意見の自由と、労働の疎外 — Epoché
解説 一人の異論と、全員の意見 ミル『自由論』第2章、採用1864年版33頁。人数が意見の封殺を正当化するかを比べる。 原文:If all mankind minus one, were of one opinion, and only one person were of the contrary opinion, mankind would be no more justified in silencing that one person, than he, if he had the power, would be justified in silencing mankind. 訳:人類の一人を除く全員が同じ意見で、たった一人だけが反対の意見であるとしても、人類がその一人を沈黙させることは、その人が力を持っていた場合に人類を沈黙させることと比べて、より正当化されるわけではない。 少数意見を自動的に真とする文章ではない。また、この一文だけで全ての行為を無条件に許すとも言っていない。 出典2 作った物が、独立した力となる マルクス『経済学・哲学草稿』「疎外された労働」、採用1932年版83頁。先行する記述は私的所有などを前提に議論している。 原文:Der Gegenstand, den die Arbeit produziert, ihr Produkt, tritt ihr als ein fremdes Wesen, als eine von dem Produzenten unabhängige Macht gegenüber. 訳:労働が生み出す対象、つまりその生産物は、労働に対して、疎遠な存在として、生産者から独立した力として立ち現れる。 疎遠とは、単に物が身体から離れるということではない。生産者から独立する力として対面する関係を述べる。 出典1 自由の問題を、一つにまとめない ミルの一節は意見を封じる正当性を、マルクスの一節は生産者と生産物との関係を扱う。同じ自由という語で両方を済ませず、誰と何の関係が問題になっているかを分けて読む。 これは別著作を並べた編集上の比較であり、二人がこの箇所で直接に応答したことや、同じ解決を示したことを意味しない。 出典1 ・ 出典2 別の原典が、異なる関係を批判している。 一節 焦点 読み違えない点 ミル 意見を持つ者が他者を沈黙させる正当性 少数だから正しい、とは言わない マルクス 労働が生む物が、生産者から独立する力となる関係 物を作ること自体を悪いとはしない 同じ学説や直接の論争ではなく、何が制限・支配の問題になるかの編集上の対照。 参考文献 [1] マルクス『経済学・哲学草稿』・労働の生産物。採用原版の本人文言から本教材が独自転記・日本語訳。「マルクス『経済学・哲学草稿』・労働の生産物」。 出典 本教材の独自訳・解説 CC BY-SA 4.0(原典の本人文言) [2] ミル『自由論』第2章・一人と全員の沈黙強制。採用原版の本人文言から本教材が独自転記・日本語訳。「ミル『自由論』第2章・一人と全員の沈黙強制」。 出典 本教材の独自訳・解説 CC BY-SA 4.0(原典の本人文言)