6.32 電話会議 I — 聞いていることを、声で示す — Epoché
この課で言えるようになること ★ 相づちを声で出せる 。黙らない。 ★ 名乗ってから話せる 。 ★聞こえなかったときに すぐ言える 。 ★聞き返しに 理由を添えられる 。 第 4 期の話編で置いた八つを、ひととおり言える。 前提 : 6.31 まで。型は 3.32 まで。助動詞は 3.10、句動詞は 3.31。 場面と話し手 この課の場面は、 声だけでつながる会議 です。★ 相手は複数いて、こちらの顔は見えていません。 ★ だから、黙っている人は「いない人」と同じ扱いになります。 ★黙ると、いないことになる 日本語の会議では、 黙って聞いているのがふつう です。うなずきと目で、聞いていることを示します。★ 電話会議では、その二つが消えます。 聞いていることを 顔が見える場では 電話会議では うなずきで示す ★ 伝わる ★ 伝わらない 目で示す ★ 伝わる ★ 伝わらない ★ 声で示す 要らないこともある ★ これだけが残る ★ だから、相づちが仕事になります。 ★ 短くてかまいません。 「なるほど」「続けてください」「面白いですね」。★ 中身は要りません。声が出ることが大事です。 ★ これは日本語話者にとって、むしろ得意なはずのところです。 ★ 日本語の会話は、相づちが多い のです。★ 英語で黙ってしまうのは、相づちの言い方を持っていないからにすぎません。 ★ 三つ持っておけば足ります。 名乗ってから話す ★ 声だけでは、誰が話し始めたか分かりません。 ★ だから、名乗ってから話します。 ★ これは礼儀ではなく、進行のためです。 ★ 名乗らずに話し始めると、聞いている側は最初の一文を「誰の声か」を考えることに使います。 ★ その一文は、聞かれていません。 ★ つまり、名乗る一行は、自分の話を聞いてもらうための場所取りです。 ★ 6.25 話編 の語り出しと同じ働き をしています——★ 本題の前に、聞く構えを作らせる。 聞こえなかったら、すぐ言う ★ 電話会議でいちばん多い失敗は、聞こえなかったのに黙っていることです。 ★ 日本語話者は、話を止めるのを申し訳なく思います。 ★ けれども、あとからでは直せません。 ★ 会議は先へ進みます。 ★ 一つ聞き落とすと、そのあとの話が全部分からなくなることがあります。 ★ そして、止めるのは迷惑ではありません。 ★ 聞こえていないのは、たいてい自分だけではない からです。★ 回線が悪ければ全員に悪い。 ★ 言った人は、たいてい感謝されます。 聞き返しには理由を添える ★ ただ「もう一度」と言うと、相手は同じ速さで同じことを言います。 ★ それでは、また聞こえません。 どう聞き返すか 相手は何をするか 二度目に聞こえるか 「もう一度」だけ ★ 同じように繰り返す ★ たぶん聞こえない ★ 聞こえなかったと言う ★ 大きく、ゆっくり言う ★ 聞こえる どこが聞こえなかったかを言う ★ そこだけ言い直す ★ いちばん速い ★ 理由を添えるのは、遠慮ではありません。 ★ 相手に、直すところを渡している のです。★ マイクが遠いのか、速すぎるのか、回線なのか。 ★ 「聞こえなかった」の一語で、相手は自分の側を見直します。 対話 A 話者 英文 日本語訳 相手 Can you hear us? [1] 聞こえますか。 学習者 Sorry, I couldn't hear you. [2] すみません、聞こえませんでした。 学習者 Could you say that again? [3] もう一度言ってもらえますか。 相手 Let's begin, then. [4] では始めましょう。 一行めが 始めの確認 です。★ 電話会議は、たいていこの一行から始まります。 ★ 聞き取れるようにしておけば足ります。 二行めで すぐに言っています 。★ 「すみません、聞こえませんでした」。 ★ ためらっていません。 ★ そして、理由が添えられています——聞こえなかった、と。 三行めで もう一度頼んでいます 。★ could を使っています( 3.10 型編 の丁寧さの段)。★ 二行続けて言っているところを見てください。 ★ 「聞こえなかった」と「もう一度」は、分けません。 ★ 分けると、あいだで話が進んでしまいます。 四行めで 会議が始まります 。★ 聞こえるようになってから始めている のが大事です。★ こちらが言わなければ、聞こえないまま始まっていました。 対話 B 話者 英文 日本語訳 相手 Let's start with what we can do. [5] できることから始めよう! 学習者 Please go on. [6] どうぞ続けて。 相手 Can you hear me well enough? [7] 私の声はよく聞こえる? 学習者 This is interesting. [8] 面白いですね。 一行めで 進め方が出ます 。「できることから始めよう」。 二行めで 続きを促しています 。★ これが相づちです。 ★ 二語しかありません。 ★ それでよいのです——声が出たことが伝わればよい。 ★ 三行めをよく見てください。 ★ 相手が「よく聞こえているか」と確かめています。 ★ なぜここで確かめたのか。 ★ こちらの声が少なかったからです。 ★ 二語の相づち一つでは、まだ足りません。 ★ 顔が見えない場では、静かなことが「不具合」に見えます。 四行めで 短い相づちを返しています 。「面白いですね」。★ 中身のある発言ではありません。 ★ けれども、これで相手は安心して続けられます。 ★ この対話が言っているのは一つです。 ★ 電話会議では、発言の数ではなく、声の回数が見られています。 言い回し 電話会議でそのまま使える言い方を六つ挙げます。上の三つが 聞こえないとき 、真ん中の二つが 相づち 、下の一つが 始めるとき です。 英文 日本語訳 どんなときに Can you hear us? [1] 聞こえますか。 ★始めの確認。全員に向けて言う Sorry, I couldn't hear you. [2] すみません、聞こえませんでした。 ★聞こえなかったと言う。理由が添えてある Could you say that again? [3] もう一度言ってもらえますか。 ★もう一度頼む。 could で丁寧に Please go on. [6] どうぞ続けて。 ★続きを促す。これ自体が「聞いている」合図 This is interesting. [8] 面白いですね。 相づち。★短くてよい。声が出ることが大事 Let's begin, then. [4] では始めましょう。 始める。★司会でなくても言える ★ 真ん中の二つを、口が覚えるまで繰り返してください。 ★ 相づちは、考えてから言うものではありません。 ★ 考えているあいだに、間が過ぎます。 ★ 二語でよいのですから、何も考えずに出せるようにしておきます。 言い換えと丁寧さ 聞き返しには段があります。★ ここでの段は、丁寧さと「相手に何を渡すか」の両方で決まります。 どの段か その形 相手に渡るもの 近い Can you say that again? [9] ★ 繰り返せ、だけ 丁寧 Could you say that again? [3] ★ 繰り返せ、だけ 。丁寧になっただけ ★ いちばん効く Sorry, I couldn't hear you. [2] ★ 聞こえなかった、という理由 ★ 上の二つを見比べてください。 ★ 丁寧さは上がっていますが、相手に渡るものは同じです。 ★ どちらも、相手は同じように繰り返します。 ★ 三つめだけが違います。 ★ 丁寧さでは真ん中より低いかもしれません。 ★ けれども、相手は直せます。 ★ これが、この期の話編を通していちばん言いたかったことです。 ★ 丁寧さと、役に立つことは別です。 6.27 話編 では「丁寧さは選べることを意味しない」と置きました。★ ここでは「丁寧さは伝わることを意味しない」。 ★ 二つとも、丁寧にすれば済むと思っていると外すところです。 第 4 期の話編、八つの手つき この期の八課で置いたものを、まとめておきます。 どの課 何を話したか 置いた手つき 6.25 話編 物語を語る ★ 続けて三行しゃべる 6.26 話編 議論の入り口 ★ 反対する前に認める 6.27 話編 手続き ★ 用件を一行で出す 6.28 話編 苦情と解決 ★ どうしてほしいかまで言う 6.29 話編 日本を紹介する ★ 説明しないものを決める 6.30 話編 面接 I ★ 答えたらもう一行足す 6.31 話編 数字を伝える ★ 確かさの段を選ぶ この課 電話会議 I ★ 聞いていることを声で示す ★ 八つを並べると、一つの線が見えます。 ★ どれも「こちらから出す」という話 です。★ 第 3 期の話編は、相手に合わせる期でした。 ★ 第 4 期は、自分から出す期です。 ★ そして、出し方には順があります。 結論を先に、認めてから反対し、答えたら足し、数には確かさを付ける。★ 語彙が増えたから話せるようになるのではありません。 ★ 順を持つと、話せるようになります。 この課で使う型 — 型編の復習 この課の八行は、第 3 編で立てた型だけでできています。 型の名 この課での出方 戻る課 助動詞 I ★聞き返しの could ・確認の can 3.10 型編 wh 節と間接疑問 できること、の what 節 3.20 型編 句動詞 ★ go on と start with 3.31 型編 程度 よく聞こえているか、の well enough 3.28 型編 動画で見る この課の内容に近い解説動画です。押すと再生されます(再生は YouTube に接続します)。「画面に固定して見る」を押すと、本文を読みながら見られます。 Calls and instant messages: Office English episode 4 BBC Learning English (11:24, 2024) 通話と短信。職場英語の連続もの Talking on the phone – 15 – English at Work has the top tips for you BBC Learning English (5:11, 2016) 全編。6.32 は聞いていることを声で示すところを見る(同じ回) 練習 対話 A と対話 B を、行を押して音を聞いてから 役を決めて音読 する。相手の役と学習者の役を両方やる。3 周する。3 周目は対話 A を、音声に重ねて シャドーイング する。★ 対話 A の二行めと三行めは、続けて 読む。 ★ 相づちを口に入れる練習 。短い相づちを 三つ 選び、 何も考えずに出るまで 声に出す。★ 三つとも二語か三語にすること。 ★ 長い相づちは、間に合いません。 ★ 第 4 期の話編を振り返る 。八課( 6.25 話編 〜この課)を見直し、 自分がいちばん弱い場面を一つ 選ぶ。選んだら、その課の対話 B をもう一度音読する。★ 第 5 期の話編は、この八つを前提にして討論と発表に進みます。 この課のまとめ ★ 顔が無い場では、黙っているとそこにいないことになる。 うなずきと目が消えるので、声だけが残る。 ★ 相づちは短くてよい。中身は要らない。声が出ることが大事。 三つ持っておけば足りる。 ★ 名乗ってから話す。 名乗らないと、最初の一文は「誰の声か」を考えることに使われる。 ★ 聞こえなかったら、すぐ言う。 あとからでは直せない。聞こえていないのは、たいてい自分だけではない。 ★ 聞き返しには理由を添える。 「もう一度」だけでは、相手は同じ速さで繰り返す。 ★ 丁寧さは、伝わることを意味しない。 丁寧に聞き返しても、相手に渡るものは変わらない。 ★ 電話会議では、発言の数ではなく声の回数が見られている。 ★ 第 3 期の話編は相手に合わせる期、第 4 期は自分から出す期。 ★ 語彙が増えたから話せるのではない。順を持つと話せるようになる。 次の課へ 話編の第 4 期はここで終わりです。第 4 期の学習順では、話の次は訳です。次の課は 7.7 、 訳編 です。★話すときは、 言えることだけを言えばよい のでした。★訳すときは、そうはいきません。 目の前の文を、逃げずに渡すことになります 。★ そして、逃げられないところにこそ、日本語と英語の差がはっきり出ます。 答え 「練習」の三つの答えです。 ★ 二行めと三行めを続けて読む ——「聞こえませんでした」と「もう一度お願いします」を分けません。★ 分けると、あいだで会議が先へ進みます。 ★ 二行で一つの聞き返し です。★ 続けて読めるようになったら、本番でもためらいが入りません。 ★ 三つとも二語か三語になっていますか。 ★ 長い相づちを選んだなら、それは相づちではなく発言 です。★ 選ぶときの目安を書いておきます——考えずに言えるか 。★ 考えたなら、もう間は過ぎています。 ★ 中身で選ばないこと。 ★ 短さで選ぶ のが、この課の答えです。 ★ 一つ選べたなら、この課の目当ては果たされています。 ★ 第 4 期の八つは、どれも「こちらから出す」話 でした——語る・反対する・用件を出す・求めを渡す・説明を削る・一行足す・確かさを付ける・声を出す。★ 第 3 期の「相手に合わせる」とは質が違う ので、苦手なものがあるのは当然です。★ 第 5 期は討論と発表 で、★ そこでは八つのうちどれかが必ず先に要ります ——討論なら 6.26 話編 の順、発表なら 6.29 話編 の削り方。★ 選んだ一つが、そのまま次の期の支度になります。 参考文献 Tatoeba 文 #1841737(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/1841737 Tatoeba 文 #12534060(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentences/show/12534060 Tatoeba 文 #1060025(CC BY 2.0 FR)。https://tatoeba.org/en/sentence