5.42 論文の発表 II — 専門語は、かたまりで置いておく — Epoché
この課で聞き取れるようになること ★ 二種類の聞き取りにくさ を、その場で見分けられる。 ★ 専門語のかたまり を、終わりの語だけで受け取れる。 ★ 言い直し を待って、取り落としを拾える。 ★ 図表への言及 で目を上げられる。 前提 : 5.41 まで。 聞く前に ★ 学会発表の最後の一枠を聞きます。 ★ 発表者は、 二通りの声 で話します ——★ ふだんの話しことば と、★ 論文からそのまま読み上げる文 です。★ この切り替わりが聞き取れれば、発表はほとんど追えます。 どちらの声か 何で分かるか 聞く側の構え ★ ふだんの話しことば ★ 語が短く、言い直しが入る ふつうに聞く ★ 論文から読み上げる文 ★ 語が急に長くなる ★ かたまりで受ける ★ 5.33 聞編 で「引用のあいだは語が急に古くなる」と置きました 。★ 学会では古くなるのではなく、 急に長くなります 。 ★ 合図は同じで、 語の手ざわりが変わること です。 聞き取りにくさは、二種類ある ★ 台本の中の二つの文を、道具で測りました。 ★ 手法の一文は 24 語のうち 5 語が帯の外 です。★ 結果の一文は 8 語で、帯の外は 0 語 です。 どの一文か 語数と帯の外 なぜ取れないか ★ 手法の一文 24 語・外 5 語 ★ 知らない語が続く ★ 結果の一文 8 語・外 0 語 ★ 数二つと単位一つが詰まる ★ 結論の一文 23 語・外 3 語 ★ 長い上に、外の語が飛ぶ ★ 結果の一文は、 知らない語が一つもありません 。 ★ それでも取れません ——★ 語は八つしかないのに、その間に数が二つと単位が一つ入る からです。 ★ だから、手の打ち方も二通りです。 ★ 知らない語は かたまりで置いておく 。★ 数と単位は その場で書き取る 。★ この二つを取りちがえると、書き取ろうとして聞き落とし、置いておこうとして数を失います。 専門語は、終わりの語だけ取る ★ 手法の一文の頭を聞いてください。 ★ 6 語つながった塊が来ます ( propensity score–matched retrospective cohort study )。★ ここで止まってはいけません。 ★ 塊の いちばん後ろの語 を取ります —— study 。★ その前の cohort も取れれば、 「一団を追った調べ」 だと分かります。 ★ 前の 4 語は 置いておいてよい のです。 ★ 英語の長い名詞の塊は、 後ろが本体・前が飾り です。 ★ 日本語と同じ向き です——「さかのぼって一団を追った調べ」の「調べ」が本体。★ だから 最後まで待てばよい のです。 言い直しが必ず来る ★ 塊のすぐあとを聞いてください。 ★ 発表者は自分で言い直します —— That is a long name for a simple idea. [1] 。★ そして次の一文で、 やったことを平たく言います 。 ★ 学会の発表はこの順で組まれます ——★ 専門語 → 言い直し 。★ 聞く相手が自分の分野の外にもいる と分かっているからです。★ だから、専門語を取り落としても あわてなくてよい のです。 ★ 目的のところも同じ形です。 ★ 論文の一文のあとに、 In plain words, we asked whether people who are alone die sooner. [1] と置かれます。 ★ 聞くときは、 言い直しのほうを書き取ってください 。 ★ そちらが、あとで思い出せる形です。 図表への言及 — 場所が先、意味が後 ★ 四段落めの頭に、決まり文句が来ます —— As you can see in Figure 2 。★ ここは 早口で流れます 。★ 意味は無く、 合図だけ です。 どの部分か 何をしているか 聞く側の動き ★ 決まり文句 ★ 合図 ★ 目を図に上げる ★ 図の番号 ★ 場所の指定 ★ その図を探す ★ そのあとの一文 ★ 読み方の指示 ★ ここから書き取る ★ 順は 場所が先、意味が後 です。★ だから、決まり文句が聞こえた時点で 手を止めて目を上げます 。 ★ そのあとの一文が、図の読み方です。 質疑の前置きは、長い ★ 六段落めの質問を聞いてください。 ★ 前置きが 18 語、問いそのものが 9 語 です。★ 前置きは問いの二倍の長さ です。 ★ 質問の型は 5.29 聞編 で置きました 。★ ここで足すのは一つだけ ——★ 芯は 最後の一文 に来る 。★ 前置きは礼と褒め言葉なので、 聞き流してよい のです。 知っておく語 ★ 論文から読み上げられる文には、帯の外の語が入ります。 ★ そのうち 8 語を辞書に入れました ので、台本の語をたどれば意味が出ます。★ 覚えるためではなく、 あとで読み直すため です。 聞き方 ★ 設計書の手順どおり、シャドーイングまで通します。 ★ この課は 紙と鉛筆 を用意してください。 ★ 台本を見ずに二回 聞く。★ 一度めは、どこで声が「論文の声」に変わるかだけを取る。 ★ 二度めは、 数と単位だけ 書き取る。 ★ 語は追わない。 ★ 声を重ねて三回 。★ 専門語の塊は、終わりの語だけ声を合わせる。 ★ 台本を見て確かめる 。★ 書き取った数が合っているかを見る。 ★ もう一度、見ずに通す 。★ ここが仕上がりです。 問い 台本を聞いて、答えてください。 ★ 発表は何分で、質疑に何分取ると言っているか。 ★ 手法の一文で、長い塊のいちばん後ろの語は何か。 ★ その塊のあと、発表者は何と言って言い直したか。 ★ 四段落めの結果の一文に、数はいくつ出てくるか。単位は何か。 ★ 六段落めの質問の芯は、前置きと問いのどちらにあるか。 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 2014 Three Minute Thesis winning presentation by Emily Johnston University of South Australia (3:18, 2014) 大学の「三分で研究を話す」大会の優勝発表。専門語をどう置いていくかが見える。 練習 台本を 上の「聞き方」の五段どおりに通す 。★ 二度めは数だけ書き取る。 ★ 塊を音読する 。手法の一文の長い塊を、 後ろから前へ 三度読む( study → cohort study → 全部)。 ★ 言い直しを作る 。自分の仕事か勉強を、まず いちばん硬い言い方 で一文、つぎに 平たい言い方 で一文、書く。 ★ 前置きを削る 。六段落めの質問から前置きを落とし、 問いだけ を声に出して言う。★ 何語になったかを数える。 この課のまとめ ★ 聞き取りにくさは二種類 ——知らない語で取れないのと、語は知っているのに数と単位で取れないの。 ★ 知らない語はかたまりで置き、数と単位は書き取る 。★取りちがえると両方失う。 ★ 長い名詞の塊は、後ろが本体・前が飾り 。★終わりの語だけ取ればよい。 ★ 学会の発表は「専門語 → 言い直し」の順 。★取り落としても次の一文で拾える。 ★ 図表への言及は、場所が先・意味が後 。★決まり文句は合図なので、聞こえたら目を上げる。 ★ 質疑の芯は最後の一文 ——前置きは礼と褒め言葉(型は 5.29 聞編 )。 次の課へ ★ 第 8 期の聞編は五課あります。 次の課は 5.43 、 面接 です。★ 学会では、聞き取れなくてもあとで論文を読み直せました。 ★ 面接では読み直せません ——★ その場で聞き返すしかない のです。 答え 「問い」の五つの答えです。 ★ 発表は十二分、質疑は三分 です。★ この一文は 聞き逃してはいけない一文 です——★ いつ質問できるかが決まるからです。 ★ study です。★ その前の cohort まで取れれば、 「一団を追った調べ」 だと分かります。 ★ 前の 4 語は置いておいてかまいません。 ★ That is a long name for a simple idea. [1] です。★ 「長い名前だが、中身は簡単だ」 と自分で言っています。★ この一言が、 言い直しの合図 です。 ★ 数は二つ で、★ 単位は percentage points です。★ この一文は語が八つしかなく、帯の外の語は 0 語 です。★ それでも取れないのは、 詰まっているから です。 ★ 問いのほうです。 ★ 前置きが 18 語、問いが 9 語 で、★ 芯は 最後の一文 に来ます 。★ 前置きを聞き取ろうとすると、芯に間に合いません。 台本 ★ 六つの区切り で読まれます。★ 語が急に長くなるところが、論文から読み上げている文 です。 Thank you for staying for the last talk of this session. [1] I will speak for twelve minutes and keep three minutes for questions. [1] The title of the paper is on the screen behind me. [1] Loneliness affects more than half of US adults and has been declared a public health epidemic, yet whether clinically documented loneliness independently predicts mortality across diverse populations remains unclear. [2] Here is what we set out to do. [1] To examine the association between clinically documented loneliness and all-cause mortality at 1, 3, and 5 years, overall and by sex, race and ethnicity, and age. [2] In plain words, we asked whether people who are alone die sooner. [1] We conducted a propensity score–matched retrospective cohort study using the TriNetX US Collaborative Network, comprising electronic health record data from 65 health care organizations. [2] That is a long name for a simple idea. [1] We took two groups that looked alike, and we followed both for five years. [1] The primary outcome was all-cause mortality at 1, 3, and 5 years. [2] As you can see in Figure 2, the two lines pull apart. [1] The upper line is the group with no record of it. [1] Absolute survival gaps widened from 1.57 to 2.82 percentage points. [2] That is the whole finding, in one line. [1] These findings identify loneliness as a measurable, independent mortality risk marker and suggest that routine screening and targeted psychosocial intervention warrant prospective evaluation. [2] In short, it can be measured, and it can be asked about. [1] Thank you for the talk. I enjoyed it very much. I have one quick question, if I may. [1] How did you handle the people who moved away? [1] That is a fair question. We could not follow them, and we say so in the limits. [1] We have time for one more question. [1] 参考文献 Epoché の作例(学会発表の地の言葉)。CC BY 4.0。★発表者も会場も架空。★論文から読み上げられる文だけが実在の論文から(下の 2 番)。https://epoche.app/ Oluwasegun Akinyemi ほか, "Loneliness and all-cause mortality in the United States", PLOS ONE , doi:10.1371/journal.pone.0354773。CC BY 4.0(http://creativecommons.org/licenses/by/4.0/)。原文は 1 字も変えていない。https://doi.org/10.1371/journal.pone.0354773