クレーム対応 — Epoche C1
場面設定: ミュンヘン・BMW本社近くの取引先オフィス、製品リコール直後。データ主義のドイツ人品質管理部長カールスと、責任転嫁を試みるブラジル人営業責任者エドゥアルド。 エドゥアルドさん、先月御社から納入されたセンサー部品12万個、そのうち8万個に初期不良が確認されました。リコール対応に関して、本日ご説明を伺いたく。 ご迷惑をおかけしております。原因について、社内調査を踏まえまして、サンパウロから御社工場への海上輸送中、湿度管理に問題があった可能性が高いという結論に至りました。 湿度管理、と。弊社側でしたら我々の責任範疇という理解でよろしいでしょうか。 輸送はBMW物流が手配されたかと。弊社は適正な梱包で出荷しており、FOB条件ですので、所有権は港出荷時点で移転済みでございます。 なるほど。それを踏まえまして、こちらをご覧ください。輸送コンテナの湿度ロガー72時間分。最高62%、基準値75%以下、完全に正常範囲でございます。 ……その数値は、港到着時のものでは。航海中の記録は。 航海全期間の連続記録でございます。さらにもう一点。不良品のロット番号を調査しましたところ、SP-2023-0847から0891までが集中、これは御社の2023年第3四半期内部監査報告で「不適合在庫」として記載されていたロットと一致します。 ……弊社の内部監査報告を、なぜ御社が。 昨年のサプライヤー認証更新時に、御社ISO9001の補足資料として提出いただいた文書でございます。当時は問題なしと判断しましたが、今回の件と突合せざるを得ませんでした。 ……正直に申し上げます。第3四半期に生産ラインの較正ミスで5万個の不良在庫が発生し、廃棄コスト削減のため、良品ロットに混ぜて出荷してしまいました。輸送のせいと申し上げたのは、弊社役員を守るためです。 ご正直なご説明ありがとうございます。補償に関しまして、リコール費用全額3億2000万ユーロのうち、60%を御社、40%を弊社負担でいかがでしょう。弊社も検収体制の見直しを迫られる状況ですので、ゼロではございません。 その条件、受け入れざるを得ません。ただ、社長決裁が要りますので、今週中にご回答させていただきます。 承知いたしました。次回契約更新は3ヶ月後、その際にサプライヤー格付けを再検討させていただきます。信頼関係の再構築、御社次第ということで。 解説: 「湿度のせい」が顧客側のロガーと自社内部監査資料で二重に粉砕される本音の漏れ+顧客が監査ログまで押さえている予想外の返し。「役員を守るため」の隠蔽が、結局自社の信用を最も損ねる組織倫理の核心。