0.5 重子音・qu・gn・h・x — 促音で作れる音 — Epoché
この課でできるようになること 重子音を促音で作り、単子音と読み分けられる( sumus / summus )。 qu ・ gn ・ h ・ x を正しく読める。 子音の規則がこれで全部だと知り、以後は規則を疑わずに読める。 前提 : 0.4 まで。 母音の長短( 音編 2課 )と同じことが、子音にもあります。 子音を二つ重ねると長い子音 で、日本語の促音「っ」とまったく同じ仕組みです。「きて」と「きって」が違うように、 sumus (私たちは〜である)と summus (最高の)は違う語です。英語話者は summer の mm を一つで読んでしまうのでこれが難しいのですが、日本語話者には促音があります。 重子音 — 促音で作る 単子音 重子音 sumus 私たちは〜である summus 最高の ferum 野生の(対格) ferrum 鉄 anus 老婆 annus 年 mīles 兵士 mille 千 ager 畑 agger 土手 重子音は 音節を閉じる ので、前の課の強勢の規則にも効きます。 pu-EL-la (少女)の強勢が次末に来るのは、 ll が音節 el を閉じて長くしているからです。 bellum (戦争)・ terra ・ annus ——頻出語に重子音は多く、促音で読めば強勢も自然に合います。 qu ・ gu — 一つの音 qu は「クゥ」と二つに割らず、 kw の一音 です。英語の queen の qu と同じ。 quī (クィー)・ aqua (アクァ)・ quod (クォド)。この u は母音ではないので、音節を作りません。 a-qua は 2 音節です。 gu も n の後ろでは同じ( lingua リングァ、 sanguis サングィス)。 gn ・h・x・その他 綴り 読み方 例語 gn ŋn (「ング+ヌ」を一息で) magnus マングヌス / ignis イングニス / signum シングヌム h 弱いハ行。音節を作らず、長さにも数えない homō ホモー / habeō ハベオー / nihil ニヒル x ks rēx レークス / pāx パークス / dīxit ディークシト z ズ(ギリシア語系) zōna ゾーナ bs ・ bt b が無声化して ps ・ pt urbs ウルプス / obtineō オプティネオー m (語末) 弱く、前の母音を鼻にかける bellum / Rōmam (詩では次の母音の前で消える) gn の「マングヌス」は、無理に発音記号どおりにしなくても「マグヌス」で通じます。ただし「マニュス」(イタリア語風)にはしないでください——それは教会式でもなく、ただの英語読みです。 h はほとんど聞こえないほど弱く、詩では無いものとして扱われます。 実文で確かめる 原文 日本語訳 見るところ tempus belli, et tempus pacis. [1] 戦いの時、平和の時。 bellī の ll は促音。 pācis の c はク Deus patrum vestrorum misit me ad vos. [2] あなたがたの父祖の神が、私をあなたがたのもとへ遣わした。 vestrōrum ( str の子音連続)。 mīsit Quia de aqua tuli eum. [3] 水から彼を引き上げたからだ。 quia ・ aquā の qu は一音 Multus est populus terræ: [4] この地の民は多い。 terræ = terrae 。 rr は促音、 ae はアイ Omnia per ipsum facta sunt: [5] すべては彼によって成った。 ipsum の ps 。 omnia の mn は一つずつ 新出語 語(品詞) 意味 注 bellum la 名詞・第 2 変化・中性( -ī ) 戦争 日本語との差 形容詞 bellus (美しい)と別の語 tempus belli, et tempus pacis. 戦いの時、平和の時。 Dies bellus est. [6] いいお天気ですね。 pāx la 名詞・第 3 変化・女性( pācis ) 平和 日本語との差 英語 peace ・ pacific の元。 Pāx Rōmāna "Pax tibi." "Et tibi quoque." [7] 「あなたに平安あれ。」「あなたにも。」 aqua la 名詞・第 1 変化・女性( -ae ) 水 日本語との差 英語 aquarium ・ aquatic の元 Quia de aqua tuli eum. 水から彼を引き上げたからだ。 Ubi est aqua mea? [8] 私の水はどこですか? magnus la 形容詞・第 1・2 変化( -a , -um ) 大きい、偉大な 日本語との差 比較級 maior ・最上級 maximus Consuetudinis vis magna est. [9] 習慣の力は偉大である。 Familiam magnam habet. [10] 彼は大家族だ。 populus la 名詞・第 2 変化・男性( -ī ) 民、国民 日本語との差 英語 people ・ popular の元。長い ō なら「ポプラ」 Is a populo suo amatus est. [11] 彼は自分の民に愛されている。 annus la 名詞・第 2 変化・男性( -ī ) 年 日本語との差 英語 annual の元。 anus と別 Proximo mense sedecim annos nata ero. [12] 私は来月16歳になります。 Proximo mense sedecim annos natus ero. [13] 私は来月16歳になります。 pater la 名詞・第 3 変化・男性( patris ) 父 日本語との差 英語 paternal の元。属格複数 patrum Deus patrum vestrorum misit me ad vos. あなたがたの父祖の神が、私をあなたがたのもとへ遣わした。 Pater, dimitte illis, non enim sciunt, quid faciunt. [14] 父よ、彼らを赦し給へ、その爲す所を知らざればなり。 quia la 接続詞 〜なので、〜ということ 日本語との差 後古典で「〜と」(英語 that )にも。ウルガタに多い Qui dies est hodie? [15] 今日は何日ですか。 Qui tacet, consentire videtur. [16] 無言は承諾。 mittō la 動詞・第 3 活用( mittere , mīsī , missum ) 送る、遣わす 日本語との差 英語 mission ・ transmit の元 Dixit: Mittam tibi hædum de gregibus. [17] 彼は言った、群れから子やぎを一頭あなたに送ろう、と。 重子音はいつから書かれたか — 綴りの歴史から 重子音を二つの字で書く習慣は、古いラテン語にはありませんでした。紀元前 2 世紀の詩人エンニウスが、ギリシア語の書き方にならって子音を重ねて書くことを広めた、と古代の文法家は伝えています。それ以前の碑文では annus も anus も同じ綴りで、読み手が文脈で長短を補っていました。母音の長短と同じく、 長さの区別は音として先にあり、綴りは後から追いついた のです。日本語の促音「っ」を書く習慣が比較的新しいのと似ています。 qu が一つの音であることは、詩の韻律から分かります。 aqua の第一音節は詩の中で短い音節として扱われます。もし qu が二つの子音(k+w)なら、a の音節は閉じて長くなるはずです。つまりローマ人は qu を一つの子音として聞いていました。 gn の鼻音化は、 dignus (ふさわしい)が decet (ふさわしい)と同じ語根 dec- から来ていることから分かります。c が n の前で鼻にかかって g のように書かれた、という順序です。 h が弱かったことは、詩人カトゥルスがからかった詩から分かります。アッリウスという男が commoda (便宜)を chommoda と h を足して気取って言う、というのが笑いどころで、h は 付けても付けなくても通じるほど弱い音 だったのです。碑文では h がしばしば省かれ、逆に余計な h が足されています。語末の -m も同様で、碑文では落ちていることが多く、詩では次の語が母音で始まると消えます。第 4 期の韻文で「母音融合」として出会う現象です。 日本語話者にとって、この課の内容はほとんど 持っている感覚を確かめる だけです。促音は日本語にあり、 qu の一音性は「クァ」の拗音で作れ、 gn は「ング」に近い。難しいのは h をつい強く出してしまうことと、x を「エックス」と英語風に読んでしまうことくらいです。 rēx は「レークス」、決して「レックス」ではありません( ē が長い)。 この課で子音の規則はすべて出そろいました。母音 5 つと長短( 音編 2課 )、二重母音( 音編 3課 )、子音の一対一の対応(0.3 と本課)、強勢の規則( 音編 4課 )。これでラテン語のどんな語も、初めて見た瞬間に読めます。第 1 期の残りの課では新しい発音の規則は出てきません。出てくるのは、これらの規則を 語形の違いに結びつける 場面だけです—— puella と puellā 、 venit と vēnit のように。 なお、日本語のカタカナで「クァ」「グィ」と書いたのは近い音を示すためで、拗音そのものではありません。 aqua は「ア・クワ」を一息で。 lingua は「リン・グワ」。唇を丸めた u をごく短く挟んでから次の母音に移る、と考えると英語の queen の qu に近づきます。 重子音の読み分けは、聞くより言うほうが先に身につきます。 annus と言うとき、「アン」で一度舌を上あごに付けたまま止め、そのあと「ヌス」と離す——日本語の「あんない(案内)」の「ん」と同じ動きです。止める時間が、単子音との違いのすべてです。 練習 練習 1 — 促音で読み分ける 次の対を、重子音のほうを促音で読み分けてください。 sumus / summus anus / annus ferum / ferrum ager / agger 練習 2 — 音節と強勢 次の語を音節に切り、強勢を打ってください。 qu の u は音節を作りません。 aqua magnus puella lingua quoniam 練習 3 — 本文を隠して復唱する 上の 5 文を音声で聞き、本文を伏せて復唱してください。 terrae の rr 、 bellī の ll を促音で。 この課のまとめ 重子音は 促音 。 sumus / summus 、 anus / annus 。音節を閉じるので強勢にも効く。 qu = kw の一音。u は音節を作らない。 gn = ŋn 、 h =弱い、 x = ks 、 bs = ps 。 これで子音の規則は全部。 以後は規則を疑わずに読む 。 次の課へ 第 0.6 課は 読み方の流派 です。復元式・教会式・独逸式、そして日本の教室の慣習。デカルトがなぜカルテシウスなのか、シーザーとカエサルとチェーザレが同じ人なのかを、音の規則から説明します。 答え 練習 2 : A-qua (2 音節・頭)/ MAG-nus / pu-EL-la / LIN-gua / QUO-ni-am (次末 ni が短い → 前次末)。 参考文献 Vulg . Eccl . 3:8( tempus belli, et tempus pacis. )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Vulg . Exod . 3:13( Deus patrum vestrorum misit me ad vos. )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Vulg . Exod . 2:10( Quia de aqua tuli eum. )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Vulg . Exod . 5:5( Multus est populus terræ: )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Vulg . Ioh . 1:3( Omnia per ipsum facta sunt: )。 Vulgata Clementina , la . wikisource 。パブリックドメイン Tatoeba 文 #5654479( Dies bellus est. )。Tatoeba Project, CC BY 2.0 FR. https://tatoeba.org/en/sentences/show/5654479 Tatoeba 文 #7039094( "Pax tibi." "Et tibi quoque." )。Tatoeba Project, CC BY 2.0 FR. https://tatoeba.org/en/sentences/show/7039094 Tatoeba 文 #13788688( Ubi est aqua mea? )。Tatoeba Project, CC BY 2.0 FR. https://tatoeba.org/en/sentences/show/13788688 Tatoeba 文 #369557( Consuetudinis vis magna est. )。Tatoeba Project, CC BY 2.0 FR. https://tatoeba.org/en/sentences/show/369557 Tatoeba 文 #1012168( Familiam magnam habet. )。Tatoeba Project, CC BY 2.0 FR. https://tatoe