Man'yōshū, Volume 12 — Ōtomo no Yakamochi and others, compiled
万葉集/第十二巻 ← 第十一巻 第十三巻 → 万葉集 第十二巻 第十二巻 [歌番号] 12/2841 [題詞]正述心緒 [原文]我背子之 朝明形 吉不見 今日間 戀暮鴨 [訓読]我が背子が朝明の姿よく見ずて今日の間を恋ひ暮らすかも [仮名]わがせこが あさけのすがた よくみずて けふのあひだを こひくらすかも [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 女歌 恋情 後朝 [訓異]わがせこが,[寛]わかせこか, あさけのすがた,[寛]あさけのすかた, よくみずて,[寛]よくみすて, けふのあひだを,[寛]けふのあひたを, こひくらすかも[寛], [歌番号] 12/2842 [題詞](正述心緒) [原文]我心 等望使念 新夜 一夜不落 夢見<与> [訓読]我が心ともしみ思ふ新夜の一夜もおちず夢に見えこそ [仮名]あがこころ ともしみおもふ あらたよの ひとよもおちず いめにみえこそ [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]<> -> 与 [新訓] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 女歌 恋情 [訓異]あがこころ,[寛]わかこころと, ともしみおもふ,[寛]のそみおもへは, あらたよの,[寛]あたらよの, ひとよもおちず,[寛]ひとよもおちす, いめにみえこそ,[寛]ゆめにみえけり, [歌番号] 12/2843 [題詞](正述心緒) [原文]<愛> 我念妹 人皆 如去見耶 手不纒為 [訓読]愛しと我が思ふ妹を人皆の行くごと見めや手にまかずして [仮名]うつくしと あがおもふいもを ひとみなの ゆくごとみめや てにまかずして [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]与愛 -> 愛 [新訓] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 [訓異]うつくしと[寛], あがおもふいもを,[寛]わかおもふいもを, ひとみなの,[寛]もとみなの, ゆくごとみめや,[寛]いまゆきみるや, てにまかずして,[寛]てにまかすして, [歌番号] 12/2844 [題詞](正述心緒) [原文]<比>日 寐之不寐 敷細布 手枕纒 寐欲 [訓読]このころの寐の寝らえぬは敷栲の手枕まきて寝まく欲りこそ [仮名]このころの いのねらえぬは しきたへの たまくらまきて ねまくほりこそ [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]此 -> 比 [西(朱筆訂正)][元][紀][細] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 枕詞 [訓異]このころの[寛], いのねらえぬは,[寛]いのねらえぬに, しきたへの[寛], たまくらまきて[寛], ねまくほりこそ,[寛]ねまくほしけむ, [歌番号] 12/2845 [題詞](正述心緒) [原文]<忘>哉 語 意遣 雖過不過 猶戀 [訓読]忘るやと物語りして心遣り過ぐせど過ぎずなほ恋ひにけり [仮名]わするやと ものがたりして こころやり すぐせどすぎず なほこひにけり [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]忌 -> 忘 [細][温][矢][京] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 [訓異]わするやと,[寛]わすれめや, ものがたりして,[寛]ものかたりして, こころやり[寛], すぐせどすぎず,[寛]すくれとすきす, なほこひにけり,[寛]なをこひしくて, [歌番号] 12/2846 [題詞](正述心緒) [原文]夜不寐 安不有 白細布 衣不脱 及直相 [訓読]夜も寝ず安くもあらず白栲の衣は脱かじ直に逢ふまでに [仮名]よるもねず やすくもあらず しろたへの ころもはぬかじ ただにあふまでに [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 枕詞 恋情 [訓異]よるもねず,[寛]よるもねす, やすくもあらず,[寛]やすくもあらす, しろたへの[寛], ころもはぬかじ,[寛]ころももぬかし, ただにあふまでに,[寛]たたにあふまて, [歌番号] 12/2847 [題詞](正述心緒) [原文]後相 吾莫戀 妹雖云 戀間 年經乍 [訓読]後も逢はむ我にな恋ひそと妹は言へど恋ふる間に年は経につつ [仮名]のちもあはむ われになこひそと いもはいへど こふるあひだに としはへにつつ [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 [訓異]のちもあはむ,[寛]のちにあはむ, われになこひそと,[寛]われをこふなと, いもはいへど,[寛]いもはいへと, こふるあひだに,[寛]こふるあひたに, としはへにつつ[寛], [歌番号] 12/2848 [題詞](正述心緒) [原文]不直<相> 有諾 夢谷 何人 事繁 [或本歌曰 <寤>者 諾毛不相 夢左倍] [訓読]直に会はずあるはうべなり夢にだに何しか人の言の繁けむ [或本歌曰 うつつにはうべも逢はなく夢にさへ] [仮名]ただにあはず あるはうべなり いめにだに なにしかひとの ことのしげけむ [うつつには うべもあはなく いめにさへ] [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]相者 -> 相 [元][紀][細][温] / 寝 -> 寤 [万葉拾穂抄] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 異伝 恋情 尫柜蹋 [訓異]ただにあはず,[寛]たたにあはす, あるはうべなり,[寛]あるはことはり, いめにだに,[寛]ゆめにたに, なにしかひとの,[寛]いかなるひとの, ことのしげけむ,[寛]ことのしけけむ, [うつつには[寛], うべもあはなく,[寛]うへもあはすて, いめにさへ],[寛]ゆめにさへ, [歌番号] 12/2849 [題詞](正述心緒) [原文]烏玉 彼夢 見継哉 袖乾日無 吾戀矣 [訓読]ぬばたまのその夢にだに見え継ぐや袖干る日なく我れは恋ふるを [仮名]ぬばたまの そのいめにだに みえつぐや そでふるひなく あれはこふるを [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 枕詞 恋情 [訓異]ぬばたまの,[寛]ぬはたまの, そのいめにだに,[寛]そのよのゆめに, みえつぐや,[寛]みつききや, そでふるひなく,[寛]そてほすひなき, あれはこふるを,[寛]わかこふらくを, [歌番号] 12/2850 [題詞](正述心緒) [原文]現 直不相 夢谷 相見与 我戀國 [訓読]うつつには直には逢はず夢にだに逢ふと見えこそ我が恋ふらくに [仮名]うつつには ただにはあはず いめにだに あふとみえこそ あがこふらくに [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 [訓異]うつつには[寛], ただにはあはず,[寛]たたにもあはす, いめにだに,[寛]ゆめにたに, あふとみえこそ,[寛]あふとはみえよ, あがこふらくに,[寛]わかこふらくに, [歌番号] 12/2851 [題詞]寄物陳思 [原文]人所見 表結 人不見 裏紐開 戀日太 [訓読]人の見る上は結びて人の見ぬ下紐開けて恋ふる日ぞ多き [仮名]ひとのみる うへはむすびて ひとのみぬ したひもあけて こふるひぞおほき [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 人目 女歌 [訓異]ひとのみる,[寛]ひとめには, うへはむすびて,[寛]うへもむすひて, ひとのみぬ,[寛]しのひには, したひもあけて,[寛]したひもとけて, こふるひぞおほき,[寛]こふるひそおほき, [歌番号] 12/2852 [題詞](寄物陳思) [原文]人言 繁時 吾妹 衣有 裏服矣 [訓読]人言の繁き時には我妹子し衣にありせば下に着ましを [仮名]ひとごとの しげきときには わぎもこし ころもにありせば したにきましを [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 尫柜蹋 恋情 [訓異]ひとごとの,[寛]ひとことの, しげきときには,[寛]しけれるときに, わぎもこし,[寛]わきもこか, ころもにありせば,[寛]ころもなりせは, したにきましを[寛], [歌番号] 12/2853 [題詞](寄物陳思) [原文]真珠<服> 遠兼 念 一重衣 一人服寐 [訓読]真玉つくをちをし兼ねて思へこそ一重の衣ひとり着て寝れ [仮名]またまつく をちをしかねて おもへこそ ひとへのころも ひとりきてぬれ [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]眼 -> 服 [古] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 枕詞 恋情 [訓異]またまつく,[寛]しらたまも, をちをしかねて,[寛]めにやとほけむ, おもへこそ,[寛]おもひつつ, ひとへのころも,[寛]ひとへころもを, ひとりきてぬれ,[寛]ひとりきてぬる, [歌番号] 12/2854 [題詞](寄物陳思) [原文]白細布 我紐緒 不絶間 戀結為 及相日 [訓読]白栲の我が紐の緒の絶えぬ間に恋結びせむ逢はむ日までに [仮名]しろたへの わがひものをの たえぬまに こひむすびせむ あはむひまでに [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 枕詞 恋情 [訓異]しろたへの[寛], わがひものをの,[寛]わかひものをの, たえぬまに,[寛]たえすまに, こひむすびせむ,[寛]こひむすひせむ, あはむひまでに,[寛]あはむひまてに, [歌番号] 12/2855 [題詞](寄物陳思) [原文]新<治> 今作路 清 聞鴨 妹於事矣 [訓読]新治の今作る道さやかにも聞きてけるかも妹が上のことを [仮名]にひはりの いまつくるみち さやかにも ききてけるかも いもがうへのことを [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]治 [西(上書訂正)][類][古][紀] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 序詞 恋情 尫柜蹋 [訓異]にひはりの[寛], いまつくるみち[寛], さやかにも,[寛]さやけくも, ききてけるかも,[寛]きこえけるかも, いもがうへのことを,[寛]いもかうへのこと, [歌番号] 12/2856 [題詞](寄物陳思) [原文]山代 石田<社> 心鈍 手向為在 妹相難 [訓読]山背の石田の社に心おそく手向けしたれや妹に逢ひかたき [仮名]やましろの いはたのもりに こころおそく たむけしたれや いもにあひかたき [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]杜 -> 社 [西(朱書訂正)][類][紀][温] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 地名 京都府 伏見 恋情 [訓異]やましろの[寛], いはたのもりに[寛], こころおそく[寛], たむけしたれや,[寛]たむけしたれは, いもにあひかたき[寛], [歌番号] 12/2857 [題詞](寄物陳思) [原文]菅根之 惻隠々々 照日 乾哉吾袖 於妹不相為 [訓読]菅の根のねもころごろに照る日にも干めや我が袖妹に逢はずして [仮名]すがのねの ねもころごろに てるひにも ひめやわがそで いもにあはずして [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 枕詞 植物 恋情 [訓異]すがのねの,[寛]すかのねの, ねもころごろに,[寛]しのひしのひに, てるひにも,[寛]てらすひに, ひめやわがそで,[寛]ほすやわかそて, いもにあはずして,[寛]いもにあはすして, [歌番号] 12/2858 [題詞](寄物陳思) [原文]妹戀 不寐朝 吹風 妹經者 吾与經 [訓読]妹に恋ひ寐ねぬ朝明に吹く風は妹にし触れば我れさへに触れ [仮名]いもにこひ いねぬあさけに ふくかぜは いもにしふれば われさへにふれ [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]与 [細] 共 [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 恋情 [訓異]いもにこひ[寛], いねぬあさけに,[寛]いねぬあしたに, ふくかぜは,[寛]ふくかせの, いもにしふれば,[寛]いもにふれなは, われさへにふれ,[寛]われとふれなむ, [歌番号] 12/2859 [題詞](寄物陳思) [原文]飛鳥川 高川避紫 越来 信今夜 不明行哉 [訓読]明日香川高川避かし越ゑ来しをまこと今夜は明けずも行かぬか [仮名]あすかがは たかがはよかし こゑこしを まことこよひは あけずもゆかぬか [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]高 (塙)(楓) 奈 / 避紫 [万葉集新考](塙)(楓) 柴避 [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 地名 明日香 奈良県 恋愛 川渡り 難渋 [訓異]あすかがは,[寛]あすかかは, たかがはよかし,[寛]たかかはとほし, こゑこしを,[寛]こえてくる, まことこよひは,[寛]つかひはこよひ, あけずもゆかぬか,[寛]あけすゆかめや, [歌番号] 12/2860 [題詞](寄物陳思) [原文]八<釣>川 水底不絶 行水 續戀 是比歳 [或本歌曰 水尾母不絶] [訓読]八釣川水底絶えず行く水の継ぎてぞ恋ふるこの年ころを [或本歌曰 水脈も絶えせず] [仮名]やつりがは みなそこたえず ゆくみづの つぎてぞこふる このとしころを [みをもたえせず] [左注](右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]鈎 -> 釣 [紀][温] [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 地名 明日香 奈良県 異伝 恋情 序詞 [訓異]やつりがは,[寛]やつりかは, みなそこたえず,[寛]みなそこたえす, ゆくみづの,[寛]ゆくみつの, つぎてぞこふる,[寛]つきてそこふる, このとしころを,[寛]このとしころは, [みをもたえせず],[寛]みをもたえせす, [歌番号] 12/2861 [題詞](寄物陳思) [原文]礒上 生小松 名惜 人不知 戀渡鴨 [訓読]礒の上に生ふる小松の名を惜しみ人に知らえず恋ひわたるかも [仮名]いそのうへに おふるこまつの なををしみ ひとにしらえず こひわたるかも [左注]或本歌曰 巌上尓 立小松 名惜 人尓者不云 戀渡鴨 (右廿三首柿本朝臣人麻呂之歌集出) [校異]なし [事項]作者:柿本人麻呂歌集 略体 植物 人目 尫柜蹋 恋情 序詞 [訓異]いそのうへに[寛], おふるこまつの[寛], なををしみ[寛], ひとにしらえず,[寛]ひとにしられす, こ