を与えられる 。 ★ 宿題を「だれが・何を・いつまでに」で書ける 。 ★ 反対の声の残し方 を三つに分けられる。 前提 : 9.23 まで。読は 8.192 まで。語は 4.76 まで。 道具 ★ 議事録は、 会議の記録ではありません 。 ★ 会議に いなかった人 が読むもの です。 ★ だから、 やりとりを順に写しても役に立ちません 。 ★ いなかった人が知りたいのは、 四つだけ です。 何を残すか なぜ要るか ★ 一 決まったこと ★ 動いてよいかが分かる ★ 二 決まらなかったこと ★ 待つべきものが分かる ★ 三 宿題 ★ 自分の名があるか確かめられる ★ 四 次の会 ★ いつ続きがあるか分かる ★決まらなかったことに、節を与える ★ 二つめが、 いちばん落とされます 。 ★ 決まらなかったことは 書くことが無いように見える から です。 ★ けれども、 決まらなかったことこそ書く値打ちがあります 。 ★ 書かないと、 次の会でもう一度同じ話を始めます 。 どう書くか 次の会はどうなるか ★ 書かない ★ 最初からやり直す ★ 「保留」とだけ書く ★ なぜ保留かをまた議論する ★ 保留の理由と、いつ決めるかを書く ★ その日に決める 宿題は、三つで書く ★ 宿題の行に要るのは、 三つ だけ です。 何を書くか 落とすとどうなるか ★ だれが ★ だれもやらない ★ 何を ★ 違うものが出てくる ★ いつまでに ★ いちばん遅い人に合う ★ 「だれが」は、 組の名ではなく人の名 にしてください。 ★ 組の名を書くと、 組の中でもう一度割り振りが要ります 。 ★反対の声の、三つの行き先 ★ 会議で出た反対は、 三つのうちどれか になります。 ★ 8.184 読編 のフォレットが、 三つの語で言い分けました 。 どの行き先か その人はどうなるか ★ overruled (覆す) ★ 負けた。言い分は残らない ★ absorbed (飲み込む) ★ 丸め込まれた。形だけ残る ★ integrated (組み入れる) ★ 言い分が、決定の中に生きている ★ 議事録が書き分けられるのは、 この三つのうちどれだったか です。 ★ 書き分けないと、 全部「合意された」になります 。 実例 ★ 8.190 読編 の議事録から五つ、 8.184 読編 のフォレットから三つ取ります。 一つめ — 決定を、一行で切り出す ★ この議事録は、議論を書いたあとで、 決定だけを別の行に置きます 。 Decision: the first trial run will begin on 20 May [1] ★ 「決定——最初の試験は五月二十日に始まる」。 どこに書くか 読む人はどうするか ★ 議論の文の中 ★ 探す ★ 別の行に、印を付けて ★ 拾える ★ Decision: の一語が 目印 になっています。 ★ いなかった人は、 この語だけ拾って読みます 。 ★ そして、 決定の文には理由が入っていません 。 ★ 理由は、 その上の議論に 書いてあります ——★ 9.23 論編 の 層の考え方 と同じ です。 二つめ — 決まらなかったことに、節を与える ★ この議事録には、 第 6 節 があります。 Points not decided [1] ★ 「決まらなかった点」。 ★ 節の題そのものが、 これは決まっていないという宣言 です。 ★ 中身は二つ。 ★ 一つめは、 いつ決めるか まで書いてあります。 this cannot be decided before the trial ends [1] ★ 「これは試験が終わる前には決められない」。 ★ そして、 六月の会の議題に載せる と続きます。 何を書いたか 何が防げるか ★ 決まらなかった、と書く ★ 決まったと思われること ★ なぜ決まらないかを書く ★ 次の会で同じ議論を始めること ★ いつ決めるかを書く ★ そのまま忘れられること 三つめ — 開いたままにする、と書く ★ 二つめの保留は、 もっと短く 書かれています。 A second point was left open [1] ★ 「第二の点は開いたままにされた」。 ★ left open —— 開いたまま 。 ★ 「決められなかった」でも「先送りした」でもありません ——★ 「まだ閉じていない」 です。 ★ そのあとに、 だれが何を調べるか まで書いてあります ——★ 契約の文言を確かめ、何が外に出せて何が出せないかを報告する、と。 ★ つまり、 開いたままにするにも手続きが要る のです。 四つめ — 宿題は、三つで書く ★ 第 7 節が、 宿題の節 です。 ★ 一行めを見てください。 Clean the room and set the sensors [1] ★ 「部屋を清め、感知器を据える」。 ★ そのうしろに、 だれが と いつまでに が続きます ——★ 試験の台所、五月十九日まで。 ★ 四つの宿題すべてが、 同じ形 で書かれています。 ★ 形をそろえると、 自分の名を探すのが速くなります 。 ★ もう一つ。 ★ 四つめの宿題は、 次の会の議題を作ること です。 ★ 保留になった件を 最初の議題に置く と指定してあります ——★ ここで、 第 6 節と第 7 節がつながります 。 五つめ — 議長が、問いを小さくする ★ 9.21 論編 でも見た場面 です。★ こんどは、 議事録の書き方 として見ます。 The chair agreed that the first trial is meant to show whether the unit works in daily use [1] ★ 「議長は、最初の試験が、その機械が日々の使用で働くかを見るためのものだと認めた」。 ★ ここで大事なのは、 議長が『認めた』と書いてあること です。 どう書くか その委員の発言はどうなるか ★ 書かない ★ 覆された( overruled ) ★ 「意見が出た」とだけ書く ★ 飲み込まれた( absorbed ) ★ 認めた、と書き、範囲を直す ★ 組み入れられた( integrated ) ★ 「十一回では少なすぎる」という反対が、 試験の目的そのものを書き直させました 。 ★ それが議事録に残っている ——★ これが、 組み入れる の実物 です。 六つめ — フォレットの、三つの語 ★ 8.184 読編 の脚註に、 この課の芯 があります。 neither overruled nor absorbed but integrated [2] ★ 「覆されるのでも飲み込まれるのでもなく、組み入れられる」。 ★ その前に、 条件 が書いてあります。 every man should maintain his point of view until it has found its place in the group thought [2] ★ 「だれもが、自分の見方がその集まりの考えの中に居場所を見つけるまで、その見方を保つべきである」。 いつ引き下がるか 何が起きるか ★ 居場所を見つける前 ★ 飲み込まれる ★ 居場所を見つけてから ★ 組み入れられる ★ 6.49 話編 の交渉で置いた「譲る順」と つながります 。 ★ 早く譲ると、 譲ったことすら記録に残りません 。 七つめ — 歩み寄りも、答えではない ★ フォレットは、 歩み寄り も退けます。 nor must a compromise between the two be sought [2] ★ 「二つのあいだの歩み寄りが求められてもならない」。 ★ なぜか。 ★ 歩み寄りは、 両方を半分ずつ捨てる から です。★ 捨てた半分は、 どこにも残りません 。 どのやり方か 何が残るか ★ どちらかに決める ★ 片方だけ ★ 歩み寄る ★ 両方の半分 ★ 組み入れる ★ 両方の芯 ★ 三つめは、 いつもできるわけではありません 。 ★ できないときは、 できなかったと書く ——★ それが、この課の作法 です。 八つめ — 記録が、次の会を作る ★ 議事録の最後は、 次の会の日 で終わります。 The chair closed the meeting at 11:05 [1] ★ 「議長は十一時五分に会を閉じた」。 ★ 始まりの時刻も、冒頭に書いてあります ——★ 十時。 ★ つまり、 一時間五分で三つを決めた という記録 です。 ★ 時刻を書くのは形式ではありません。 ★ 次に同じ会を開く人が、 どれだけ取ればよいかを知るため です。 言い回し ★ 議事録の定型 を、 8.190 読編 からそのまま取ります。 決める・保留する どんな形か 何をしているか Decision: … ★ 決定を切り出す印 Points not decided ★ 決まらなかったことの節の題 … was left open ★ まだ閉じていないと書く … will be put on the agenda for the June meeting ★ いつ決めるかを書く ★ 四つを順に使えば、 保留の一件が三行で書けます 。 ★ 三行で書けるものを書かないでおくと、 次の会が三十分延びます 。 反対を残す どんな形か どの行き先か The chair agreed that … ★ 組み入れた A member asked whether … ★ 問いとして残した … but the point was not taken further ★ 覆したと、正直に書く ★ 三つめを書ける議事録は、 ほとんどありません 。 ★ けれども、 書いたほうがあとで強い です ——★ その件が問題になったとき、 指摘は出ていたと示せる から です。 やってみる ★ 手元の議事録を、四つに分ける 。★ 決まったこと/決まらなかったこと/宿題/次の会 。★ どれかが空なら、 その会は続きます 。 ★ 保留を三行で書く 。★ 何が保留か/なぜ保留か/いつ決めるか 。★ 三行めが書けないなら、 だれが決めるのかも決まっていません 。 ★ 宿題を書き直す 。★ 組の名で書いてあるものを、 人の名 に直す。 ★ 直せないものは、 会の中で決め損ねています 。 ★ 直近の会で出た反対を一つ思い出す 。★ 覆した/飲み込んだ/組み入れた のどれだったかを決め、★ 議事録にどう書いてあるかと比べる。 練習 「実例」に引いた議事録の四文(決定/決まらなかった点/開いたまま/宿題)を 続けて音読 する。3 周する。3 周目は音声に重ねて シャドーイング する。 ★ neither overruled nor absorbed but integrated を そらで言えるまで 音読する。 ★ neither …… nor …… but の 三拍 をはっきり分けてください。 「言い回し」の七つの形を音読する。★ 決める四つと反対を残す三つを、 続けて 読む。 ★ 議事録は、 声に出すと長さが分かります 。 AI への頼み方 ★ 議事録は、 AI に下書きさせてよい文書 です。 ★ ただし、 決定と保留の切り分けは人がやります ——★ その場にいた人にしか分からないから です。 何を頼むか 頼み方の型 ★四つの層に分けさせる 「この記録を、 決まったこと・決まらなかったこと・宿題・次の会 の四つに分けてください。★ どれにも入らない文はそのまま残して ください」 ★宿題の欠けを指させる 「宿題の行のうち、 だれが・何を・いつまでに のどれかが抜けているものを挙げてください」 ★反対がどうなったか問わせる 「この会で出た反対や疑問のうち、 決定に反映された跡が見えないもの を挙げてください」 ★ 一つめの「どれにも入らない文はそのまま残して」が要点 です。★ 消させると、 分類しにくい発言から消えます ——★ そして、 分類しにくい発言こそ反対の声 です。 ★ 三つめは、 フォレットの三つを機械に当てさせる 頼み方 です。★ 「反映された跡が見えない」と言われたものが、 覆したか飲み込んだか です。 第 7 期の論編、四つ この期の四課で置いたものを、まとめておきます。 どの課 何を置いたか 9.21 論編 ★ 検める — 数字に四つ問う 9.22 論編 ★ 数で論じる — 相関・基準・捨てたもの 9.23 論編 ★ まとめて書く — 要旨・本体・但し書き ★ この課 ★ 決めたことを残す ★ 五つの期を並べると、線が見えます。 どの期か 何をする期か ★ 第 3 期 ★ 組み立てる ★ 第 4 期 ★ 疑う ★ 第 5 期 ★ 人に渡す ★ 第 6 期 ★ 長いものを、順に組む ★ 第 7 期 ★ 決める人に渡す ★ 第 6 期までの相手は、 読む人 でした。 ★ 第 7 期の相手は、 決める人 です。 ★ 違いは一つ ——★ 決める人は、 読んだあとに何かをします 。 ★ だから、 書き手が何を書かなかったかが、そのまま結果になります 。 ★ これが、第 7 期の論編でずっと置いてきたこと です——★ 範囲、捨てたもの、扱わないもの、決まらなかったこと。 ★ 四課とも、 書かなかったものを書く話 でした。 この課のまとめ ★ 議事録は、いなかった人のためのもの 。やりとりを順に写しても役に立たない。 ★ 残すのは四つ ——決まったこと・決まらなかったこと・宿題・次の会。 ★ 決定は一行で切り出す 。 Decision: の印を付け、理由は上の議論に置く。 ★ 決まらなかったことにも節を与える 。何が・なぜ・いつ決めるかの三行で足りる。 ★ left open は「まだ閉じていない」 。先送りではなく、開いたままにする手続き。 ★ 宿題は「だれが・何を・いつまでに」 。「だれが」は組の名ではなく人の名。 ★ 反対の行き先は三つ ——覆す・飲み込む・組み入れる(フォレット)。 ★ 組み入れられた反対は、決定の形を変えている 。議事録にその跡が残る。 ★ 歩み寄りは答えではない 。両方の半分を捨てると、捨てた半分はどこにも残らない。 ★ 組み入れられないときは、できなかったと書く 。覆した